ダブル・シャッフル~跳ね馬隊長の入れ替わり事件~
第3章 出仕への道:(1)思わぬ落とし穴
対外的に夫婦となって以降のアルティナとケインの日常は、実際のところはどうあれ、それなりに平穏に過ぎていた。
「はい! 1、2、3、1、2、3、そこでターン、クイック」
急遽近日開催予定の舞踏会に、夫婦で参加する事になったアルティナは、ケインが王宮での勤務を終えて帰宅し、食事を済ませてから、毎夜二人で広間でダンスの練習に勤しんでいたが、ここで予想外の大きな壁にぶち当たった。
「っつ!」
「きゃあっ! すみません、ケイン様!」
その悲鳴に、壁際で手拍子でリズムを取りながら時折指示を出していたユーリアは、すぐに手の動きを止めて口を閉ざした。そして、何度聞いたか分からない二人のやり取りを、黙って見やる。
「これ位、大した事はないから。それより、俺の事はケインと呼んでくれ。一応、対外的には夫婦なんだし」
「は、はい。すみません、ケイン。痛かったですよね? 練習を始めた当初から、何度も踏んでますし」
「これ位、平気だから」
一瞬顔を歪めたものの、すぐに笑顔になったケインを、ユーリアは密かにちょっとだけ見直したが、アルティナは相当気にしていたらしく、神妙な顔つきで申し訳なさそうに言い出す。
「でも……、ただでさえケインは仕事で疲れているのに、練習に付き合わせた挙げ句に、散々足を踏んでしまうなんて……」
「アルティナはこれまでダンスなんかした事は皆無だったから、仕方がないさ。寧ろ上手な方がおかしい。来週の国王陛下御生誕記念の舞踏会までにはまだ少し時間があるから、焦らずに練習しよう」
「はい。お願いします」
笑顔で宥めたケインに、アルティナは殊勝に頷いて再び手を組んだが、内心では激しく自分自身に腹を立てていた。
(くうぅぅっ! 男性パートだったらこれまで散々踊っているから、目を閉じていても踊れるのに! それがなまじ身体に染み付いているせいで、前後左右逆な女性パートを覚え直すのに、こんなに手間取るなんて!!)
そして二人の準備が整ったのを見て、再びユーリアが手拍子をしながら声をかける。
「……1、2、3、1、2」
しかし再度踊り出した二人だったが、幾らもしないうちにアルティナがケインの足に躓いてバランスを崩した。
「きゃあ!」
「っと、大丈夫か?」
しかしケインは慌てず、素早く腕を伸ばしてアルティナの身体を支えた為、無様に転倒する事は避けられた。
「ええ、ごめんなさい」
「疲れて足がもつれてきたか? 怪我をしては拙いし、ちょっと休憩しよう」
「……はい」
そして二人で壁際まで移動し、ケインが引き寄せた椅子に座ったアルティナは、笑顔を保ちながらも内心では屈辱に震えていた。
(なんて事なの? ダンスのステップ如きで躓くなんて。あり得ないでしょうが!?)
アルティナは自分の不甲斐なさに苛つきながらも、隣に座ったケインと笑顔で会話を始めた。それを少し離れた所からユーリアが眺めていると、いつの間にか入室していたクリフが、すぐ隣に立って囁いてくる。
「意外に苦戦しているみたいだね。母さんやマリエルから、アルティナ殿の各種マナーや知識は問題が無いと聞いていたから、夫婦揃っての舞踏会出席には、何の問題も無いと思っていたんだが……」
その感想に、ユーリアは淡々と言葉を返した。
「貴族の子女に必要な知識に関しては、アルティン様が機を見て必要な資料や文献を領地の屋敷に送っていましたし、マナーなども実際に訪問した時に、きちんと教えてチェックしておられましたから」
「なるほど」
「勿論、アルティナ様が日々自主学習に励んでおられたのが、それらがきちんと身に付いていた最大の理由だと思いますが」
ユーリアがそう話を締めくくると、クリフは微笑んで頷いた。
「その通りだな。やはり君は、物事の本質を良く理解している。アルティン殿が信頼して、他の侍女を使っていなかった理由が分かるよ」
「ありがとうございます」
素直に納得して貰ったのが分かり、彼女は内心で安堵した。
(取り敢えずアルティナ様が、どこに出してもおかしくない程度の知識と教養を物にしている理由はごまかせたわよね。だけど本当に、ダンスに関しては誤算だったわ。あと十日足らずで、本当にあれがどうにかなるのかしら?)
本気で不安になりながら考え込んでいると、クリフが話題を変えてくる。
「さっき母から聞いたんだが、兄さんとアルティナ殿が、当面教会で挙式はしないと決めたと言うのは本当なのか?」
「はい。現時点ではアルティナ様に関わる悪い噂が社交界に広がっていますし、興味本位で有象無象が集まってくる可能性があります。実家のグリーバス公爵家からの参列も望めませんし、余計に好奇の視線に晒される事になるからと、ケイン様が仰られて」
難しい顔になりながら説明したユーリアに、クリフも僅かに顔を顰めながら同意した。
「確かにな。ちゃんと教会に婚姻申請書は提出済みで、双方の家に婚姻認定書も届いているんだから、わざわざ騒ぎを起こす事も無いか。貴族階級でも挙式しない、訳ありカップルは偶に存在しているし」
「ケイン様は落ち着いたら、改めてきちんとしたいと言うお心積もりの様ですが」
「いつになる事やら、現時点では見当も付かないな」
そこで思わず互いの顔を見合わせ、笑ってしまった二人だったが、クリフはすぐに真顔になって話を続けた。
「ところでユーリアは、最初アルティン殿に付いてから何年にもなると聞いたが。差し支えなければ、今何歳か教えて貰えるか?」
「……二十一ですが。それが何か?」
微妙に顔つきを険しくしながら答えたユーリアに、若干気圧されながら、クリフは話を続けた。
「その……、君にそろそろ結婚の話とか……」
「ありません」
「それでも恋人とか、婚約者とか……」
「生憎と、そういう方は居ませんし、居たこともありません」
「本当に?」
「私がクリフ様に、嘘を吐かなければいけない理由などありませんが?」
疑わし気に尋ねてきたクリフに、ユーリアは冷たい視線を向けながら言い返す。その反応を見た彼は、慌てて弁解してきた。
「あ、いや、悪い。疑っている訳ではないんだ。ただユーリア位見目が良くて気立てが良いと、あちこちから引く手数多だろうと思って。結婚すればこれまで通り、アルティナ殿に付いていて貰えなくなるかもしれないと思ったものだから、その場合、彼女付きの侍女をどうしようかと思っただけなんだ」
「安心して下さい。これまではアルティン様のお世話で忙しかったですし、当面はアルティナ様が心配で、自分の事は考える余裕なんかありませんから」
そんな変な気を回した結果かと、ユーリアが呆れながらも失礼のない程度に言い返すと、相手が急に真剣な口調になって問いかけてきた。
「それはやはり、アルティン殿が亡くなる時に頼まれたからか? それに未だにアルティナ殿の中に、アルティン殿が留まっているから?」
「はい?」
急に口調が変わった事と、話がずれた様に感じたユーリアが反射的にクリフに顔を向けると、彼が口調以上に真剣な表情で自分を凝視していたのが分かって、怪訝に思いながら肯定の答えを返した。
「はあ……、まあ、そうだと言えば、そうなんじゃないでしょうか」
「そうか。分かった」
それきり黙って再び兄夫婦の方に視線を向けた彼を見て、ユーリアは密かに首を捻った。
(どうしていきなり人の年を聞くのよ、この人。この年で恋人も婚約者もいなくて悪かったわね! アルティナ様の様な波瀾万丈な主に仕えながら、色恋沙汰にのめり込めるならやってみたいわよ!)
半ば八つ当たりしながら、もう十分休憩はできただろうと判断したユーリアは、アルティナ達に声をかけた。
「アルティナ様、ケイン様。そろそろ練習を再開しますか?」
「ああ、頼む」
「お願い、ユーリア」
その声に二人は立ち上がり、揃って部屋の中央に向かう。
「それではいきますよ? はい、1、2、3、1、2……」
そうして再び何事も無かったかのように、ユーリアの手拍子に合わせて二人はゆっくりと踊り出し、それをクリフが無言で見守った。
それから何とかアルティナが基本的なステップを間違えなくなったのを契機に、ケインが足を止めて提案した。
「それじゃあ、今夜はここまでにしようか」
「ええ、ケイン。練習に付き合ってくれてありがとう」
「どういたしまして。筋は良いから、すぐに覚えられるさ」
笑顔で答えるケインを軽く見上げたアルティナは、内心で考え込んだ。
(本当にケインは貴族にしては人当たりは良いし、剣の腕は立つし、部下からの人望は熱いし、年長者からの信頼も勝ち取ってるのよね。女癖の悪さで、残念度が増してるんだけど。私と結婚したからって、そうそう女遊びを止める筈も無いけど、毎晩練習に付き合って、いつ出かける気かしら?)
ケインが聞いたら倒れ伏して泣き出しそうな内容を、アルティナが真剣に考えていると、少し前から手拍子をクリフに任せて外に出ていたユーリアが、ワゴンを押して戻って来た。
「アルティナ様、お疲れ様でした。ケイン様とクリフ様もどうぞ」
「ありがとう、ユーリア。喉が渇いていたの」
「気が利くな。いただくよ」
冷ましておいたお茶をカップに注いで三人に渡してから、ユーリアは少々怪訝な顔で報告した。、
「ケイン様、アルティナ様。ここに戻る途中、ガウス殿に伝言を頼まれたのですが、先程兄のデニスがこの屋敷にやって来た為、ガウス殿が応接室の方に通したそうです」
「デニスが?」
「何の用で?」
思わず声を上げた二人は、次に顔を見合わせながら確認を入れる。
「アルティナが呼んだわけでは無いのか?」
「いいえ。ユーリアの顔でも見に来たのかしら?」
「でも兄とは、二日前に街で顔を合わせたばかりですが……」
首を傾げたユーリアに、兄夫婦が負けず劣らず困惑した顔を向けたのを見て、クリフはカップをソーサーに戻してワゴンに置いてから、穏やかに二人を促した。
「とにかく、お待たせしない様に行ってみましょう」
「そうだな」
そうして手早くお茶を飲み終えた面々は、揃って応接室に向かった。
「はい! 1、2、3、1、2、3、そこでターン、クイック」
急遽近日開催予定の舞踏会に、夫婦で参加する事になったアルティナは、ケインが王宮での勤務を終えて帰宅し、食事を済ませてから、毎夜二人で広間でダンスの練習に勤しんでいたが、ここで予想外の大きな壁にぶち当たった。
「っつ!」
「きゃあっ! すみません、ケイン様!」
その悲鳴に、壁際で手拍子でリズムを取りながら時折指示を出していたユーリアは、すぐに手の動きを止めて口を閉ざした。そして、何度聞いたか分からない二人のやり取りを、黙って見やる。
「これ位、大した事はないから。それより、俺の事はケインと呼んでくれ。一応、対外的には夫婦なんだし」
「は、はい。すみません、ケイン。痛かったですよね? 練習を始めた当初から、何度も踏んでますし」
「これ位、平気だから」
一瞬顔を歪めたものの、すぐに笑顔になったケインを、ユーリアは密かにちょっとだけ見直したが、アルティナは相当気にしていたらしく、神妙な顔つきで申し訳なさそうに言い出す。
「でも……、ただでさえケインは仕事で疲れているのに、練習に付き合わせた挙げ句に、散々足を踏んでしまうなんて……」
「アルティナはこれまでダンスなんかした事は皆無だったから、仕方がないさ。寧ろ上手な方がおかしい。来週の国王陛下御生誕記念の舞踏会までにはまだ少し時間があるから、焦らずに練習しよう」
「はい。お願いします」
笑顔で宥めたケインに、アルティナは殊勝に頷いて再び手を組んだが、内心では激しく自分自身に腹を立てていた。
(くうぅぅっ! 男性パートだったらこれまで散々踊っているから、目を閉じていても踊れるのに! それがなまじ身体に染み付いているせいで、前後左右逆な女性パートを覚え直すのに、こんなに手間取るなんて!!)
そして二人の準備が整ったのを見て、再びユーリアが手拍子をしながら声をかける。
「……1、2、3、1、2」
しかし再度踊り出した二人だったが、幾らもしないうちにアルティナがケインの足に躓いてバランスを崩した。
「きゃあ!」
「っと、大丈夫か?」
しかしケインは慌てず、素早く腕を伸ばしてアルティナの身体を支えた為、無様に転倒する事は避けられた。
「ええ、ごめんなさい」
「疲れて足がもつれてきたか? 怪我をしては拙いし、ちょっと休憩しよう」
「……はい」
そして二人で壁際まで移動し、ケインが引き寄せた椅子に座ったアルティナは、笑顔を保ちながらも内心では屈辱に震えていた。
(なんて事なの? ダンスのステップ如きで躓くなんて。あり得ないでしょうが!?)
アルティナは自分の不甲斐なさに苛つきながらも、隣に座ったケインと笑顔で会話を始めた。それを少し離れた所からユーリアが眺めていると、いつの間にか入室していたクリフが、すぐ隣に立って囁いてくる。
「意外に苦戦しているみたいだね。母さんやマリエルから、アルティナ殿の各種マナーや知識は問題が無いと聞いていたから、夫婦揃っての舞踏会出席には、何の問題も無いと思っていたんだが……」
その感想に、ユーリアは淡々と言葉を返した。
「貴族の子女に必要な知識に関しては、アルティン様が機を見て必要な資料や文献を領地の屋敷に送っていましたし、マナーなども実際に訪問した時に、きちんと教えてチェックしておられましたから」
「なるほど」
「勿論、アルティナ様が日々自主学習に励んでおられたのが、それらがきちんと身に付いていた最大の理由だと思いますが」
ユーリアがそう話を締めくくると、クリフは微笑んで頷いた。
「その通りだな。やはり君は、物事の本質を良く理解している。アルティン殿が信頼して、他の侍女を使っていなかった理由が分かるよ」
「ありがとうございます」
素直に納得して貰ったのが分かり、彼女は内心で安堵した。
(取り敢えずアルティナ様が、どこに出してもおかしくない程度の知識と教養を物にしている理由はごまかせたわよね。だけど本当に、ダンスに関しては誤算だったわ。あと十日足らずで、本当にあれがどうにかなるのかしら?)
本気で不安になりながら考え込んでいると、クリフが話題を変えてくる。
「さっき母から聞いたんだが、兄さんとアルティナ殿が、当面教会で挙式はしないと決めたと言うのは本当なのか?」
「はい。現時点ではアルティナ様に関わる悪い噂が社交界に広がっていますし、興味本位で有象無象が集まってくる可能性があります。実家のグリーバス公爵家からの参列も望めませんし、余計に好奇の視線に晒される事になるからと、ケイン様が仰られて」
難しい顔になりながら説明したユーリアに、クリフも僅かに顔を顰めながら同意した。
「確かにな。ちゃんと教会に婚姻申請書は提出済みで、双方の家に婚姻認定書も届いているんだから、わざわざ騒ぎを起こす事も無いか。貴族階級でも挙式しない、訳ありカップルは偶に存在しているし」
「ケイン様は落ち着いたら、改めてきちんとしたいと言うお心積もりの様ですが」
「いつになる事やら、現時点では見当も付かないな」
そこで思わず互いの顔を見合わせ、笑ってしまった二人だったが、クリフはすぐに真顔になって話を続けた。
「ところでユーリアは、最初アルティン殿に付いてから何年にもなると聞いたが。差し支えなければ、今何歳か教えて貰えるか?」
「……二十一ですが。それが何か?」
微妙に顔つきを険しくしながら答えたユーリアに、若干気圧されながら、クリフは話を続けた。
「その……、君にそろそろ結婚の話とか……」
「ありません」
「それでも恋人とか、婚約者とか……」
「生憎と、そういう方は居ませんし、居たこともありません」
「本当に?」
「私がクリフ様に、嘘を吐かなければいけない理由などありませんが?」
疑わし気に尋ねてきたクリフに、ユーリアは冷たい視線を向けながら言い返す。その反応を見た彼は、慌てて弁解してきた。
「あ、いや、悪い。疑っている訳ではないんだ。ただユーリア位見目が良くて気立てが良いと、あちこちから引く手数多だろうと思って。結婚すればこれまで通り、アルティナ殿に付いていて貰えなくなるかもしれないと思ったものだから、その場合、彼女付きの侍女をどうしようかと思っただけなんだ」
「安心して下さい。これまではアルティン様のお世話で忙しかったですし、当面はアルティナ様が心配で、自分の事は考える余裕なんかありませんから」
そんな変な気を回した結果かと、ユーリアが呆れながらも失礼のない程度に言い返すと、相手が急に真剣な口調になって問いかけてきた。
「それはやはり、アルティン殿が亡くなる時に頼まれたからか? それに未だにアルティナ殿の中に、アルティン殿が留まっているから?」
「はい?」
急に口調が変わった事と、話がずれた様に感じたユーリアが反射的にクリフに顔を向けると、彼が口調以上に真剣な表情で自分を凝視していたのが分かって、怪訝に思いながら肯定の答えを返した。
「はあ……、まあ、そうだと言えば、そうなんじゃないでしょうか」
「そうか。分かった」
それきり黙って再び兄夫婦の方に視線を向けた彼を見て、ユーリアは密かに首を捻った。
(どうしていきなり人の年を聞くのよ、この人。この年で恋人も婚約者もいなくて悪かったわね! アルティナ様の様な波瀾万丈な主に仕えながら、色恋沙汰にのめり込めるならやってみたいわよ!)
半ば八つ当たりしながら、もう十分休憩はできただろうと判断したユーリアは、アルティナ達に声をかけた。
「アルティナ様、ケイン様。そろそろ練習を再開しますか?」
「ああ、頼む」
「お願い、ユーリア」
その声に二人は立ち上がり、揃って部屋の中央に向かう。
「それではいきますよ? はい、1、2、3、1、2……」
そうして再び何事も無かったかのように、ユーリアの手拍子に合わせて二人はゆっくりと踊り出し、それをクリフが無言で見守った。
それから何とかアルティナが基本的なステップを間違えなくなったのを契機に、ケインが足を止めて提案した。
「それじゃあ、今夜はここまでにしようか」
「ええ、ケイン。練習に付き合ってくれてありがとう」
「どういたしまして。筋は良いから、すぐに覚えられるさ」
笑顔で答えるケインを軽く見上げたアルティナは、内心で考え込んだ。
(本当にケインは貴族にしては人当たりは良いし、剣の腕は立つし、部下からの人望は熱いし、年長者からの信頼も勝ち取ってるのよね。女癖の悪さで、残念度が増してるんだけど。私と結婚したからって、そうそう女遊びを止める筈も無いけど、毎晩練習に付き合って、いつ出かける気かしら?)
ケインが聞いたら倒れ伏して泣き出しそうな内容を、アルティナが真剣に考えていると、少し前から手拍子をクリフに任せて外に出ていたユーリアが、ワゴンを押して戻って来た。
「アルティナ様、お疲れ様でした。ケイン様とクリフ様もどうぞ」
「ありがとう、ユーリア。喉が渇いていたの」
「気が利くな。いただくよ」
冷ましておいたお茶をカップに注いで三人に渡してから、ユーリアは少々怪訝な顔で報告した。、
「ケイン様、アルティナ様。ここに戻る途中、ガウス殿に伝言を頼まれたのですが、先程兄のデニスがこの屋敷にやって来た為、ガウス殿が応接室の方に通したそうです」
「デニスが?」
「何の用で?」
思わず声を上げた二人は、次に顔を見合わせながら確認を入れる。
「アルティナが呼んだわけでは無いのか?」
「いいえ。ユーリアの顔でも見に来たのかしら?」
「でも兄とは、二日前に街で顔を合わせたばかりですが……」
首を傾げたユーリアに、兄夫婦が負けず劣らず困惑した顔を向けたのを見て、クリフはカップをソーサーに戻してワゴンに置いてから、穏やかに二人を促した。
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