転移したのに人間じゃない!?

逢夢

第63話 ウンター・ヴェルト 紅事件 暴君の選択の先にあるのは

「僕たちは出れないんだ!!」
「出れないじゃない、出ない選択を君は…君達はしてきたんだ。
 だから、別の選択を精霊石、君に見せよう。」


なぜだろう、いつもと違ってこうもハッキリと言葉を伝えれるのは?
ヒデは無意識に前の世界にいた時の自分と精霊石を同一視していた。
仕事の中で重圧に潰されてしまう直前まで周りのせいにし続けて
押しつぶされるとわかった時に自分の中で諦めて、自分のせいにして責め続けていた事。


たった一度でも言葉でも態度でも、無理なものは無理だと言う事。
出来ない事は出来ないと言う事。
それが出来ないから自分が潰れた事。
それはなぜか?
ヒデにはこちらの世界に来て、最初に紅竜と出会った時に感じたものだった。
それは
思った事はハッキリと言うと言う簡単な事。


でもそれは誰しもが出来る事ではないことも分かっている。
だから、ヒデは選択として伝えた。


「精霊石、周りのコイツらに言ってやればいい。
 君たちの願いは僕は叶えれらない、すまない。と」


「ふざけるな!
 そんなことをしたら、この負の怨念達は暴れ回り世界が滅ぶぞ!」


「だったら、薔薇の十字架に磔にされていた時に助けてと言った…
 今まで自分が傷つけば良いと勝手に救世主ぶって救おうとして
 自分で勝手に諦めて、そしてコイツらを巻き込んでおいて
 諦めた自分を守る為にコイツらの存在を引き篭もる理由にするな!」


「勝手な事を言うな!僕がどんな思いで人間達の願いを叶え続けたと持っている
 僕は…僕は…僕は…僕は…
 みんなの願いを………叶える…………為に……」


精霊石の少年はそう言いながら、大粒の涙を零していた。


「俺から伝える選択肢はこれだ。
 自分の感情をしっかりと伝える事
 それは出来るか?精霊石の少年。」


「僕は常に言ってる!
 叶えたいのに、叶えれらないと!お前らが悪いと!」
「違う、なんでその想いに至ったかの最初の気持ちだの事を
 伝えた事はあるのか?」
「最初の気持ち?」
「最初から怒ってた訳じゃないだろ?
 一番最初にあれ?って思った事はなんだった?」


精霊石の少年は考え始めた。
周りがこの黒い人型に囲まれる最初のきっかけとなった事を。


黒い渦として周りを囲んでいたものがまた黒い人型の群衆に変わり
そして、先ほどとは違い殺気がこもった視線をこちらに向けていた。
だから、ヒデは言ってやった。


「思い出されると困る事でもあるのか?黒い人型達よ」

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