世界が色付くまで

篠原皐月

第55話 後悔まみれの人生でも

 予め伝えてあった時間ぴったりに小笠原家に到着し、豪邸に部類するその敷地内に停車して、清人が地面に降り立つと、それを待っていたかの様に、この屋敷に今現在下宿中の清香が、玄関から出て駆け寄って来た。


「お兄ちゃん、いらっしゃい! 真一君と真由子ちゃんは?」
「二人とも、後部座席に乗せている。連れて行くのを手伝ってくれるか?」
「勿論そのつもりよ。二人とも、さやかおねえちゃんよ~!」
 勢い良く後部座席のドアを開けながら、清香が中に向かって呼びかけると、「うきゃー!」「さぁーねぇえ!」などと小さな子供の上機嫌な声が車外に響いた。そこで思わず、清人が突っ込みを入れる。


「……叔母さんだろうが」
「乙女心は複雑なの! 三十路男は黙ってて!」
 兄の呟きを耳聡く聞きつけた清香は、半眼で振り返って言い放ち、再び笑顔で車内を覗き込んだ。


「いらっしゃい、元気だった~?」
「お前も、言うようになったよな……」
 いそいそと子供達のチャイルドシートのベルトを外しにかかった清香の背後で、清人が深々と溜め息を吐く。更にその背後から、清香に続いて玄関から出て来た恭子が、声をかけた。


「ご苦労様です」
 浩一をあっさり振った挙句、真澄に逃亡を阻止された身の上としては、何を言われるかと身構えながら次の言葉を待った恭子だったが、案に相違して清人は軽く眉を寄せたものの、この間のあれこれについては言及しなかった。


「ああ。子供を抱くので、荷物を頼む」
「承知しました」
 土産らしい箱が入った紙袋を持たされ、清人から預かった鍵で車をロックした恭子は、一人ずつ抱っこした清人と清香の後に付いて、玄関へと向かった。


(うわぁ、仏頂面じゃないけど、何とも微妙な表情。気持ちは分かるけどね)
 取り敢えず、子供同伴でのお宅訪問で考える事が有り過ぎて、自分にあまり構うつもりはないと見て取った恭子は、少し安堵しながら家の中に入り、清人を案内して応接間へと入った。


「やあ、清人君。二人も子供を連れて来ると、大変だろう」
 満面の笑顔でソファーを勧めてきた勝に、真由子を抱っこした清人が、慎重に座りながら応じる。


「いえ、車に乗せるのは義母が手伝ってくれましたし、乗ってからは二人ともご機嫌でしたので。それよりも、この度は真澄がかなりご無理を言ってしまった様で、ご迷惑をおかけしました」
「それは別に、大した事では無いのでご心配無く」
「それに恭子さんには、この間収納庫の整理などをして頂いて、大変助かりました」
「そうですか。それは良かったです」
 にこにこと話す勝の隣で由紀子も微笑み、清人はそれに笑顔を見せながらも、斜め前に立っている恭子に、呆れ気味の視線を投げた。


(お前はこんな所で、何をしているんだ?)
(だって何もしないでお世話になるって、心苦しいんですよ! 基本、貧乏性ですし!)
 そんなアイコンタクトをしてから、清人が話を続行させた。


「それでご迷惑をおかけした他にも、真澄が何やらこちらに失礼な事を申した様な事が、漏れ聞こえておりまして……」
(失礼な事を言ったんじゃなくて、えげつない脅しをかけたんですけどね)
 思わず遠い目をしてしまった恭子だったが、主夫婦は年長者の余裕で、笑って誤魔化す。


「それは、ちょっとした誤解があるようですな」
「そうですとも。お気遣いなく」
「……ありがとうございます」
 そう言われてこれ以上踏み込めなかった清人は、曖昧に笑って頷いた。そこで話題を逸らす必要性を感じた由紀子が、嬉しそうに言い出す。


「でも今回、真一君と真由子ちゃんの顔が見られて嬉しいです」
「もう由紀子が、今朝からそわそわしていましてね」
「そうですか」
 苦笑しながら勝が口を挟んできた為、釣られて清人の口元も緩む。そしてこの間、真一を抱っこして清人の隣に座っていた清香が立ち上がり、由紀子の前まで歩いて行って声をかけた。

「じゃあ由紀子さん、真一君を抱っこしてあげて下さい!」
「え? でも……」
 清香に連れられて柏木邸に出向いた時も、二人を笑顔で眺めているだけで手は出さなかった由紀子が躊躇っていると、彼女の様子を窺う視線を感じた清人は、苦笑いしながら快諾した。


「構いませんよ? どうぞ」
「お預かりします」
 そして慎重に清香から真一を受け取った由紀子は、嬉しそうに腕の中の孫息子に笑いかけた。


「こんにちは、真一君。また一回り、大きくなったわね」
 すると真一は、一瞬考え込む様な表情になってから、満面の笑顔で一言叫んだ。


「……ゆぅばっ!」
「え? どうしたの? 真一君」
「何だ? 何か気になるのかな?」
「ゆーばぁ! ゆーばーばっ!」
 小さい両手を振って何やら主張する真一に、由紀子と勝は戸惑ったが、清香と恭子はある可能性を思いついた。


「ええと……、ひょっとしておばさまの事でしょうか?」
「『由紀子おばあちゃん』だから、『ゆうばぁば』で『ゆーば』とか?」
 それを聞いた勝と由紀子は驚いて顔を見合わせたが、ここで清香は「お兄ちゃん、真由子ちゃんを貸して」と問答無用で真由子を奪い取り、勝の目の前に連れて来て、腕の中の彼女に語りかけた。


「じゃあ真由子ちゃん、この人は誰か分かる?」
「う?」
 それに真由子はちょっと不思議そうな顔になってから、急ににこにこ笑いながら声を上げた。


「まーじぃ! まぁじーじ!」
「……何か『勝おじいちゃん』の略っぽい」
「と言うかこの二人、0歳児なのに周囲の状況が分かってるみたい。さすが先生と真澄さんのお子さん、末恐ろしいわ……」
 思わず呟いた清香と恭子だったが、ここに至って勝と由紀子のテンションは最高潮になった。


「真一君、そうよ! ゆうばぁばよ! 凄いわ、とってもお利口さんなのね!」
「おう、真由子ちゃん、まーじぃじだぞ? 両親に似て美人な上に頭も良くて、将来が楽しみだな!」
「じゃあ真一君、一緒に遊びましょうか? 面白いおもちゃを一杯用意しておいたのよ?」
「真由子ちゃん、恭子さんが綺麗に片付けてくれたから、幾らハイハイしても走り回っても平気だぞ? じゃあ清人君、恭子さんと話でもしてゆっくりしていてくれたまえ。その間子供達は、私達がしっかりお世話するから」
「はあ……」
 由紀子だけでは無く、勝まで清香の腕から真由子を受け取って抱きかかえ、意気揚々と部屋を出て行くのを、半ば呆然としながら清人は見送った。そしてその姿が完全に消えてから、漸く我に返る。


「おい、一体二人を、どこに連れて行ったんだ?」
「ご覧になりますか?」
「一応」
「それなら付いて来て下さい」
 そして恭子と清香の先導で廊下を進んだ清人は、三つ離れたドアの前で立ち止まった。彼女達が静かにドアを開けて中を見る様に促した為、その隙間から室内を覗き込んだ清人は呆気に取られる。


「何だ、ここは?」
「子供部屋です」
 楽しそうな声が聞こえてくる室内には、家具と言える物が全く無く、清潔そうなカーペットが敷き詰められた広々とした空間だった。如何にも子供が喜んで、好きなだけおもちゃを広げて遊べる状態ではあったが、清人は当然の疑問を口にする。


「……今現在、この家に小さな子供は居ないだろう?」
 その問いに、恭子が淡々と答えた。
「先生が子供を連れてお詫びに来ると聞いてから、大急ぎで使っていない客間の家具を全部運び出して、隅々まで掃除してカーペットを敷いて、ぶつかっても痛くない様に布製の玩具箱を用意して、そこに玩具をたっぷり用意したんですよ」
「恭子さん……、昨日から一時間おきに、はたきと掃除機をかけていたの」
 清香の補足説明を聞いて、清人は呆れ返った。


「お前は馬鹿か?」
「由紀子さんがそわそわして掃除機をかけ始めるので、その都度私が代わっていたんです!」
 憤怒の形相の恭子から視線を逸らし、清人はやや強引に話題を変えた。


「ところで、どうして同じ木馬が二つあるんだ? 無駄だろうが」
 その質問に、恭子は怒りを抑えながら答える。


「由紀子さんが一つ買ったら、小笠原さんが『真一君と真由子ちゃんで取り合いになったらどうするんだ』と言って、もう一つ買ったんです」
「一応、手綱は色違いだけど。初孫初訪問で、もう夫婦で舞い上がってるよね? おばさまはともかく、おじさまとあの二人は血が繋がって無いんだけど、もうそんな事はどうでも良いみたい」
「…………」
 清香がしみじみと感想を述べると、清人は無言で額を押さえた。そこで静かにドアを元通り閉めた恭子が提案する。


「取り敢えず二人は由紀子さん達に任せて、応接室に戻りませんか?」
「そうだな」
 そして三人で歩き出したが、清香が思い付いた様に言い出した。


「私、お茶を淹れたら、お昼の支度を始めてるね? 今日家政婦さんはお休みだから。恭子さんは休んでて。先週色々大変だったし」
「……じゃあ、お言葉に甘えさせて貰うわ」
 そして清香と別れて応接室に戻った恭子だったが、一緒に戻った清人から目線で「座れ」と命じられた為、渋々彼の正面に腰を下ろした。


(はあ……、気まず過ぎる。絶対、私がトンズラするつもりだったと分かってるわよね)
 応接室に入るなり、急に面白く無さそうな表情になった清人を盗み見ながら、恭子は取り敢えず気になった事を口にしてみた。


「先生が由紀子さん達の事を、二人に教え込んだんですか? これまで二・三回しか会ってない乳幼児が、自然に見分けたり呼び分けたりしませんよね?」
「それは俺じゃない。真澄だ。生後六ヶ月の頃から毎日二人の大判の写真を見せて、呪文の様に『こっちがゆうばぁばで~、こっちがまーじぃじよ~』と呟いていた」
「それで自分の子供に、顔と名前を刷り込んだんですか。真澄さんの執念を感じますね」
 思わず唸ってしまった恭子に、清人が溜め息混じりに述べる。


「真澄はやはり、香澄さんの姪だな。清香に俺への悩殺台詞を覚え込ませようとした香澄さんと、行動パターンが同じだ。傍から見ると、ちょっと怖かった」
「それ以上に、生後十か月でバッチリ応えちゃう、真一君と真由子ちゃんも怖いですよ。普通無理ですから。並みの人間じゃありませんよね?」
「人の妻子を、化け物よばわりするな」
「先に怖いと言ったのは、先生じゃないですか」
 そこで何となく無言で睨み合ってしまうと、タイミング良く清香がお茶を二人分淹れて持ってきた。それを笑顔で受け取って一口飲んだ所で、恭子は平常心を取り戻す。それは清人も同様だったらしく、清香が台所に戻って再び室内に二人きりになってから、静かに口を開いた。


「……元気そうで何よりだ」
「はぁ……、どうも」
「ちょっとはやつれたかと思いきや、しっかり食って寝て、顔が丸くなったんじゃないか?」
「いきなり何、失礼な事をほざくんですか!?」
 思わず声を荒げた恭子だったが、清人が真顔で謝罪する。


「気に障ったら悪い。つい本音が出た」
「そうですか……」
(怒っちゃ駄目よ、恭子。こういう感じは久しぶりで、余計にムカつくけど)
 何とか怒りを静めながら再びお茶を飲んだ恭子に、唐突に清人が言い出した。


「俺達とこれ以上関わり合いになりたくない、お前の気持ちはよく分かる。だからこれから二年以内に、相手が誰でも良いから結婚しろ」
「今度はいきなり、何を言い出すんですか?」
 目を見開いて茶碗を口から離した恭子が問いただすと、清人は真剣な顔付きで問いかけた。


「お前が加積邸から出された時の条件、浩一から聞いていないか?」
「……いえ、特に何も」
「やっぱりそうか……」
「何ですか?」
 疲れた様に溜め息を吐いた清人を見て、恭子は僅かに顔を顰めたが、ここで予想外の事が告げられた。


「屋敷を出てから十年以内にお前を誰かと結婚させないと、お前を夫人が、二億で買い戻す約束だった」
「え? あの……」
 何の冗談かと言い返しそうになった恭子だったが、真剣そのものの無い清人の表情に、思わず言葉を飲み込んだ。そして素早くこれまでのあれこれを頭の中で思い浮かべ、その理由に合点がいく。


(ああ、なるほど。そういう事か……)
 そこで笑いを堪える表情になった恭子が、一応確認を入れた。


「だから先生は、借金返済にかこつけて、私に色々な事をさせていたんですね? 否応なく、交友関係が広がる様に」
「そうだな。どいつもこいつも、友達止まりだったが」
 忌々しげにそう口にした清人に、恭子の苦笑が深くなる。


「無茶言わないで下さいよ。大抵の人は、一億近くの借金がある女なんて、御免でしょうが?」
「だから結婚相手は、俺が探してやると言ってるんだ。ついでに残った借金は、結婚祝い代わりにチャラにしてやる。ありがたく思え」
 もの凄く面白く無さそうに、恩着せがましく言われた恭子は、笑いを消して眉根を寄せた。


「……先生」
「何だ?」
「今度は、何を企んでいるんですか?」
 鋭い視線を向けてくる相手に、清人は疲れた様に溜め息を吐いて応じる。


「お前な……。俺は単に、周囲と隔絶されて時間も止まってる様なあの屋敷に、お前を戻す気は無いだけだ」
「どうしてですか?」
「お前、時々、本当に馬鹿だな」
「学歴が無くて、申し訳ありません」
「それとは関係ない」
 益々不機嫌な表情になった清人は気持ちを落ち着かせる為か、お茶を一口飲んで茶碗を茶卓に戻してから、真剣な顔付きで口を開いた。


「いいか? 一度だけしか言わんから良く聞け。俺は真澄を、この世の中で一番愛している」
 それを聞いた恭子は激しく脱力し、項垂れたいのを必死に堪えた。


「いきなり惚気るのは、できれば止めて貰えませんか?」
「次に、子供二人が同率二位だ」
 そこで恭子は呆れた顔つきで、溜め息を吐き出す。


「愛情の度合いを、打率みたいに言わないで下さい。ちなみにそれなら、清香ちゃんが単独四位ですね。何か清香ちゃんが拗ねそう……」
「清香には言うなよ? それで次が」
「当然、浩一さんが五位ですよね?」
 さくっと次の言葉を先取りした恭子に、清人が少し意外そうな顔になった。


「良く分かったな?」
「当然です」
「それでお前も、同率五位だ」
「……はい?」
 さらっと告げられた言葉を聞いて恭子が怪訝な顔になり、次いで警戒心ありありの表情になった。


「今度はどんな罠ですか?」
 その問いかけに、清人は心底嫌そうな顔付きになる。
「お前……、どうして俺が何か言う度に、企んでるだの罠だのと」
「常日頃の行いって、大切ですよね」
 しみじみと言ってのけた恭子に、清人は小さく舌打ちしてから続けた。


「もういい。つまり俺は、お前を身内同様に思ってるんだ。それなのにむざむざと、あんな所に戻してたまるか」
 そこで恭子はちょっと驚いた顔になり、相変わらず不機嫌そうな清人を見て思わず笑い出したくなったが、必死にその衝動を堪えた。そして苦笑しながら静かに告げる。


「『あんな所』って仰いましたけど、結構快適でしたよ? 色々煩わしい思いをしなくて済みましたし」
「あのな……」
「それに、時間が止まってたのは私の周りだけで、奥様達は昔も今も、あそこで活き活きと暮らしてらっしゃいますから」
「それは、確かにそうだろうな……」
 不満げに納得してみせた清人に、恭子は晴れ晴れとした笑顔で断言した。


「ですが、あそこに戻る気は全くありませんので、ご心配無く」
「え?」
「第一、奥様は私が戻って来るのを、良しとしない気がします。蓮さんと楓さんと三人がかりで、みっちりお説教されそうです」
 そう言って一人頷いている恭子に、清人は訝しげな視線を向けた。


「……その根拠は?」
 その問いに、恭子は首を傾げながら、自分の考えを口にする。
「別にありませんが、何となくそんな気がするんです。奥様を本気で怒らせると怖いんですよ? 『十年も時間をあげたのに、適当な男の一人も捕まえられないなんて、何て情けない』って、膝詰め説教決定じゃないかと思います」
「そうか」
 思わず苦笑してしまった清人に対し、恭子は一点の曇りもない笑顔で請け負った。


「巻き添えを食って、先生まで奥様に叱られるのは気の毒なので、期限までにはちゃんと相手を探して結婚します。安心して下さい」
「分かった」
 そして苦笑いして頷いた清人だったが、すぐに真顔で再度念を押す様に言い出す。


「本当に、それで良いのか? 恭子。後悔するかもしれないぞ?」
(先生に、名前で呼ばれたのは二回目か。これでも結構、心配してくれてたのよね)
 ほんのちょっとだけ胸の内が温かくなるのを感じながら、恭子は微笑んだ。


「はい。清人さん。心配してくれて、ありがとうございます。でも後悔しても、全く後悔する事もない人生よりは良いんじゃ無いかと。これは他人の受け売りなんですが」
「そうかもな……」
 初めて名前で呼ばれた事が分かった清人は、若干照れくさそうな顔になりながら頷いた。そんな彼を茶化す様に、恭子が話を続ける。


「取り敢えず、先生は後悔している事が一つだけで良かったですね」
「俺が何を後悔していると?」
 片眉を上げた清人に、恭子が肩を竦めてから答える。


「由紀子さんとの事ですよ。もっと早く普通に行き来していれば良かったと、後悔してるでしょう? これが真澄さんと結婚できていなかったら、後悔ばかりのドツボ人生でしたねぇ……」
「お前……、一言余計だぞ?」
「でも後悔してるからこそ、それを繰り返さない様に努力してるんでしょう? この間色々あった結果、何も後悔する事無く、無為な人生を送るよりは遥かに良いなと、思える様になりました」
 すっかり何かを振り切った顔付きの恭子に、清人は静かに問いかけた。


「お前、浩一との事は後悔してるか?」
 恭子はその視線を真っ正面から受け止めながら、含み笑いで答える。
「さあ……、どうでしょうか?」
「そこで笑って俺に聞くな! 全く、ふてぶてしくなりやがって」
 若干腹を立てた風情の清人を、恭子は笑って宥めた。


「安心して下さい。その気になったらすぐにでも、何年かでポックリ逝きそうで、後腐れの無さそうな金持ちのおじいさんを捕まえて結婚しますから」
「お前が言うと洒落にならないから、つまらない冗談を言うのは止めろ!」
「本気で言ってるのに……」
「なお悪い!」
 心外そうな恭子を清人が叱りつけた所で、顔を見合わせた二人はどちらからともなく笑い出し、それからは近況などを報告し合って、和やかに一時を過ごした。



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