ハリネズミのジレンマ

篠原皐月

第17話 貴子の意趣返し

「十四日の予定?」
「そう。九時には帰っている? もしそうなら、バレンタインのチョコを、その日に宅配便で送ろうかなと思ったんだけど。デートとかなら、その前後の受け取りやすい日にするわよ?」
 何年も前からの恒例行事ではあったが、そろそろ姉からのチョコなど歯牙にもかけなくなるだろうから、止める潮時かもなどと思いながら貴子が話題を振ってみると、予想通り祐司は、如何にも申し訳なさそうに謝ってきた。


「ああ、予定があるんだ。悪い。できればその週末に届く様に、送ってくれるかな」
 それを聞いて、つい笑いが込み上げてきてしまった貴子は、冷やかしモードに突入した。


「構わないわよ。本命チョコプラス、彼女とのデートですものね。お姉ちゃんのチョコなんて、そこら辺にうっちゃって当然よ。あ~あ、若いって良いわよね~」
「あのな」
「綾乃ちゃんと仲良くやってるみたいね、感心感心」
「……もういい」
 ちょっと拗ねた様に短く答えて溜め息を吐いた弟に、貴子はクスクスと笑っていたが、ここで祐司は反撃の材料を思い出し、ここぞとばかりにそれを投げ返してきた。


「そう言えば、姉貴の方こそ、榊さんとはどうなんだ?」
 その途端、貴子の表情が剣呑な物になったが、電話越しに話をしている祐司には、当然その変化は伝わらなかった。


「……いきなり、何を言い出すのよ?」
「実家に連れて行ったんだろう? 結婚の前段階の挨拶に」
「何を寝とぼけた事、言ってんのよっ!!」
 既定事実の如くそんな事を言われた為、貴子は盛大に叱り付けた。すると電話越しに、祐司の非難交じりの呻き声が伝わってくる。


「姉貴……、鼓膜が破れるから、いきなり絶叫しないでくれ」
「あんたがつまらない事をほざくからでしょうがっ!!」
「じゃあ、孝司が言っていた内容は話半分に割り引くとしても、どうして榊さんが、姉貴と一緒に家に出向く事になったんだ?」
「単に、アッシーにするつもりだったのに、孝司を丸め込んで押し掛けたのよ!」
 貴子が苛立たしげに語った内容を聞いて、電話の向こうから溜め息を吐く気配が伝わって来た。


「何となく想像はついていたけど、姉貴らしくないな。榊さん相手だと、調子が狂うとか?」
 その問いかけに、貴子は忌々しげに一応同意する。


「今までに遭遇した事のない、タイプだって事は確かね」
「正直に言わせてもらうと……、俺は榊さんの奮闘に期待したい」
「穴掘って埋めるわよ? 祐司」
 ドスの効いた声で、暗にこれ以上何も言うなと脅しをかけたが、祐司はそんな事は気にせず、しみじみとした口調で語った。


「綾乃も『隆也さんだったら頼りになるし、任せて安心だと思う』って、太鼓判を押していたしな。驚いたよ。孝司から送信された画像を見せたら、昔からの知り合いだったみたいで。思わず『世の中って広い様で狭いって本当だな』と言い合ったんだ」
「……本当に、世の中って狭いわね」
 まさか「あんたのデートを尾行していて、あいつと鉢合わせしたのよ」などと口にできない貴子は、適当に話を合わせた。そこで相手がトーンダウンしたのを幸い、祐司が慎重に話を続ける。


「親父もお袋も、随分気に入ったみたいだし。堅苦しいご挨拶云々じゃなくても、『また何かの折に、榊さんを連れて来ないだろうか』って、嬉しそうに言ってたぞ?」
「あの野郎……、勝手に押し掛けた挙句、お義父さんとお母さんに愛想振り撒いて、何の嫌がらせよ……」
 思わずギリッと歯軋りして呻いた貴子に、祐司は呆れ気味に言い聞かせてきた。


「そこまで嫌そうに言わなくても……。姉貴が素直じゃないのは前々から分かっているけど、俺へのチョコなんかどうでも良いから、榊さんにチョコ位、ちゃんと渡さないと駄目だからな?」
「何なのよ、その上から目線は!? 大体ね、どうしてあいつにチョコなんか渡さなくちゃ」
 また腹を立てたかと思いきや、貴子が急に黙り込んでしまった為、怪訝に思ったらしい祐司が呼びかけてきた。


「姉貴? どうかしたのか?」
 すると、その問いかけに、貴子が嬉々として応える。
「良い事を思い付いちゃった。ありがとう、祐司。これであいつに意趣返しできるわ!」
「ちょっと待て姉貴、何を考えてる!? 榊さんに、変な物を食わせるつもりじゃないだろうな!?」
「大丈夫よ、ちゃんとあいつ宛に、これ以上は無い位の、まともなチョコを送るわ。心配しないで。それじゃあね!」
 いきなり上機嫌になった異父姉の態度に、不吉なものを覚えたらしい祐司が焦った口調で問い質してきたが、貴子はそれに愛想よく応じて強引に通話を終わらせた。そして壁に掛けてあるカレンダーを見ながら、不敵な笑顔を湛えつつひとりごちる。


「さあ、そうと決まれば、準備準備! 気合入れて作るわよ!!」
 そう自分自身に喝を入れて、貴子はさっそくレシピ作成と材料の見積もりを開始した。


 そんなこんなで迎えた二月十四日。世間は華やかな空気一色だったが、常とは大して変わらない人間も、当然の如く存在していた。
(全く……、今日は特に若手がソワソワして、ウザかったな。菓子業界に踊らされて定着したイベントを、そんなにありがたがる精神構造が理解できない。貰ったチョコの数を誇る前に、仕事で実績を上げろ。馬鹿共が)
 最寄駅から、自宅がある高級住宅街への軽い坂道を上りながら、隆也はその日の職場の光景を思い出して、些か疲れ気味に溜め息を吐いた。


 もう何年も前からその手の類の物は「仕事の邪魔だ」と冷たい一瞥付きで受け取り拒否してきた為、一頃と比べると隆也にチョコを渡そうなどと考える猛者はかなり減ってはいるのだが、何故か「榊警視正にビシッと拒絶されないと、バレンタインって気がしません!」などと訳が分からない理屈を捏ねながら、突撃してくる女性職員が毎年飽きずに職場に押し掛け、この時期の捜査二課の隠れた名物となっていた。
 今日も今日とて、そんな義理チョコなのか本命チョコなのか判別不可能な代物を完全拒絶し、「そういう所が良いのよね~」などと囁き合っている連中に背を向け、残業して纏わり付かれない様に早々に定時で上がった隆也は、すっきりしない気分のまま歩き続けた。


(大体、義理チョコなんて、金と時間を無駄にする代物、どこの馬鹿が考え付いたんだ? 流石に庁舎内で堂々とやり取りする空気ではないから、表立ってはいないが、絶対陰でこそこそやり取りしてる筈)
 そこでふと、少し前に見た光景を思い出した。


(そう言えば……、この前行った時、あいつが『職場や収録現場で配る』とか何とか言いながら、阿呆面でかなりの量を作っていたな……)
 そこまで考えて、貴子が自分に「食べる?」とお伺いも立ててこなかった事や、「あげるから」とも言ってなかった事を思い出し、無意識に呟いた。


「……ムカつく女だ」
 無意識に自分が口にした台詞に気付いて、渋面になった隆也だったが、ここで自宅に到着した為、いつもの表情を心がけて門をくぐった。そして前庭を抜けて玄関に到着する短い時間の間に、素早く精神状態を整える。


「ただいま」
 鍵を開けて玄関に入り、奥に向かって軽く声をかけると、ドアを開けて廊下に出て来た香苗が、スリッパをパタパタ言わせながら近寄って来た。


「お帰りなさい、隆也。今日は早かったわね」
「たまにはこんな日もあるさ」
「あなたに届け物があるわよ? お父さんが預かってきたの。リビングにあるから見てね?」
「父さんが預かった?」
 脱いだコートと鞄を母親に預けた隆也は、首を捻りながらリビングに入った。すると、もう食事を済ませていたらしい亮輔が、ソファーに座ったまま声をかけてくる。


「おう、戻ったか隆也。これ、お前宛だろう? 今日、うちの事務所に届いてな」
「父さんの事務所に?」
 自分の隣に置いてあった小ぶりのダンボール箱を取り上げ、自分に向かって差し出してきた父親に、隆也は(どうして俺の物が、親父の事務所に届くんだ?)と訝しく思いながらも、短く礼を言って受け取った。そして届け先名に〔榊総合弁護士事務所所長 榊亮輔様方 榊隆也様〕、送り主名に〔宇田川貴子〕の記載を認めて、疑問が氷解する。


(あの女狐!! 何て事をしやがる!!)
 両手で箱を掴んで、盛大に顔を引き攣らせた隆也だったが、息子のそんな表情など滅多にお目にかかれない両親は、爆笑寸前の表情で話し出した。


「いやぁ、これが届いて、今日事務所で一悶着あってな」
「さっきお父さんに聞いたけど、凄い警戒しちゃったんですってよ? なんでも『わざわざ息子さん宛の荷物をここに、しかも所長に送り付けてくるなんて、おかしくありませんか?』って」
「勘ぐるにも程があるが『取り敢えず息子さん宛と油断させて受け取らせておいて、中を確認しようと開けたら爆発でもしませんか!? 所長、今そんな物騒な件を取り扱っていませんよね!?』とか。考え過ぎだ、あの馬鹿者が」
「本当に。その方、神経質過ぎるわね」
「一人じゃなくて、複数でな。頭でっかちは、これだからいかん。再教育の必要ありだ」
「まあ、大変」
「…………」
 豪快に笑う父親と、心底楽しそうに笑う母親の前で、隆也は辛うじて無言を保った。その反応が不服だったのか、亮輔が多少つまらなさそうに声をかける。


「おい、隆也。何を黙っているんだ。お前宛の荷物なんだし、何か言って然るべきだろうが?」
 そう促されて、隆也はしぶしぶと言った感じで言葉を発した。


「事務所内を騒がせてしまったみたいで、悪かった。それで結局、その騒動はどうなったんだ?」
「うん? どうもこうも、『そんな物騒な物じゃないだろう』と言いながら勢い良くダンボール箱を開けて、中身を取り出して見せたら、皆納得したぞ? それを見て、一人気の弱い者が気絶したがな。騒ぎと言えばそれ位だ。あと『どうしてあの宇田川貴子が、ここに息子さん宛のチョコを送り付けて来るんですか!?』と、何人かに問い詰められたが」
「そうか……」
「ところでその疑問に、俺は明日何と答えれば良いんだ?」
 ダンボール箱の蓋を開け、透明な緩衝剤に包まれたラッピング済の箱を眺めていた時、そんな事を言われた隆也は元通り蓋を閉め、にやにやしている亮輔に、それを押し付けながら冷たく言い放った。


「どうとでも好きなように。俺の知った事じゃ無い。そんな得体の知れない物、食う気もないしな」
 それに亮輔が何か言い返す前に、香苗が会話に割り込んできた。
「食べないの? あの宇田川さんが作ってくれたんでしょ? 美味しいんじゃないの?」
「どうせ既製品だろう。それにあいつが作ったからって、美味いとは限らないだろうし。それよりいい加減、食事にしたい」
「はいはい、我儘な子ね。これじゃあ宇田川さんも大変だわ」
 仏頂面で催促した隆也に苦笑しながら、食事を揃える為香苗はリビングを出て行き、笑いを堪えている亮輔に気が付かないふりをしながら、隆也は母親の後に続いてリビングを出た。


(あの馬鹿女……、親父の職場まで巻き込んで、何をやってるんだ!?)
 完全に腹を立てつつも、取り敢えず食事はきっちり取った隆也だったが、自分で淹れた珈琲片手に部屋に行って貴子に文句を言う為に電話をかけようとして、ふと先程の箱が気になった。


(取り敢えず、中身を確認しないと、ケチの付けようも無いしな)
 そんな事を自分に言い聞かせながら、リビングに入った隆也だったが、そこでは隆也の思考回路が一時停止する光景が繰り広げられていた。


「ほら、香苗、これを食ってみろ」
「ええ。……これも美味しいわね。はい、あなた。あ~ん」
「おう、…………うん、これも美味いな。流石はプロ」
「本当にね」
「……二人で、何をやってるんだ?」
 ソファーに並んで座り、ニコニコとチョコの欠片を相手の口に入れて、食べさせ合っていた両親の姿に、ドアを開けたままの姿勢で隆也は顔を引き攣らせた。そんな息子に、二人は事もなげに事情を説明する。


「だって隆也が、食べないなんて言うんだもの。勿体無いでしょう?」
「だから私達で食べようかと思ったんだが、中に入っていたメッセージカードの説明では、六種類を一つずつ入れてあってな」
「どれも食べたいからちょっとお行儀悪いけど、それぞれ半分ずつ食べたら、相手に食べさせる様にしたのよね」
「いや、全種類美味しかったし、若い頃を思い出して楽しくなったな。香苗、今度久しぶりに、二人きりで温泉にでも行くか?」
「良いわね、そうしましょうか。ああ、隆也。宇田川さんに、今度お礼を言っておいてね?」
(何で俺が、還暦過ぎの両親がイチャイチャしてる場面を、見せつけられる羽目に……)
 怒りでこめかみに青筋を浮かべながら、それでも両親の手前声を荒げるのは堪えた隆也だったが、ここで亮輔が予想外の行動に出た。


「今度と言わず、今彼女に礼を言えば良いだろう? ほら、ここに連絡先の番号が書いてあるし」
「あら、そう言えばそうだったわ。じゃあ早速電話を」
「ちょっと待った!」
 亮輔が持ち上げた外箱に貼られている伝票の送り主欄に、携帯電話の番号がしっかり記入されており、それを指摘された香苗がいそいそと自分の携帯を取り上げたが、すんでの所で隆也が亮輔から箱を奪い取った。それに二人が、不服そうな顔を向ける。


「あら、何するのよ、隆也」
「……俺が電話をかける。ちゃんと礼も言っておくから」
 不承不承口にした隆也だったが、その場しのぎの発言は許さないと言わんばかりに、香苗が念を押してきた。


「本当に?」
「ああ。だから今後一切、これに関しての話題は無しだ。分かったな!?」
「はいはい。可愛げの無い子に育っちゃって……」
「父さん?」
 そこで隆也は父親に向き直ったが、亮輔は呆れた様に小さく息を吐いてから、淡々と応じた。


「分かった。その代わり、きちんと礼は言っておけ」
「……ああ」
 そして油断できない為、箱を手に持ったまま二階の自室に引き上げた隆也は、ドアを閉めるなり箱を放り出し、迷わず貴子の番号に電話をかけ始めた。そして数コールでかけてきた相手が分かっている様に、笑いを堪える声で応答がある。


「ちゃんと届いたわよね? 食べてくれた? それとも犬に食わせたか、外に放り投げた?」
「両親に食われた」
「え?」
 いきなり予想外の回答を告げられて、流石に貴子は面食らった。そんな事にはお構いなしに、隆也が棒読み口調で続ける。


「俺が食わんと言ったら、還暦夫婦が仲良く二人で半分ずつ食べさせ合ってな。相当美味かったらしい。お前に礼を言っておけだと」
 言うだけ言って相手の反応を待った隆也だったが、相手はどうやら携帯を耳から離して爆笑しているらしく、笑い声が微かに伝わってくる。ここで呼びかけても反応などしないと分かりきっている隆也は、辛抱強く相手が笑い止むのを待った。


「そうなんだ。渾身の出来栄えのあれを堪能して貰った上、夫婦円満に寄与できたみたいで、私としても嬉しいわ」
 待つ事数十秒。未だ笑いを堪えきれない風情の貴子が漸く言葉を返してきた為、隆也は仏頂面で問いかけた。


「そもそも、どうして親父の事務所なんかに、あれを送り付けた?」
「さすがに警視庁に送り付ける様な、鋼の心臓は持ち合わせていなくてね~」
「ふざけるなよ?」
 茶化す様に言ってきた貴子に、隆也は低い声で凄んだ。しかし彼女は平然と言ってのける。


「お正月に高木さんの家に押し掛けて、散々好き放題やってくれたじゃない。同じ位困って貰おうかと思ったのよ。だけどあんたの両親なら、自宅に送り付けても平然と『ほら』って、あんたに渡す気がしたのよね。そんなの意趣返しでも、何でもないじゃない。だから意表を衝いて、父親の職場に送り付けたらどうなるのかな~って、試してみたわけ」
「二度とするな!!」
 思わず声を荒げた隆也だったが、まだ恐れ入る気配を見せずに貴子が応じる。


「するなと言われると、やりたくなるのが人情ってもの」
「冤罪でっち上げて、留置所にぶち込むぞ?」
「分かったわよ。これだから冗談の通じない男って嫌ね」
 ブチブチと文句を言いながらも取り敢えず引き下がった貴子に、隆也は思わず安堵の溜め息を吐いた。すると電話越しに彼女が尋ねてくる。


「ところで用件はそれだけ? それなら切るわよ?」
「ちょっと待て。まだ話は終わってない」
「まだ何か、文句があるわけ?」
 うんざりとした口調で問いかけてきた貴子に、隆也は淡々とある要求を口にした。


「同じ物をもう一回作れ」
「え? 同じ物って……」
 咄嗟に何を言われたのか分からなかったらしい貴子が当惑すると、隆也は小さく舌打ちしてから、説明を加えた。


「だから、今度俺が顔を出す時までに、今日送り付けた物と同じ物を、作っておけと言ってるんだ」
 そう隆也が告げると、電話の向こうで一瞬沈黙が漂ってから、貴子の皮肉交じりの声が伝わって来た。


「何? そんなにチョコが食べたいわけ?」
「そんなわけあるか。親が食べているのに、俺だけ食べていないのが癪に触っただけだ」
 如何にも面白く無さそうに隆也が告げると、貴子ははっきりと笑いを堪える声音で了承した。


「分かったわ、じゃあ用意しておくわよ。間違ってもその時に、虫歯が痛くて食べられないなんて、ほざくんじゃないわよ?」
「誰が言うか。じゃあ切るぞ」
 そして最後まで不機嫌そうに通話を終わらせた隆也は、苛立たしげにベッドの上にスマホを投げ捨てた。


「食べられて惜しくなったか……。ま、人間の心理なんて、そんなものよね。そういう事にしておきましょうか」
 そんな隆也からの「ちゃんと食わせろ」コールを終わらせた貴子は、小さく肩を竦めながら携帯をテーブルに置いた。そして苦笑しながらカレンダーを眺め、これからの予定を確認する。


「さてと、次はいつ辺り来るって言ってたっけ? ……大体、作る手間暇も考えろって言うのよね。ろくに料理もしたことない癖に。本当に傍若無人なんだから」
 そんな文句を口にしてはいたが、カレンダーを眺めながら考えを巡らせていた貴子は、いつしか満足そうな笑みをその顔に浮かべていた。





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