転移したのに人間じゃない!?

逢夢

第28話 迷界樹の暗黒街へ向かう道中 目の前の人間 (後編)

低く、そして重く響く声。
“我が名は、ディノス 此奴の中に眠る力”
女神 ファティマにそう告げる存在。
湖面に今立っている陸地よりも大きなその姿が露わになる。


巨大な鰐が女神の前に現れた。


ファティマは思った。
存在は何かが正確には測れないが、分かることだけはある。
人間の中に存在出来ないはずの力の渦を感じる。
魔力には色がある。
火は赤、水は青など関連した色がある。
この色で想像できるのは闇。
しかし、闇でもこんなにも漆黒はならない。


その漆黒の力が目の前。感じられる。
〝貴方のような強い力があるものがなぜ、人間の中にいるのですか?〟
“なぜ?我が聞きたいな、封じる先が人間とは思わなかった”
〝封じられている?〟
“いや、正確に言えば我の一部がこの人間に封印されているが
  その一部が入っているのに平気に生きている、この人間が異常ではと我は思うのだが
  どう思う?女神よ”
〝それには同意しますよ、この人間は異常ですね〟
“やはりそうか、あいつは出入りが出来て我は出入りが出来ないとは不便だな
  我もあいつ同様に楽しみたいのだがな”
〝あいつとは?〟
その質問をした瞬間にファティマは何かに掴まれ宙に浮いていた。


『お主がなぜ、ここにいる!!
 ここはお主が想像している以上に厄介の場所じゃぞ!』


女神をつかんでいたのは、本来の姿である竜の姿の紅竜。


〝あいつとはやはり貴女のことだったのですね〟
『わっしはどちらの空間も行き来出来るからの
 しかし、扉が閉まったあの空間から女神といえども出ることは難しかったぞ
 目の前にあの化け物もいたしの』
〝やはり、あの存在もイレギュラーな存在ですか〟
『あぁ、まさかあいつまでもこやつの中に入り込んでいたいとは思いもしなかった』
〝すれ違った時にあのディノスというものと一緒にいたのですか?〟
『正確にいえば、漆黒石を運んでいる時にすれ違ってわっしもこやつの中にいるから
 まさかと思ったら案の定入り込んでおったわ、本当に厄介なやつじゃ』
〝ディノスとは聞いたことはなかったのですが…〟
『当たり前じゃ、漆黒石に眠っていたのは漆黒の闇の力だけじゃから』
〝では、あのワニのような姿は?〟
『此奴の中で意識を読み、姿、名前すら決めて住み着いたという所かの』
〝ですが、それだけではあそこまでは〟
『此奴はそれほど闇と相性が良いのか、今まで溜まりに溜まった感情があのディノスを生んだのかは
 わからぬが、生まれ堕ちて心の奥底に住み着いているのは事実じゃの』
〝これからはあのディノスの力はどう考えますか?紅竜いや元素竜 紅姫ベニヒメ
『其の名でわっしを呼ぶではないわ!…だが
 今は大丈夫じゃが、わっしが本体に戻った時、どうなるかわっしにもわからない
 わかるのは、女神 ファティマが無事に世界に戻れるということのみじゃ』
〝ですね〟
『まぁ、これで貸し1つじゃな!』
〝なっ、それは!〟
『さぁ、帰るぞ』
先ほどから月に向かって飛んでいたが一気に速度を上げて
月と思っていた光の中へと突っ込ん行き
気づいたファティマは
頭に手を置いている状態の所へ意識が戻ってこれた。


「スキル、認識できました!」
彼の意識もこちらに戻ってきたのか、そう伝えてくれた。
私は、笑顔で答えたがどこか上の空でその言葉を聞いていた。

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