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アビシニアンと狡猾狐

篠原皐月

第6話 犬好き猫好き

 メールでは迎えに来てもらう時刻を十一時と約束していたものの、(早目に下りて待ち構えていてやるわ)と闘争心を漲らせながら十五分前には荷物を持って一階のロビーに下りた幸恵は、ソファーに管理人と向かい合って座り、和やかに談笑している和臣の姿を認めて、盛大に顔を引き攣らせた。そして思わず階段を下り切った所で足を止めたが、気配を察した和臣が幸恵を認めて笑いかける。


「幸恵、迎えに来たぞ」
「あのね、どうして私が」
「いやぁ、本当に美男美女のご兄妹だねぇ。しかも都心からここまでわざわざ迎えに来てくれるなんて、優しいお兄さんじゃないか」
 いきなり呼び捨てにされた事に対して抗議の声を上げようとした幸恵だったが、管理人が心底感心した風情で口を挟んできたのに加え、休日である為外出しようとする者などがチラホラと周囲にいた為、変な詮索などされないように口を噤んだ。


(一応、勝手に恋人とか婚約者とか名乗ったらまずいと、判断する位の頭はあったのね。そこまで分からない馬鹿なら、問答無用で殴り倒すところだけど。それにしても兄妹って……)
 多少イラッとしながらも黙っているのはおかしい為、幸恵は和臣だけに分かる程度に皮肉を込めた口調で礼を述べた。
「……そうですね。いつも優しくしてくれて、友達に羨ましがられているんです。ありがとう、お・に・い・さ・ん」
 しっかり嫌味は伝わったらしく、和臣は噴き出しそうになりながら笑顔で手を伸ばしてきた。


「いやいや、これ位当然だ。荷物は纏めてあるだろう? 車で来てるから運んでやる」
「悪いわね。じゃあこれをお願い」
(まさか、本当に来るとは思わなかったわよ)
 もう遠慮も何もなく、スーツケースとジグソーパズルのパネルが入った平たいダンボール箱を和臣に手渡すと、立ち上がった管理人から不思議そうに声がかけられた。
「そう言えば何日か前、荒川さんにその箱が届いてたね。わざわざ出張先に何が届いたのかと思ってたけど、中身は何なんだい?」
「これは」
「パズルの完成品を収めるパネルケースですよ。幸恵の力作をご覧になりますか?」
「あ、ちょっと! 勝手に何するのよ!」
 幸恵が慌てて止めようとしたが、和臣は愛想を振り撒きつつ手早く十字に縛っていたビニール紐を解き、蓋を開けて管理人に中身を見せた。するとその場に感嘆の声が漏れる。


「ほお? こりゃあ同じ様なピースばかりで難しいだろう? それに出張中にこれを完成させたんだよね?」
「はぁ、まあ……」
「流石に本社勤めの人は違うねぇ……。仕事をしながら、夜はしっかりこういう物を作る余裕が有るとは。いや、感心した」
「いえ、そんなに大した事では……」
 腕を組んでしみじみと感想を述べる相手に、どう言って良いか分からずに幸恵が困っていると、その間に和臣は手早く元通りに蓋をして紐を結んで固定し、爽やかに別れの挨拶を口にした。


「それでは失礼致します。短い間ですが、幸恵が色々お世話になりました」
「いやいや、お世話と言う程のお世話はしてないから。お疲れ様。気を付けて帰るんだよ?」
「ありがとうございます。お世話になりました」
 幸恵も慌て気味に礼を述べ、頭を下げてから寮を後にしたが、隣接する駐車場まで互いに無言だった。幸恵は勝手に兄を名乗られた事が些か面白くなく、和臣は終始自分のペースだった事で彼女が気分を害していたであろう事は百も承知であった為、変に刺激しない為苦笑しながら様子を見ていた為である。
 そし和臣の愛車のトランクに幸恵の荷物を詰め、研究所の敷地を出て走り出した所で、幸恵が小さく溜め息を吐いてから呆れ気味に呟いた。


「……全く、相も変わらずヘラヘラと。管理人さんにまで愛想を振り撒いて」
 軽く運転席を睨み付けた幸恵だったが、和臣は前を向いたまま微笑しただけだった。
「不必要なまでに、愛想を振り撒いたつもりは無いんだけどな。一応幸恵さんの承諾無しに恋人と名乗ったらまずいと思って、兄妹と名乗ったし」
「お気遣い、どうもありがとうございます」
 全く感謝しているとは思えない棒読み調子の言葉に、和臣は思わず苦笑した。そこで再び黙り込んでから、幸恵がある事に気付く。


「そういえば……、自分では良く分からないけど、私達の外見って似てるの? 私、兄さんと並んで歩いてても、兄妹って言われた事は皆無だけど、管理人さんはあなたと私が兄妹って言われても、自然に納得してたし」
 先程感じた素朴な疑問を口にすると、和臣は些か自信なさげに応じた。
「正敏さんの名前を名乗ったのが理由の第一だとは思うし、そっくりって感じでは無いけど、雰囲気は似てるんじゃないかな? 幸恵さんの顔立ちは父方系統って言われてない? 俺の母親と顔立ちが似てるし」
「確かにそうみたいね」
 これまでにも親戚で集まった時などに言われていた言葉を思い出し、幸恵が素直に頷くと、和臣が話を続けた。


「俺もどちらかと言うと母親似なんだ。だから俺達は二人とも、荒川家系統の顔立ちなんだな。因みに兄貴は父親似、綾乃は父方の祖母似で、初対面の人間の前で三人並ぶと、誰も兄妹なんて思ってくれなくてね」
「ふぅん?」
 何やら思い出したらしく、突然クスクスと笑い出してしまった和臣を幸恵は不思議そうに眺めやったが、以前に聞いた話の内容が引っかかった。


(あら? そうなると、以前のマザコン云々って話は……)
 そして少しの間真顔で考え込んでいた幸恵は、ある結論に辿り着いて納得した様に頷いた。
「……ああ、なるほど。分かったわ」
「何が分かったの?」
 その頃には笑いを収めて運転に集中していた和臣だったが、信号で停車したのを幸い、幸恵の方に顔を向けて問いかけた。すると幸恵が真顔で推論を述べる。


「ほら、実家で私にプロポーズとも言えない酔っ払いの戯言をほざいた時の話なんだけど、覚えているでしょうね?」
「……一応、一通りは」
 流石にやらかした自覚がありありの和臣が神妙に答えると、幸恵が幾分きつい口調で確認を入れてくる。
「あの時、自分がマザコンだから、母親に似てる私だったら好きになれるとかなんとか言ってたわよね?」
「いや、それはちょっと口が滑ったと言うか何と言うか」
「ゴチャゴチャ言わないで、言ったか言わなかったかだけ答える!」
「……言いました」
 慌ててこの際誤解も解いておこうと弁解しかけた和臣だったが、幸恵に一喝されて項垂れつつ肯定した。すると幸恵は、今度は怪訝そうに尋ねてくる。


「あの後、あなたの妹に聞いたら、あなたより寧ろ上のお兄さんの方がマザコンだって言ってたのよ。そうなの?」
「確かにそうだな……」
「だから、あんたは一見マザコンの、隠れナルシストなのよね」
「……は?」
 いきなりの断定口調で幸恵が告げた内容に、和臣は本気で固まった。そのまま呆けていると、僅かに顔を顰めた幸恵から催促される。


「ほら、信号が青になったわよ? 後続に迷惑だわ。早く発進させて」
「あ、ああ。分かった」
 幸恵の言う事は尤もだった為、素直に発進させた和臣だったが、車道の流れに乗っても幸恵が窓の外の景色を眺めながら黙っているので、控え目に声をかけた。


「その……、幸恵さん?」
「何?」
「さっきの話だけど」
「さっきの話って?」
 幸恵の中では終わってしまった話らしく、キョトンと首を傾げて尋ね返してきたが、和臣は辛抱強く言葉を重ねた。


「だから、さっきの『一見マザコンで、隠れナルシスト』って何なのかな?」
 その問い掛けに、あっさりと言い返す幸恵。
「ああ、それ? だって母親に似た顔が好きって事は、母親に似た自分の顔が好きって事でしょう? 立派なナルシストじゃない」
「……そうきたか」
 ハンドルを握り締めたまま深い溜め息を吐いた和臣に、幸恵が追い討ちをかける。
「他人の趣味にケチを付けようとは思わないから、勝手にやって頂戴。だけど私を巻き込まないで。今日のお礼に鏡を贈るわ」
 素っ気なく片手を振りつつ、話を終わらせようとした幸恵だったが、流石に和臣が抵抗した。


「いや、俺はナルシストじゃないし、鏡も要らない」
「別に隠し立てしなくても良いのに」
「隠してないし誤解だから! 俺はちゃんと幸恵さんの事が好きだし」
「いつから?」
「……え?」
 またしても唐突な幸恵からの直球に、和臣は固まった。まさか興信所を使って、こっそり身辺を調べているうちに好きになりました、などとストーカー紛いの事など間違っても口に出来ない和臣は、固まったまま冷や汗を流したが、車内に冷え冷えとした幸恵の声が響く。


「二十年以上顔を合わせて無かったのに、初対面の時に運命の出逢いをしたとか寝言ほざいたら、運転中でも殴るからそのつもりで」
 本気以外の何物でもない声音に、和臣は肝を冷やしつつ何とか無難な言葉を返した。
「……遠藤さんに呼び出された、例の懇親会で再会してから?」
「何、そのいい加減な言い方。本当にわけが分からないわね、あんたって」
「…………」
 色々言い返したい事は多々あったものの、運転中であるためあまり他の事に意識を向ける事もできず、和臣は後から仕切り直しする事にして取り敢えず運転に集中する事にした。


 そして途中に立ち寄ったレストランで軽く食事を済ませた二人は、商業地と住宅地の境界に位置する様な街並みのコイン駐車場に車を止め、目的地へと向かって歩き出した。周囲を見やりながら訝しげに和臣の後ろに付いて歩いていた幸恵だったが、和臣がスマホでのナビで場所を確認し、「着いたよ」と幸恵を振り返った時、その疑惑が最高潮に達する。


「……ここ? 周りの家よりは大きめだけど、普通の民家にしか見えないんだけど? それらしい看板も出ていないし」
「自宅をカフェとして開放している所だから、あまり派手派手しい宣伝はしない方針かもね。その分、結構穴場だよ? さあ、入ろうか」
 幸恵の疑わしげな視線をものともせず、和臣は機嫌良くインターフォンのボタンを押した。


「いらっしゃいませ。どちら様でしょうか」
「二名で予約している君島ですが」
「お待ちしておりました。少々お待ち下さい」
 そんなやり取りをしてから玄関のドアが開けられ、幸恵達の親世代だと思われる、快活そうな女性が姿を現した。
「どうぞお入り下さい。奥へどうぞ」
「失礼します」
 促されて、靴を脱いで勧められるままスリッパを履き、廊下を奥へと進むと、和臣が声を潜めて囁いてくる。
「ああ、言い忘れてた。貸切じゃなくて、部屋には俺達の他にもお客が居ると思うけど」
「この造りなら、お客毎に部屋が割り振れる事位分かってるわ。気にしないわよ」
「それなら良かった。俺としては二人きりの方が嬉しいんだけど」
 にこやかに告げる和臣を、幸恵が思わず冷たい目で見やる。
「……二人きりにならなくて却って良かったわ」
「酷いな」
 苦笑する和臣を意識的に無視し、幸恵は(さあ、どんな所かしら? しょうもない所に引きずり込んだなら、絶対文句を言ってやるから)と、期待半分苛立ち半分でリビングと思われる部屋に足を踏み入れたが、そこは良い意味で幸恵の予想を裏切った。


「うわぁ……、皆可愛い……」
 カーペット敷きの部屋の中にはパッと見ても六匹の小型犬が存在しており、積み上がったクッションによじ登ろうとして転がり落ちているもの、犬用のオモチャを一生懸命足と顔で構っているもの、かくれんぼでもしているつもりなのか、ソファーの陰からチラチラと人間達の方を窺っているものなど、それぞれリラックスして過ごしていた。それを認めた途端、幸恵が目を輝かせてカーペットに座り込んでしまった為、和臣は苦笑しながら相席する事になるカップルに向けて軽く会釈して挨拶をする。相手も幸恵の様子でその心境は分かるのか、気にする素振りを見せずに笑って会釈を返した。
 そして先程案内した女性が、呆けている幸恵に微笑ましい表情を向けてから、話になりそうな和臣に向かって一通りシステムについて説明し、和臣は一応幸恵に声をかけてみる。


「幸恵さん、ソフトドリンクは飲み放題だけど、何を飲む?」
「トイプードルにチワワ、シーズー、ダックスフントまで居る! どうしよう、皆触りたい……」
 和臣の言葉など耳に入っていないらしく、うずうずしながら犬達を凝視している幸恵を見た和臣は、苦笑して取り敢えず注文した。
「すみません、珈琲とホットレモンティーをお願いします」
「畏まりました。どうぞごゆっくり」
 そうして小さく笑いながら女性が出て行くと、和臣は幸恵に体を寄せて囁いた。


「幸恵さん、勿論触ったり、抱っこしても良いよ? 全て予防接種済みだし、手を洗う場所もあるし」
「本当に良いのよね? じゃ、じゃあ、あの子をちょっと抱かせて貰おうかな……」
 そう言って先程から気になっていたらしいシーズーに狙いを定めた幸恵は、1メートル位まで距離を詰めて手招きしてみた。


「おいで?」
 しかし慎重な性格の犬なのか、逃げはしないもののお座りの状態で小さく首を傾げ、幸恵を観察しているのか大きな目で見上げてくる。そのままなかなか動きが無い為、幸恵は小さく溜め息を吐いて俯いた。


「う~ん、いきなり抱き上げるとかは、やっぱり無理みたいね。犬様のおやつとか貰って、気を引かないと駄目かしら?」
「そんな事無いだろ」
「え?」
 気落ちしかけた幸恵だったが、笑いを堪えている感じの和臣の声と共に、幸恵の視界に犬の足が入った。慌ててほんの少し顔を上げると、キョトンとしたシーズーの顔と目があった。
「嬉しい! すぐ近くまで、自分から来てくれたわよ、ほら!」
「うん、良かったね」
 嬉々として自慢する様にシーズーを指差した幸恵に、和臣は満足そうに頷いた。そして幸恵はシーズーに向き直り、慎重にその子を抱き上げた。


「……よっ、と。大人しい子ね、この子。可愛いわ~」
 自分の腕の中に大人しく収まっている白い犬の頭を、幸恵が嬉しそうに優しく撫でていると、和臣がさり気なくデジカメを取り出した。
「一緒に写真、撮ってあげようか?」
 その申し出に、幸恵が目を輝かせる。
「本当? 良いの?」
「良いらしいよ? ただし犬を驚かせるから、フラッシュは使えないらしいね。ほら」
 壁に貼り出してある説明書きを示された幸恵は、納得して頷いた。


「なるほど。それもそうね。でもフラッシュを使わなくても、大丈夫でしょう?」
「ああ、任せて」
 それからは犬を替えながらの撮影会となり、一通り撮り終えたところで和臣が頼んでいた紅茶を勧める。
 興奮気味で喉が乾いていた幸恵はそれを嬉しそうに飲み干し、更に今度はチワワを膝に乗せて、満足そうにその体を撫で始めた。


「最高~、癒されるわぁ。どの子も可愛い……」
 先程から満面の笑顔である幸恵に、和臣は独り言の様に呟いた。
「本当に犬が好きなんだね」
 すると幸恵がチワワの頭から背中を撫でながら、それに応える。


「小さい頃から大好きで、実家で柴犬を飼ってたのよ。……大学生の時に死んじゃったけど」
「そう」
(犬の事までは報告書に無かったしな。でも急に話題を変えたりしたら、彼女の事だから「変に気を遣わないで」とか「余計なお世話」とか言って怒られそうだし、ここは一つ……)
 なんとなく沈んだ表情で黙り込んでしまった幸恵の気分を上向かせようと、和臣は些かわざとらしく、明るめの声で問いを発した。


「幸恵さんに可愛がって貰ってたなんて羨ましいな。因みに何て名前だったの?」
「名前……」
 名前くらいサラッと教えてくれるかと思いきや、何故か幸恵は和臣から微妙に視線を逸らしながら、素っ気なく答えた。


「名前なんて、どうだって良いでしょ?」
(何だ? この反応。何か外したとも思えないんだが)
 不思議に思ったものの、機嫌良く過ごしてくれていたのを、ぶち壊しにしたくないと思った和臣は、深く追及するのは思いとどまった。


「じゃあ、その柴犬って、どんな犬だったの?」
「頭が良くて、私の言う事をちゃんと理解して、いつも私の言う通りにしてたわ」
「犬だから、しっかり躾をしてたんだね」
 和臣としては、荒川家の飼い方を誉めたつもりだったのだが、幸恵は犬の性質について言及し始めた。


「きちんと教え込んだって事もあるけど、やっぱり犬は猫とは違うものね」
「どこら辺がどう違うと?」
「だって……、きちんと教え込んだ犬なら呼んだら一目散に駆けて来るけど、猫だと慣れてもそうはいかないんじゃない? 懐いた様に見えても気まぐれで、気が向かない時はいくら主人が呼んでも、プイッとそっぽを向きそうだもの。従順な犬の方が可愛いわよ」
 真顔でそんな事を言い出した幸恵に、和臣は控え目に自分の意見を述べる。
「それはそうかもしれないけど……、俺はどちらかと言うと猫の方が好きかな?」
「どうして?」
「すました顔をしながらも警戒して、距離を取って様子を窺っている相手を、少しずつ自分に慣らしていくのは快感じゃないかな?」
 人懐っこい笑みを浮かべつつそんな事を言った和臣を、幸恵は目を眇めて冷たく見やった。


「……やっぱりあんたは、私のそれとは相容れない価値観の持ち主みたいね」
「そんな露骨に嫌そうな顔をしなくても」
 苦笑しかできない和臣に、幸恵は多少皮肉っぽく問い掛けた。


「それで? 可愛い猫ちゃんを手なづけた後は、それ以上構う気が失せて放置状態?」
 それに和臣が両手を広げ、大仰に訴えてみせる。
「まさか。そんな事をしたら、愛想を尽かすのは猫の方だろう? それこそそっぽを向かれない様に、ご機嫌を取り続けるさ」
「あぁら、大変そうね。……あ、今度はあの子を抱っこしようっと!」
 それきり和臣には見向きもせず、犬を取っ替え引っ替えしながら抱き上げたり撫でたりを繰り返している幸恵を眺めながら、和臣は幾分悔しさが入り交じった声を漏らした。


「本当に、俺は犬以下の扱いだな」
 しかし軽く肩を竦めただけで、しょうがないという感じで微笑する。
「まあ、良いか。あんなに喜んでいるんだし。……出張お疲れ様、幸恵さん」
 その呟きは勿論幸恵の耳には届かなかったが、和臣はその顔に満足そうな笑みを浮かべながら、コーヒーカップを口に運んだのだった。







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