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酸いも甘いも噛み分けて

篠原皐月

(59)ちょっとした思い煩い

 沙織から返事を貰った友之は、早速両親に報告するべくリビングに向かった。


「父さん、母さん。話があるんだが」
「何だ、友之」
 予想通りソファーに並んで座り、和やかに話しながらテレビを見ていた二人に声をかけると、訝しげな表情で問い返される。それを受けて、友之は緩みそうな顔を引き締めつつ、反対側のソファーに座ってから話を切り出した。


「その……、ついさっき沙織から『事実婚をしても良い』と返事を貰ったから、一応二人に報告をしておこうかと思って。それで」
「そうか。それは良かった。それなら真由美、友之に例の物を渡してくれ」
「分かったわ! すぐに出すから、ちょっと待ってね!」
「何?」
 照れくさいのをごまかしつつ報告を始めたものの、即座に台詞を遮られた挙げ句、真由美が嬉々として立ち上がってリビングボードに向かった為、友之は呆気に取られた。


「取り敢えずお前達にすぐに必要になる物を、予めこちらで揃えておいただけだ。他にも必要になる物が、色々出てくるだろうがな」
「すぐに必要な物?」
「はい、お待たせ!」
 冷静に言い聞かせてくる義則に、友之は益々怪訝な顔になったが、満面の笑みで母親が差し出してきた大判の封筒の中身を取り出してみた彼は、その困惑の色を深めた。


「……父さん?」
 無言で説明を求めた息子に、義則が順序立てて説明する。


「以前、入籍はしなくとも、関本さんに同居して貰って、住民票を移動するのが条件の一つだと言った事は覚えているか?」
「勿論、覚えているが……」
「彼女がここに住民票を移した場合、住民票には世帯主との関係が記載される。だが今現在、ここの世帯主は俺だ。世帯主と事実婚する場合には、『未届の妻』とか『妻(見届け)』とかの記載になるらしいが、世帯主の『子の妻』の場合には、事実婚の場合に該当する記載項目が無いらしい。単なる『同居人』での扱いになる」
「それで?」
 父親の言いたい事が何となく分かってきたものの、友之はそのまま話の先を促した。


「婚姻届けを出して入籍した場合には、自動的にお前か沙織さんを世帯主にして、新しい戸籍が作成されるから問題は無いんだがな……。だから沙織さんが住民票を移す前にお前が分籍届を出して、俺達とは独立した戸籍を作れ。そうすればお前が筆頭者で世帯主になるから、ここに沙織さんが住民票を移動させた場合、その記載をお前の『見届けの妻』扱いにできる」
「戸籍の手続きはいつでも役所で受け付けて貰えるけど、住民票の移動届は、一般の取り扱いですからね。平日の手続きが無理なら、土日開庁の日程も入れておいたからここで済ませてね」
「……分かった」
 予め確保しておいた届け出用紙に加えてスケジュール表確認した友之は、両親の手際の良さに、ただ頷く事しかできなかった。そんな友之に向かって、真由美が数社のパンプレットをより分けて指し示しながら、まくし立ててくる。


「それからこれが、引っ越し業者のプラン一覧よ。引っ越し費用は全部こちら持ちにしちゃうから、沙織さんに遠慮なんかしないように言ってね? 仕事で忙しいでしょうし、もう梱包から荷解きまで全部お任せの、この楽々パーフェクトパックなんかお勧めよ?」
「そうだね……。沙織に言っておくよ」
「それから事実婚なんだし、大々的に結婚式とか披露宴はしないのよね?」
「それは……、そのつもりでいるけど……」
「でも家族だけとか内輪では、するつもりは無い? それに両家の顔合わせとかは、やっぱりするでしょう?」
「それはまあ……、さすがに何もしないと言うのは……。向こうの家族の意見もあるだろうし」
 控え目に友之が考えを述べると、期待に満ちた眼差しで確認を入れていた真由美が、嬉々としてそれに食い付いた。


「やっぱりそうよね! それで、これが向こう半年間の大安と友引の日程表で、土日祝日には赤丸を付けてあるの!」
「あの、母さん? それは見れば分かるけど」
「それで、両家の親族のみの顔合わせの食事会とか披露宴だと二十人以下だろうから、該当するプランとか部屋とかがあるかを、ホテルに問い合わせたリストがこれで」
「分かった! 取り敢えずそれに関しては、沙織ときちんと相談するから!」
「……そう? じゃあお願いね?」
 母親がそれ以上暴走しないように慌てて声を張り上げた友之に、真由美は若干不満そうな顔になったものの、すぐに気持ちを切り替えて話を進めた。


「それから沙織さんのお部屋も、準備しておかないと。この際友之の部屋も、お父さんとお母さんが使っていた部屋にする? そっちの方が広いし行き来がしやすいと」
「とにかく、少し考えさせてくれ」
「真由美、取り敢えず本人達の考え次第だから落ち着け」
 そこで義則が苦笑いで会話に割り込み、それを受けて真由美が幾らか不満げにしながらも話を切り上げた。


「分かりました。それじゃあ、なるべく早く沙織さんと相談してね?」
「……ああ」
 この時点で既にうんざりしかけながら友之は頷き、この事をどう沙織に伝えたものかと真剣に悩み始めた。


 翌朝、いつも通り出勤した友之は自分の席に着くなり、少し離れた席で業務に取り掛かる準備をしていた沙織に呼びかけた。 
「関本、ちょっと来てくれ」
「はい」
 そして何気なくやって来た沙織に向かって、友之は鞄から取り出した大判の封筒を手渡す。


「課長、何でしょうか?」
「ちょっと検討して貰いたい内容がある」
「何に関してでしょうか?」
「中を見て貰えば分かる。後で、内容を確認してくれ」
「……分かりました。お預かりします」
 友之が微妙に含んだ物言いで告げると、それを微妙に察知した沙織は余計な事は言わずに受け取り、一礼して引き下がった。


(意味不明。『後で』ってどういう事? 仕事関係だったら、その場で確認させるだろうし。それを敢えて『後で』なんて念押しするなんて、どう考えてもプライベートに関する事よね?)
 自分の席に戻ってから、しげしげとその封筒を眺めた沙織は、中身も確認せずに自分の鞄にしまい込む。


(郵送とかにはしたくない程度には、早く目を通して欲しい。かつ、職場でコソコソ受け渡しとなると、余計に人目に付きやすいから、却って堂々と渡したという事か。これは本当に帰宅してから、すぐに中身を確認した方が良いみたいだわ)
 そう結論づけた沙織は、それからその封筒の事は頭の片隅に押しやり、その日の仕事に集中した。


「さてと、一体何が入っているのかしら?」
 自宅マンションに帰るなり真っ先に封筒の中身を取り出し、テーブルに広げてみた沙織は、それらを確認して苦笑いするしかできなかった。


「うん、これは確かにプライベートだわ。それにしても……、どう考えてもこれを揃えたのは、真由美さんよね。先走り過ぎですよ……。確かにこういう事は、する必要があるかと思いますけど」
 そこでタイミングを見計らったように、沙織のスマホが着信を知らせる。
「噂をすれば影」
 友之がかけてきたのを確認した彼女は、落ち着き払って応答した。


「もしもし? 例の物、ちゃんと目を通しましたから」
 すると挨拶抜きで、友之が話を進める。
「ああ、うん……。それで住民票の移動だが、いつ頃するつもりだ?」
「別にいつにするかまでは、決めていませんけど。どうしてですか?」
「沙織が住民票を移動させる前に、俺が分籍届を提出する必要があるから、少し待っていてくれるか?」
「はい? 分籍届?」
 困惑した沙織に、友之が父親から説明された内容を伝えると、彼女はすぐに納得して頷いた。


「そういう事ですか……、分かりました。それならその手続きが終わったら、教えてください」
「分かった。そうするから」
「だけど……、やっぱり事実婚でも、一応お互いの家族を揃えて、何かする必要があるのかしら……」
 思わず独り言のように沙織が呟くと、電話越しに友之がそれに反応する。


「沙織は、ウェディングドレスとかに憧れがあるとか、着たいとは思わないのか?」
「それは……、確かに綺麗だなとは思いますし、興味もありますよ? でも何が何でも着たいと言う、考えは無いです」
「なんとなく、そんな気はしていたがな……。頼むから、色々面倒くさくなってきたとか、言ってくれるなよ?」
「言いたいかも……」
「本当に勘弁してくれ」
 思わず本音を漏らした沙織の耳に、情けない友之の声が伝わる。それを聞いた沙織は笑い出したくなるのを堪えながら、声だけは真面目に話を進めた。


「取り敢えず私の両親に報告して、どうするのか相談するなり決めないといけませんよね?」
「そうだな。俺が挨拶に行くから、先方の都合の良い日時を確認して貰えるか?」
「それは構わないんですけど……」
「どうかしたのか?」
「母の方はともかく、和洋さんはどうします?」
 幾分心配そうに尋ねてみると、友之が溜め息を吐く気配に続けて神妙に申し出る。


「まさか、無視なんかできないだろう? きちんとお母さんとは別に、ご挨拶に行く」
「……色々すみません。怒るし拗ねるし揉めるしごねると思います」
「覚悟はしている。それじゃあ都合の良い日程だけ、確認しておいてくれ」
「分かりました」
 既に一度揉めている父親の事を考えると、頭が痛くなってきた沙織だったが、さすがに無視できない上に友之に愚痴も零せないと割り切り、自身のスケジュールを確認し始めた。




 同じ頃、松原邸では、十分な広さのウォークインクローゼットの中で、真由美が上機嫌で作業をしていた。
「うふふ……。ちょっと予想していた展開とは違ったけれど、素敵なお嫁さんが来てくれる事になって良かったわ」
 そんな事を呟きながら、彼女は小さめのクリアケースに保管してあった物を、一つ一つ確認しながら半透明のビニール袋に入れていく。


「今時、子供がいなかったり作らない夫婦って、珍しくは無いしね。却って踏ん切りが付いて良かったわ。本当にね……。こんなに未練がましく、いつまでもしまい込んでいる物を、沙織さんに見られたくはないもの。処分する良い機会だわ」
 鼻歌まじりに作業を続けていると、唐突にドアが開き、困惑顔の義則が姿を現した。


「真由美? さっきから姿が見えないと思ったら、こんな所で何をやっているんだ? 衣替えの時期ではないだろう?」
「ちょっと明日の資源ゴミの日に出す物を、纏めていたのよ」
 振り返って真由美が朗らかに答えると、彼女の前に置かれているクリアケースと手にしている物を認めた彼は、一瞬表情を変えたものの、何事も無かったように頷いて立ち去ろうとした。


「……そうか。邪魔して悪かったな」
「あ、あなた、お茶? それなら少しだけ待って貰える? もうすぐ終わるから」
「いや、茶位自分で淹れる。続けていなさい」
「そう? ありがとう」
 立ち上がりかけた妻を制止した義則は、微笑んでそのままその場をあとにした。


 翌朝、いつもより若干早く友之が階下に下りると、ちょうど玄関から半透明のビニール袋を手に提げて出て行く真由美の背中を目撃した。


「今日は資源ゴミの日だったか? 言ってくれれば、俺が集積所まで持って行くのに」
 いつもならかさばる物や重い物などは義則か自分が出している為、友之は不思議に思いながらキッチンに入り、既に用意されていたご飯や味噌汁をよそい始めた。


「あら、友之ごめんなさい。今日はいつもより早いのね」
「早いと言っても十分位だから。わざわざ母さんに、言っておくほどの事でも無いよ」
 戻って来た真由美に笑って応じた友之は、いつも通りに朝食を食べ終えて家を出たが、門を出て少し歩いた所で、ふと視界の隅に入って来た物に意識が向いた。


(そう言えば、さっき母さんが出していたのは、どう見てもこれだよな? 何なんだ? 古着みたいだが衣替えの時期でもないのに、ある程度まとまった量を出すなんて)
 古紙に混ざって置かれているビニール袋は、まだ一つしかなく、それが先程真由美が出した物だと分かった友之は何となく気になってかがみ込み、それの結び目を解いて中を覗き込んでみた。


「え? これって……」
 そこで意外な物に目にした友之は固まり、次に勢い良く自宅を振り返った。それからもう一度視線を袋の中に戻した彼は、難しい顔で数秒だけ悩んでから急いで元通り袋の口を結び直し、それを持ち上げて自宅へと戻った。そしてガレージの横にその袋を置いてから、何事もなかったかのように家の中に戻る。


「友之、どうしたの?」
「ちょっと忘れ物を思い出して、取りに戻ったんだ」
「あらあら、早く準備したのが無駄になったわね」
「こういう事もあるさ」
 苦笑した真由美に笑い返しながら友之は自室に戻り、愛車の鍵を取り上げた。そして再び玄関を出てからガレージに向かい、袋を手にその中に入ってから、愛車のトランクを開けてそこに袋をしまい込む。


「よし、後はこれをどうするかだが……」
 そして車とガレージに鍵をかけた友之は、新たに発生した問題について考え込みながら、最寄り駅へと向かった。
 そんな事のあった翌日、友之は仕事が終わってから、愛車で従姉夫婦の家を訪れた。


「それで? 今日はどうした。最近お前は俺達のところに厄介事しか持ち込まんが、土産では無くて明らかに不審物持参で来るとは、いい度胸をしているな」
 ビニール袋片手に若夫婦のリビングに入った友之は、確かに土産の一つも持参するべきだったと後悔しながら、開口一番嫌味を投げつけてきた清人に頼み込んだ。


「危ない物は入っていませんから。すみませんがこれを当面、こちらで預かって貰えないでしょうか」
「中身は何だ?」
「ベビー服です。多分未使用の」
「はぁ?」
 困惑顔になった清人だったが、真澄は察する所があったらしく、真顔で手を伸ばしてくる。


「友之、ちょっと中を見せて貰っても良いかしら?」
「ええ、どうぞ」
 そして中身を取り出して確認した真澄は、独り言のように呟いた。  


「そうね……、包装から出して、一度糊を落とす為に洗っているけど、未使用のブランド物のベビー服だわ。しかも女の子の新生児用。これって……」
「多分、いえ確実に、俺の妹用に揃えていた物ですね」
「おばさま、その子の為に用意していた物を、ずっと大事に取っておいたのね。でも、それをどうして友之が、ここに持ってくるの? おばさまは知っているの?」
「しかもどうして、半透明のビニール袋なんかに纏めて入れて持ってくる。てっきりゴミかと思ったぞ」
 不思議そうに尋ねた真澄に続き、聞いていた話を思い出た清人が苦言を呈してきた為、友之は正直に事情を説明した。


「母がこっそり資源ゴミに出したこれを、俺が内密に回収したもので。昨日の朝回収したこれを、ガレージ内の車のトランクに入れて保管して、今日こちらに持って来ました」
「…………」
 そこで夫婦は困惑気味に顔を見合わせたが、思い当たった清人が友之に確認を入れた。


「友之。俺達はまだ報告を受けていないが、ひょっとしてあの女と結婚する事になったのか?」
 そう問われた友之は、まず真っ先に言わなければならなかった事を思い出した。
「あ、すみません。そういえば、報告するのをすっかり忘れていました」
 その取って付けたような報告を聞いた清人が、本気で呆れ返る。


「お前な……、他人を巻き込んであれだけゴタゴタした挙げ句に、何だその言い草は」
「おめでたい事じゃないの。文句は言わないで。おめでとう、どうなるか心配していたのよ?」
「すみません。ありがとうございます、真澄さん」
 渋面になった夫を真澄が苦笑しながら宥め、そこで一瞬空気が緩みかけたが、すぐに清人が難しい顔になって溜め息を吐いた。


「それで、お前達が事実婚をする関係上、そう易々と子供を作るわけにもいかないので、それは諦めてくれと言ったから、真由美さんがこれを処分する気になったわけだ」
「え? どうして? 別におばさまがこれを持っていたって、構わないじゃない」
 夫とは対照的に不思議そうに尋ねた真澄に、清人が困り顔で言い聞かせる。


「真澄。子供を作らないと宣言している夫婦の姑が、後生大事にベビー服なんかしまい込んでいるのが分かったら、嫁としてはいい気がしないだろう?」
「でも沙織さんは、他人の荷物を漁るような真似はしないでしょう?」
「当たり前だ。そんな女を、友之や真由美さんが気に入るわけがない。それでも何かの拍子に見つけてしまう可能性は皆無では無いし、真由美さん本人が、これまで通りしまい込んでおくのを嫌がったんだろう」
「そうだと思います。変に未練がましく持っているより、この機会に処分しようと考えたのかと」
 友之が自分の推測を述べたが、それでも真澄は納得しかねる顔付きで話を続けた。


「でも、幾ら何でも……。三十年近く、手元に置いていたものでしょう? 娘は無理だけど、孫が産まれたら使って貰おうと思って、大事に取っておいた物なんじゃないの? 孫に使えないからって、捨ててしまうのもどうなのかしら……」
「俺としても、どうしてもそのまま放置して捨てる気にはなれなくて、母さんには内緒で集積所から持ち帰ってしまったんです」
 そこで完全に状況を理解した清人達は、真顔で頷き合った。


「だが間違っても、お前の家には置いて置けないよな」
「どこにどうしまい込んだって、いつかは真由美さんか沙織さんに見つかるわよね。……下手をすると、かなり気まずい状況になりかねないわ」
「そうなんです。それで申し訳ありませんが、当面これを預かって貰えませんか?」
 神妙に友之が再度頼み込むと、二人は苦笑いの表情で力強く請け負った。


「分かった。期間無制限でここで預かってやる。心配するな」
「この家は庶民に喧嘩を売っていると思われる位の豪邸だから、広さも部屋数も有り余っているし、私達のプライベートスペースは他の使用人の人達は一切入れずに、清人が清掃管理しているから大丈夫よ。万が一にも、これの事が外部に漏れる事は無いわ」
「真由美さんは勿論だが、彼女と仲の良いお義母さん達にも絶対に口外しないから安心しろ」
「ありがとうございます。でも清人さん、相変わらずまめですね」
「……何か?」
「今のは純粋な誉め言葉ですから」
 相変わらず本業をしっかりこなしつつ、主夫業も完璧な義理の従兄に対する賛辞がうっかり口から漏れ出た友之は、軽く睨まれて笑顔を深めた。


「ところで結婚式とか、披露宴の類はどうするの? 対外的に秘密なら、公にするのは難しいのではない?」
「ええ、するにしても、お互いの家族だけで執り行う事になるでしょうね。その辺りも、これからの検討課題です。ですから清人さん達も招待したいのは山々ですが、キリが無くなりそうなので……」
「そうね。招待するのは、伯父や伯母位までかしら。残念だけど仕方がないわね」
「盛大にするのもかなり面倒だが、内輪だけでするのもそれはそれで色々ありそうだな。特にあの女の父親は、離婚はしたが存命なんだろう? 一悶着ありそうだよな」
 ニヤリと意地悪く笑いながら指摘してきた清人に、予想の範囲内だった友之は余裕の苦笑いで言い返す。


「どう見ても、面白がっていますよね? 寧ろ揉めるのを期待していませんか?」
「これの保管管理費位は、楽しませて貰えないとな」
「色々お世話になっていますし、進行状況の報告位はしますよ」
「それは楽しみだ。酒の肴にちょうど良い」
「悪趣味よ、素直に祝ってあげなさい。友之。披露宴はともかく、私達で勝手に祝いの席を設ける位は構わないわよね?」
「ありがとうございます」
 それからは友之は暫く従姉夫婦に弄られ続けつつ、楽しくひと時を過ごした。



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