エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
第280話
「おいっ! また殺られたらしいぞ」
「またか?」
木の杭を打ちつけただけの壁が周囲に張り巡らされた場所で、魔物の出現に警戒している人族の兵が2人話し合っていた。
魔人大陸へ拠点となる場所を密かに確保すべく送ったエヌーノ王国の第2陣の兵たちは、前回とは違い上手くいっていた。
拠点となる場所を確保し、そこに魔物を寄せ付けないよう簡易的な木の杭による壁を作り上げた。
それにより、本国からは第3次、4次と兵が送り込まれ、侵攻拠点の拡大が順調に進んで行った。
すでに1000人近くの人族兵が住み着き、更なる増員を受け入れる準備にかかっている。
1ヵ月後には、西にあるエナグア王国へ攻め込むことが計画されているのだが、最近彼らの間で異変が起きていた。
どういう訳か、死人の数が増えているのだ。
本国からは十分な分の食料は持ってこられないため、現地調達として食料となる魔物の捕獲に向かう部隊が幾つか編成されている。
その食料調達部隊の者たちが行方不明になり、遺体となって発見されることがここ数日続いていて、今日もそれが起きたそうだ。
「また魔物のようだ」
「あれほど探知に気を配れって言われていたのに……」
この大陸に来て、エヌーノ王国の兵たちは魔物の強さに驚かされた。
強いとは聞いていたが、さすがに高ランク驚異の魔物が頻繁に出現すれば仕方がない。
とは言っても、人数と連携によって戦えば何とか倒せるレベルだったため、作戦は成功に向かった。
中には魔物に深手を負わされた者や死人も出たが、それは極少数。
最近のように、数人が一気に殺されるようなことはなかった。
なかなか帰って来ないことを心配して捜索に向かうと、魔物の死骸と共に調達部隊の者たち数人の遺体と武器や装飾品が発見された。
全員ではなく、数人の遺体しか発見されなかったのは、恐らく魔物に食料として持って行かれたのだろうと判断された。
あまりにも頻繁にこのようなことが起こるので、人数を増やし、警戒を強めるように総員に告げられたのだが、それでも今日も起こり、誰もが言い知れぬ恐怖を感じていた。
「ここの魔物は本当に何が出るか分かんねえな」
「全くだ。警戒を強めないとな」
調査も行っているが、ここの魔物は本当に何が出てくるか分からない。
まだ未知の魔物が潜んでいる可能性が高い。
警備をしている2人も、いつそんな魔物が襲い掛かって来るか分からないため、警戒を強めるのだった。
「あそこですね……」
「ケイ殿の言っていた通りです」
着々と拠点の建築を進める人族たちに眉をひそめながらも、数人の魔人たちがその拠点を密かに眺めていた。
人族の者たちは、食料調達に向かった者たちのことをいまだに魔物のせいだと考えているようだ。
しかし、実のところは魔人の者たちのよる殺害だ。
ある程度の拠点を作り上げるまでは、エナグアの調査は後回しにするだろうとケイが言っていたが、その通りに事が進んでいる。
そっちが調査をしなくても、こっちが調査してくると考えないのだろうか。
たしかにここの魔物は強力だが、探知ができるようになった彼らからしたらそこまでの脅威ではない。
探知のできない時からのデータから、強力な魔物が出現する範囲はある程度分かっている。
その安全ルートを使ってエヌーノ王国の者たちを観察していたら、数人の者たちが定期的な時間に魔物を狩りに出かけることを突き止めた。
「国からの食料が少ないのかもしれないな……」
ケイのいったこの発言がもっともだと、魔人の兵の皆が思った。
捕虜からの情報だと、エヌーノ王国が領土を拡大する目的は、資源だけでなく食料の調達を目的としてのこともあるらしい。
山に囲まれているせいか、日照時間が少なく作物の発育が良くない。
最近では食肉に適した魔物も減り、慢性的な食糧不足に陥り始めている。
このままだと2、3年後には餓死者が多く出てもおかしくないとのことだ。
そんな状態だから、船に乗せて持ってこられる食料も少ないはず。
足りない分は現地調達をするしかない。
こちらとしてはそこが狙い目だ。
「食料調達に出た者たちを密かに仕留める」
バレリオは悩まなかった。
元々上手くいっていると思わせておいて、潰しにかかるという予定だった。
一気に潰すのもいいが、少しでも数を減らしておいた方が危険性が下げられる。
ケイは基本力を貸さないとは言っていたが、最初に上陸してきた斥候の者たちを捕まえて来てくれた。
半年近くの付き合いから、ケイは自分たちに無理なことをさせようとしないということが分かっている。
バレリオが暗殺することを言い出した時、特に何も言わなかったところを見ると、ケイは自分たちならできると踏んでいるのだろう。
それに、この作戦が成功すれば、上陸している人族たちを飢餓状態に貶められる。
ケイの言う一掃作戦もやりやすくなるはずだ。
指導によって、今となってはほとんどの者が探知ができるようになっている。
魔物を避けて人族たちの拠点付近に隠れ、調達に出た者たちを仕留めることは難しくなかった。
「今回も成功だ! このまま続けよう!」
「はい!」
少しづつ調達に出る部隊の人数が増えてきている。
しかし、まともな食事ができていないのか、抵抗力はたいして変わらない。
バレリオはこの作戦の続行を指示したのだった。
「またか?」
木の杭を打ちつけただけの壁が周囲に張り巡らされた場所で、魔物の出現に警戒している人族の兵が2人話し合っていた。
魔人大陸へ拠点となる場所を密かに確保すべく送ったエヌーノ王国の第2陣の兵たちは、前回とは違い上手くいっていた。
拠点となる場所を確保し、そこに魔物を寄せ付けないよう簡易的な木の杭による壁を作り上げた。
それにより、本国からは第3次、4次と兵が送り込まれ、侵攻拠点の拡大が順調に進んで行った。
すでに1000人近くの人族兵が住み着き、更なる増員を受け入れる準備にかかっている。
1ヵ月後には、西にあるエナグア王国へ攻め込むことが計画されているのだが、最近彼らの間で異変が起きていた。
どういう訳か、死人の数が増えているのだ。
本国からは十分な分の食料は持ってこられないため、現地調達として食料となる魔物の捕獲に向かう部隊が幾つか編成されている。
その食料調達部隊の者たちが行方不明になり、遺体となって発見されることがここ数日続いていて、今日もそれが起きたそうだ。
「また魔物のようだ」
「あれほど探知に気を配れって言われていたのに……」
この大陸に来て、エヌーノ王国の兵たちは魔物の強さに驚かされた。
強いとは聞いていたが、さすがに高ランク驚異の魔物が頻繁に出現すれば仕方がない。
とは言っても、人数と連携によって戦えば何とか倒せるレベルだったため、作戦は成功に向かった。
中には魔物に深手を負わされた者や死人も出たが、それは極少数。
最近のように、数人が一気に殺されるようなことはなかった。
なかなか帰って来ないことを心配して捜索に向かうと、魔物の死骸と共に調達部隊の者たち数人の遺体と武器や装飾品が発見された。
全員ではなく、数人の遺体しか発見されなかったのは、恐らく魔物に食料として持って行かれたのだろうと判断された。
あまりにも頻繁にこのようなことが起こるので、人数を増やし、警戒を強めるように総員に告げられたのだが、それでも今日も起こり、誰もが言い知れぬ恐怖を感じていた。
「ここの魔物は本当に何が出るか分かんねえな」
「全くだ。警戒を強めないとな」
調査も行っているが、ここの魔物は本当に何が出てくるか分からない。
まだ未知の魔物が潜んでいる可能性が高い。
警備をしている2人も、いつそんな魔物が襲い掛かって来るか分からないため、警戒を強めるのだった。
「あそこですね……」
「ケイ殿の言っていた通りです」
着々と拠点の建築を進める人族たちに眉をひそめながらも、数人の魔人たちがその拠点を密かに眺めていた。
人族の者たちは、食料調達に向かった者たちのことをいまだに魔物のせいだと考えているようだ。
しかし、実のところは魔人の者たちのよる殺害だ。
ある程度の拠点を作り上げるまでは、エナグアの調査は後回しにするだろうとケイが言っていたが、その通りに事が進んでいる。
そっちが調査をしなくても、こっちが調査してくると考えないのだろうか。
たしかにここの魔物は強力だが、探知ができるようになった彼らからしたらそこまでの脅威ではない。
探知のできない時からのデータから、強力な魔物が出現する範囲はある程度分かっている。
その安全ルートを使ってエヌーノ王国の者たちを観察していたら、数人の者たちが定期的な時間に魔物を狩りに出かけることを突き止めた。
「国からの食料が少ないのかもしれないな……」
ケイのいったこの発言がもっともだと、魔人の兵の皆が思った。
捕虜からの情報だと、エヌーノ王国が領土を拡大する目的は、資源だけでなく食料の調達を目的としてのこともあるらしい。
山に囲まれているせいか、日照時間が少なく作物の発育が良くない。
最近では食肉に適した魔物も減り、慢性的な食糧不足に陥り始めている。
このままだと2、3年後には餓死者が多く出てもおかしくないとのことだ。
そんな状態だから、船に乗せて持ってこられる食料も少ないはず。
足りない分は現地調達をするしかない。
こちらとしてはそこが狙い目だ。
「食料調達に出た者たちを密かに仕留める」
バレリオは悩まなかった。
元々上手くいっていると思わせておいて、潰しにかかるという予定だった。
一気に潰すのもいいが、少しでも数を減らしておいた方が危険性が下げられる。
ケイは基本力を貸さないとは言っていたが、最初に上陸してきた斥候の者たちを捕まえて来てくれた。
半年近くの付き合いから、ケイは自分たちに無理なことをさせようとしないということが分かっている。
バレリオが暗殺することを言い出した時、特に何も言わなかったところを見ると、ケイは自分たちならできると踏んでいるのだろう。
それに、この作戦が成功すれば、上陸している人族たちを飢餓状態に貶められる。
ケイの言う一掃作戦もやりやすくなるはずだ。
指導によって、今となってはほとんどの者が探知ができるようになっている。
魔物を避けて人族たちの拠点付近に隠れ、調達に出た者たちを仕留めることは難しくなかった。
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