転移したのに人間じゃない!?

逢夢

第52話 ウンター・ヴェルト 紅事件 ディノスの内部とその先にあるもの

“なぜ、この人間は未だに希望を抱いておるのだ!!!”
世界が震える大きな声でディノスは叫んだ。
そして灼熱の太陽を飲み込んでしまった様な激痛がディノスを襲っていた。


その激痛を受けて、のたうちまわっている時
ヒデは薄暗い中にポツンと立っていた。


「飲み込まれたはずだから、ここは…」
どう見ても、食道というよりはゴツゴツした岩が見えるお陰で
洞窟のようにしか見えない。
「あのデカイのに食われてここにいるならあいつの中なんだろうが」


薄暗いが見通せない訳ではないので目を凝らしたり、壁を触ったりして
ここを把握していく。
そうしても確認しても
「本当にここはあいつの中なのか??本当に洞窟のようなんだが」
と呟いた。
その風を感じた。そして、音も感じた。
聞き取れはしないが、何を伝えようとしている様なそんな気がした。
それは女神と出会った時にも感じた印象にとても似ていた。
そして、普通なら不正解に思える行動を起こしていた。


その微かな本当に微かな気配に向かって歩き出していた。
それは女神と会った時に感じた雰囲気もあるが
この状況で女神な訳がないことは百も承知であるが
どうしてもその場所へ行かなければならないと強い確信があった。


その確信が確証する様に、洞窟の様な道をその気配を頼りに
右へ左へ上へ下へと進んでいくと
いつの間にか広い空間に出た。


大きなドームの様な空間で自分が立っている入り口からドームの半分までが陸地で
それ以降は湖という空間。
まるで、ディノスと出会ったあの空間に類似していたからか
少しだけ安心感が芽生えた。


そしてその水際に一本の十字架が刺さっており
そこには有刺鉄線の様などう見ても触ったら切れる様な
黒光りしている生い茂った蔦で貼り付けにされている1人の少年がいた。


“た…す………け…………て”


一言、一言弱々しく助けを求める少年。


「君は一体。」
そう言った時、蔦が勝手に動き出し、少年を締め上げた。


“ウワァァーーーーーーーーーー”


悲鳴と共に蔦を伝って、その身体から出たであろう、どす黒い液体が
湖に滴り落ちていった。


“た………す………け…………て”


まるで、この少年の体液でこの湖が出来上がっているのではないかと
錯覚すらしてしまいそうになる。
シューと蔦の隙間から見える身体が先ほどまで擦り傷だらけだったのが
回復が始まっていた。


「まさか、これを何度も繰り返していているのか!?」


そう思ったら、身体が動いていた。
少年を救うべく、生い茂った蔦を掻き毟り、剥がそうと手をかけた。


“ダメだ……君も飲まれるぞ………”
少年の微かな声が聞こえた時には
自分自身も生い茂った蔦に絡め取られていた。

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