エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
第43話
獣人たちが流れ着いてから1週間が経った。
彼らもこの島の生活に慣れ始めている。
美花は女性1人だったのが解消され、アレシアとリリアナを相手によくおしゃべりをしている姿を見るようになった。
1番年下のセレナは、年の近いレイナルドが相手をするようにケイは言っておいた。
2人でよくカルロスの遊び相手をしているのを目にする。
獣人のまとめ役になっているルイスと高校生くらいのイバンは、ケイの食料調達の同行をしたり、2人で時折組み手をしている。
「ケイ殿!」
「んっ? どうしたの? みんな揃って……」
魚の日干しをしていたケイに、ルイスを先頭にし、4人が後ろに並んだ状態で話しかけてきた。
真剣な表情をしている所を見る限り、これからのことについて話があるのだろう。
「申し訳ないが、俺と手合わせ願いたい!」
「何でか聞いてもいいか?」
軽く頭を下げつつ言ってきたルイスに、ケイは首を傾げた。
てっきり、これからのことを相談してくるのかと思っていたからだ。
別に手合わせくらい頼まれればするのだが、何か空気的に重い感じがするのもよく分からない。
「我々はこの1週間話し合いました。危険だが船を造って元の大陸に戻るか、それともここに残るか……」
詳しく聞くと、1週間だが彼らはここでの生活が気に入ったらしい。
理由としては、家族の墓が近くにあること、ケイが美花と共に少しずつ種類を増やしたてきた畑の作物は豊富。
何といっても、一番の理由は安全だというところらしい。
魔物は当然いるが、小さな海峡が遮断していて村の時のようなスタンピードに怯える必要はない。
しかも、魔物の種類によっては、定期的に間引けば自分たちの食料にできると言うメリットまである。
暮らすのには十分に思える。
しかし、可能性は低いが、元の大陸には仲間の生き残りもいるかもしれない。
もしかしたら、自分たちの帰りを待っているかもしれない。
無事を伝えに戻るという選択肢もあるが、また海の魔物に転覆させられないとも限らない。
「ここにおいてもらうにしても、決めておきたいことがあります」
「……何を?」
ケイとしたら、ここにいたいなら別に構わない。
というより、今後のことを考えるなら、むしろいてもらいたいくらいだ。
「獣人は強い者に従うのが基本。これまではただ世話になっていただけですが、ここにい続けるのであればケイ殿に従うのが当然。なので、俺が勝ったらみんなで出て行きます。負けた場合はケイ殿たちの下、ここで働かせてもらいたいと思います」
「そう言えばそんなことを聞いたような……」
獣人族の大陸にもいくつかの国があるらしく、獣の特性が残っているのか、強い者が上に立つのが当然と言う風潮にあるらしい。
とは言っても、最強イコール最良の王という訳ではないことは歴史上学んでいる。
戦闘力のみで王に選ばれるわけではないが、強さも重要としているのは事実。
それは小さな町や村の長でも同じ。
ルイスたちもその考えがあるようだ。
「……勝ったらルイスが上に立てば良いじゃないか?」
「ここはケイ殿たちが切り開いたところ。命の恩人から地位を奪ってまで上に立つつもりはありません」
まぁ、確かにここの島はケイと美花(一応キュウとマルも)が自分たちで作り上げたものだ。
全て寄越せと言われれば腹が立つが、皆で暮らしていくのであれば別に気にすることではない。
別に人の上に立ちたいとも思っていないので、ルイスが中心になっても構わないが、ルイス自身はそうでもないらしい。
「折角仲良くなったんだし、戦うのは気が引けるが出て行かれるのは寂しい。その申し出を俺は受けるよ」
「……ありがとうございます」
命を救われたのだから、当然ルイスはケイに感謝している。
しかも、5人の家族だけでなく仲間の遺体を丁重に弔ってくれた。
人族と獣人には交易がない。
いや、もしかしたら交易をしている所もあるかもしれないが、ルイスたちの村では完全に関わり合いがない。
話によれば、ケイは普通の人族とは少し姿が違い、身体能力も低い種族だと聞いた。
その代わり魔力を使った戦いが得意だと言う。
この島に流れ着いて、目を覚ました時はどんな風に接していいのか分からなかったが、見た目がひょろっとしているにもかかわらず、魔物の探知や仕留める速さはかなりのものだ。
獣人の自分たちと同じくらいの戦闘力を持っているのではないかと思われた。
いや、ケイからは底が窺い知れない。
少しの間一緒に過ごしてみて、気の良い連中だということは理解できる。
種族が違うだけで、自分たちと何の変わりもない人間ようだ。
だから知りたいという気持ちが募る。
優しく強いのは分かるが、どれほど強いのか。
獣人の血がそうさせているのだろうか、強い者に挑んでみたいという気持ちが湧いて来た。
本当の所、生き残った仲間は皆多くの割合でここにいたいのではないだろうか。
スタンピードによる村の生き残りは、はっきり言って絶望的。
諦めている部分の方が強いかもしれない。
だから、ルイスがケイにこの条件を付けたことに他の獣人たちは異を唱えなかった。
ルイスと同じように、ケイの実力が見たかったからだ。
結果がどうなるか分からないが、どっちに転んでも全員が納得できる結果が得られる。
そう思いつつ、手合わせする場所に適している海岸に向かってみんなで歩き出した。
彼らもこの島の生活に慣れ始めている。
美花は女性1人だったのが解消され、アレシアとリリアナを相手によくおしゃべりをしている姿を見るようになった。
1番年下のセレナは、年の近いレイナルドが相手をするようにケイは言っておいた。
2人でよくカルロスの遊び相手をしているのを目にする。
獣人のまとめ役になっているルイスと高校生くらいのイバンは、ケイの食料調達の同行をしたり、2人で時折組み手をしている。
「ケイ殿!」
「んっ? どうしたの? みんな揃って……」
魚の日干しをしていたケイに、ルイスを先頭にし、4人が後ろに並んだ状態で話しかけてきた。
真剣な表情をしている所を見る限り、これからのことについて話があるのだろう。
「申し訳ないが、俺と手合わせ願いたい!」
「何でか聞いてもいいか?」
軽く頭を下げつつ言ってきたルイスに、ケイは首を傾げた。
てっきり、これからのことを相談してくるのかと思っていたからだ。
別に手合わせくらい頼まれればするのだが、何か空気的に重い感じがするのもよく分からない。
「我々はこの1週間話し合いました。危険だが船を造って元の大陸に戻るか、それともここに残るか……」
詳しく聞くと、1週間だが彼らはここでの生活が気に入ったらしい。
理由としては、家族の墓が近くにあること、ケイが美花と共に少しずつ種類を増やしたてきた畑の作物は豊富。
何といっても、一番の理由は安全だというところらしい。
魔物は当然いるが、小さな海峡が遮断していて村の時のようなスタンピードに怯える必要はない。
しかも、魔物の種類によっては、定期的に間引けば自分たちの食料にできると言うメリットまである。
暮らすのには十分に思える。
しかし、可能性は低いが、元の大陸には仲間の生き残りもいるかもしれない。
もしかしたら、自分たちの帰りを待っているかもしれない。
無事を伝えに戻るという選択肢もあるが、また海の魔物に転覆させられないとも限らない。
「ここにおいてもらうにしても、決めておきたいことがあります」
「……何を?」
ケイとしたら、ここにいたいなら別に構わない。
というより、今後のことを考えるなら、むしろいてもらいたいくらいだ。
「獣人は強い者に従うのが基本。これまではただ世話になっていただけですが、ここにい続けるのであればケイ殿に従うのが当然。なので、俺が勝ったらみんなで出て行きます。負けた場合はケイ殿たちの下、ここで働かせてもらいたいと思います」
「そう言えばそんなことを聞いたような……」
獣人族の大陸にもいくつかの国があるらしく、獣の特性が残っているのか、強い者が上に立つのが当然と言う風潮にあるらしい。
とは言っても、最強イコール最良の王という訳ではないことは歴史上学んでいる。
戦闘力のみで王に選ばれるわけではないが、強さも重要としているのは事実。
それは小さな町や村の長でも同じ。
ルイスたちもその考えがあるようだ。
「……勝ったらルイスが上に立てば良いじゃないか?」
「ここはケイ殿たちが切り開いたところ。命の恩人から地位を奪ってまで上に立つつもりはありません」
まぁ、確かにここの島はケイと美花(一応キュウとマルも)が自分たちで作り上げたものだ。
全て寄越せと言われれば腹が立つが、皆で暮らしていくのであれば別に気にすることではない。
別に人の上に立ちたいとも思っていないので、ルイスが中心になっても構わないが、ルイス自身はそうでもないらしい。
「折角仲良くなったんだし、戦うのは気が引けるが出て行かれるのは寂しい。その申し出を俺は受けるよ」
「……ありがとうございます」
命を救われたのだから、当然ルイスはケイに感謝している。
しかも、5人の家族だけでなく仲間の遺体を丁重に弔ってくれた。
人族と獣人には交易がない。
いや、もしかしたら交易をしている所もあるかもしれないが、ルイスたちの村では完全に関わり合いがない。
話によれば、ケイは普通の人族とは少し姿が違い、身体能力も低い種族だと聞いた。
その代わり魔力を使った戦いが得意だと言う。
この島に流れ着いて、目を覚ました時はどんな風に接していいのか分からなかったが、見た目がひょろっとしているにもかかわらず、魔物の探知や仕留める速さはかなりのものだ。
獣人の自分たちと同じくらいの戦闘力を持っているのではないかと思われた。
いや、ケイからは底が窺い知れない。
少しの間一緒に過ごしてみて、気の良い連中だということは理解できる。
種族が違うだけで、自分たちと何の変わりもない人間ようだ。
だから知りたいという気持ちが募る。
優しく強いのは分かるが、どれほど強いのか。
獣人の血がそうさせているのだろうか、強い者に挑んでみたいという気持ちが湧いて来た。
本当の所、生き残った仲間は皆多くの割合でここにいたいのではないだろうか。
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