夢見る頃を過ぎても

篠原皐月

第21話 某作家の多忙な一日(2)

「それでは失礼します。また寄らせて貰います」
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
 店の出入り口から出た所で挨拶を交わし、深々と頭を下げた根本に背を向けて清人は最寄り駅へと向かってゆっくりと歩き出したが、その歩みを鈍くする物が横の道路を走り抜けて行った。


(あれは……、ロータス・エヴォーラ? 珍しいな。まさかあいつがこの時間、街をフラフラしている筈は無いが) 
 何となく見覚えがある車に、思わずそんな事を考えていると、その2ドアタイプのロイヤルブルーが映えるミッドシップ・スポーツカーが、速度を落としつつウィンカーを出して路肩に寄せて止まった。そして音もなく歩道側の窓が開き、その横を清人が通りかかった時に車内から声がかけられる。


「こんな所で奇遇ですね、清人さん」
 聞き覚えが有り過ぎるその声に、清人は驚いて足を止めて車内を覗き込んだ。
「友之? お前、こんな時間にどうした。今日は休みなのか?」
「午前中は以前の休日出勤の代休を取ったんですが、これから直接商談先に出向いて部下と合流する所です」
 それを聞いた清人が、滑らかな流線形を形作る友之の愛車をしげしげと眺める。


「……商談の場に、これを乗り付けるのか?」
「ええ、勿論近くのコインパーキングに止めますが。それで蒲田の手前まで行きますので、方向が同じなら乗って行きませんか?」
 思わぬ誘いの言葉に、清人は驚きを引っ込めて少し考え込んでから口を開いた。


「それなら品川辺りで降ろして貰えれば助かる」
「どうぞ、乗って下さい」
 その誘いを清人は小さく頷いて受ける事にし、車の流れを見ながら車道側へと回り込んで助手席へと乗り込みながら声をかけた。


「悪いな、友之」
「いえ。本当はこれに男は乗せない事にしてるので、今日は部下と現地集合現地解散にしてるんですが、清人さんは特別ですから」
「お前の下だと気苦労が多そうだ」
 笑ってブレーキを解除しつつアクセルを踏み込んだ友之に、清人は苦笑する事しか出来なかった。


「そう言えば清人さん。あそこで何をしてたんですか?」
 徐々にスピードを上げて走行車両の流れに乗ったところで、先程目に入れた光景を思い返しつつ友之が何気なく尋ねたが、何故か清人は曖昧に言葉を濁した。


「単に、ちょっと知人と挨拶してただけだ」
「そうですか……」
 一瞬友之は怪訝な顔をしたものの、深く突っ込む様な真似はせず、そこでその話は終わった。それに安堵しつつ、改めて友之の出で立ちを上から下まで眺めた清人は、確認を入れてみる。


「それより……、お前、これから仕事先に出向くって言ってたよな」
「はい。小規模ですが研磨技術でなかなか良い物を作る工場がありまして、そこに新規で下請けの依頼と、金型製作の会社ではそれに関連する技術を、うちの仲介で特許申請する話を纏めに行きます」
 あっさりと真顔で告げた友之に、清人は胡乱気な視線を向ける。


「要するに、小規模な町工場に出向くわけだろう? 近くに停める車はともかく、そんな場所に如何にも仕立ての良いスーツなんか着て行って、白眼視されないのか?」
 半分は老婆心からきている事が分かっているその台詞に、友之はフロントガラスの向こうを見たまま小さく笑って答えた。


「されますね、最初は」
「後からは平気だとでも言うのか?」
「それはまあ……、取り敢えずお互いの人となりを知れば、纏っている服なんて些細な事でしょう? それに最初嫌味で生意気な奴と思わせておけば、後から結構気の良い奴と思わせた時、好感度がアップし易いんですよ。逆だったら目も当てられません」
「確かにそうだが」
 一応理に適う事を述べた友之に清人が小さく肩を竦めると、友之が今度は嫌そうに顔を顰めながら話を続けた。


「それに……、働き始めた当初、周囲に気を遣って安物を着ていたら、付き合っていた女達から『似合わない』と散々言われた挙げ句、悉く商談をしくじりましてね。開き直ってテーラーメードばかり着るようにしたら、上手くいくようになりました」
 そこまで聞いて、清人は本気で笑ってしまった。


「ははっ……、お前が験担ぎをするとは意外だったな」
 それを聞いた友之は、苦笑いしながらもそれを抑えて淡々と続ける。
「なんとでも言って下さい。俺にとってはこれが最良の仕事着で、相手に最大限の敬意を払っている結果ですから」
 そこで清人も笑いを収め、納得した様に頷いた。


「なるほどな、お前にとってそれは町工場の作業服と何ら変わらないと、そういう訳か」
「そういう事です」
「確かにお前に安物は似合わないし、自分に不釣り合いな物を着て出向くのは却って先方に失礼かもな。しかしそれは、互いのスタイルを尊重し合う所まで、持っていける自信が有ればこそだと思うが」
 清人が冷静に評したその台詞に、友之が深い溜め息で応じる。


「誰でも清人さん位の理解力と包容力を持っていてくれれば、仕事も人生も遥かに楽なんですが。上にも下にも頭の固い奴が多すぎて、苦労してます」
「仕事も人生も苦労するものと相場が決まってるし、俺は寧ろお前の周りの人間の方に同情する」
「言ってくれますね。ところで清人さんは、その苦労の多い自分の人生に満足してるんですか?」
「いきなり何だ?」
  突然真顔になって問い掛けてきた友之に清人は本気で面食らったが、友之は飄々と質問を続けた。


「単なる好奇心です。清人さんの人生における夢は、どんな物なのかなと思いまして」
 それを受けて、清人が僅かに首を傾げつつ、取り敢えず口にしてみる。
「夢、か……。作家として大成することかな?」
 しかしその返答は友之の気に入らなかったらしく、些か怒った様な口調で反論された。


「殊勝な顔で、それらしい事を言わないで下さい。デビューするまで作家の『さ』の字も言ってなかった人が。柏木の内定を蹴ったと人伝に聞いた時には、自分の耳を本気で疑いましたよ」
「……そう言われてもな」
 何がどう相手を怒らせたのか分からなかった清人は、憮然としながら肩を竦めた。信号で停まった拍子にそんな清人の姿を目にした友之は、何とも言えない顔付きで清人を眺めてから、再び前方を見やる。
 そして進行方向の信号が青に変わって再び走り出すと、清人にとっては予想外の内容を、友之がぼそりと口にした。


「最近……、何となく、佐竹の叔父さんの事を思い出す機会が多いんですよ」
「親父の事?」
 怪訝な顔をして清人が運転席を見やると、その視線を感じた友之が、前を見たまま小さく頷いた。


「ええ。出会ったばかりの頃、生意気にも面と向かって尋ねた事が有るんです。『こんな小さな洋食屋で一生を終わるなんて、つまらないですよ。もっと立派な店を持ちたいとか、そういう大きな夢は無いんですか?』って」
「初耳だな。それで? 親父は何て言ったんだ?」
(子供の戯れ言にしても失礼だろう?)という呆れ半分、(そう言えば親父とその類の話はした事が無かったな)という好奇心半分で問いただすと、友之は淡々と続けた。


「『店は家族を養う為にやってるから、規模はさほど問題じゃない。店を大きくするより難儀な夢を持っているし』と言い返されました」
「へぇ……、どんな夢だって?」
「『自分にとって大事な人達を、ずっと幸せで居させてあげる事』だそうで、『これがなかなか大変なんだ。俺は一度失敗しているし』って笑って言われて、咄嗟に次の言葉が出ませんでした」
「そうか……」
 思わず神妙な顔で清人が黙り込み、車内に重苦しい空気が漂いそうになった為、友之はわざと明るめの口調で言葉を継いでみた。


「叔父さん曰わく、『ちょっと油断すると足元をすくわれるものだから、その夢を叶える為には死ぬまで努力し続ける必要がある。だから死ぬまで夢が叶ったかどうか分からない』そうで、そう言った時の笑顔が凄く印象的でした。だから俺はその時、将来今の叔父さん位胸を張って言える様な夢とか目標とかを持てたら良いなと、子供心に思ったんです」
「持っているのか?」
 すかさず突っ込んできた清人に対し、友之は舌打ちを堪える様な表情になった。


「それは秘密です。それに話を逸らさないで下さい。今はあなたの話をしてるんですから」
「俺が夢を持っていようがいまいが、お前に関係無いだろう?」
 今度は清人が不愉快そうに眉を寄せたが、友之は構わずに話を続ける。
「気になったんですよ。当時の叔父さんと比べると、今のあなたの方が資産でも社会的地位でも上ですが、満たされていない様に見えるので」
 静かに指摘された清人は、膝の上に乗せたブリーフケースを見下ろしながら淡々と応じた。


「単にお前の気のせいだ。仕事も人生も充実してる」
「そうですか。ですが俺的には今のあなたより、当時の叔父さんの方が数倍魅力的だと思っていますが」
「お前の人を見る目は正しいさ。確かにお前の言う通り、外見や資産や社会的地位は俺の方が数段上だが、中身は親父の方が数倍良い男だ」
 そう断言した清人に、友之はチラリと横目で白い目を向けた。


「……今、さり気なく外見は自分の方が良い男だと、臆面も無く言い放ちましたね?」
「俺は基本的に嘘が吐けない人間だ」
「そうですか……」
 何ら恥じる所無く、清々しく言い切った清人に友之は疲労感を覚えながらも、次の言葉を繰り出した。


「ところで清人さん、真澄さんは元気ですか?」
 その問いかけに、清人が友之の方に向き直り、納得しかねる口調で反論した。
「旅行から帰って来たのは一昨日だし、その時元気だったから元気じゃないのか? それに第一、どうしてそれを俺に聞く。同じ家で暮らしてて、勤務先も同じ浩一に聞くのが筋だろう?」
「軽い嫌がらせ、ですかね?」
 薄く笑いながらそう言った友之に、清人は付き合いきれないとばかりに進行方向に向き直った。


「そういう物は、仕掛ける相手にとって意味が無いと無駄だぞ?」
「清人さんには無意味ですか?」
「ああ」
「それなら……、俺が真澄さんを貰っても構いませんね?」
 前方を見ながらサラッと紡がれた言葉に、清人も前を見ながら呆れ気味の口調で応じる。


「だから、どうしてそんな事を、一々俺に言う必要がある」
「それは……、さっきも言いましたが、清香ちゃんの“お姉ちゃん”が真澄さんなのと同じ様に、清人さんは俺達の“お兄ちゃん”で特別ですから」
「気色悪い」
 端的に言い切られた友之は、そこで堪えきれずに失笑した。
「酷いな。そんな風に一言で切って捨てなくても……」
 クスクスと小さく笑い続ける友之を横目で見ながら、清人が続ける。


「第一、俺は真澄さんの家族でも保護者でもない。俺に断りを入れる必要はない筈だ」
「まあ、世間一般的にはそうなんですがね。一応、筋を通しておこうかと」
「お前の頭の中は、時々理解不能だな……」
 そう呟いてから、清人は車の前方に視線を戻しながら、冷静に評した。


「俺の感想を求めているなら言ってやるが、別に良いんじゃないか? お前達なら見た目も力量も家格も、釣り合いが取れていると思うし」
「そうですか。ありがとうございます」
 愛想笑いを浮かべながらも友之はその目に物騒な気配を宿していたが、口に出しては何も言わなかった。そして少しの間無言が続いてから、徐に友之が声をかける。


「清人さん、そろそろ品川駅前ですが、どの辺で降ろせば良いですか?」
 その問い掛けに、清人は冷静に現在位置を確認すると指示を出した。
「そうだな……、このまま行って、三つ目の信号を過ぎた辺りで降ろしてくれ」
「分かりました」
 そうして清人の指定した位置で友之が静かに車を止めると、清人は後続車の様子を見ながら車道に降り立ち、運転席側に回り込んだ。そして開けられた窓越しに、何事も無かったかの様に、笑顔で礼を述べる。


「ありがとう、友之。助かった」
「いえ、どういたしまして。それじゃあ失礼します」
 友之も何食わぬ笑顔で言葉を返し、再び車を走らせた。そしてバックミラーで清人がどこかに向かって歩き出したのを確認した途端、苦々しげな顔付きになって悪態を吐く。
「全く……、あんな口調で言い切るとは。顔は見られなかったが、同じ様に平然としてただろうし。可愛げが無さ過ぎる」
 そのまま暫くブツブツと口の中で文句を言っていた友之だが、すぐ近くの交差点で再び止まった時、ハンドルに両腕を持たれかけさせて真剣な口調で呟いた。
「やはり、ちょっとつついた位じゃ無理か……。正直、真澄さんの方には、あまり働きかけたくは無いんだが……」


 友之がそんな事を呟いていた頃、清人は幹線道路から一本外れた、しかし人通りは十分多い通りをブリーフケース片手に歩いていた。そして全国展開しているアンダーリサーチ社品川本社が二階から四階に入っている商業ビルに、清人は足を踏み入れて迷わず二階へと進む。
 それから目指す自動ドアを通り抜け、出入り口に傍の机に座っている受付嬢に来訪の目的を告げた。


「失礼します。長野さん、桑原さんとお約束している、佐竹と申しますが」
「少々お待ち下さい」
 すかさず内線を取り上げた彼女は短いやり取りをしてから受話器を戻し、静かに立ち上がって清人を促す。


「先に長野が対応致しますので、こちらにどうぞ」
「ありがとうございます」
 そうして勝手知ったる応接室に通されて数分後、白髪混じりの五十がらみの男性が片腕に大判の封筒を抱えて姿を現し、出されたお茶を飲みながらソファーで寛いでいた清人に、引き締まった身体を屈めて頭を下げた。


「やあ、お待たせしました、先生」
「いえ、予定時刻より早く着いたので、構いません」
 鷹揚に清人が頷くと、アンダーリサーチ社で個人の素行調査・生活トラブルセクション所属の長野は、清人の向かい側に座って封筒から書類を引き抜きつつ、挨拶もそこそこにビジネスライクに報告を始めた。


「それでは早速、昨日の報告からさせて貰いますが、別にどうと言う事は有りませんでしたよ?」
「そうですか?」
 差し出された報告書を受け取って中身を確認しつつ清人が応じると、長野は小さく肩を竦めた。


「《華郷》の前で彼女は迎えの車に、相手はタクシーに乗ってあっさり別れて行きましたし。一応隣の部屋を押さえて、店にバレない様に聞いていた話の中身を、文章化した物をそれの最後に付けておきましたが……。これがまた、小難しい話ばっかりで」
「詳細は報告書で確認しますので、結構です」
「……はいはい」
 思わず愚痴っぽくなりかけた話を清人に打ち切られ、長野は思わず居住まいを正した。そして次に弁解じみた台詞を繰り出す。


「それで……、先生から話を頂いてまだ一日しか経っていませんし、何分調査対象者が普段は海外在住ですので、簡単な背景しか分かりませんでしたが」
「取り敢えずはこれで結構です」
 依頼人が特に不満を表明しないまま報告書に目を走らせているのを見て、長野の中でちょっとした悪戯心が頭をもたげた。


「因みに先生? この二人がどこかのホテルにしけ込んだとして、それをこの場で報告したらどうしましたか?」
 その問いかけに、清人は報告書から長野にゆっくりと視線を移し、それはそれは楽しそうな笑顔を浮かべてみせた。


「……どう、とは? 別に報告を受けるまで俺は知りようがありませんし、いつもと変わらず今日の朝日は拝めたと思いますよ?」
 笑顔の筈なのに眼が全然笑っていないという、傍から見れば身の毛がよだつ代物を間近で見せられた長野は、恐れや驚きを通り越してひたすら呆れた。


(という事は、最後まで傍観に徹してそのまま真っ正直に報告したら、明日の朝日は拝めなかったかもしれないって事だよな? しかしまあ、なんつう真っ黒な笑顔だよ。……やっぱりこの人の依頼は、若い連中には無理だな)
 長野がそんな事を考えてから、表面的にはいつものやり取りに戻った。


「それでは引き続きお願いします」
「承りました。それと、例の妹さんの相手に関しては、こちらのレポートです」
「分かりました」
 長野が新たな報告書を取り出し清人に渡してから、幾つかのやり取りをし、頃合いを見て清人にお伺いを立てた。 


「特にご質問が無ければ、そろそろ桑原に代わりますが」
「そうですね、お願いします」
 それを受けて、長野が備え付けの内線に手を伸ばし、同僚を呼び出す。
「桑原、佐竹氏が第一応接室に来てる。代わってくれ」
 そしてアンダーリサーチ社企業信用調査・内偵業務セクション所属の桑原が、自分と同様に書類を抱えて応接室のドアを開けると、それを機に長野は立ち上がった。


「それでは失礼します」
「ごくろうさまでした。これからも宜しくお願いします」
 傍目には笑顔で長野を労った清人だったが、次の瞬間桑原が抱えて持って来た書類に、鋭い視線を向けた。そして早速報告を受ける清人に背を向けて応接室を出た長野は、一気に疲労を覚えて深い溜息を吐く。


(なんだかなぁ。本当に、年々面倒になってくるよな、あの人の依頼は……。それだけ金回りも良くなってると言えるが、正直そろそろ手を引かせて貰いたいんだが)
 密かに長野はそう思ったものの、自分の抜けた穴を誰が埋めるのかと考えた場合、該当しそうな何人かの後輩の顔を思い浮かべて(まだまだこいつらには無理だ……)と一人項垂れたのだった。


 長野に引き続き、桑原から依頼した調査内容の説明を一通り受けた清人は、必要書類を受け取ってビルを出た後、山手線で品川から新橋まで移動し、更に地下鉄に乗り換えた。そして改札を出てから歩き出し、薄暗くなっている周囲の景色を眺め、腕時計で時間を確認しながら独り言を呟く。


「意外に時間がかかったな。まあ、直行すれば支度を手伝う時間は有るか……」
 当初、珈琲でも飲みながら受け取った報告書に目を通してから次の訪問先に出向くつもりだったのだが、あっさりとその予定を翻した清人が道を進むと、駅から徒歩五分程で目的のマンションに辿りついた。そして迷わずエントランスの呼び出し用モニターに部屋番号を入力し、応答が有った事を確認して声をかける。


「翠先輩、お邪魔します」
 モニターで来客者を確認したらしいここの住人が、僅かに驚いた声を返してきた。
「清人君!? 随分早かったじゃない。達也さんが時間を間違って伝えたのかしら?」
「いえ、鹿角先輩は確かに十九時と連絡して来ましたが、甲斐性無しのご亭主の代わりに育児休業中の先輩をお手伝いしようと、早めに参上しました」
 笑いを含んだ声でそんな事を言われた相手は、小さく吹き出して自動ドアの解除スイッチを押した。それに伴ってエントランスから住居スペースに繋がるドアが、スルスルと左右に開く。


「ありがとう、遠慮無くこき使わせて貰うわ。さあ、入って」
「失礼します」
 そうして人好きのする笑顔を浮かべた清人は、促されるまま奥へと足を踏み入れた。



コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品