転移したのに人間じゃない!?

逢夢

第77話 ウンター・ヴェルト 紅事件 ぶつかり合う力

「俺は放つだけだからだけど、紅竜は出来そうか?」
「わっしはしっかりと目が覚めたのじゃ!そんなことは朝飯前じゃ!」
「それなら、安心だ」


だが、俺も出来る事はあるかもしれないと思い
周りを飛んでいる、小竜達に聞いた。
「みんなぶつかる瞬間にその周りに結界を作って衝撃波を周りに出さない様に
 囲めるかな?」
「ギャー」
6匹は同時に返事を返してくれた。
「なら、その配置についてくれる?」
そう言うと、6匹は飛んでいき間隔を広げて聖六角形の形で空中に佇んでいた。


「なんじゃ?」
「いや、あの6匹に結界でも張ってもらって
 少しでも周りに被害を出さない様にと思ってね」
「目が覚めたら、そんな器用な事と小竜を産んでおったとはの〜
 ニヤニヤ」
「あぁ〜俺も暴走中の魔力が残っていた影響からこんな事になっているから
 今後、期待されても困るぞ」
「そうは言うがな、あの6匹はもう完全に個体化しておるぞ」
「あの小竜達って一時的な能力とかじゃないの…??」
「そんな能力あってたまるか!その前に竜を生む能力すら本来ありえんのだがな!!
 また、お主はありえん事をしおってからに」
「マジか〜」
「あれはやっぱり、ヒデ様が作り上げた竜なのですね」
「どうやらそうらしいよ、ウルス
 自分でも驚きだよ。」
急な名前呼びを受けて、ポッとするウルス。
「どうかした?」
「いえ、なんでもありませんから!!
 それより、早くその魔力の塊をなんとかしないと、そろそろ…」


みんなが見ている先の砲身の中にある魔力の弾はすでに弾丸の形となり
更に魔力を吸収している。


「なら、始めますか」
「紅竜、小竜達、よろしくね」
「任せておけ」
「ギャー!」


6匹の中心に飛んでいく様に弾を発射しようと力を込めるが
引き金が異様に重いのか、中々発射の力を込められてない。


「ちょっとやそっとじゃ、全然発射しないな!」
“ここまで来るとね、もうちょっとやそっとじゃ無理だね!”
“だな”
「これ、どうやったら発射するの?」
“僕たちも力を貸しますか、ディノス”
“我に命令をするな、石の分際で
 だが、手伝ってはやる!このままでは身体ごと吹き飛んでしまうからな”
「そんなヤバい状況なのね」
“無駄に喋りすぎたね、ヒデヒデ”
“無駄に時間を使いすぎだな、お主は”
「次からは気をつけます」
そして、俺の魔力の上にディノス、精霊石の力が上乗せされて
最初はそれすら飲み込んでいた魔力の弾丸は
次第に、色が変わっていき、一気に発射された。
俺と精霊石とディノスの力が合わさって、ようやく発射された弾丸に
「いやはや、これだけ凝縮された魔力を飛ばすとは頭がおかしいの
 やはり、ヒデとはこれからも一緒にいないと危なっかしいの〜
 さて、こんなもんかの!!」
向かってくる魔力の弾丸はサイズ的には小さいが
更にそれより小さいが、それよりも濃い魔力の球を作り上げて口内から発射した。


その弾丸と球が上下にズレて、ぶつかり弾丸の軌道が斜め上に変更された。
紅姫の頭上を越え、森を越え、人が定めた国の範囲を超え、空を超えて、星を超えた。
宇宙にまで行っても、その魔力の弾丸は自然消滅しなかった。
そして、その宇宙空間で巨大な体育座りをしている異様な人型の像にぶつかり
その像と共に、消失した。


紅姫の魔力の球は下に軌道を変えて、消失したが衝撃波は広がった。
6匹の小竜の結界は周りにはその衝撃波を広げなかった代わりに
上空、地中へとその力を逃した。


あれだけの巨大な力がぶつかり合ったのに被害は
森の中に大きな六角形の穴が開いただけだった。


「紅姫はめちゃくちゃなのは、昔から知っているが
 人間で紅姫よりめちゃくちゃな男は生まれて初めて見た…」


フェルディナンドの目線の先には
穏やかの顔でスヤスヤと寝ているヒデの姿が映っていた。

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