酸いも甘いも噛み分けて
(69)悟りの境地
何とか無事に年内勤務を終え、年末休暇に突入した十二月二十九日。友之と沙織はゆっくりと羽を休めるわけにもいかず、慌ただしく整えた旅支度の最終確認を終え、翌日の三十日を迎えた。
「二人とも、そろそろタクシーが来る時間じゃない?」
「忘れている物は無いな?」
早い朝食を食べ終えてから身支度を整え、スーツケースを携えた二人がリビングで待機していると、真由美と義則が些か心配そうに声をかけてくる。二人はそれに苦笑しながら応じた。
「はい、大丈夫です」
「子供じゃないんだから。じゃあ時間だからそろそろ出るよ。父さん達もゆっくりして来てくれ」
「それでは、良いお年をお迎えください」
「ああ。久しぶりに、夫婦水入らずで過ごして来るよ」
「気をつけて行ってらっしゃい」
軽く頭を下げた沙織に義則と真由美は笑いかけ、予約時間通りにやって来たタクシーに乗り込んで成田までの快特停車駅に向かう息子夫婦を、門の所で見送った。
「さて、予定通り出かけたな。私達も一時間後には出るぞ。準備は大丈夫か?」
「ええ。勿論よ、あなた」
そしてタクシーが角を曲がって見えなくなると、どこか人の悪い笑みを浮かべながら声をかけてきた夫に、真由美は悪びれない笑顔を向けて、二人で家の中に戻って行った。
「年末だけに色々と忙しかったが、何とか仕事の片が付いて、準備も間に合って良かったな」
「本当に。それにお義母さん達が私達をあっさり送り出してくれたのが、ちょっと意外でした。てっきり『せっかくだから、私達も一緒に行くわ』とか、言い出すかと思ったのに」
タクシーの後部座席に並んで座りながら沙織が何気なく口にした台詞に、友之は真顔で応じた。
「確かに、それは俺も意外だった。特に母さんがな。だが沙織の親を呼んでないのに、うちの方だけ同伴するわけには行かないだろう?」
「そうですよね……。未だに和洋さんが良い顔をしていないのにそんな事になったら、拗ねるのを通り越して、殴り込みに来るのが確実だわ」
「洒落にならない上、怖い事を言わないでくれ……」
頷きながら沙織がしみじみと呟くと、友之がうんざりとした口調で応じる。しかしすぐに気を取り直して話題を変えた。
「そう言えば父さん達は、どこの温泉に行くって言ってたんだ?」
それを聞いた沙織は、少し驚いたように問い返す。
「聞いて無かったんですか? 有馬温泉に連泊するって言ってました。一応、お互いの滞在先を控えておきましたし」
「そうか。年末だから色々忙しくて、すっかり聞きそびれていたな。今度休みが取れたら、もっと近場で良いから俺達も温泉に行くか」
「良いですね」
順調な旅の滑り出しに気を良くしながら、友之達は笑顔でそんな会話を続けた。
※※※
成田から四時間程のフライトを終え、無事に宿泊ホテルにチェックインを済ませた二人は、部屋に荷物を置いて人心地付いてから、予め連絡をしていたホテル内のブライダルコーナーに向かった。
「予約してある松原ですが」
「松原様、お待ちしておりました。ご案内します」
常時日本語対応可能を売りにしているそこは、友之達の予約時間に合わせて受付に日本人と見られる女性が待機しており、二人は全く不安を感じずに促されるまま奥へと進んだ。しかしその安堵感は、残念な事に長くは続かなかった。
「松原様、お待たせいたしました。お二方を担当します坂崎です。よろしくお願いします」
「長野と申します。お二人の良い思い出作りの為、精一杯努めさせていただきます」
ソファーに座ると同時に出されたカップに口を付けてすぐに女性二人組が現れ、挨拶をしてきた為、沙織達も笑顔で頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「お手数おかけします」
「それでは今回の挙式に向けての流れを、ご説明させていただきます。今日はこの打ち合わせが終わりましたら、衣装合わせと小物を確認した後に、会場となるチャペルの見学と新婦様をエステサロンにご案内します。明日は午前中に幾つかのVTR撮影を行いまして、午後は挙式と記念写真撮影になります。そして明後日の午前に残りのVTR撮影を行いますので、後の時間はお好きにお過ごしください」
坂崎が手慣れた様子でタイムスケジュール表を差し出しながら説明を始めたが、それを目にした沙織達は揃って怪訝な顔になった。
「あの……、VTR撮影と言うのは何ですか?」
「結婚式の撮影なら、明日だけで大丈夫ですよね? それに式の前後の撮影と言うのは……」
その反応に、坂崎も若干戸惑う表情になる。
「お母様から出発前に、ご説明はありませんでしたか? メモリアルムービーの作製を承っておりますが」
「はい?」
「お母様と言うと……」
「新郎様のお母様の、松原真由美様からのご依頼です」
「……そうでしょうね」
坂崎から真顔で報告された友之は盛大に溜め息を吐き、激しく嫌な予感を覚えた沙織は、無意識に顔を強張らせた。そんな二人の反応は気にせず、坂崎が説明を続ける。
「松原様のご要望では、テーマは『プリンセス・レジェンド』で、『息子なんか下僕か従者扱いで良いから、沙織さん一押しでお願いします』と念押しされましたの。新婦様と大層仲が宜しいみたいで、微笑ましいですわね」
笑顔でそんな駄目押しをされてしまった二人は、そこで揃って項垂れた。
「お義母さんが、ここに無理に付いて来なかった理由は、これですか……」
「本当に、勘弁してくれ」
しかしここで友之が何とか気を取り直し、控え目に確認を入れてみる。
「あの、坂崎さん。因みにキャンセルとかは」
「既に費用は全額、振り込まれております。本人の承諾なしに取りやめたりしたら、こちらの信用問題になりますので」
「そうですよね……」
(母さん達は温泉に出向いているし、電話で説得しようとしても無理だろうな)
真顔で切り返された友之は、半ば退路を断たれたのを悟った。
「それでは、こちらの撮影シチュエーションをご覧下さい」
今度は長野が差し出してきた用紙に目を通した沙織は、困惑の度合いを深めながら、彼女に尋ねる。
「あの……、庭園とか、スパとか、テラスとか……。スタジオ内だけの撮影では無いんですか?」
その問いかけに、長野が満面の笑みで頷く。
「はい! 夢のように幸せなひと時を過ごしたいと希望するカップルの、多種多様なご要望にお応えするべく、馬車もガラスの靴もティアラも魔法使いの杖も常備しておりますし、バックダンサーも随時手配しておりますのでご心配無く!」
「どんなシチュエーションのVTRなの……」
全く理解不能な沙織ががっくりと肩を落とす中、坂崎が真顔で友之にお伺いを立てる。
「ご新郎様。ご新婦様の水着は、露出度が控え目の物が良いならご希望に沿った物を手配しますが、どういたしましょうか?」
「俺は別に、露出が多くても構いませんが」
「『構いませんが』じゃ無いでしょうが! もっと他に言うことは無いの!?」
「沙織、ちょっと落ち着け」
(結婚してから、時々砕けた口調になる時が出てきたよな。良い傾向だ)
ここでうっかり反射的に答えた友之に、沙織が食ってかかった。しかし彼は顔がにやけそうになるのを何とか堪えながら、傍目には冷静に彼女を宥めにかかる。
「沙織。確かにこのプランだと、多少は恥ずかしい事があるかもしれない」
「多少? 本当に多少で済むと思ってるの!?」
「実は俺はこれまでに、荘厳で神聖な筈の挙式が単なるエンターテイメントに、華やかで和やかに執り行われる筈の披露宴が単なるコメディショーになり果てた現場に、居合わせてしまった経験がある」
沈痛な面持ちでそんな過去を告げられた沙織は、盛大に顔を引き攣らせながら、思い当たった人物の名前を口にした。
「それ、もしかして……。いえ、もしかしなくても、あの柏木さんの挙式と披露宴の事じゃないの?」
「どうして分かった? 夫婦の以心伝心という奴か? ちょっと感動したな」
思わず素で驚いた顔になった友之を、沙織が本気で叱りつける。
「それ位、分かるわよっ! 少なくとも私が把握している友之さんの交友関係で、あの人以上に非常識な人は居ないわよね!? 実はあの人以上に非常識な人が居るなんて言ったら、本気で怒るわよ!?」
「そこは安心してくれ。清人さん以上に非常識な、知人友人親戚は居ない」
「全く安心できないんだけど!」
「だが、清人さんの“あれ”と比べて、撮影スタッフは見ず知らずの少人数。撮影された物を、実際に目にする人間も限られる。俺は十分、妥協の範囲内だ」
「あっ、あのねえっ!」
「確かに、恥ずかしいかもしれない。だがきっと、その羞恥心も時間と共に昇華して、『あの頃は若かったわね』と笑って評する事ができるようになる筈だ」
「なるわけ無いでしょ! 変にところで悟りを開かないで!」
妙に達観した表情で淡々と告げてくる友之に、沙織は益々声を荒げたが、対する友之は平常心のまま言葉を継いだ。
「『お前百までわしゃ九十九まで』とまでは言わないが、それ位長く沙織と一緒に居るつもりだからな。その頃には単なる笑い話の一つになると、俺は確信している」
「…………っ」
そのまま微妙な表情で口を閉ざした沙織と、真顔の友之が見つめ合って数秒が経過してから、彼女は完全に諦めて坂崎に向き直った。
「分かりました。そちらにお任せします。お義母さんが楽しみにしているみたいですし、これも精神修行の一環だと思えば……」
「すまないな、沙織」
「はい、お任せください!」
「最高のクオリティで仕上げてみせますので!」
沙織が遠い目をしながら申し出るのを見た友之は、心底申し訳無さそうに声をかけ、坂崎と長野はそんな彼女に向かって、力強く頷いてみせた。
「二人とも、そろそろタクシーが来る時間じゃない?」
「忘れている物は無いな?」
早い朝食を食べ終えてから身支度を整え、スーツケースを携えた二人がリビングで待機していると、真由美と義則が些か心配そうに声をかけてくる。二人はそれに苦笑しながら応じた。
「はい、大丈夫です」
「子供じゃないんだから。じゃあ時間だからそろそろ出るよ。父さん達もゆっくりして来てくれ」
「それでは、良いお年をお迎えください」
「ああ。久しぶりに、夫婦水入らずで過ごして来るよ」
「気をつけて行ってらっしゃい」
軽く頭を下げた沙織に義則と真由美は笑いかけ、予約時間通りにやって来たタクシーに乗り込んで成田までの快特停車駅に向かう息子夫婦を、門の所で見送った。
「さて、予定通り出かけたな。私達も一時間後には出るぞ。準備は大丈夫か?」
「ええ。勿論よ、あなた」
そしてタクシーが角を曲がって見えなくなると、どこか人の悪い笑みを浮かべながら声をかけてきた夫に、真由美は悪びれない笑顔を向けて、二人で家の中に戻って行った。
「年末だけに色々と忙しかったが、何とか仕事の片が付いて、準備も間に合って良かったな」
「本当に。それにお義母さん達が私達をあっさり送り出してくれたのが、ちょっと意外でした。てっきり『せっかくだから、私達も一緒に行くわ』とか、言い出すかと思ったのに」
タクシーの後部座席に並んで座りながら沙織が何気なく口にした台詞に、友之は真顔で応じた。
「確かに、それは俺も意外だった。特に母さんがな。だが沙織の親を呼んでないのに、うちの方だけ同伴するわけには行かないだろう?」
「そうですよね……。未だに和洋さんが良い顔をしていないのにそんな事になったら、拗ねるのを通り越して、殴り込みに来るのが確実だわ」
「洒落にならない上、怖い事を言わないでくれ……」
頷きながら沙織がしみじみと呟くと、友之がうんざりとした口調で応じる。しかしすぐに気を取り直して話題を変えた。
「そう言えば父さん達は、どこの温泉に行くって言ってたんだ?」
それを聞いた沙織は、少し驚いたように問い返す。
「聞いて無かったんですか? 有馬温泉に連泊するって言ってました。一応、お互いの滞在先を控えておきましたし」
「そうか。年末だから色々忙しくて、すっかり聞きそびれていたな。今度休みが取れたら、もっと近場で良いから俺達も温泉に行くか」
「良いですね」
順調な旅の滑り出しに気を良くしながら、友之達は笑顔でそんな会話を続けた。
※※※
成田から四時間程のフライトを終え、無事に宿泊ホテルにチェックインを済ませた二人は、部屋に荷物を置いて人心地付いてから、予め連絡をしていたホテル内のブライダルコーナーに向かった。
「予約してある松原ですが」
「松原様、お待ちしておりました。ご案内します」
常時日本語対応可能を売りにしているそこは、友之達の予約時間に合わせて受付に日本人と見られる女性が待機しており、二人は全く不安を感じずに促されるまま奥へと進んだ。しかしその安堵感は、残念な事に長くは続かなかった。
「松原様、お待たせいたしました。お二方を担当します坂崎です。よろしくお願いします」
「長野と申します。お二人の良い思い出作りの為、精一杯努めさせていただきます」
ソファーに座ると同時に出されたカップに口を付けてすぐに女性二人組が現れ、挨拶をしてきた為、沙織達も笑顔で頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「お手数おかけします」
「それでは今回の挙式に向けての流れを、ご説明させていただきます。今日はこの打ち合わせが終わりましたら、衣装合わせと小物を確認した後に、会場となるチャペルの見学と新婦様をエステサロンにご案内します。明日は午前中に幾つかのVTR撮影を行いまして、午後は挙式と記念写真撮影になります。そして明後日の午前に残りのVTR撮影を行いますので、後の時間はお好きにお過ごしください」
坂崎が手慣れた様子でタイムスケジュール表を差し出しながら説明を始めたが、それを目にした沙織達は揃って怪訝な顔になった。
「あの……、VTR撮影と言うのは何ですか?」
「結婚式の撮影なら、明日だけで大丈夫ですよね? それに式の前後の撮影と言うのは……」
その反応に、坂崎も若干戸惑う表情になる。
「お母様から出発前に、ご説明はありませんでしたか? メモリアルムービーの作製を承っておりますが」
「はい?」
「お母様と言うと……」
「新郎様のお母様の、松原真由美様からのご依頼です」
「……そうでしょうね」
坂崎から真顔で報告された友之は盛大に溜め息を吐き、激しく嫌な予感を覚えた沙織は、無意識に顔を強張らせた。そんな二人の反応は気にせず、坂崎が説明を続ける。
「松原様のご要望では、テーマは『プリンセス・レジェンド』で、『息子なんか下僕か従者扱いで良いから、沙織さん一押しでお願いします』と念押しされましたの。新婦様と大層仲が宜しいみたいで、微笑ましいですわね」
笑顔でそんな駄目押しをされてしまった二人は、そこで揃って項垂れた。
「お義母さんが、ここに無理に付いて来なかった理由は、これですか……」
「本当に、勘弁してくれ」
しかしここで友之が何とか気を取り直し、控え目に確認を入れてみる。
「あの、坂崎さん。因みにキャンセルとかは」
「既に費用は全額、振り込まれております。本人の承諾なしに取りやめたりしたら、こちらの信用問題になりますので」
「そうですよね……」
(母さん達は温泉に出向いているし、電話で説得しようとしても無理だろうな)
真顔で切り返された友之は、半ば退路を断たれたのを悟った。
「それでは、こちらの撮影シチュエーションをご覧下さい」
今度は長野が差し出してきた用紙に目を通した沙織は、困惑の度合いを深めながら、彼女に尋ねる。
「あの……、庭園とか、スパとか、テラスとか……。スタジオ内だけの撮影では無いんですか?」
その問いかけに、長野が満面の笑みで頷く。
「はい! 夢のように幸せなひと時を過ごしたいと希望するカップルの、多種多様なご要望にお応えするべく、馬車もガラスの靴もティアラも魔法使いの杖も常備しておりますし、バックダンサーも随時手配しておりますのでご心配無く!」
「どんなシチュエーションのVTRなの……」
全く理解不能な沙織ががっくりと肩を落とす中、坂崎が真顔で友之にお伺いを立てる。
「ご新郎様。ご新婦様の水着は、露出度が控え目の物が良いならご希望に沿った物を手配しますが、どういたしましょうか?」
「俺は別に、露出が多くても構いませんが」
「『構いませんが』じゃ無いでしょうが! もっと他に言うことは無いの!?」
「沙織、ちょっと落ち着け」
(結婚してから、時々砕けた口調になる時が出てきたよな。良い傾向だ)
ここでうっかり反射的に答えた友之に、沙織が食ってかかった。しかし彼は顔がにやけそうになるのを何とか堪えながら、傍目には冷静に彼女を宥めにかかる。
「沙織。確かにこのプランだと、多少は恥ずかしい事があるかもしれない」
「多少? 本当に多少で済むと思ってるの!?」
「実は俺はこれまでに、荘厳で神聖な筈の挙式が単なるエンターテイメントに、華やかで和やかに執り行われる筈の披露宴が単なるコメディショーになり果てた現場に、居合わせてしまった経験がある」
沈痛な面持ちでそんな過去を告げられた沙織は、盛大に顔を引き攣らせながら、思い当たった人物の名前を口にした。
「それ、もしかして……。いえ、もしかしなくても、あの柏木さんの挙式と披露宴の事じゃないの?」
「どうして分かった? 夫婦の以心伝心という奴か? ちょっと感動したな」
思わず素で驚いた顔になった友之を、沙織が本気で叱りつける。
「それ位、分かるわよっ! 少なくとも私が把握している友之さんの交友関係で、あの人以上に非常識な人は居ないわよね!? 実はあの人以上に非常識な人が居るなんて言ったら、本気で怒るわよ!?」
「そこは安心してくれ。清人さん以上に非常識な、知人友人親戚は居ない」
「全く安心できないんだけど!」
「だが、清人さんの“あれ”と比べて、撮影スタッフは見ず知らずの少人数。撮影された物を、実際に目にする人間も限られる。俺は十分、妥協の範囲内だ」
「あっ、あのねえっ!」
「確かに、恥ずかしいかもしれない。だがきっと、その羞恥心も時間と共に昇華して、『あの頃は若かったわね』と笑って評する事ができるようになる筈だ」
「なるわけ無いでしょ! 変にところで悟りを開かないで!」
妙に達観した表情で淡々と告げてくる友之に、沙織は益々声を荒げたが、対する友之は平常心のまま言葉を継いだ。
「『お前百までわしゃ九十九まで』とまでは言わないが、それ位長く沙織と一緒に居るつもりだからな。その頃には単なる笑い話の一つになると、俺は確信している」
「…………っ」
そのまま微妙な表情で口を閉ざした沙織と、真顔の友之が見つめ合って数秒が経過してから、彼女は完全に諦めて坂崎に向き直った。
「分かりました。そちらにお任せします。お義母さんが楽しみにしているみたいですし、これも精神修行の一環だと思えば……」
「すまないな、沙織」
「はい、お任せください!」
「最高のクオリティで仕上げてみせますので!」
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