『のあ』の記録

ばるばろっさ

2



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火星の近くに来たとき


火星。テラフォーミングのもっとも有力な候補にある惑星だが、
今の所は、まだその目処も立たないようである。


レイジ「火星人いるかなー」
ノリリ「居たら、何よ。なんかあんの」
レイジ「えーいや、なんか気になんじゃん」
ノリリ「あっそ」


火星人、人面岩、ストーンサークルなどなど。
他の場所と同じように、火星にも様々なウワサがある。
レイジはそれを聞いてワクワクしていた。
ウワサは本当なのか!
とにかく、知りたいのだ。
一方で、ノリリはそういう事にはうんざりしていた。
まったく、くだらない事にしか思えないでいる。
火星には多くのウワサがある事も。
実は彼女、打ち上げられるときに、レイジにそういった諸々の
火星人、人面岩、ストーンサークルなどなどを話していた。
彼女自身は、ただの冗談のつもりだった。
しかし、彼女の予想以上にレイジは何も知らないのだ。
当のレイジ本人は、この冗談を真に受けて、冗談だとは一ミリも思っていない。


ノリリ(そういやわたし、昔っから冗談が下手だって言われてたっけ)


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木星の近くに来たとき
木星。太陽系最大の惑星だと言われている。


レイジ「わー。でかいぃ」
ノリリ「ああ。この馬鹿でかい惑星ほしをね、
ぎゅっぎゅーっぎゅーーっ、ってしてね。ブラックホール爆弾に
すんの」
レイジ「へぇぇ。すごーい‼︎」
ノリリ(ちょっとは疑えよっ)
「でね、宇宙にね、すっごーーく悪い怪獣がいるからってね、
そいつらの巣が、銀河の中心にあるからってね」
レイジ「うんうん」
ノリリ(嘘だろこいつ。まぢクソ疑ってくんねーかなぁ。
嘘を嘘で繋ぐって相当キツイってコレ)
「でねでねっ。我らが人類はわざわざそこまで殴り込みに行くわけよ」
レイジ「それで、それで?」
ノリリ「持ってきたブラックホール爆弾でね、銀河の中心ごと、
ギュバーン、ってね。これで万事、解決ってね‼︎」
レイジ「うわーすげぇぇ。いつからやるの、それ。
……あっ。今でしょ!」
ノリリ「ばーーか!ばか、ばーか‼︎
嘘だよ」
レイジ「えー!」
ノリリ「いや、そこは、気づこうよ。絵空事だよ。
全部、嘘っぱちよ」
レイジ「えー。でもさー。なんでそんな事、
僕なんかに言ってくれるのー?
ただの嘘っぱちなら、そこまで力込めていうこともないじゃんか?
……実は、ノリリお姉ちゃんも絵空事が好きなんじゃないの?」
ノリリ「うるせぇ。私の勝手じゃーぃ」


実は、ノリリはSFというものが大好きだった事がある。
小説、雑誌、マンガ、アニメに至るまで。
SFならばなんでも好きだったのだ。
科学に関わるきっかけも、SFだったのだ。
だが、科学について勉強していくにつれて、
ノリリはSFを好きではあっても、信じられなくなっていった。
そして、SF好きであることを同級生にも馬鹿にされた彼女は、
ますますSFを避けるようになっていった。
今でも、ノリリは、かつて自分も“絵空事”を夢見るただの少女であったことを、たとえ今いる自分と同い年の少年、レイジに対してでさえ、話せないでいる。



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