その華の名は
(4)密談開始
「ふざけるのはこの位にして、そろそろ本題に入らないか?  ナジェークもそこに座ってくれ」
「そうさせて貰おう」
  ひとしきり笑ってからイズファインが切り出すと、ナジェークが安堵した様子でカテリーナの隣に腰を下ろした。それと同時に、サビーネに確認を入れる。
「ところでサビーネ嬢は、イズファインから既に詳しい話を聞いているのかな?」
「はい。お伺いしています。その上でエセリア様を筆頭に、余人にはお二方の関係を漏らさず、全面的に協力させていただきます」
「それは願ってもない申し出だが、あなたに大したメリットは無いのにどうしてそこまで協力してくれるのか、理由を聞いても構わないかな?」
  ナジェークが微妙に納得しかねる顔で問いを重ねたのを見て、カテリーナは怒りを露わにしながら会話に割り込んだ。
「何? 好意的過ぎて、信じられないとでも言うつもり? 随分失礼ね」
「そこまでひねくれた事を言うつもりは無いが」
「言ったのも同然よね?」
「二人とも、こんな所で揉めないでくれ」
  慌ててイズファインが二人を宥めにかかったが、ここでサビーネが笑顔で断言した。
「ナジェーク様!  私のメリットなら、ちゃんとございますわ!  お二人の男装でのダンスを、間近で観させていただきましたもの!」
  それを聞いたナジェークが本気で呻き、カテリーナが驚きながら問い返す。
「…………あれをメリットとか言うんだ」
「え? じゃあまさか、これからも時々踊って欲しいとか、言われるのかしら?」
「またお二人で踊っていただけるんですか!? ありがとうございます!!」
「カテリーナ……」
「……………」
  男二人に何とも言えない顔をされ、カテリーナは無言で視線を逸らした。するとサビーネが他の三人の反応に構わず、サクサクと話を進める。
「それでは早速ですが今回のお話を伺って、お二方の連絡を中継する場合の方策を、幾つか考えてみましたの。とは言っても私の考えなどたかが知れていますし、エセリア様にご相談したのですが」
「本当にエセリアに相談したのかい?」
  聞き捨てならない台詞を聞いたナジェークが、途端に警戒する表情になったが、サビーネは彼を安心させるように首を振った、
「ご心配無く。エセリア様には、ナジェーク様とカテリーナ様の名前は出しておりません。『親戚筋の人間が、恋人との交際を身内に反対され、密かに連絡を取り合う方法について悩んでいる』とお話ししたら、快く幾つかの案を出してくださいました」
「ええと……、因みにどのような……」
「少々お待ちください。……これですわ!」
「キャンドルとインク壺、それに香水のアトマイザー?」
  サビーネがソファーの横に置いておいたバッグから、次々に目の前のテーブルに取り出した品々を見て、他の三人は本気で首を傾げた。しかしサビーネは余裕たっぷりの笑みを浮かべながら、イズファインに頼み込む。
「うふふ……。カテリーナ様、実際に見て驚いてくださいませ。イズファイン様。このキャンドルに火を点けて欲しいのですが」
「あ、ああ……、分かった。それじゃあマッチを探すかメイドを呼んでくるから、ちょっと待っていてくれ」
「お願いします。それでは私はその間に、こちらの説明を済ませておきますね」
(こちらの説明って……、香水をどうやって使うのかしら?)
  彼が立ち上がって部屋から出て行くと、サビーネは続けて何やら折り畳まれた便箋を何枚か取り出した。しかしカテリーナは改めて目の前の品々を凝視しても、それらの使用法に皆目見当がつかず、困惑の度合いを深めていた。
「そうさせて貰おう」
  ひとしきり笑ってからイズファインが切り出すと、ナジェークが安堵した様子でカテリーナの隣に腰を下ろした。それと同時に、サビーネに確認を入れる。
「ところでサビーネ嬢は、イズファインから既に詳しい話を聞いているのかな?」
「はい。お伺いしています。その上でエセリア様を筆頭に、余人にはお二方の関係を漏らさず、全面的に協力させていただきます」
「それは願ってもない申し出だが、あなたに大したメリットは無いのにどうしてそこまで協力してくれるのか、理由を聞いても構わないかな?」
  ナジェークが微妙に納得しかねる顔で問いを重ねたのを見て、カテリーナは怒りを露わにしながら会話に割り込んだ。
「何? 好意的過ぎて、信じられないとでも言うつもり? 随分失礼ね」
「そこまでひねくれた事を言うつもりは無いが」
「言ったのも同然よね?」
「二人とも、こんな所で揉めないでくれ」
  慌ててイズファインが二人を宥めにかかったが、ここでサビーネが笑顔で断言した。
「ナジェーク様!  私のメリットなら、ちゃんとございますわ!  お二人の男装でのダンスを、間近で観させていただきましたもの!」
  それを聞いたナジェークが本気で呻き、カテリーナが驚きながら問い返す。
「…………あれをメリットとか言うんだ」
「え? じゃあまさか、これからも時々踊って欲しいとか、言われるのかしら?」
「またお二人で踊っていただけるんですか!? ありがとうございます!!」
「カテリーナ……」
「……………」
  男二人に何とも言えない顔をされ、カテリーナは無言で視線を逸らした。するとサビーネが他の三人の反応に構わず、サクサクと話を進める。
「それでは早速ですが今回のお話を伺って、お二方の連絡を中継する場合の方策を、幾つか考えてみましたの。とは言っても私の考えなどたかが知れていますし、エセリア様にご相談したのですが」
「本当にエセリアに相談したのかい?」
  聞き捨てならない台詞を聞いたナジェークが、途端に警戒する表情になったが、サビーネは彼を安心させるように首を振った、
「ご心配無く。エセリア様には、ナジェーク様とカテリーナ様の名前は出しておりません。『親戚筋の人間が、恋人との交際を身内に反対され、密かに連絡を取り合う方法について悩んでいる』とお話ししたら、快く幾つかの案を出してくださいました」
「ええと……、因みにどのような……」
「少々お待ちください。……これですわ!」
「キャンドルとインク壺、それに香水のアトマイザー?」
  サビーネがソファーの横に置いておいたバッグから、次々に目の前のテーブルに取り出した品々を見て、他の三人は本気で首を傾げた。しかしサビーネは余裕たっぷりの笑みを浮かべながら、イズファインに頼み込む。
「うふふ……。カテリーナ様、実際に見て驚いてくださいませ。イズファイン様。このキャンドルに火を点けて欲しいのですが」
「あ、ああ……、分かった。それじゃあマッチを探すかメイドを呼んでくるから、ちょっと待っていてくれ」
「お願いします。それでは私はその間に、こちらの説明を済ませておきますね」
(こちらの説明って……、香水をどうやって使うのかしら?)
  彼が立ち上がって部屋から出て行くと、サビーネは続けて何やら折り畳まれた便箋を何枚か取り出した。しかしカテリーナは改めて目の前の品々を凝視しても、それらの使用法に皆目見当がつかず、困惑の度合いを深めていた。
「その華の名は」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
2.1万
-
7万
-
-
6,574
-
2.9万
-
-
165
-
59
-
-
61
-
22
-
-
1.2万
-
4.7万
-
-
5,074
-
2.5万
-
-
5,014
-
1万
-
-
9,627
-
1.6万
-
-
8,094
-
5.5万
-
-
2,414
-
6,662
-
-
3,136
-
3,383
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
3,521
-
5,226
-
-
9,295
-
2.3万
-
-
6,119
-
2.6万
-
-
1,285
-
1,419
-
-
2,845
-
4,948
-
-
6,617
-
6,954
-
-
6,028
-
2.9万
-
-
3万
-
4.9万
-
-
60
-
278
-
-
318
-
800
-
-
399
-
718
-
-
6,162
-
3.1万
-
-
65
-
152
-
-
32
-
11
-
-
1,857
-
1,560
-
-
3,631
-
9,417
-
-
44
-
89
-
-
168
-
148
-
-
11
-
4
-
-
105
-
364
-
-
2,605
-
7,282
-
-
48
-
129
-
-
13
-
1
-
-
45
-
163
-
-
208
-
515
-
-
2,931
-
4,405
-
-
1,585
-
2,757
-
-
387
-
438
-
-
4,871
-
1.7万
-
-
31
-
50
-
-
42
-
55
-
-
139
-
227
-
-
74
-
147
-
-
332
-
241
-
-
562
-
1,070
-
-
2,787
-
1万
-
-
600
-
220
-
-
169
-
156
-
-
2,388
-
9,359
-
-
1,259
-
8,383
-
-
7,415
-
1.5万
-
-
9,139
-
2.3万
コメント