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世界が色付くまで

篠原皐月

第22話 心情

 書類を届ける為、廊下を歩いていた恭子は、反対側からこちらに向かってくる男を認めて密かにほくそ笑んだ。しかし次の瞬間その表情を綺麗に消し去り、怒りを隠せない様子で軽く睨み付ける。そのまますれ違って角を曲がり、人目に付きにくい様に自動販売機の横に移動して待っていると、少し遅れて先程すれ違ったばかりの根岸がやって来た。


「専務、酷いじゃありませんか。私、男の人に待ちぼうけを食わされたのは初めてでしたよ? しかも金・土に幾ら電話してもメールを送っても梨の礫で。かと思えば日曜の夜になってから『良く分からないが、約束をすっぽかして悪かった』の一文メールって、何なんですか? 人を馬鹿にしてません?」
 顔を見せるなり盛大に文句を言った恭子に、根岸は慌て気味に周囲を見渡し、人気が無いのを確認してから弁解を始めた。


「すまん、本当に悪かった。しかし金曜に待ち合わせ場所に向かう途中で、意識不明になって」
「え? 病気か何かで、お倒れになったんですか? もう出社して平気なんですか?」
「それが……、病気とかじゃなくて、誘拐されたらしいんだ」
 目を丸くして具合を尋ねた恭子だったが、続く台詞を聞いてもの凄く懐疑的な表情になった。


「専務? ご自分の事なのに『されたらしい』って、どういう事ですか。適当に話を作ってません?」
「いや、本当に背後から殴られたと思ったら、目が覚めたらホテルの一室で、日曜の夜だったんだ! 金曜の夜から連絡が付かなくなって、家族が日曜の朝に捜索願を出した位だし」
「昏睡強盗の類に遭遇されたんですか? でも路上に放置しないでホテルに運び込むって変ですよね。でもチェックインする時に、フロントに不審がられなかったんでしょうか? 専務は意識が無かったんですよね?」
「それが……、ラブホテルに運び込まれていて。鮮明な監視カメラの映像が残っていない上、延長料金を前払いして貰って二日放置していたとかで」
「……いい加減ですねぇ」
 半ば呆れた表情を浮かべながら恭子が感想を述べると、根岸が腹立たしげに相槌を打つ。


「全くだ。財布も携帯も抜き取られて、カードも限度額一杯まで引き出されていたし、方々に連絡したり頭を下げて酷い目にあった」
「じゃあ、作り話じゃ無さそうですね」
「当たり前だ。俺が嘘を吐くとでも?」
「でも随分辻褄の合わない、荒唐無稽なお話でしたし」
 そう言って恭子が肩を竦めてみせると、根岸が気を取り直した様に含み笑いをしながら、話題を変えてきた。


「確かにそれは同感だがな。……それで、今週末はどうかな? 結果としてすっぽかしたお詫びに、奮発するが?」
 そんな誘いをかけてきたが、恭子が婉然と笑いつつ断りを入れる。
「生憎今週末は先約がありまして。私、義理堅い女なんです」
「……社長か?」
 如何にも気に入らないと言った感じの表情で両目を細めた根岸に、恭子はクスッと小さな笑いを漏らしてから、明るく告げた。


「でもそろそろ円満に、お別れできそうなんです。最近は別な若い子がお気に入りみたいで」
「見る目の無い男だな」
「でも私としては、その方がすっきりと専務に乗り換えられますし。気前よく手切れ金を払って貰った上で、さり気なく新しい恋人の情報をゲットしようかなと考えているんです。専務もその方が良いんじゃありません?」
 新しい愛人の名前などを押さえておけば、どうとでも使えると素早く判断した根岸は、満足そうに恭子に頷いて見せた。


「君のそういう、頭の回転が早い所が気に入っているよ」
「ありがとうございます。そういう訳で、暫くは社長と集中的に会おうと思ってますので」
「分かった。じゃあそちらが片付いたら、声をかけてくれ。手土産を期待してるよ?」
「失望させる事は無いと思いますわ。それでは失礼します」
「ああ」
(これで暫くは、あれに纏わり付かれずに済むし、時間稼ぎができるわね)
 予想以上に上手く事が運び、笑い出したいのを堪えながら歩き出した恭子だったが、背後から足早に駆け寄る音が聞こえた次の瞬間、軽く肩を掴まれた。


「……川島さん!」
 声で相手は分かったが一応振り返ると、同僚である聡が険しい顔で立っていた。
「あら、角谷さん。外回りから戻ったんですね。お疲れ様です」
「今、根岸専務と何を話していたんですか?」
「単なる世間話ですが。それが何か?」
 端的に言い捨てて目的の部署に向かった恭子に並んで歩きながら、聡は小声で疑わしげに尋ねてきた。


「……あの女好きで有名な根岸専務と、『世間話』ですか?」
「ええ、『世間話』です」
 堂々とすっとぼけた恭子に、聡は歩きながら更に声を潜めた。


「まさかとは思いますが……、この二月あまりの間に社内で持ち上がったあれこれは、全部あなたが裏で糸を引いているんじゃ無いでしょうね?」
「『あれこれ』とは何でしょうか?」
 不思議そうに首を傾げて問い返しながら、恭子は笑い出したいのを必死で堪えた。


(六ヶ月目にしてやっと確信したわけか……。やっぱり最初は純粋に自分への嫌がらせの為だけに、先生が私を小笠原物産にねじ込んだと思ってたのね。まだまだ甘いわ)
 そんな事を考えていた恭子に、聡が僅かに顔を強張らせながら指摘してくる。


「成田経理部長と三宅総務課長が組んでの横領の発覚とか、戸越常務の奥さんが会社に乗り込んで、離婚騒動に発展したとかです」
 しかし恭子は真顔になって、しみじみと語ったのみだった。


「本当に、悪い事はできないものですねぇ。神様は何でもお見通しですわ」
 あまりにも白々しいその物言いに、聡が思わず突っ込みを入れる


「川島さんがそんなに信心深い方だったとは、今まで知りませんでした。因みに何の神を信じていらっしゃるんですか?」
「貧乏神と疫病神です。それでは届け物が有りますので、ここで失礼します」
 サラッと嫌味を切り返し、唖然としている聡を残して恭子はちょうど扉を開けていたエレベーターに乗り込んだ。そして目的階のボタンを押して奥へと進む。


(さて、それじゃあ来月早々にも、『あの写真』をここに持ち込んで貰いますか)
 頭の中で物騒な段取りをつけながら、恭子はこれまでに人知れず罠にかけてきた面々を思い、苦笑いする。


(本当に、ろくでもない連中ばかりだから、社会的に抹殺しても良心が全然痛まないわね)
 そこでふと背後の鏡を振り返り、そこに映り込んでいる自分の顔を見ながら、恭子は苦笑を深めた。
(……私に、《良心》が残っていればの話だけどね?)


 それから何日か過ぎた週末、浩一と恭子は連れ立って入院中の真澄を訪ねた。問題無く出産を済ませた真澄は二日後に退院予定であり、見舞い客が落ち着いた頃合いを見て訪ねようと、二人で相談した結果だった。
 産婦人科病棟のナースステーションで病室を確認すると、予想に違わず通路の奥まった所にある個室であるらしく、しかし浩一は入口のドアをきちんとノックをして、中からの応答を確認してから引き戸を開ける。


「お邪魔するよ、姉さん。体調はどう?」
 広い部屋の壁際に配置されたベッドに視線を向けると、背部のマットレスを持ち上げて座った状態の真澄が、嬉しそうな表情を見せた。


「順調よ、浩一。恭子さんまで来てくれて嬉しいわ」
「元気そうで安心しました。色々お見舞いを頂いているかと思いましたが、《シャディール》のブラマンジェを食べたくありませんか?」
「あ、ちょうどスルッと食べられる物が欲しかったの! ねえ、清人。早速出して頂戴」
「分かった。紅茶も淹れるから、少し待ってろ」
 嬉々としてベッドの横に座っていた清人に真澄がねだると、清人は苦笑しながら立ち上がり、二人に身振りで部屋中央のソファーセットを示しながら、奥のドアの向こうに消えた。開け閉めの際チラリと見えた装備でミニキッチンと見当を付けた恭子は、幾つかあるドアのプレートを確認し、感心した様に述べる。


「やっぱり特別室は設備が違いますね。シャワー室、トイレ、ミニキッチン付きですか。壁面のあそこには付添い用のベッドも収容してあるみたいですし。病室から一歩も出歩かなくて済みますね」
「寧ろ出歩きたいわ。病院の育児指導や入浴指導も、看護師さんが部屋に来ちゃうし。ここに入ってから、本当に一歩も外に出てないのよ? 体力を回復させる為に軽く歩いて下さいって言われても、部屋の中をぐるぐる歩くだけで、馬鹿らしくて仕方がないわ」
 いきなり愚痴を零してきた真澄に、浩一と恭子は思わず顔を見合わせた。


(手をかけられ過ぎなのも、ストレスの原因になるって良い事例ですね……)
(清人を筆頭に、父さん母さんお祖父さんが、こぞって過保護にしまくってるんだろうな……)
 しかし下手に個別の家庭問題に踏み込むべきではないと割り切った恭子は、さり気なく話題を変えた。


「それで、そこのベッドに寝てるのがお子さん達ですよね。敢えて性別を教えて貰わなかったと言ってましたけど、どうでしたか?」
 その問いかけに、真澄は楽しそうに笑った。
「息子と娘が一人ずつだったの。男女どちらも欲しかったから、我ながら効率良く産めたわ」
「効率の問題ですか?」
 苦笑いしかできなかった恭子だが、ここで浩一は二つ並んだ小さなベッドに貼られた命名の用紙に気付き、思わず口に出して読み上げた。


「それで名前は……、男の子が『真一』で、女の子が『真由子』?」
 浩一が軽く目を瞬かせてから真澄に顔を向けて無言で問い掛けると、真澄は真顔で説明した。


「だって清人が全面的に私の好きにして良いって言ったから、私の名前から一文字取ったの。それにお父様にもお祖父様にも『一』の字が付くから妥当でしょう?」
 事も無げにそんな事を言われて、浩一と恭子は揃って項垂れた。


「姉さん……」
「先生が真澄さんの言いなり下僕状態なのが、子供の名前で丸分かりって、どうかと思うんですが……」
「恭子さん、気持ちは分かるけど、もう少し言葉を選んでくれ」
 浩一が切実な願いを口にしたが、ここで話題の主が戻って来て会話に割り込む。


「別に俺は構わないぞ? 真澄が俺のご主人様なのは事実だからな」
「第三者が聞いたら誤解しかねない発言は止めろ」
 冷たく突っ込んだ浩一に苦笑しつつ、清人は四人分のカップとブラマンジェを乗せた皿を配り、全員でそれらを味わい始めた。そして紅茶を飲む合間に浩一がしみじみと言い出す。


「でも本当に、元気そうで安心したよ。ボウリング場で産気付かれた時には、正直どうなる事かと思った」
「余計な心配をかけてしまったわね」
「でも双子の上、予定日より少し早く産まれたのに、母子共に経過が順調で何よりでしたね」
「それはそうなんだけど……、お見舞い客の殆どが『小さくて可愛い』って言うものだから……」
 そう言って何となく暗い表情で俯いた真澄と、その顔に困ったような表情を浮かべた清人を見て、浩一は首を傾げつつ問いかけた。


「それが何か問題でも?」
「問題ってわけじゃないんだけど……」
 どうやら来る客来る客こぞって言われた台詞で、真澄がナーバスになっているらしいと察した恭子は、明るい口調で言い聞かせた。


「双子だから、体が小さいのは当たり前ですよ。それに保育器にも入っていないんですから、立派なものじゃ無いですか」
「担当の先生にもそう言われたわ」
「それに、子供は小さく産んで、大きく育てるのが理想だと思いますよ?」
 恭子がそう口にすると、真澄は驚いたように軽く目を見開き、次いで小さく噴き出した。そして明るく問いかけてくる。


「確かにそうかも。名言ね。誰が言ってたの?」
「それは…………」
 そこで急に言葉を途切れさせて表情を消した恭子に、他の三人は揃って怪訝な目を向けた。


「恭子さん?」
 代表して真澄がベッドの上から声をかけると、少し慌てた様に恭子が言葉を返した。


「えっと、すみません真澄さん。ちょっと他の事を考えてました。さっきの言葉を言っていたのは、私の母なんです」
「お母様?」
「ええ」
 その問いかけに頷いた時は、恭子はもういつもの表情に戻っていた。


「私は産まれた時に四千グラム近くて、当初から重かったそうで。それに加えて、二年後に妹が産まれたものですから、二人の世話が大変だったと零していたんです」
 これまでの付き合いで、恭子の家族の事は禁句だと理解していた真澄だったが、どこでどう話を終わらせれば良いか咄嗟に判断が付かず、取り敢えず話を合わせた。


「恭子さん、健康優良児だったのね」
「みたいですね。それで抱っことかおんぶとかが妹より早くできなくなって、余計に構ってあげなかった気がすると、小学生の頃に母が申し訳無さそうに言った事があって。その時の話の中で、さっき言ったフレーズを、口にしていたんです」
 自分の鬱屈した気持ちを軽くしてくれる為に、敢えて昔話をしてくれたと察した真澄は、表情を緩めて静かな口調で応じた。


「なるほど。小さくて産まれたのにも、意味が有るって事ね」
「はい。双子なんですから、どうしても一人より手がかかるでしょうし。体が小さければ、それだけ二人一緒に抱っこできますよ?」
「それもそうね。抱っこする順番で姉弟間で変に嫉妬させない為にも、その方が良いわね」
「心配しなくても、真澄さんのお子さんなんですから、後から大きくなりますよ」
「あら、無駄に背が高くて悪かったわね」
 ちょっと拗ねた様に真澄が応じ、それを見た恭子が小さく笑う。そんないつも通りの空気が戻ってきた事で、これまで傍観者に徹していた男二人も安堵した表情を見せたが、ここで恭子が真剣な口調で付け足した。


「あと性格も、真澄さんに似てくれれば良いですね。容姿と頭の中身は先生似でも良いですが」
「それは俺も激しく同感だ。というか、何が何でも性格だけは姉さんに似るべきだ」
「……お前達、何気に失礼だな」
 清人に睨まれつつもそれから暫く恭子と浩一は毒舌を放ち、真澄を笑わせながら紅茶を飲み終えた。それから恭子は新生児用のベッドに歩み寄り、上から覗き込みながらしみじみと感想を述べる。


「でも本当に、二人とも可愛いですね」
「ありがとう」
「俺と真澄の子供だ、可愛いに決まってる」
「お前は黙ってろ」
 男二人のいがみ合いを背中で聞きながら、ぐっすりと眠っている赤ん坊の小さな掌に恭子が指を伸ばして優しく触れていると、穏やかな声がかけられた。


「……ねえ、恭子さん?」
「はい、何ですか?」
 反射的に振り返った恭子に、真澄は意味深な笑みを見せながらある提案をした。


「子供は二人居るから、どちらか欲しくない?」
「はい?」
「姉さん?」
「真澄?」
 一瞬言われた意味が理解できず、恭子は困惑も露わに黙り込んだが、他の二人も若干顔付きを険しくして真澄を凝視した。しかし室内が静まり返っていたのはほんの数秒で、恭子がクスクスと笑い出す。そして笑いを収めてから、如何にも楽しそうに真澄に告げた。


「やっぱり真澄さんと浩一さんって姉弟ですね」
「あら、どうして?」
「真顔で笑えない冗談を言う所がです。ちょっとタチが悪いですよ?」
 それに対し、真澄は「本気」とも「冗談」とも口にせず、先程と同様に微笑みながら新しい問いを発した。


「そうかしら。……因みに、浩一はどんなタチの悪い冗談を言ったの?」
「大した事は言ってないから」
「ええ。本当に、わざわざ言う程の事ではありませんから」
 浩一と恭子は笑顔で誤魔化したが、真澄はしつこく質問を続けた。


「そう。じゃあ実際に貰うか貰わないは抜きにして、育てるなら男の子と女の子、どちらが良い?」
「姉さん……、だから変な事は」
「真澄、いい加減にしろ」
「別に構わないじゃない。恭子さんの考えを聞いているだけだし」
 苛立たしげに男二人が割り込み、真澄が気分を害した様に文句を言う。それを半分聞き流しながら、恭子は再び小さなベッドの中を見下ろした。


「そうですね……」
 そして殆ど大きさが変わらない二人を交互に見やってから、恭子は隣のベッドの横に移動して、手を伸ばした。


「どちらかと言えば、女の子の方でしょうか?」
「そう? どうして?」
 さり気なく理由を聞いてきた真澄に、恭子は苦笑いしながら答える。


「……明確な理由は有りません。なんとなくです」
 そう口にしながら恭子は真由子の頬に手を伸ばし、指の腹で慎重に優しく撫でながら、早世した妹の事を想った。
(ありえないと思うけど……。もし、本当に女の子を育てる事になったら……、章子の分まで大事に育てるわ)
「本当に……、可愛いですね」
 慈愛に満ちた口調で恭子はそう呟いたが、自分達に背中を向けている彼女が今どんな表情をしているかとその理由を、その場の三人はほぼ正確に察していた。


 それから別な見舞い客がやってきたのを期に、浩一と恭子は真澄に別れを告げて病室を後にした。並んで廊下を歩きながら、浩一が優しくお礼の言葉を口にする。


「今日はありがとう。恭子さんと話ができて、姉さんも随分気晴らしができたみたいだ」
「浩一さんから先生に少し意見してあげて下さい。過保護過ぎると、そのうち愛想尽かされますからって」
「そうだね」
 そこで恭子が、思いついた様に言い出した。


「でも……、真澄さんらしいですね」
「何が?」
「子供の名前です。真一君の名前は浩一さんから字を貰ったにしても、真由子ちゃんの名前は、由紀子さんから貰ったんですよね。真澄さんはそんな事を口にするつもりは、微塵も無さそうですけど」
「……みたいだね」
 未だに微妙な距離感を保ち、披露宴の時以外では親子関係を大っぴらにしていない夫とその母親の為にそうしたと、分かる人には分かる姉の行為に、浩一は苦笑する事しかできなかった。すると恭子が自嘲気味に述べる。 


「正直、真澄さんが羨ましいです。そんな風に他人を思いやる事なんて、私には無理ですから」
「無理じゃないさ。恭子さんは十分思いやりのある、優しい人だから」
 浩一は自然にその台詞を口にしたが、それを耳にした恭子は並んで歩きながら困った様に見上げてきた。


「駄目ですね、浩一さん。人の上辺に騙されるなんて。まだまだ修行が足りませんよ?」
「未熟者なのは事実だが、人の本質を見抜く位はできているさ。伊達に色々なタイプの人間に囲まれて、過ごしてきたわけじゃない」
 茶化すように笑顔で窘めた恭子だったが、それを浩一はいつもの穏やかな笑顔で反論する。予想外の反論に思わず恭子は黙り込んだが、浩一は何事も無かったように「じゃあ買い物をしながら帰ろうか」などと声を掛けながら歩き続けた。


(浩一さん? 真澄さんも、今日は何だか様子が変だったわ……)
 その理由に思い至らないまま、恭子は浩一と共に帰途についたのだった。





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