エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
第172話
「セベリノ様!!」
「んっ!? 何だ?」
撤退を終えて、城壁に登った隊長らしき男は、急に名前を呼ばれてそちらへと顔を向ける。
すると、そこには巨大な身長をした獣人男性が立っていて、その隣にも1人の人族が立っている。
そちらの方は、あまり見たことがない綺麗な顔立ちをした青年だ。
その人族に心当たりはないが、獣人の方は良く知っている。
「おぉ! リカルド殿」
「久しぶりですな。セベリノ殿」
何度も顔を合わせているので、よく知った仲だ。
なので、リカルドとセベリノは挨拶を交わす。
「……そちらはもしかして?」
「あぁ、こちらはエルフ族のケイ殿だ」
父のマカリオに聞いていたのだろうか、ケイの姿を見たセベリノは確認をするようにリカルドに尋ねてきた。
それに対し、リカルドは簡潔にケイのことをセベリノに紹介した。
「初めまして、ケイと申します」
「どうも、初めまして、ドワーフ王国王子のセベリノと申します」
初対面のケイとセベリノは、お互い自己紹介して握手を交わす。
握手してみると、セベリノはただ太っているという訳ではなく、筋肉が密集しているかのような感触に感じる。
腕とかだけでなく、指までそのような感じ、これで手先が器用とかどういうことなんだと密かに思った。
「色々と問題のある時にお越しいただいて申し訳ない」
「お気になさらず……」
会いたいと言っていたこの国の王のマカリオは体調不良で床に就き、更には原因不明の大群の魔物の出現。
しかも、その大群の魔物は、倒しても倒しても無限ポップ状態で手が付けられない。
そんな時に来てもらうことになってしまったことに、セベリノはばつの悪そうな表情をしている。
たしかに呼んどいてこれはどうかと思わなくもないが、逆の立場になるとどうしようもないことなので、気にしないようにいうしかなかった。
「何でも魔物の大群に手を焼いているとか?」
「我々も助力させてもらおう」
「本当ですか? それはありがたい」
ケイとリカルドが手を貸すことを告げると、セベリノは感謝の言葉を述べる。
最先端の魔道具開発をおこなっていることで有名なドワーフ王国に、恩を売れるなら売っておこうという気持ちもなくはないが、さすがにこのまま見逃すという訳にはいかない。
「どんな魔物なのですか?」
手こずっていると言うが、どんな魔物を相手にしているのかによって話が変わってくる。
相手次第では、ケイたちでも役に立つかは分からないため、まずは聞いておくことにした。
「それが……」
「隊長! 来ました!」
王子とは言っても、セベリノは軍を率いる立場に立っており、いつもは隊長と呼ばれているらしい。
そのため、部下の兵はいつものように呼び、セベリノに対して慌てて報告してきた。
「分かった! ……見てもらった方が早いかもしれないですね。あれです……」
説明するのも簡単だが、見える位置に来たのなら見てもらった方が分かりやすい。
セベリノは城壁の上から見下ろすように指を差した。
ケイたちがその指先を見ると、魔物たちがゆっくりと姿を現したのだった。
「…………アンデッド?」
「ぐっ!!」
城壁に迫り来る魔物の姿を見たケイは、その魔物の正体を小さい声で呟いた。
見えてきたのは、ゾンビやスケルトンなどのいわゆるアンデッド系の魔物が大軍で迫って来ていた。
ゾンビたちの肉体から流れてくる腐臭に、鼻の良いリカルドは顔をしかめる。
普通の嗅覚のケイですら嫌な臭いがしているので、リカルドにはとんでもないことになっているのかもしれない。
「その通りです」
ケイの呟きが聞こえていたらしく、セベリノは頷きながら答える。
普段ならセベリノたちを手こずらせるような相手ではないのだが、今回は様子が違う。
倒しても増えて迫って来るアンデッドたちに、多くの負傷者を出すことになっている。
「この国では焼却処理とかはなさっていないのですか?」
どこの国でも、人や生物の死体処理は焼却が基本になっている。
そのまま放置していると、その死体に魔素が集まりアンデッド系の魔物となってしまう可能性があるからである。
もしかしたら、ここドワーフ王国は文化の違いなどによって焼却処分をしていないのかとも思い、ケイはセベリノに聞いてみた。
「いえ、わが国でも生物の焼却処理はおこなっています」
ケイの問いに、セベリノは否定の言葉を返してきた。
別に焼却処理をおこなっていない訳ではないようだ。
「しかし、今回原因不明のアンデットの出現が起きたのです」
焼却処理をおこなっていようとも、アンデッドの魔物が出現することはある。
どこでどんな魔物が死んでいるのかなんて、そのすべてを理解している者なんて存在しないはずだ。
そんなことができるのは、神様ぐらいしかいないのではないだろうか。
なので、出現するのはおかしくないが、今回のように集団で発生するなんて、何か原因でもないと起こる訳がない。
「……取りあえず、攻撃をしてみますか……」
原因不明のアンデッドの大量発生。
更には、倒してもどこからともなく出現する理由。
話を聞く限りそれを解明しないことには、今回のこの襲撃を止めることはできないだろう。
まずは、攻撃をした時どういう風になるのかを見てみるため、ケイは攻撃をしてみることにしたのだった。
「んっ!? 何だ?」
撤退を終えて、城壁に登った隊長らしき男は、急に名前を呼ばれてそちらへと顔を向ける。
すると、そこには巨大な身長をした獣人男性が立っていて、その隣にも1人の人族が立っている。
そちらの方は、あまり見たことがない綺麗な顔立ちをした青年だ。
その人族に心当たりはないが、獣人の方は良く知っている。
「おぉ! リカルド殿」
「久しぶりですな。セベリノ殿」
何度も顔を合わせているので、よく知った仲だ。
なので、リカルドとセベリノは挨拶を交わす。
「……そちらはもしかして?」
「あぁ、こちらはエルフ族のケイ殿だ」
父のマカリオに聞いていたのだろうか、ケイの姿を見たセベリノは確認をするようにリカルドに尋ねてきた。
それに対し、リカルドは簡潔にケイのことをセベリノに紹介した。
「初めまして、ケイと申します」
「どうも、初めまして、ドワーフ王国王子のセベリノと申します」
初対面のケイとセベリノは、お互い自己紹介して握手を交わす。
握手してみると、セベリノはただ太っているという訳ではなく、筋肉が密集しているかのような感触に感じる。
腕とかだけでなく、指までそのような感じ、これで手先が器用とかどういうことなんだと密かに思った。
「色々と問題のある時にお越しいただいて申し訳ない」
「お気になさらず……」
会いたいと言っていたこの国の王のマカリオは体調不良で床に就き、更には原因不明の大群の魔物の出現。
しかも、その大群の魔物は、倒しても倒しても無限ポップ状態で手が付けられない。
そんな時に来てもらうことになってしまったことに、セベリノはばつの悪そうな表情をしている。
たしかに呼んどいてこれはどうかと思わなくもないが、逆の立場になるとどうしようもないことなので、気にしないようにいうしかなかった。
「何でも魔物の大群に手を焼いているとか?」
「我々も助力させてもらおう」
「本当ですか? それはありがたい」
ケイとリカルドが手を貸すことを告げると、セベリノは感謝の言葉を述べる。
最先端の魔道具開発をおこなっていることで有名なドワーフ王国に、恩を売れるなら売っておこうという気持ちもなくはないが、さすがにこのまま見逃すという訳にはいかない。
「どんな魔物なのですか?」
手こずっていると言うが、どんな魔物を相手にしているのかによって話が変わってくる。
相手次第では、ケイたちでも役に立つかは分からないため、まずは聞いておくことにした。
「それが……」
「隊長! 来ました!」
王子とは言っても、セベリノは軍を率いる立場に立っており、いつもは隊長と呼ばれているらしい。
そのため、部下の兵はいつものように呼び、セベリノに対して慌てて報告してきた。
「分かった! ……見てもらった方が早いかもしれないですね。あれです……」
説明するのも簡単だが、見える位置に来たのなら見てもらった方が分かりやすい。
セベリノは城壁の上から見下ろすように指を差した。
ケイたちがその指先を見ると、魔物たちがゆっくりと姿を現したのだった。
「…………アンデッド?」
「ぐっ!!」
城壁に迫り来る魔物の姿を見たケイは、その魔物の正体を小さい声で呟いた。
見えてきたのは、ゾンビやスケルトンなどのいわゆるアンデッド系の魔物が大軍で迫って来ていた。
ゾンビたちの肉体から流れてくる腐臭に、鼻の良いリカルドは顔をしかめる。
普通の嗅覚のケイですら嫌な臭いがしているので、リカルドにはとんでもないことになっているのかもしれない。
「その通りです」
ケイの呟きが聞こえていたらしく、セベリノは頷きながら答える。
普段ならセベリノたちを手こずらせるような相手ではないのだが、今回は様子が違う。
倒しても増えて迫って来るアンデッドたちに、多くの負傷者を出すことになっている。
「この国では焼却処理とかはなさっていないのですか?」
どこの国でも、人や生物の死体処理は焼却が基本になっている。
そのまま放置していると、その死体に魔素が集まりアンデッド系の魔物となってしまう可能性があるからである。
もしかしたら、ここドワーフ王国は文化の違いなどによって焼却処分をしていないのかとも思い、ケイはセベリノに聞いてみた。
「いえ、わが国でも生物の焼却処理はおこなっています」
ケイの問いに、セベリノは否定の言葉を返してきた。
別に焼却処理をおこなっていない訳ではないようだ。
「しかし、今回原因不明のアンデットの出現が起きたのです」
焼却処理をおこなっていようとも、アンデッドの魔物が出現することはある。
どこでどんな魔物が死んでいるのかなんて、そのすべてを理解している者なんて存在しないはずだ。
そんなことができるのは、神様ぐらいしかいないのではないだろうか。
なので、出現するのはおかしくないが、今回のように集団で発生するなんて、何か原因でもないと起こる訳がない。
「……取りあえず、攻撃をしてみますか……」
原因不明のアンデッドの大量発生。
更には、倒してもどこからともなく出現する理由。
話を聞く限りそれを解明しないことには、今回のこの襲撃を止めることはできないだろう。
まずは、攻撃をした時どういう風になるのかを見てみるため、ケイは攻撃をしてみることにしたのだった。
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