エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
第68話
「あれ? 船じゃね?」
レイナルドが見つけた温泉に露天風呂施設を作った帰り、遠くの海に何か光る物を感じたケイは、西の海の方向に目を向けた。
魔力で視力を強化して見てみると、船がこの島に向かってきているように見えた。
「獣人側だよね……」
ケイと一緒にきて、できた施設を一番最初に使用した美花も、同じ方向を見てその船を確認した。
西からくるところを見ると、獣人大陸から来ていることになる。
「そうだな」
せめてもう少し近付いてこないと、視力を強化しても乗っている人間までは見えない。
しかし、美花の言う通り獣人が乗っている船の確率が高い。
なので、ケイは美花の言葉に相槌をうった。
「ギリギリ見えるくらいってことは、もしもここに来るとしたら夕方くらいかな?」
「……そうね」
船首の向きからいって、こちらに向かっているのは分かるが、そもそもここに向かっているとも限らない。
この島に来るにしてもまだ時間がある。
そのため、ケイたちは様子を見ることにした。
「ルイスたちに色々聞いておこう」
「うん」
獣人と言ったらこの島にもいる。
彼らなら何か分かるかもしれない。
船がここに到着するまでに、何かしらの情報を入れておこうと、ケイと美花は村へ向かって走り出した。
「えっ? 船ですか?」
村に戻ってすぐ、ケイと美花はみんなを集めて会議を始めた。
今ではここのチーズ職人のような立ち位置になっているルイスに、西の海から船が向かって来ていることを伝えた。
「何しに向かって来ているか分かるか?」
「ん~……、分からないですね」
獣人側のことは一番年上の人間が知っているだろうと、ケイはルイスに尋ねた。
しかし、聞かれた方のルイスも、この島に住んで10年以上経っている。
この島は完全に他の世界とは切り離されたような場所。
聞かれても、ルイスには思い当たる所はない。
「そもそも、ここに島があるということは知られていなかったですから」
地図にも載っていなかったので、ルイスも流れ着くまで大陸の東にこんな島があるとは知らなかった。
流れ着いてからは住みやすく、熱中できることもできたので良かったのだが、他の獣人がわざわざ来るようなメリットはそれ程ないように思える。
「獣人の国っていくつあるんだっけ?」
思えば、ケイは美花とアンヘルの知識で人族側のことはある程度知っている。
しかし、獣人大陸側のことは深く聞いてこなかった。
前世では溺れ死んだケイとしては、船を使ったとしても海に出て行くのはちょっと控えたい。
出て行かないのだから、どこかの国と関わるようなことはないと思っていた。
向こうからくるのであれば、相手の出方次第で考えるつもりでいたが、問答無用で攻め込んでくる可能性もある。
人族の貴族などならそうしてきそうだが、獣人族はエルフのことを人族と同じ扱いをしないだろう。
まだ交渉する余地はあるはずだ。
とはいっても、獣人族でも国によっては違うかもしれない。
まずは獣人の国のことを知ることにした。
「大小ありますが、昔と変わってなければ5つですかね……」
問いかけられたルイスは、紙に獣人の大陸を描いて、大雑把に5分割した。
「結構少ないんだな……」
獣人大陸はかなりでかい。
それなのにもかかわらず5つだけというのを聞いて、ケイは意外に思った。
「硬い岩盤の山が多く、開拓するのが難しいので……」
そう言って、ルイスは5つの国の間に山の絵を追加した。
ケイもここの島を魔法で作り変えたりしているので分かるが、山を切り開いて道を作るだけでもかなりの労力を必要とする。
獣人のほとんどの種族は魔力が少ないため、魔法で山を削ったりなんかはできない。
そうなると、腕力などの身体能力を使って、人海戦術でするしか方法がなくなる。
そこまでのことをして領土を広げるほど、どの国も切迫していないという所もあり、どの国も関係性は平穏な状況らしい。
「侵略とかして来ないかな?」
ケイたちが一番懸念しているのはこれだ。
同じ獣人のルイスたちもいるので可能性としては低いが、この十数年でどこかの国がそういった戦略に出たのかもしれない。
そうなるとかなり厄介だ。
「あれだけでかいと、まあまあの人数が乗ってそうだしな……」
船が来るとしたら、西の海岸になるはず。
そう予想して西の海岸にきて近付いてくる船を眺めると、結構な大きさなことに気付く。
戦闘になる可能性もあるため、ここには大人の男しか連れてこなかった。
美花も来たがったが、他のみんなのことを任せることにした。
船が大きいということは、相当な数の人間が乗っているだろう。
ケイたちも腕っぷしには自信があるが、数の力には負けるかもしれない。
そう思うとかなり緊張してきた。
「獣人は基本強い者に従うという所があります。一番可能性が高いのは、トップとの1対1の勝負ですかね」
「そう言えばルイスともそんなことあったな」
言われてみて昔のことを思いだした。
ルイスがケイに勝負に勝ったら出て行くと言って戦いを挑まれた時のことだ。
あの時ケイが勝って、ルイスたちがここの島の住人になってくれたことは今でもありがたい。
孫の顔も見ることができたのだから。
「とりあえず、話してみるか」
腕っぷしに自信があると言っても世界は広い。
絶対勝てるとは言い切れない。
できれば会話で済んでほしいと思い、海岸付近で停船した船を見るケイだった。
レイナルドが見つけた温泉に露天風呂施設を作った帰り、遠くの海に何か光る物を感じたケイは、西の海の方向に目を向けた。
魔力で視力を強化して見てみると、船がこの島に向かってきているように見えた。
「獣人側だよね……」
ケイと一緒にきて、できた施設を一番最初に使用した美花も、同じ方向を見てその船を確認した。
西からくるところを見ると、獣人大陸から来ていることになる。
「そうだな」
せめてもう少し近付いてこないと、視力を強化しても乗っている人間までは見えない。
しかし、美花の言う通り獣人が乗っている船の確率が高い。
なので、ケイは美花の言葉に相槌をうった。
「ギリギリ見えるくらいってことは、もしもここに来るとしたら夕方くらいかな?」
「……そうね」
船首の向きからいって、こちらに向かっているのは分かるが、そもそもここに向かっているとも限らない。
この島に来るにしてもまだ時間がある。
そのため、ケイたちは様子を見ることにした。
「ルイスたちに色々聞いておこう」
「うん」
獣人と言ったらこの島にもいる。
彼らなら何か分かるかもしれない。
船がここに到着するまでに、何かしらの情報を入れておこうと、ケイと美花は村へ向かって走り出した。
「えっ? 船ですか?」
村に戻ってすぐ、ケイと美花はみんなを集めて会議を始めた。
今ではここのチーズ職人のような立ち位置になっているルイスに、西の海から船が向かって来ていることを伝えた。
「何しに向かって来ているか分かるか?」
「ん~……、分からないですね」
獣人側のことは一番年上の人間が知っているだろうと、ケイはルイスに尋ねた。
しかし、聞かれた方のルイスも、この島に住んで10年以上経っている。
この島は完全に他の世界とは切り離されたような場所。
聞かれても、ルイスには思い当たる所はない。
「そもそも、ここに島があるということは知られていなかったですから」
地図にも載っていなかったので、ルイスも流れ着くまで大陸の東にこんな島があるとは知らなかった。
流れ着いてからは住みやすく、熱中できることもできたので良かったのだが、他の獣人がわざわざ来るようなメリットはそれ程ないように思える。
「獣人の国っていくつあるんだっけ?」
思えば、ケイは美花とアンヘルの知識で人族側のことはある程度知っている。
しかし、獣人大陸側のことは深く聞いてこなかった。
前世では溺れ死んだケイとしては、船を使ったとしても海に出て行くのはちょっと控えたい。
出て行かないのだから、どこかの国と関わるようなことはないと思っていた。
向こうからくるのであれば、相手の出方次第で考えるつもりでいたが、問答無用で攻め込んでくる可能性もある。
人族の貴族などならそうしてきそうだが、獣人族はエルフのことを人族と同じ扱いをしないだろう。
まだ交渉する余地はあるはずだ。
とはいっても、獣人族でも国によっては違うかもしれない。
まずは獣人の国のことを知ることにした。
「大小ありますが、昔と変わってなければ5つですかね……」
問いかけられたルイスは、紙に獣人の大陸を描いて、大雑把に5分割した。
「結構少ないんだな……」
獣人大陸はかなりでかい。
それなのにもかかわらず5つだけというのを聞いて、ケイは意外に思った。
「硬い岩盤の山が多く、開拓するのが難しいので……」
そう言って、ルイスは5つの国の間に山の絵を追加した。
ケイもここの島を魔法で作り変えたりしているので分かるが、山を切り開いて道を作るだけでもかなりの労力を必要とする。
獣人のほとんどの種族は魔力が少ないため、魔法で山を削ったりなんかはできない。
そうなると、腕力などの身体能力を使って、人海戦術でするしか方法がなくなる。
そこまでのことをして領土を広げるほど、どの国も切迫していないという所もあり、どの国も関係性は平穏な状況らしい。
「侵略とかして来ないかな?」
ケイたちが一番懸念しているのはこれだ。
同じ獣人のルイスたちもいるので可能性としては低いが、この十数年でどこかの国がそういった戦略に出たのかもしれない。
そうなるとかなり厄介だ。
「あれだけでかいと、まあまあの人数が乗ってそうだしな……」
船が来るとしたら、西の海岸になるはず。
そう予想して西の海岸にきて近付いてくる船を眺めると、結構な大きさなことに気付く。
戦闘になる可能性もあるため、ここには大人の男しか連れてこなかった。
美花も来たがったが、他のみんなのことを任せることにした。
船が大きいということは、相当な数の人間が乗っているだろう。
ケイたちも腕っぷしには自信があるが、数の力には負けるかもしれない。
そう思うとかなり緊張してきた。
「獣人は基本強い者に従うという所があります。一番可能性が高いのは、トップとの1対1の勝負ですかね」
「そう言えばルイスともそんなことあったな」
言われてみて昔のことを思いだした。
ルイスがケイに勝負に勝ったら出て行くと言って戦いを挑まれた時のことだ。
あの時ケイが勝って、ルイスたちがここの島の住人になってくれたことは今でもありがたい。
孫の顔も見ることができたのだから。
「とりあえず、話してみるか」
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