復讐、報復、意趣返し……とにかくあいつらぶっ殺す!!

ポリ 外丸

第25話 魔法の指輪

「じゃあ、彼ら全財産を俺の口座へ……」


「え、えぇ……」


 アルマンドとの戦いに勝った限へレラとアルバが合流し、一行はそのままギルドの受付へと足を運んだ。
 そして、限は受付嬢へ先程の決闘で勝利した報酬を、自分の口座へ入金するように頼んでおいた。
 ギルドカードはギルドへ貯金するための証明書にもなる。
 利子などというものはないが、ギルドに預けることで無駄に大金を持ち歩かなくて済む。


「あぁ、あいつらがいま着ていると持っているのも換金お願いします」


 あいつら一応高ランクの冒険者パーティーのようだから、装備品もなかなか高そうだ。
 戦う前に全財産だといったのだから、当然いま着ている物もなども没収させてもらう。
 彼らも納得したうえで戦う前に決闘の契約書にサインをしたのだから、文句を言えないはずだ。
 結局奴らのおこなったマナー違反はうやむやになってしまったが、ちょっとした報復としてはこれで我慢をしてやろう。


「全部……ですか?」


「……仕方ないですね。パンツだけは取らないで上げますよ」


「…………は……い」


 受付嬢たちも見学していたので、結果を分かっている。
 しかし、本当にAランクパーティから全財産没収するのだと思うと、思わず声が詰まる。
 それが限には違う考えに取れた。
 もしかして、彼らを素っ裸にしてしまうことをためらっているのではないかと思った。
 そのため、限は没収する人のことも考えて、パンツぐらいは許してやることにした。
 受付の女性は、そこにためらった訳ではないのだが、とりあえず了承して頷いた。


「ギルドを疑う訳ではないですが、換金した金額から引いていいので明細書もお願いします」


「……はい」


 言葉通り、いくら何でもギルドがAランクの肩を持つとは思えない。
 単純に、奴らがどんなものを持っていたのかを知りたいと思っただけだ。
 そのため、限は受付女性に明細書の作成も頼んでおいた。


「さて、大金も入ることだし、色々食いに行こうか?」


「はい!」「ワウッ!」


 奴らはAランクほどのパーティーだ。
 冒険者は金遣いが荒いのが多いが、きっと相当な額になるに違いない。
 移動資金を稼ぐつもりだったが、今回のことでこの先の移動は楽に進めそうだ。
 そうと決まれば、今日はもう観光にでも行ってしまおうと、限はレラたちとグルメ観光に向かうことにした。










「こんにちは!」


「あっ! こんにちは限さん!」


 翌日の昼、限たちがギルドへ向かうと、昨日換金をお願いした受付嬢が対応してくれた。
 他の冒険者たちは、遠巻きに限のことを眺めてヒソヒソと話している。
 昨日の決闘のことが広まっているのだろう。


「申し訳ないのですが、まだ全てを資金化できていません」


「いや、さすがに昨日の今日で出来てるとは思っていませんよ」


 まさかギルドが昨日と今日の短い時間で奴らの財産の全部を売りさばけるなんて、限は思っていない。
 今日ここに来たのは依頼を受けに来たという訳ではなく、少し確認したい事があったからだ。


「奴らから没収した物のリストってあります?」


「えぇ。こちらがアルマンドさんたちから没収した物のリストになります」


「……結構あるんだ」


 限に聞かれた女性は、すぐに没収品を書き並べたリストが書かれた用紙を限へと渡した。
 案の定Aランクパーティーなだけあって、色々な商品を持っていたようだ。
 書類が結構な枚数になっている。
 これを書き記すだけでも相当な労力を要したことだろう。


「何か大仕事になっちゃいましたね……」


「お気になさらず。Aランクパーティーとは言ってもギルドを立会人に選んだのですから、財産を没収するのは署名した通り当然です」


 奴らがどうなったかは分からないが、きっと今頃最下位ランクであるDランクの仕事をせっせとして、魔物と戦えるだけの武器を買う資金を稼いでいる頃だろう。
 魔物の素材の販売はランクには関係ないのだから、ランクが低かろうが関係ない。
 限もランクなんか気にせず稼いでいることが多い。
 依頼を受けて達成するのは、資金もそうだが、ランクを上げることを目的といている部分がある。
 高ランクになれば尊敬も得られ、ギルドから高い支払いの依頼を紹介してもらえる。
 だから冒険者は依頼で資金を稼ぐことが多いのだ。
 全額没収して一生Dランクだとしても、一応戦う技術のある彼らなら、しばらくすれば魔物を狩って稼げるようにはなるだろう。
 武器を買えるまで初心者がやるような仕事をして、自分たちの行いを反省してもらいたいものだ。


「あった! この魔法の指輪って金に換えずにもらうことってできますか?」


「大丈夫ですよ。中身は出し切っているので、使用者の変更をしてもらえればすぐに使えます」


 確認に来たのは、魔法の指輪だ。
 魔法の指輪とは、空間魔法を付与された指輪で、指輪に付いた宝石の中へ多くの無生物を収納できることができる。
 小さな指輪に大容量の物を入れられることから、冒険者のステータスのアイテムとなっている。
 奴ら程の冒険者なら魔法の指輪を持っていると思っていたが、やはり持っていた。
 中古品を使うなんてどうなのかという思いもあるが、容量の多い指輪はなかなか作れないために出回ることが少ない。
 売って新しく同じ容量の魔法の指輪を手に入れようとしても、いつ手に入れられるか分からない。
 ならば、元々中古でも構わないと思っていたため、売らずに手に入れることにした。
 指輪は持ち主にしか使えないように設定しないと、盗まれしたら大変だ。
 そのため、持ち主の設定を限たちに変更しないとならない。
 特に難しいことではないので、この後行うつもりだ。


「じゃあ、容量が多いこの2つだけ貰って行って良いですか?」


「分かりました。すぐにお持ちしますので、少々お待ちください」


 限が指輪を持って帰ることを告げると、受付の女性は魔法の指輪を取りに行くため、限たちを近くのベンチで待ってもらうようにしてカウンターの奥にある部屋へと向かって行った。
 ベンチに座った限たちは、近くの店で買ってきた紅茶を飲んでのんびり待つことにした。


「限さん、お待たせしました!」


「どうもです」


 限たちがのんびりしていたら、受付の女性から声がかかった。
 魔法の指輪を持ってきてくれたようだ。


「クリーンの魔法はかけてあるので、キレイになっているはずです」


「本当だ。ありがとうございます」


 奴らが使っていたことが分かるように汚れでもついていたら、何か気分的に嫌な感じがしただろうが、受付の女性が言うように、魔法でキレイにしてあるようだ。
 クリーンの魔法とは、生活魔法と呼ばれる魔法で、汚れを落とすことができる魔法だ。
 貴族以外は風呂に入る習慣がないため、魔法で汚れを落とすことが習慣になっている。
 魔力もたいして消費しないし、結構簡単に使えることから、大抵の人が使える魔法だ。
 昔の限は使えなかったが、攻撃魔法は使えなくても、大体の人間は生活魔法を使える。
 わざわざクリーンをかけてくれていたため、限は受付の女性へ感謝の言葉をかけた。


「では引き続き売却の方お願いします」


「かしこまりました」


 指輪が手に入った限たちは、そのまま予約していた宿屋へと戻っていった。
 魔法の指輪など、持ち主を限定するのは錬金術でおこなう。
 錬金術の魔法陣に、持ち主となる者の血、もしくは髪の毛などの肉体情報が記されている物と共に多くの魔力が必要になる。
 しっかりしたイメージと材料がそろっていれば、大抵の物が作れるのが錬金術だが、ちょっとしたものを作るのにも魔力を大量に消費するので、あまり使われることはない。
 今回のように、持ち主の指定をする時くらいにしか使わないのが錬金術だ。
 結局、この日、限とレラは持ち主の設定をして、自分たち専用の魔法の指輪を手に入れたのだった。





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