エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
第126話
「……今度こそ諦めたか?」
「分からんぞ。捕まえるまで気を抜くな……」
ケイが魔闘術を解いたことで、戦うことを諦めたのかと思ったライムンドだが、一度同じように思って痛い目にあったため、セレドニオは注意を促した。
警戒を解かないために、魔闘術は発動したままケイに近付いて行った。
「…………思い出した」
「「?」」
俯いたまま無言でいたケイだったが、2人が近くまで寄って来たときに、一言ボソッと呟いた。
その言葉の意味が分からず、セレドニオたちは顔を合わせて首を傾げる。
「……何を考えている?」
“フッ!!”
様子がおかしいと感じたセレドニオは、近付く足を速めてケイを捕まえようと手を伸ばす。
しかし、その手はケイに触れることはできなかった。
手が届く寸前、ケイが姿を消したからだ。
「っ!?」
「どこ行った!?」
これには、セレドニオだけでなくライムンドも慌てた。
ケイが動いたであろうはずなのに、全く反応ができなかったからである。
周囲を見渡すが、ケイの姿を見つけられない。
「思った通りだ……」
「「っ!?」」
声がして反応すると、ケイはいつの間にか2人から離れた位置に立っていた。
見失っていたほんの一瞬に、そこまで距離を取られたとは考えられない。
しかし、笑みを浮かべて眺めているケイを見て、得たいの知れない恐怖が2人に襲いかかってきた。
「な、何なんだ?」
「奴は何をしたんだ?」
目の前のエルフが何をしたのか分からない。
ただでさえ手強かったというのに、これ以上何かしてくるということだろうか。
「お前らは知らなくて良いんだよ!」
「っ!?」
先程までいた場所からまた消えたと思ったら、ケイはいつの間にかセレドニオのすぐ隣に立っていた。
“バキッ!!”
「がっ!?」
ケイの声に驚き顔を向けると、その時にはもう蹴り足がセレドニオに迫っていた。
その蹴りに反応することができず、セレドニオは剣を持つ右腕がへし折れ、剣をその場へ落としてしまった。
「セレドニオ!!」
仲間をやられてようやく動けたライムンドは、セレドニオの側に立つケイに向かって走り出した。
「遅い!」
「っ!?」
しかし、ケイは今度はいつの間にかライムンドの懐に入っていた。
ライムンドが目を見開いて驚くと、セレドニオ同様ケイの動きに反応できなかった。
“バキッ!!”“ボキッ!!”
「うがっ!?」
ケイは左足でライムンドの右腕を蹴り、続いて右足で脇腹に蹴りを入れる。
どちらの攻撃も当たった瞬間に鈍い音が響く。
それにより、ライムンドは苦悶の表情へと変わる。
「な、何で……?」
痛みで蹲りながら、ライムンドはこの不可解な現象をケイに問いかけた。
魔闘術を使っていた時、このエルフと自分たちはほぼ互角のように戦っていた。
なのに、魔闘術を解いた今の方が速度も攻撃力も上がっている。
何故そのようになるのかまるで理解ができない。
「教えるわけないだろ?」
冥土の土産になんて気持ちはケイには存在しないため、当然ケイは自分が何をしてるのか教えない。
大怪我を負わされた相手に、情報の1つだって教えてやる義理はないのだ。
「この野郎!!」
「っ!?」
ライムンドに更なる攻撃を加えようとしたケイへ、左手で落とした剣を拾ったセレドニオが突きを放ってきた。
両手潰したと思っていたが、セレドニオの左手はヒビが入っていただけで完全には折れていなかった。
そのため、痛みを我慢して何とか攻撃してきたのだ。
これにケイは慌てた。
ある戦闘方法を試して成功したのだが、まだ慣れていないことが仇になった。
この技術を使うのに、魔力は放出しない状態でいるのが通常だ。
つまり、探知の魔法も使っていない状態のため、セレドニオの攻撃に反応が遅れた。
「がはっ!?」
体をひねりるがセレドニオの攻撃を躱しきれず、剣はケイの腹に突き刺さる。
それによって、ケイは口から血を吐いた。
「ごのっヤロウ!!」
“バキッ!!”
「…………っ……」
セレドニオの左手の骨にヒビの入った状態だったのがせめてもの救いだったらしく、剣先が刺さっただけで済み、即死は免れた。
だが、刺された場所からは大量の血が噴き出し、大怪我なのは間違いない。
怪我の腹いせに、ケイは血が出るのも構わずセレドニオの顔面に蹴りを入れた。
その攻撃によってセレドニオの首の骨が折れたらしく、おかしな方向に顔を向けたまま倒れていった。
それを見届けると、ケイは出血のし過ぎからか足がふらつき、膝をついた。
「セレドニオォォーー!!」
首が折れたが、セレドニオはまだ辛うじて生きているようで、ピクピクと痙攣している。
しかし、完全に虫の息。
早々に回復師に見せる必要がある。
ライムンドはセレドニオを助けようと駆け寄る。
“バキッ!!”
「させねえよ!!」
そんなライムンドの顔面へ、ケイは何の遠慮もなく蹴りを入れる。
それにより、ライムンドもセレドニオと同様に首が折れ、倒れて動かなくなった。
「ハァ、ハァ……、終わったか?」
一番手強い2人組を倒せて、ホッとしてしまったからか、ケイは目のかすみと共に座り込んだ。
「血が出過ぎた……か?」
力が抜け、そのまま横に倒れたケイはポツリと呟く。
体中の怪我に加え、腹からの出血で貧血になったようだ。
一刻も早く回復したいところだが、体が思うように動かない。
魔力も上手くコントロールできなくなってきた。
『マズイ……、このままじゃ死ぬ……』
目は開いているのに、視界に移る物は全て霧がかかったようにぼやけて見える。
そして、段々と瞼が重くなってくた。
自分に死が迫ってくるのを感じつつも、段々と体の力が抜けていくのを止められなかった。
“ザッ!! ザッ!! ザッ!!”
そんな中、ケイの方へと走ってくる足音が聞こえて来たのだった。
「分からんぞ。捕まえるまで気を抜くな……」
ケイが魔闘術を解いたことで、戦うことを諦めたのかと思ったライムンドだが、一度同じように思って痛い目にあったため、セレドニオは注意を促した。
警戒を解かないために、魔闘術は発動したままケイに近付いて行った。
「…………思い出した」
「「?」」
俯いたまま無言でいたケイだったが、2人が近くまで寄って来たときに、一言ボソッと呟いた。
その言葉の意味が分からず、セレドニオたちは顔を合わせて首を傾げる。
「……何を考えている?」
“フッ!!”
様子がおかしいと感じたセレドニオは、近付く足を速めてケイを捕まえようと手を伸ばす。
しかし、その手はケイに触れることはできなかった。
手が届く寸前、ケイが姿を消したからだ。
「っ!?」
「どこ行った!?」
これには、セレドニオだけでなくライムンドも慌てた。
ケイが動いたであろうはずなのに、全く反応ができなかったからである。
周囲を見渡すが、ケイの姿を見つけられない。
「思った通りだ……」
「「っ!?」」
声がして反応すると、ケイはいつの間にか2人から離れた位置に立っていた。
見失っていたほんの一瞬に、そこまで距離を取られたとは考えられない。
しかし、笑みを浮かべて眺めているケイを見て、得たいの知れない恐怖が2人に襲いかかってきた。
「な、何なんだ?」
「奴は何をしたんだ?」
目の前のエルフが何をしたのか分からない。
ただでさえ手強かったというのに、これ以上何かしてくるということだろうか。
「お前らは知らなくて良いんだよ!」
「っ!?」
先程までいた場所からまた消えたと思ったら、ケイはいつの間にかセレドニオのすぐ隣に立っていた。
“バキッ!!”
「がっ!?」
ケイの声に驚き顔を向けると、その時にはもう蹴り足がセレドニオに迫っていた。
その蹴りに反応することができず、セレドニオは剣を持つ右腕がへし折れ、剣をその場へ落としてしまった。
「セレドニオ!!」
仲間をやられてようやく動けたライムンドは、セレドニオの側に立つケイに向かって走り出した。
「遅い!」
「っ!?」
しかし、ケイは今度はいつの間にかライムンドの懐に入っていた。
ライムンドが目を見開いて驚くと、セレドニオ同様ケイの動きに反応できなかった。
“バキッ!!”“ボキッ!!”
「うがっ!?」
ケイは左足でライムンドの右腕を蹴り、続いて右足で脇腹に蹴りを入れる。
どちらの攻撃も当たった瞬間に鈍い音が響く。
それにより、ライムンドは苦悶の表情へと変わる。
「な、何で……?」
痛みで蹲りながら、ライムンドはこの不可解な現象をケイに問いかけた。
魔闘術を使っていた時、このエルフと自分たちはほぼ互角のように戦っていた。
なのに、魔闘術を解いた今の方が速度も攻撃力も上がっている。
何故そのようになるのかまるで理解ができない。
「教えるわけないだろ?」
冥土の土産になんて気持ちはケイには存在しないため、当然ケイは自分が何をしてるのか教えない。
大怪我を負わされた相手に、情報の1つだって教えてやる義理はないのだ。
「この野郎!!」
「っ!?」
ライムンドに更なる攻撃を加えようとしたケイへ、左手で落とした剣を拾ったセレドニオが突きを放ってきた。
両手潰したと思っていたが、セレドニオの左手はヒビが入っていただけで完全には折れていなかった。
そのため、痛みを我慢して何とか攻撃してきたのだ。
これにケイは慌てた。
ある戦闘方法を試して成功したのだが、まだ慣れていないことが仇になった。
この技術を使うのに、魔力は放出しない状態でいるのが通常だ。
つまり、探知の魔法も使っていない状態のため、セレドニオの攻撃に反応が遅れた。
「がはっ!?」
体をひねりるがセレドニオの攻撃を躱しきれず、剣はケイの腹に突き刺さる。
それによって、ケイは口から血を吐いた。
「ごのっヤロウ!!」
“バキッ!!”
「…………っ……」
セレドニオの左手の骨にヒビの入った状態だったのがせめてもの救いだったらしく、剣先が刺さっただけで済み、即死は免れた。
だが、刺された場所からは大量の血が噴き出し、大怪我なのは間違いない。
怪我の腹いせに、ケイは血が出るのも構わずセレドニオの顔面に蹴りを入れた。
その攻撃によってセレドニオの首の骨が折れたらしく、おかしな方向に顔を向けたまま倒れていった。
それを見届けると、ケイは出血のし過ぎからか足がふらつき、膝をついた。
「セレドニオォォーー!!」
首が折れたが、セレドニオはまだ辛うじて生きているようで、ピクピクと痙攣している。
しかし、完全に虫の息。
早々に回復師に見せる必要がある。
ライムンドはセレドニオを助けようと駆け寄る。
“バキッ!!”
「させねえよ!!」
そんなライムンドの顔面へ、ケイは何の遠慮もなく蹴りを入れる。
それにより、ライムンドもセレドニオと同様に首が折れ、倒れて動かなくなった。
「ハァ、ハァ……、終わったか?」
一番手強い2人組を倒せて、ホッとしてしまったからか、ケイは目のかすみと共に座り込んだ。
「血が出過ぎた……か?」
力が抜け、そのまま横に倒れたケイはポツリと呟く。
体中の怪我に加え、腹からの出血で貧血になったようだ。
一刻も早く回復したいところだが、体が思うように動かない。
魔力も上手くコントロールできなくなってきた。
『マズイ……、このままじゃ死ぬ……』
目は開いているのに、視界に移る物は全て霧がかかったようにぼやけて見える。
そして、段々と瞼が重くなってくた。
自分に死が迫ってくるのを感じつつも、段々と体の力が抜けていくのを止められなかった。
“ザッ!! ザッ!! ザッ!!”
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