転移したのに人間じゃない!?

逢夢

第55話 ウンター・ヴェルト 紅事件 紅姫と紅竜と異物とシオリの融合?

異物。
それは暗黒石を運んでいる時に自身とすれ違った者から貰った無用の長物。
そのお陰でわっしの力が1割減した。
数値だけ見ればそれだけだが、雰囲気が変わったので
竜の口では話題になった。


「あの紅姫に何かあった。」
「紅き竜は弱くなった。」


そんな声が同胞から聞こえ、無駄な争いが増えた。
あの出来事のお陰で、同胞が少し減った。


そして、その異物はある時から語りかけてくるようになった。


「初めまして、自分はヒデアキというんだけど、なんて呼べいい?」
「わっしに話しかけるな!」
「……わかったよ」


それなのに、異物は何度となく話しかけてきた。
ある時は、朝から
ある時は、戦いの最中
ある時は、戦いが終わった後の反省会の時。


いつしか自分から問いかけていた。
「ヒデアキは、この時どうしていたのじゃ?」
「戦った時はないけど、会社にいた時はこう…………」


こちらの世界とは違う世界での秩序の中で似たような展開や関係性の元
話してくれるのが、今は楽しみになっていた。


そして時は戻り
わっしの力を戻すために戦うはずがヒデアキの中にいる
わっしの分身体から意識の侵食を受けた。
その感じはあの時、初めてヒデアキを感じた時と同じ印象を覚えた。


そして、広がる真っ白な世界。
そこに立つのは、自身と自分と男と少女だった。


「お主はもしかして、ヒデアキか?」
「やっぱり、君なんだね、紅姫。」
二人で話していると
『こっちのヒデアキは、キャラが違うな』
{やはり、環境の差でしょうか?}
「お主たちは、あの身体にいた人格か?
 そして、お主はわっしの片割れか?」
『そうじゃ!わっしはお主の片割れじゃが
 わっしは意識を残したいと考えている!!』
「なんじゃ??」
{紅竜様、説明省きすぎです……}
『省くも何もそうしたいからそう言っているだけじゃ!』
フンと威張る、紅竜。
{同じ方なのですが、こちらの紅竜様が申し訳ありません。}
謝る、シオリ。
「しかし、自分の身体に二つの人格があると思うとなんとも不思議な気分だ。」
{それは色々と諸事情がありまして、ヒデアキ様と合わせて3人現状はいますが
 これから私のみになります。}
「それがさっきそちらの紅姫が言ったことかい?」
{はい、そして、ヒデアキ様には戻って頂きます。
 ですが、こちらにいた時の記憶は残します。}
「勝手に人の体の中で話を進めるでない!
 少女、貴様にそんな事ができるのか?」


その問いに
{なめないでください。
 私は、鑑定栞カンテイノシオリ
 スキルブックの知識の流れの中で生まれた者
 そして、ヒデアキ様と紅竜様を救う答えを持つ者です。}
小さな少女の瞳には力強い意思の炎が燃えていた。

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