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アビシニアンと狡猾狐

篠原皐月

第20話 永遠の二十五歳

 二月十三日。職場の周りは殺風景なビジネス街でも、地下鉄一駅分を歩けば商業地である事から、幸恵は最寄り駅から一駅歩いてデパートに立ち寄った。そして目的の物を購入してから、駅への連絡通路に向かって歩き出す。


(別に……、大した意味は無いのよ? 職場であまりギスギスするのは嫌だから、偶には手頃な義理チョコを買おうと思っただけだし。そのついでに、なんだかんだと色々貰ってるから、一応感謝の気持ちを表してみようとか、そういう事で……)
 自分自身に言い聞かせる様にそんな事を考えながら歩いていると、唐突に声がかけられた。
「幸恵? こんなところで奇遇ね」
 いつの間にか並んで歩いていた同期の秋月清実に、幸恵も若干驚きながら言葉を返した。


「あ、清実、久しぶり。ここには買い物で?」
「ええ。職場で配る義理チョコを買いにね。それはそうと……、幸恵も買いに来たの?」
 歩きながらもさり気なく手に提げている紙袋を見た清実が尋ねてきた為、有名なチョコメーカーのロゴ入り紙袋では誤魔化しようが無かった幸恵は正直に認めた。
「まあね。でもそんな変な顔をしないでよ。悪い?」
 些か気分を害しながら幸恵が尋ねると、困惑しているのがありありと分かる顔付きをしていた清実が慌てて手を振る。


「良いとか悪いとかそういう事じゃなくて……。幸恵、入社した年から言ってたじゃない。『義理チョコなんて馬鹿らしいし、女は私一人だけだから負担が大きいし、媚びへつらう感じがして嫌だ』って。だから義理チョコなんて配って無かったと思うけど、それを配るのよね。どういう心境の変化?」
「どういうって……。それはまあ、あまり突っぱねるのもどうかと思うし、お金をケチってると思われるのも嫌だし、物は試しで配ってみるのも有りかな、と……」
 言い訳がましく幸恵がそんな事を言うと、清実は何度か目を瞬かせてからしみじみと語った。


「……こう言っちゃなんだけど、幸恵、最近随分丸くなったわね。びっくりよ。うちの笹木さんは相変わらず『義理チョコなんてくだらない風習、やりたい人だけやれば?』って超然としてるけど、あそこまでいかなくても良いと思うわよ? うん、良い傾向じゃない」
「もう、人を馬鹿にして」
「してないわよ。誉めてるのに」
 拗ねた様に僅かに顔を背けて見せると清実が苦笑いしながら宥めたが、ここで幸恵は夏の出来事を唐突に思い出した。
「でも……、笹木さんと言えば、あの人が会長夫人って判明した後、総務部内ではどうだったの? 以前食堂で顔を合わせた時、大丈夫って言ってたけど、秋の人事や出張とかが重なってそこの所きちんと聞いて無かったし。『君島綾乃が君島代議士の娘で、コネ入社だろう』って吹き込んだのは私だったから、そのせいで清実に肩身が狭い思いをさせたんじゃないかって気になってたのよ」
 如何にも申し訳なさそうに幸恵がそんな事を言い出した為、清実は慌てて否定してきた。


「何言ってるのよ! 幸恵だってあの後暫く『初恋の女性そっくりの姪だから社長のコネで入った』って陰口叩かれてたじゃない。私の方は本当に大丈夫だったから。確かに職場で暫く気まずい思いはしたけど、本人はあの通り能天気だし、笹木さんは仕事に些末な事を持ち込む人じゃないし助かったわ」
「それを聞いて安心したわ。仕事にかまけてついつい確認するのを忘れてて」
 一安心して歩き出しながら話を続けた幸恵だったが、続く清実の台詞で再び足を止めた。
「部署も違うしね。それに幸恵は主任になってバリバリ仕事してるし」
「何それ?」
 僅かに顔を顰めた幸恵に、清実が幾分困った様に弁解する。


「嫌味で言ってるんじゃないわよ? まあ、ちょっと僻んで妬んでるけどね。最近思うのよ。惰性的に仕事をしててこの年になって、今まで何やってたんだろうなって。それと引き替え幸恵は着実に実績を上げてるから、羨ましくてちょっと近付きにくいかなって」
「……私、そんなに取っ付きにくい?」
「それはこっちが勝手に思ってるだけだから。別に嫌ってるわけじゃないし。ねえ、久しぶりに今日は一緒に食べて帰らない?」
「いいわね。そうしましょう」
 一瞬傷付いた表情になったものの、すぐに気を取り直して笑顔になった幸恵は、清実と並んで歩きながら駅ビルレストラン街の店の選定を始めた。そして和風創作料理の店に入り、テーブル席に落ち着いた所で、清実が顔付きを改めて話し出す。


「実は……、ちょっと幸恵に確認したい事があったのよ。こういう事、本人の耳に入れて良いかどうか迷ったんだけど……」
「何?」
「幸恵、あなた君島さんのお兄さんと付き合ってるの?」
 控え目にお伺いを立ててきた清実に、幸恵の頬が僅かに引き攣る。
「……どうしてそんな事を聞くの?」
「その……、色々噂になってるから」
「ああ、エントランスホールの一件ね」
 綾乃に声高に叫ばれた一件を思い出した幸恵は、やさぐれた様子でテーブルに肘を付いて溜め息を吐いたが、清実は軽く首を振った。


「そうじゃなくて……、やっぱり知らないんだ……」
「だから何を?」
 顔にはっきりとした不審の色を浮かべながら幸恵が追及すると、清美は微妙に視線を逸らしながら星光文具の一部で今現在執り行われている、とあるイベントについての詳細を語って聞かせたのだった。


 翌、二月十四日は、朝から星光文具内の空気が心なしか赤やピンクを帯びている様に、出社した幸恵には感じられた。
「おはようございます、係長」
「おはよう、荒川。お? その紙袋、まさかチョコか!」
「ええ、ギ・リ・チョ・コ、ですけどねっ!!」
 いつも通り挨拶をした幸恵だが、相手の弘樹は幸恵が手に提げてきた紙袋を目ざとく見付けて食い付いた。そして義理チョコである事を幸恵は強調したが、それには構わず腕を組んで感慨深く頷いて見せる。


「そうかそうか。義理チョコとは言え、これまで『バレンタイン? 仕事に何か関係あるんですか?』と言ってたお前が、職場で配る様になるとは何て感慨深い……。君島さんの愛のおかげだな」
「誰の何のおかげですってぇぇっ!?」
「うわっ! おい、何をする!?」
「それはこっちの台詞よっ!!」
 怒声を放ちながら素早く弘樹の机に歩み寄り、幸恵は持参した紙袋を彼の頭上で勢い良く逆さにした。すると中に入れてあった色とりどりの個包装のチョコが、見事に弘樹に降りかかる。そして空になった紙袋を弘樹の机に置きながら、幸恵は盛大に非難の声を上げた。


「聞いたわよ? 私があいつといつ結婚するかどうか、社内で賭けがされてるんですって!? 当事者に内緒で、職場で何やってんですか!!」
 その糾弾に、弘樹は自分の周囲に散らばったチョコをまめまめしく拾って紙袋に放り込みながら、悪びれなく応じる。
「あ~、耳に入ったか~。おぅ、発案者が俺で、胴元は公子さんだ」
 その事実を知った幸恵は、今度こそ頭痛を覚えた。
「笹木さんが噛んでるんですか……。随分大事になってる気がするんですが、私の気のせいですか?」
「気のせい気のせい。あ、因みに俺は、お前と君島さんが結婚しない方に十万賭けたがな」
「……は?」
 思わず口を半開きにして間抜けな顔を晒してしまった幸恵に、弘樹はしたり顔でその理由を説明する。


「だってな~、お前ひねくれてるから周りで『君島さんと結婚しろ』ってやいのやいのと言ったら、『あいつと結婚なんかしないわよ!』ってムキになって喚いて終わりだろ?」
「…………」
 反論できなかった幸恵は無言になったが、その反応に気を良くしたらしい弘樹は、ふんぞり返りながら言い聞かせてきた。
「だから敢えて大損覚悟で、わざと反対に賭けたんだ。どうだ。部下の結婚を温かい目で見守る、この上司の大きな愛を感じろ。感動して涙しても構わないぞ?」
「誰が感動するか、このボケがぁぁっ!!」
 激怒した幸恵が弘樹のネクタイを掴んで首を締め上げようとした所で、背後からのんびりとした声がかけられた。


「朝から随分賑やかだね。おはよう、遠藤君、荒川君」
 その聞き覚えの有り過ぎる声に、幸恵は勿論弘樹も居住まいを正し、真面目な顔で一礼する。
「おはようございます、部長」
「おはようございます。お騒がせして申し訳ありません」
 しかし部長である谷垣はさほど気にした様子も見せず、弘樹の机に転がっていたチョコの一つを取り上げて断りを入れてきた。
「元気が良くて結構じゃないか。これはバレンタインのチョコかい? 一つ頂いて行くよ?」
「はい、宜しければお持ち下さい」
「じゃあ遠慮無く」
 そうしていつも通り温厚な笑顔を浮かべながら自席に向かった谷垣だったが、数歩歩いた所で唐突に足を止め、幸恵を振り返った。


「ああ、そうだ。荒川君」
「はい、何でしょうか?」
「私は君が一年半後に結婚するのに賭けたんだ」
「……はい?」
「披露宴のスピーチは任せてくれたまえ。それじゃあごちそうさま」
「…………」
 たった今、普段はすこぶる真面目な上司から何か変な事を聞いたと、幸恵が上手く働いていない脳をフル回転させているうちに、谷垣はにこやかに微笑んで再び自席に向かって歩き出した。そして呆然としている幸恵の横でチョコを全て拾い終えた弘樹が、周囲の人間に向かって声を張り上げる。


「と言うわけで、荒川からの義理チョコだ。食べたい奴は持って行ってくれ」
「ほ~い。じゃあ遠慮なく~。荒川、サンキュ!」
「あ、荒川、俺は半年後に賭けたから。気合い入れて頑張れよ?」
「俺は二年後なんだよな。三十路に入って焦って結婚パターンで」
「いや、俺はギリギリ二十代のうちに滑り込むと見てるんだが」
(上から下までどいつもこいつもっ……。この会社、本当に大丈夫なの!?)
 チョコを取りつつ好き勝手な事を言い合っている同僚達にキレそうになりながらも、幸恵は最近とみに増強された感のある忍耐力を遺憾なく発揮し、仕事前に怒鳴り散らす事だけは回避したのだった。
 そうして怒りを仕事に向ける事で何とか昇華した幸恵だったが、残業に突入してから職場に諸悪の根源とも言える人物の訪問を受けた。


「こんばんは、幸恵さん」
 右手に鞄と謎の紙袋。左手に大ぶりな真紅のバラの花束を手にひょっこり姿を現した和臣は、いつも通り爽やかに幸恵に挨拶をしてきた。当然の事ながら何人か残って残業していた同僚達の、不躾な視線に派手な溜め息を吐いてから、幸恵は彼に向かって吠える。
「だから……、どうしてあんたは、残業中にひょっこり現れるのよ!?」
「遠藤さんから残業だって聞いたから、また警備員の詰め所に話を通しておいて貰ったんだ」
 さらっと事情を説明されて反射的に弘樹の机を振り向くと、無言のまま(ああ、俺っていい仕事をした)とドヤ顔になっている上司の姿を目の当たりにし、幸恵は(このバカボンがぁぁ~っ!)と心の中で盛大に悪態を吐いた。そんな彼女の内心を知ってか知らずか、和臣が手にしていた花束を幸恵に向かって差し出す。


「幸恵さん、はい、どうぞ」
「はぁ……。えっと、この花束は何? 今日は私の誕生日でも何でも無いけど?」
「バレンタインだし、幸恵さんに贈ろうと思って」
「は?」
 反射的に受け取ってしまってから要領を得ない顔付きで問いかけた幸恵に、和臣は淡々と理由を説明した。
「日本だと女性から男性にチョコを渡すのが一般的だけど、欧米では男女関係なく、チョコ限定でもなく、親しい人や恋人に贈り物をする日なんだ」
「……ああ、そういう事」
 和臣の物言いには微妙に『恋愛関係を強調していませんよ』『好意の延長ですよ』と弁解している空気を含んでいる様に感じた幸恵は、ここで「別に付き合っているわけじゃないんだけら、貰う筋合いなんかないわよ!」などと突っぱねようものなら、この場に残って仕事をしている男性陣から「お前、そこまで言うのは酷くないか!?」と非難を受けそうな印象を受けた為、曖昧に答えて大人しく腕の中の花束を見下ろした。と、ここで和臣がとんでもない事を言いだす。


「その花束、せっかくだから、幸恵さんの年の数だけバラを束ねて貰ったから」
「は?」
「え? マジか?」
「随分多いなと思ったんだよな」
「荒川って、今何歳だったっけ?」
 周囲が興味津々に席から立ち上がり、自分が抱えている花束のバラの本数を目線で数え始める気配を察した幸恵は、こめかみに青筋を浮かべて和臣に向かって凄んだ。


「……ここまで喧嘩売りに来たわけ?」
「あ、心配しないで良いよ? 女性は皆、永遠に二十五歳だから、二十五本だけだし」
 にこやかにそんな事を断言された幸恵は、とうとうブチ切れて花束を振り上げ、和臣の顔の横を殴りつける様に振り下ろした。
「そんな中途半端な気遣い、要るかーっ!!」
 当然和臣は空いていた左腕で自分の顔を庇った為、花束がバサッとへこんだり擦れたりする音がしただけで、結構な花弁をまき散らしただけで彼に全く被害は及ばなかった。そして「あははっ!」と笑いながら素早く幸恵の横をすり抜け、彼女の机に持参した紙袋を乗せると、長居は無用とばかりにあっさり退散する。
「怒らせたみたいだから、失礼するよ。これ差し入れ。残業頑張って。帰り道、気をつけてね」
 言いたい事だけ並べ立てて廊下に消えてしまった和臣を、その場全員が呆気に取られて見送ったが、いち早く立ち直ったのは弘樹だった。


「荒川……、お前、仕事帰りにプレゼント持参で、わざわざ訪ねて来てくれたものを……」
「余計なお世話です!」
 幸恵は盛大に噛みついたが、他の面々も口々に言い出す。
「だけどさぁ、立派なもんだよな~、この花束。一本幾らだ?」
「お! これ《鐘福》の折り詰めじゃないか!?」
「え? あの高級料亭の!? 確か都内のどこかのデパートに、一店だけ出店出してたよな」
「じゃあそこのか? うわ、一個何千円だよ。荒川、食わないんだったら俺にくれ!」
「いや、俺が味わって食べてやるから!」
「残業中でしょう!? 自分の仕事しなさいよっ!」
 相変わらず吠えている幸恵を眺め、ここで弘樹がわざとらしくしみじみと言い出した。


「君島さん……、何かすっかり貢君だよな。バレンタインにチョコすら貰えないなんて不憫過ぎる。あんないい人なのに貰い泣きしそうだ……」
「あっ、あのですねぇっ!」
「ん? どうした、荒川」
「…………っ!」
 ムキになって言い返そうとした幸恵だったが、途端に弘樹を含む周囲の男達からニヤニヤと含み笑いの顔を向けられて言葉に詰まり、次いで照れを誤魔化す様に僅かに怒っている様な口調で叫びつつ、机に置いた花束と交換する様に自分の鞄を引っ掴んで廊下に向かって駆け出した。


「ちょっと休憩に行って来ます!」
「そのまま帰っても良いぞ~」
 そんな弘樹の声と同僚達の爆笑の響きを背に受けながら、「うもぅ! どうして私が追いかけなくちゃいけないのよ!」などと盛大に文句を言いつつ幸恵はエレベーターで一階まで下り、裏口の詰所の前を通り抜けて最寄駅までの経路を走った。そして人波の中に目指す人物を発見した幸恵は、これ以上走るのはごめんだとばかりに叫ぶ。


「ちょっと待って!」
 しかしその声は相手に届かなかったばかりか、関係無い周りの人間が何人も足を止めて幸恵を凝視してきた為、幸恵は自分の失敗を悟った。そして無意識に解決案を叫ぶ。
「和臣、ちょっと待って!」
 そう叫んでから、(あれ? そう言えば人前であいつの事を名前で呼んだ事あったかしら?)などとワンテンポ遅れた事を考えながら、立ち止って乱れた息を整えていると、呼ばれた当人にはしっかり伝わっていたらしく、いつの間にか幸恵の目の前に立って驚いた顔つきで見下ろしてきた。


「……どうかしたの? 俺、何か忘れ物でもしたかな」
「どうしたもこうしたも……。あんたが自分の話だけして、さっさと帰っちゃうからでしょうが!?」
「幸恵さんの方も、何か俺に用事があった?」
 首を傾げながら本気で思い当る事が無い顔付きになった和臣に、幸恵はイラッとしながら自分の鞄を開けて中に手を突っ込み、綺麗に包装された平べったい箱を取り出す。
「あったわよ。ええ、あるのよ、残念ながらね! はい、持ってって」
 そうしてつっけんどんに差し出された物を反射的に受け取った和臣は、しげしげとそれを眺めてから幸恵に視線を移し、更にその行為を何回か繰り返してからそれでも疑わしげに確認を入れた。


「ひょっとして……、チョコレート?」
「そうよ。何か文句でもあるの?」
 傍から見たら高飛車過ぎる幸恵の態度だったが、そこでようやく和臣は珍しく困惑を露わにした表情から一転、素で嬉しそうな顔つきになる。
「いや、まさか貰えるとは思って無かったから……。ありがとう、凄く嬉しいよ」
「どういたしまして」
 真正面から凝視するには些か眩しすぎる笑顔を目の当たりにした幸恵が、軽く横を向きながら礼の言葉に応じると、和臣は素早く足を踏み出して距離を詰め、彼女の耳元で囁く。
「これは幸恵さんだと思って、家に帰ったらじっくり味わわせて貰うよ?」
 そう告げられた直後に、幸恵は右耳に妙に生温かい感触を覚えた。次の瞬間耳朶を軽く舐められたのだと自覚した幸恵は、顔を真っ赤にして和臣を力一杯突き飛ばす。


「うひゃあっ! ……たっ、たかがチョコに何言ってるのよ! って言うか、人目のある往来のど真ん中で何するわけ!!」
 しかし和臣は一・二歩後方によろめいただけで、余裕の笑みで幸恵から貰った箱を丁重に自分の鞄にしまいつつ、にこやかに別れの挨拶を口にした。
「じゃあ帰り道、気をつけてね?」
 そうして相変わらず颯爽と立ち去って行く和臣の背中に、右耳を押さえたままの幸恵の絶叫が響き渡る。
「にっ、二度と来るなーーっ!!」
 歩道を行き交う人々が「何事?」と視線を向ける中、気力の殆どを使い果たしながら未だ仕事が残っている事を想いだした幸恵は、思わず落としていた鞄を拾って溜め息を吐いて職場へと戻って行った。



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