エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
第161話
「美花が一緒でも大丈夫でしょうか?」
ドワーフ王国へ行くことになったケイは、移動開始日に美花と共にカンタルボスへ転移し、リカルドに会いに王城へ向かった。
美花も一緒に来たのは、ケイがドワーフに会いに行くと言ったら、自分も行きたいと言ったからだ。
美花に言われたら、ケイとしては断れない。
連れていくのは良いとして、人族が嫌いだというドワーフの国に美花を連れて行っていいものか分からないため、ケイはリカルドに聞いてみることにした。
「…………着く前に連絡しておけば恐らく大丈夫でしょう」
ドワーフの王には、生き残ったエルフは人族の女性と結婚したということは伝えてある。
それを言った時、ドワーフ王は一瞬不快そうな顔をしたが、その女性が日向の女性だと言ったらちょっとだけ和らいだようにも見えたので、もしかしたら大丈夫かもしれない。
なので、リカルドは美花の同行を了承した。
「ドワーフ王国まではどういった行程になるのですか?」
ドワーフ王国がある場所は大体聞いていたが、どうやって行くのかはケイには分からない。
そういったことは、全部リカルドが手配してくれるということだったので任せたが、とりあえず聞いておくことにした。
「カンタルボスから真っすぐ北西へ進み隣国のヴァーリャを通り、船を借りて海を渡る予定だ」
「「船……」」
カンタルボスから北西の方角にドワーフ王国はある。
獣人大陸を横断するようなものだ。
カンタルボスからだと約1800kmといったところだろう。
ドワーフ王国は離島なので、船でないと入国することはできないそうだ。
ただ、ケイと美花はいまだに海が苦手だ。
分かってはいても、船に乗らなければならないと思うと、今から身構えてしまう。
「半日もしないから我慢してほしい……」
ケイたちが海が苦手だということは聞いているし、島に遊びに行った時も泳いだりしているのを見たことはないので分かっている。
カンタルボスに初めて来たときも、2人ともかなり青い顔をしていたとファウストから聞いている。
今回はそんな長時間船に乗っているということにはならないので、リカルドはケイたちに安心するように告げた。
「馬ですか?」
「あぁ、一気に行こうと思ってな」
リカルドに連れられて城を出ると、ドワーフ王国へ向かう者の人数分の馬が用意されていた。
どうやら、これに乗って移動をするようだ。
ケイと美花、リカルドとその護衛の者たち10人による行動になるのだが、
「馬に乗ったことがないのですが……」
「えっ?」
どうやら、リカルドはケイが馬に乗れるかどうか聞くのを忘れていたらしい。
ケイの告白に、リカルドは困惑の表情に変わる。
「走った方が早いのでは?」
「相当な距離だからきついぞ?」
魔闘術を使ったケイなら馬より早く走ることができる。
リカルドも同様に馬よりも速く走れるが、距離が距離だけにかなり疲れる。
ケイとリカルドだけならまだしも、美花や護衛の者たちが付いてこれるとは思えない。
だから馬を用意したのだ。
「練習しながら向かえば良いんじゃない?」
ケイは器用なので、大体のことはすぐに出来てしまう。
美花はそれを見越しての提案をした。
それに、多少の落馬でも、魔闘術を発動すれば大怪我をすることもないだろう。
「美花は馬に乗れんのか?」
「まぁね。昔取った杵柄って所かしら」
小さい頃は日向の追っ手から逃げるために、馬に乗れるようになっておいた方が良いと父から乗馬の訓練を教わっていた。
今となってはだいぶ古い話だが、その感覚は体が覚えている。
「じゃあ、ケイ殿が乗馬に慣れるまで少しゆっくりと向かうことにしよう」
「お手数かけます……」
自分のせいで余計な時間がかかってしまうことになり、ケイはなんとなく申し訳なくなる。
こうして出だしから躓きつつ、ケイたちの移動は始まった。
「ところで……」
「んっ?」
城から出発すると、ケイは取りあえず歩くだけなら少しの時間でできるようになれた。
少しずつなれてくると、話すだけの余裕ができてきた。
そのため、ケイは疑問に思っていたことを尋ねることにした。
「どうしてリカルド殿が案内してくれるのですか?」
案内だけなら、リカルドの息子のファウストの任せてもいい。
国のトップがわざわざ案内してくれるなんて、何か理由でもあるのだろうか。
「私が行かないと会ってくれるかわからないのでな……」
「……気難しい人なのですか?」
何だか聞いていると、リカルドはドワーフ王を苦手にしているなように見える。
もしかしたら、性格に難があるのかと勘繰りたくなる。
「頭が固く、偏屈な所がある方で……」
「そうですか……」
ファンタジー物だとドワーフは頑固な者が多いということがある。
リカルドの口振りだと、もしかしたらこの世界のドワーフもそのような傾向にあるのかもしれない。
「年齢が年齢のため、王位をそろそろ息子に譲るつもりらしいが、今の王が魔道具を発展させたといわれているから、どうなることか……」
聞いた話によると、今の王はかなりの老齢であり、そろそろ王太子に王位を譲るつもりらしい。
魔道具開発に力を入れているのは昔からのことなのだが、今の王が特に多くの魔道具を世に広めて獣人を助けたという話で、ドワーフ国内では歴史に名を残すことが確実な天才なのだそうだ。
「……どんな方なのか楽しみです」
ケイとしては、ドワーフという種族がどういう姿をしているのか見てみたかっただけなのだが、魔道具開発の天才と聞くと更に興味が湧いてきた。
リカルドから色々聞いて、ケイは今からドワーフ王に会うことが楽しみになった。
ドワーフ王国へ行くことになったケイは、移動開始日に美花と共にカンタルボスへ転移し、リカルドに会いに王城へ向かった。
美花も一緒に来たのは、ケイがドワーフに会いに行くと言ったら、自分も行きたいと言ったからだ。
美花に言われたら、ケイとしては断れない。
連れていくのは良いとして、人族が嫌いだというドワーフの国に美花を連れて行っていいものか分からないため、ケイはリカルドに聞いてみることにした。
「…………着く前に連絡しておけば恐らく大丈夫でしょう」
ドワーフの王には、生き残ったエルフは人族の女性と結婚したということは伝えてある。
それを言った時、ドワーフ王は一瞬不快そうな顔をしたが、その女性が日向の女性だと言ったらちょっとだけ和らいだようにも見えたので、もしかしたら大丈夫かもしれない。
なので、リカルドは美花の同行を了承した。
「ドワーフ王国まではどういった行程になるのですか?」
ドワーフ王国がある場所は大体聞いていたが、どうやって行くのかはケイには分からない。
そういったことは、全部リカルドが手配してくれるということだったので任せたが、とりあえず聞いておくことにした。
「カンタルボスから真っすぐ北西へ進み隣国のヴァーリャを通り、船を借りて海を渡る予定だ」
「「船……」」
カンタルボスから北西の方角にドワーフ王国はある。
獣人大陸を横断するようなものだ。
カンタルボスからだと約1800kmといったところだろう。
ドワーフ王国は離島なので、船でないと入国することはできないそうだ。
ただ、ケイと美花はいまだに海が苦手だ。
分かってはいても、船に乗らなければならないと思うと、今から身構えてしまう。
「半日もしないから我慢してほしい……」
ケイたちが海が苦手だということは聞いているし、島に遊びに行った時も泳いだりしているのを見たことはないので分かっている。
カンタルボスに初めて来たときも、2人ともかなり青い顔をしていたとファウストから聞いている。
今回はそんな長時間船に乗っているということにはならないので、リカルドはケイたちに安心するように告げた。
「馬ですか?」
「あぁ、一気に行こうと思ってな」
リカルドに連れられて城を出ると、ドワーフ王国へ向かう者の人数分の馬が用意されていた。
どうやら、これに乗って移動をするようだ。
ケイと美花、リカルドとその護衛の者たち10人による行動になるのだが、
「馬に乗ったことがないのですが……」
「えっ?」
どうやら、リカルドはケイが馬に乗れるかどうか聞くのを忘れていたらしい。
ケイの告白に、リカルドは困惑の表情に変わる。
「走った方が早いのでは?」
「相当な距離だからきついぞ?」
魔闘術を使ったケイなら馬より早く走ることができる。
リカルドも同様に馬よりも速く走れるが、距離が距離だけにかなり疲れる。
ケイとリカルドだけならまだしも、美花や護衛の者たちが付いてこれるとは思えない。
だから馬を用意したのだ。
「練習しながら向かえば良いんじゃない?」
ケイは器用なので、大体のことはすぐに出来てしまう。
美花はそれを見越しての提案をした。
それに、多少の落馬でも、魔闘術を発動すれば大怪我をすることもないだろう。
「美花は馬に乗れんのか?」
「まぁね。昔取った杵柄って所かしら」
小さい頃は日向の追っ手から逃げるために、馬に乗れるようになっておいた方が良いと父から乗馬の訓練を教わっていた。
今となってはだいぶ古い話だが、その感覚は体が覚えている。
「じゃあ、ケイ殿が乗馬に慣れるまで少しゆっくりと向かうことにしよう」
「お手数かけます……」
自分のせいで余計な時間がかかってしまうことになり、ケイはなんとなく申し訳なくなる。
こうして出だしから躓きつつ、ケイたちの移動は始まった。
「ところで……」
「んっ?」
城から出発すると、ケイは取りあえず歩くだけなら少しの時間でできるようになれた。
少しずつなれてくると、話すだけの余裕ができてきた。
そのため、ケイは疑問に思っていたことを尋ねることにした。
「どうしてリカルド殿が案内してくれるのですか?」
案内だけなら、リカルドの息子のファウストの任せてもいい。
国のトップがわざわざ案内してくれるなんて、何か理由でもあるのだろうか。
「私が行かないと会ってくれるかわからないのでな……」
「……気難しい人なのですか?」
何だか聞いていると、リカルドはドワーフ王を苦手にしているなように見える。
もしかしたら、性格に難があるのかと勘繰りたくなる。
「頭が固く、偏屈な所がある方で……」
「そうですか……」
ファンタジー物だとドワーフは頑固な者が多いということがある。
リカルドの口振りだと、もしかしたらこの世界のドワーフもそのような傾向にあるのかもしれない。
「年齢が年齢のため、王位をそろそろ息子に譲るつもりらしいが、今の王が魔道具を発展させたといわれているから、どうなることか……」
聞いた話によると、今の王はかなりの老齢であり、そろそろ王太子に王位を譲るつもりらしい。
魔道具開発に力を入れているのは昔からのことなのだが、今の王が特に多くの魔道具を世に広めて獣人を助けたという話で、ドワーフ国内では歴史に名を残すことが確実な天才なのだそうだ。
「……どんな方なのか楽しみです」
ケイとしては、ドワーフという種族がどういう姿をしているのか見てみたかっただけなのだが、魔道具開発の天才と聞くと更に興味が湧いてきた。
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