エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
第201話
「もう俺が相手する必要ないいだろ?」
「えっ?」
アウレリオのブランク解消に付き合い始めて9日になる。
少しずつ動きもよくなってきているように思える。
問題点も分かっているので、あとは自分でどうにかできるだろう。
そのため、ケイがアウレリオの相手をするのを終わりにしようと提案をした。
突然のことに、アウレリオも面食らったような表情になる。
「とりあえず、明日で最後にしよう」
「あ、あぁ……」
ケイの言葉に、アウレリオは頷くしかなかった。
元々は、ケイから感じた何かを探り当てるための、ある意味方便のでもあったこのブランク解消の手合わせ。
はっきり言って、アウレリオはケイからは何の情報も得られていない。
ただ、尾行はバレるので、ケイではなくケイが接触した人間に話を聞いたところ、何やら火山地帯を探していたということだった。
全くもって、何を考えているのか分からない。
しかし、これ以上理由もなく時間かける訳にはいかない。
何か怪しくは感じるが、ケイが手配書の男とは顔が違うことはたしか。
ケイの何に引っかかったのか分からないが、妻の病気のためにも他の村や町へ向かうべきだろう。
依頼してきたベラスコには、周辺の村に諜報員を送り込んでもらっているので、手配書に似た男たちを見つけたら報告が来るようにはなっている。
しかし、10日も経っているのに何の情報もないということは、男がそこに現れていないか、諜報員の目を何かしらの方法で潜り抜けたということになる。
自分のように直感がある訳ではないので、取りこぼす可能性もあるが、商会でトップ中のトップの諜報員を送り込んでいるというベラスコの言葉を信用するしかない。
「じゃあ、明日……」
「あぁ……」
結局アウレリオはケイを止める言葉が思い浮かばず、この日は別れるしかなかった。
「この山も火山だったはずだ!」
【エスペラスさがす!】「ワンッ!」
アウレリオと別れたケイは、今日も火山に来ていた。
キョエルタの村の付近で火山は2つしかなく、今日はこれまでに通って来た道程の中の火山を思い起こして転移してきた。
エスペラスが火山に生えているのは、この2日で確信に近くなっていた。
しかし、どちらもたいしてエスペラスの樹が生えておらず、実も少量しか手に入っていない。
とてもではないが、アウレリオの奥さんが罹っているドロレス病の回復に使うには足りないように思える。
「あまり大差ないな……」
エスペラスが火山に生えるというのは分かったのだが、それ以外のことは分からないでいる。
地熱とか土壌とか硫化水素などと、色々共通点がないかと思ってケイなりに調査してはいるのだが、この2日捜索した山は近場だったため、データとしてはあまり大差がなかった。
転移して離れた所まで来たのだから、今日のデータと比較すればもしかしたらエスペラスの成長に何が影響しているのか分かるかと思ったのだが、今日の火山も8合目まではこれまでの山と大差がなかった。
「……ちょっと生えている」
【本当だ!】
エスペラスの樹を見つけ、ケイは意外そうな声をあげる。
そのケイの言葉に、キュウも反応する。
これまでと違うのは、頂上付近に来た時にエスペラスの樹が生えている本数だ。
2、3本しか生えていなかった昨日、一昨日とは違い、今日来たこの火山は十数本と2桁は生えている。
「何が違うんだ?」
はっきり言って、ケイが注目していた3つの項目は、これまでと変わらない。
なので、期待していなかった分、生えている本数に驚きを覚える。
火山としての状況は変わらないのに、こちらの方が生えている本数が違うということは、エスペラスの生態の謎が解消されないどころか更に謎が深まった。
そのため、ケイは首を傾げるしかなかった。
「…………もしかして、火山の活動が関係しているのか……」
これまでの火山は完全に小康状態といったところだった。
それに比べて、今日転移してきた山は、火口の部分からほんの僅かに煙が上がっている。
違いと言ったらこれしかないようなので、エスペラスの成長には、ケイが言うように火山活動が関係している可能性がる。
【しゅじん、とらないの?】「ワウッ?」
「あぁ、取るよ……」
火山活動の違い以外に、何か他に違いがないか探すために無言になるケイ。
やはり、他にはなにも差がないように思える。
そんなケイに、キュウとクウは実の採取をしないのかと尋ねてくる。
理由はどうあれ、これだけの数の樹が自生しているのなら、実の方もかなり期待できる。
「だいぶ取れたな!」
【とれた!】「ワンッ!」
思った通り、結構な数と大きさに成長したエスペラスの樹からは、多くの実が取れることができた。
手提げのバスケットを実の受け籠代わりにしたのだが、それがいっぱいになるほどだ。
BB弾程の大きさの赤い実が、ここまで取れると綺麗に見えてくるから不思議だ。
「これで明日の準備は大丈夫だ」
今日は他の場所でも探すつもりだったが、これだけあれば十分だろう。
アウレリオの稽古も明日までと言った手前、ケイは今日中に数を揃えておきたかったため、今日も取れる数が少なかった場合、明日も理由を付けて稽古の終了を伸ばしていたかもしれない。
何だかみっともないことにならなくて済んだだことに、ケイは安堵した。
「帰ろうか?」
【うん!】「ワンッ!」
結局エスペラスの生態の解明はできなかったが、火山地帯に生えている可能性が高いということだけでも十分役に立つ情報が得られた。
土産としては十分な物と情報を得て、ケイたちはキョエルタの村付近の森に転移をしていったのだった。
「えっ?」
アウレリオのブランク解消に付き合い始めて9日になる。
少しずつ動きもよくなってきているように思える。
問題点も分かっているので、あとは自分でどうにかできるだろう。
そのため、ケイがアウレリオの相手をするのを終わりにしようと提案をした。
突然のことに、アウレリオも面食らったような表情になる。
「とりあえず、明日で最後にしよう」
「あ、あぁ……」
ケイの言葉に、アウレリオは頷くしかなかった。
元々は、ケイから感じた何かを探り当てるための、ある意味方便のでもあったこのブランク解消の手合わせ。
はっきり言って、アウレリオはケイからは何の情報も得られていない。
ただ、尾行はバレるので、ケイではなくケイが接触した人間に話を聞いたところ、何やら火山地帯を探していたということだった。
全くもって、何を考えているのか分からない。
しかし、これ以上理由もなく時間かける訳にはいかない。
何か怪しくは感じるが、ケイが手配書の男とは顔が違うことはたしか。
ケイの何に引っかかったのか分からないが、妻の病気のためにも他の村や町へ向かうべきだろう。
依頼してきたベラスコには、周辺の村に諜報員を送り込んでもらっているので、手配書に似た男たちを見つけたら報告が来るようにはなっている。
しかし、10日も経っているのに何の情報もないということは、男がそこに現れていないか、諜報員の目を何かしらの方法で潜り抜けたということになる。
自分のように直感がある訳ではないので、取りこぼす可能性もあるが、商会でトップ中のトップの諜報員を送り込んでいるというベラスコの言葉を信用するしかない。
「じゃあ、明日……」
「あぁ……」
結局アウレリオはケイを止める言葉が思い浮かばず、この日は別れるしかなかった。
「この山も火山だったはずだ!」
【エスペラスさがす!】「ワンッ!」
アウレリオと別れたケイは、今日も火山に来ていた。
キョエルタの村の付近で火山は2つしかなく、今日はこれまでに通って来た道程の中の火山を思い起こして転移してきた。
エスペラスが火山に生えているのは、この2日で確信に近くなっていた。
しかし、どちらもたいしてエスペラスの樹が生えておらず、実も少量しか手に入っていない。
とてもではないが、アウレリオの奥さんが罹っているドロレス病の回復に使うには足りないように思える。
「あまり大差ないな……」
エスペラスが火山に生えるというのは分かったのだが、それ以外のことは分からないでいる。
地熱とか土壌とか硫化水素などと、色々共通点がないかと思ってケイなりに調査してはいるのだが、この2日捜索した山は近場だったため、データとしてはあまり大差がなかった。
転移して離れた所まで来たのだから、今日のデータと比較すればもしかしたらエスペラスの成長に何が影響しているのか分かるかと思ったのだが、今日の火山も8合目まではこれまでの山と大差がなかった。
「……ちょっと生えている」
【本当だ!】
エスペラスの樹を見つけ、ケイは意外そうな声をあげる。
そのケイの言葉に、キュウも反応する。
これまでと違うのは、頂上付近に来た時にエスペラスの樹が生えている本数だ。
2、3本しか生えていなかった昨日、一昨日とは違い、今日来たこの火山は十数本と2桁は生えている。
「何が違うんだ?」
はっきり言って、ケイが注目していた3つの項目は、これまでと変わらない。
なので、期待していなかった分、生えている本数に驚きを覚える。
火山としての状況は変わらないのに、こちらの方が生えている本数が違うということは、エスペラスの生態の謎が解消されないどころか更に謎が深まった。
そのため、ケイは首を傾げるしかなかった。
「…………もしかして、火山の活動が関係しているのか……」
これまでの火山は完全に小康状態といったところだった。
それに比べて、今日転移してきた山は、火口の部分からほんの僅かに煙が上がっている。
違いと言ったらこれしかないようなので、エスペラスの成長には、ケイが言うように火山活動が関係している可能性がる。
【しゅじん、とらないの?】「ワウッ?」
「あぁ、取るよ……」
火山活動の違い以外に、何か他に違いがないか探すために無言になるケイ。
やはり、他にはなにも差がないように思える。
そんなケイに、キュウとクウは実の採取をしないのかと尋ねてくる。
理由はどうあれ、これだけの数の樹が自生しているのなら、実の方もかなり期待できる。
「だいぶ取れたな!」
【とれた!】「ワンッ!」
思った通り、結構な数と大きさに成長したエスペラスの樹からは、多くの実が取れることができた。
手提げのバスケットを実の受け籠代わりにしたのだが、それがいっぱいになるほどだ。
BB弾程の大きさの赤い実が、ここまで取れると綺麗に見えてくるから不思議だ。
「これで明日の準備は大丈夫だ」
今日は他の場所でも探すつもりだったが、これだけあれば十分だろう。
アウレリオの稽古も明日までと言った手前、ケイは今日中に数を揃えておきたかったため、今日も取れる数が少なかった場合、明日も理由を付けて稽古の終了を伸ばしていたかもしれない。
何だかみっともないことにならなくて済んだだことに、ケイは安堵した。
「帰ろうか?」
【うん!】「ワンッ!」
結局エスペラスの生態の解明はできなかったが、火山地帯に生えている可能性が高いということだけでも十分役に立つ情報が得られた。
土産としては十分な物と情報を得て、ケイたちはキョエルタの村付近の森に転移をしていったのだった。
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