エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
第150話
「どこでもスタンピードって所かな?」
「おぉ、お前上手いこと言うな」
レイナルドがシャレにならないようなことを言うが、ケイはまさにその通りだと思い褒めていた。
現在、ケイとレイナルドは姿をローブで隠しつつ、町の時計台からリシケサ王国の王城を見下ろしている状況だ。
ケイたちによって封印されていた何かが解放されてから、町は少しづつ騒がしくなってきている。
どうやら、その何かが魔物を召喚して暴れているとのことだ。
その噂が広がり、市民たちは知る所になっているのだろうが、ケイたちは望遠の魔法を使って遠くから王城をのんびり眺めながら、その出現した何かが城から出てくるのを待つ。
「虫系の魔物使いかな?」
「あぁ、そうだな……」
城からは多くの魔物が出てきている。
その多くは蟻。
その蟻相手に兵たちが奮闘しているのが見える。
「あっ! サンダリオの奴逃げてやがるな……」
よく見てみると、王になったサンダリオは兵に誘導されながら城から避難している。
相変わらずサンダリオは逃げ足が速いようだ。
サンダリオが殺されるところを見て、島に帰りたいところだが、これでは無理そうだ。
「…………出てきた」
「あれだな……」
城からワラワラと出てくる虫たち。
その中にボロボロの服を着た1人の男が、一際大きな蟻に乗って現れた。
「女王蟻か?」
多くの魔物を使役するには、かなりの魔力を必要とする。
しかし、数多くの魔物を使役するには他の方法もある。
それは蟻や蜂の女王を従える方法だ。
女王の指示に従って行動する兵隊を間接的に使えば、魔力を省エネできる上に数の確保ができる。
そのため、数を必要とする魔物使いは、蟻や蜂の女王の魔物を狙うが、その分危険が伴う。
どうやって手にいれたか分からないが、女王蟻に乗った男が蟻たちを使役しているのだろう。
「確かに魔力が多いみたいだね……」
出てきた男は蟻だけでなく、他にも虫の魔物を召喚して周囲を破壊し、立派な城が魔物によって穴が幾つも開けられていく。
リシケサの兵たちも懸命に魔物の相手をしているが、倒しても増えてくる魔物の相手でいっぱいいっぱいのようで、とても城の破壊を止められる状況ではない。
「……なんかおかしいな」
「何が?」
このままなら城の崩壊も遠くないだろう。
しかし、ケイはそんなことはどうでもよく、封印から解かれた男のことをじっと見ている。
そして、その男の違和感に首を傾げた。
レイナルドは、何がおかしいのか分からず、ケイに問いかける。
「あの魔物使いの魔力の流れが普通の人と違うような……」
「えっ?」
望遠の魔法で見ながら、ケイは魔物使いの男のことを鑑定してみる。
もしも戦うことになった場合、男が脅威になるかを判断するためだ。
しかし、男を鑑定してみると、体に流れる魔力に違和感を感じる。
これまで見てきた人間とは微妙に違うのだ。
「……確かに」
ケイの言葉を聞いたレイナルドも、男を見てみる。
そして、同じく違和感を感じた。
「あれだけの魔物を操られたら封印したくなるのも分かるな……」
違和感の正体は分からないが、封印から解かれた男はドンドン魔物を召喚していく。
そのため、城はもう原形を留めていないほどに破壊されてしまった。
ワラワラと蠢く多くの虫の魔物に、レイナルドは若干引き気味に呟く。
「パッと見た感想だと、あいつ自体はそんなに強くない気がする」
「そう?」
たしかに多くの魔物は厄介だが、それを抜きにすれば、たいした脅威には思えない。
封印が解かれたばかりで弱っているのかもしれないが、あの程度なら戦えば勝てるだろう。
魔物のことが頭から拭えないレイナルドはそう思えないため、ケイの評価に首を傾げる。
「お前でも倒せるんじゃないか? 魔物がいなければだけど」
「それ無理って事じゃん!」
あの男相手に戦うとなると、魔物の相手が不可欠になる。
魔物がいなければ勝てるということは、そんな状況に持ち込まなければ勝てないということだ。
スタンピードを一人で止めなければならないなんて、無茶が過ぎる。
ケイの言葉に、レイナルドはツッコミを入れる。
「父さんやリカルド殿なら倒せるのか?」
「……たぶんな」
ケイなら膨大な魔力を利用し、魔法で魔物を削ってから戦うことになる。
あの男がどれだけ魔物が出せるのか分からないが、ケイの魔力が尽きる前には1対1に持ち込んで倒せるだろう。
カンタルボス王国の王であるリカルドも、あの肉体から繰り出す圧倒的パワーで魔物を倒して勝つことができるだろう。
封印が解かれた男の怖いところは、奴自身の戦闘力などではなく、大量の魔物を使役する力だ。
それがなければたいした相手ではないとケイは思っている。
「あっ! 崩れた……」
虫たちの破壊によって、とうとう城が崩れ出した。
それを見て、リシケサの兵たちは唖然としている。
国の象徴でもある城が、無残にも瓦礫の山へと変わってしまったからだ。
城が破壊され、魔物の集団に囲われたままの男は、今度は町の破壊へと進みだした。
サンダリオの指示を受けたのか、多くの兵が連携を取って魔物へと向かって行っているが、数は魔物の方が上のようで、ジワジワと町が魔物に破壊されて行っている。
ケイたちとリカルドの襲撃で、評判の落ちたリシケサは隣国の侵攻に注意をしている。
そのため、兵を国境に配備したため、王都の兵が少ないようだ。
配備した兵を呼び戻せば抑え込むこともできるかもしれないが、そうすれば隣国が攻めてくる。
どちらにするかはサンダリオ次第だろう。
「そろそろ、放っておいて帰ろうか?」
「そうだな。市民の避難が開始されたみたいだし……」
時計台から見下ろすと、王都の兵たちが不利だということを聞いた市民たちが、慌てて町から逃れようとし始めていた。
人族の全滅などとまでは思っていないので、ケイは市民のことは見逃すことにした。
これ以上ここにいてもやることもないので、レイナルドに転移の扉を開いてもらい、ケイはアンヘル島へと帰っていったのだった。
「おぉ、お前上手いこと言うな」
レイナルドがシャレにならないようなことを言うが、ケイはまさにその通りだと思い褒めていた。
現在、ケイとレイナルドは姿をローブで隠しつつ、町の時計台からリシケサ王国の王城を見下ろしている状況だ。
ケイたちによって封印されていた何かが解放されてから、町は少しづつ騒がしくなってきている。
どうやら、その何かが魔物を召喚して暴れているとのことだ。
その噂が広がり、市民たちは知る所になっているのだろうが、ケイたちは望遠の魔法を使って遠くから王城をのんびり眺めながら、その出現した何かが城から出てくるのを待つ。
「虫系の魔物使いかな?」
「あぁ、そうだな……」
城からは多くの魔物が出てきている。
その多くは蟻。
その蟻相手に兵たちが奮闘しているのが見える。
「あっ! サンダリオの奴逃げてやがるな……」
よく見てみると、王になったサンダリオは兵に誘導されながら城から避難している。
相変わらずサンダリオは逃げ足が速いようだ。
サンダリオが殺されるところを見て、島に帰りたいところだが、これでは無理そうだ。
「…………出てきた」
「あれだな……」
城からワラワラと出てくる虫たち。
その中にボロボロの服を着た1人の男が、一際大きな蟻に乗って現れた。
「女王蟻か?」
多くの魔物を使役するには、かなりの魔力を必要とする。
しかし、数多くの魔物を使役するには他の方法もある。
それは蟻や蜂の女王を従える方法だ。
女王の指示に従って行動する兵隊を間接的に使えば、魔力を省エネできる上に数の確保ができる。
そのため、数を必要とする魔物使いは、蟻や蜂の女王の魔物を狙うが、その分危険が伴う。
どうやって手にいれたか分からないが、女王蟻に乗った男が蟻たちを使役しているのだろう。
「確かに魔力が多いみたいだね……」
出てきた男は蟻だけでなく、他にも虫の魔物を召喚して周囲を破壊し、立派な城が魔物によって穴が幾つも開けられていく。
リシケサの兵たちも懸命に魔物の相手をしているが、倒しても増えてくる魔物の相手でいっぱいいっぱいのようで、とても城の破壊を止められる状況ではない。
「……なんかおかしいな」
「何が?」
このままなら城の崩壊も遠くないだろう。
しかし、ケイはそんなことはどうでもよく、封印から解かれた男のことをじっと見ている。
そして、その男の違和感に首を傾げた。
レイナルドは、何がおかしいのか分からず、ケイに問いかける。
「あの魔物使いの魔力の流れが普通の人と違うような……」
「えっ?」
望遠の魔法で見ながら、ケイは魔物使いの男のことを鑑定してみる。
もしも戦うことになった場合、男が脅威になるかを判断するためだ。
しかし、男を鑑定してみると、体に流れる魔力に違和感を感じる。
これまで見てきた人間とは微妙に違うのだ。
「……確かに」
ケイの言葉を聞いたレイナルドも、男を見てみる。
そして、同じく違和感を感じた。
「あれだけの魔物を操られたら封印したくなるのも分かるな……」
違和感の正体は分からないが、封印から解かれた男はドンドン魔物を召喚していく。
そのため、城はもう原形を留めていないほどに破壊されてしまった。
ワラワラと蠢く多くの虫の魔物に、レイナルドは若干引き気味に呟く。
「パッと見た感想だと、あいつ自体はそんなに強くない気がする」
「そう?」
たしかに多くの魔物は厄介だが、それを抜きにすれば、たいした脅威には思えない。
封印が解かれたばかりで弱っているのかもしれないが、あの程度なら戦えば勝てるだろう。
魔物のことが頭から拭えないレイナルドはそう思えないため、ケイの評価に首を傾げる。
「お前でも倒せるんじゃないか? 魔物がいなければだけど」
「それ無理って事じゃん!」
あの男相手に戦うとなると、魔物の相手が不可欠になる。
魔物がいなければ勝てるということは、そんな状況に持ち込まなければ勝てないということだ。
スタンピードを一人で止めなければならないなんて、無茶が過ぎる。
ケイの言葉に、レイナルドはツッコミを入れる。
「父さんやリカルド殿なら倒せるのか?」
「……たぶんな」
ケイなら膨大な魔力を利用し、魔法で魔物を削ってから戦うことになる。
あの男がどれだけ魔物が出せるのか分からないが、ケイの魔力が尽きる前には1対1に持ち込んで倒せるだろう。
カンタルボス王国の王であるリカルドも、あの肉体から繰り出す圧倒的パワーで魔物を倒して勝つことができるだろう。
封印が解かれた男の怖いところは、奴自身の戦闘力などではなく、大量の魔物を使役する力だ。
それがなければたいした相手ではないとケイは思っている。
「あっ! 崩れた……」
虫たちの破壊によって、とうとう城が崩れ出した。
それを見て、リシケサの兵たちは唖然としている。
国の象徴でもある城が、無残にも瓦礫の山へと変わってしまったからだ。
城が破壊され、魔物の集団に囲われたままの男は、今度は町の破壊へと進みだした。
サンダリオの指示を受けたのか、多くの兵が連携を取って魔物へと向かって行っているが、数は魔物の方が上のようで、ジワジワと町が魔物に破壊されて行っている。
ケイたちとリカルドの襲撃で、評判の落ちたリシケサは隣国の侵攻に注意をしている。
そのため、兵を国境に配備したため、王都の兵が少ないようだ。
配備した兵を呼び戻せば抑え込むこともできるかもしれないが、そうすれば隣国が攻めてくる。
どちらにするかはサンダリオ次第だろう。
「そろそろ、放っておいて帰ろうか?」
「そうだな。市民の避難が開始されたみたいだし……」
時計台から見下ろすと、王都の兵たちが不利だということを聞いた市民たちが、慌てて町から逃れようとし始めていた。
人族の全滅などとまでは思っていないので、ケイは市民のことは見逃すことにした。
これ以上ここにいてもやることもないので、レイナルドに転移の扉を開いてもらい、ケイはアンヘル島へと帰っていったのだった。
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