復讐、報復、意趣返し……とにかくあいつらぶっ殺す!!
第20話 冒険者登録
「おぉ! 本当にあった!」
山を下りてアルバの鼻を頼りに南へ向かうと、町の入り口らしき防壁が建っているのが見えてきた。
いくら白狼であるアルバの鼻が利くと言っても、さすがに遠く離れた場所の匂いを感じ取れると思っていなかったのか、小人族のゼータは感心したような声をあげた。
「よくやったぞ!」
「ワフッ!」
従魔のアルバによって、楽に町に着くことが叶った。
主人である限は、感謝の意味も込めてアルバを優しく撫でまわしてあげた。
褒められたアルバの方も嬉しそうに撫でられる。
「ゼータは念のためレラの服の中に隠れていてくれ」
「了解!」
町に入るための門には数人の列ができている。
そこに近付く限たちだが、このままゼータをアルバに乗ったままでいる訳にはいかない。
希少な小人族であるゼータを見られたら、不埒な輩に狙われかねない。
そのため、ゼータにはレラのポケットの中でおとなしくしてもらう。
面倒なことに巻き込まれたくないのはゼータも同じなため、限の言うことに素直に従う。
「身分証は?」
「ないです。中に入ったら冒険者登録に行くつもりです」
列に並んで少し待っていると限たちの番になった。
どこの国でも町に入るのには身分を証明するものを必要とする。
危険人物などを入れないための処置でもある。
その証明書を求められるが、当然限たちは誰もその証明書を持っていない。
田舎に住んでいる者などは同じように持っていない事がある。
そう言った場合は、冒険者や商業のギルドに入って証明書を発行するものだ。
この2つのギルドは名前こそ違うが、はっきり言って内容が被っていることが多い。
そのため、どちらかに入っていれば十分に事足りる。
限たちも身分証明書を手に入れるために冒険者の方に登録するつもりだ。
「……分かった。では仮の許可証を発行する」
「ありがとうございます」
身分証がないのなら田舎から出て来たという可能性が高いが、限たちが比較的軽装のため門番は少し訝し気な表情をする。
しかし、限の腰に剣が下がっている所を見てとりあえず良しとしたのか、仮許可証の発行をする手続きを始めた。
「冒険者になるのですか?」
「商業の方でも良いが、どちらかというと冒険者の方が良いと思ってな……」
2人分の仮許可証を受け取り、限たちは町の中へと入る。
先程は町に入ることの邪魔にならないようにと黙っていたが、中に入ったのなら良いだろうと、レラは限に問いかけた。
2種類のギルドの内どちらでも証明書を発行してもらえるだろうが、どうして冒険者の方を選んだのかが気になったのだ。
その質問に対し、限は冒険者の方にした理由を説明し始めた。
「荒事の情報を得るには冒険者ギルドだろ?」
「あぁ、なるほど」
限たちの目的は、ひとまずゼータを国に返すこと。
そして次に地獄の苦しみを味わわされた研究員たちと、自分を研究所へ送り込んだ一族への復讐だ。
さらに、レラの教会に対する復讐もあるため、それらの情報を得ることが重要になって来る。
そうなると、商業よりも冒険者のギルドの方が情報を得られるのではないかと単純に思ったのだ。
限のその説明にレラも納得するして頷いた。
「証明書のためでもあるが、仕事をして多少の資金は必要だろ?」
町に入れてもお金が無ければ宿に泊まることも出来ない。
宿代だけでなく、山越えをした時のように身を守るための衣類や、野営する時の調理道具などもある程度必要になるだろう。
それらを手に入れるためにも、資金を少しは手に入れておきたい。
「それに、お前たちの防具なんかも手に入れておいた方が良いだろう?」
「そうですね!」
度重なる人体実験によって、限はある程度物理攻撃への耐性ができている。
しかし、レラやアルバは同じではないため、防具などが必要になる。
ここまでは強敵遭うようなことがなかったので平気だったが、ここからのことを考えるともう少し防備のことを考えた方が良い。
そのことを告げると、レラは笑みを浮かべて頷いた。
限が、自分たちのことを気遣ってくれていることが何だか嬉しかったからだ。
「じゃあ、行こう!」
「はいっ!」
何だか上機嫌なレラを不思議に思いつつも宿の手配などのことを考えると、さっさと登録に向かった方が良い。
門番に聞いていた道順に沿って、限たちは冒険者ギルドの建物の方へと向かって行った。
「……問題なく終われたな?」
冒険者ギルドに入ると、限たちのことを値踏みするような視線が集中した。
魔物を相手にすることが多い冒険者の中には、力自慢が多くいる。
そう言った者の中には、増長して揉め事を起こす人間が多い。
特に冒険者の新人をからかったりすることが多いというのは誰もが知っていることなのだが、受付で登録をしている限たちに絡んでくるような者はいなかった。
「アルバ様のお陰ではないでしょうか?」
「どういうことだ?」
絡まれることもある程度予想していた限だったが、何も起こらず登録し終えたことに拍子抜けした思いだった。
そのことを呟くと、レラはその理由を説明してきた。
「狼を従魔にする人間は珍しくないですが、白狼はかなり危険な魔物ですから」
「そうか……」
冒険者の中には、従魔を使った戦闘を得意とする者もいる。
そうでなくても従魔を所持している人間はいるが、大体が危険度の低い魔物だ。
狼の魔物は主人の命令をよく聞くので使役する人間が多いが、その中でも白狼は危険な部類の魔物に入っている。
そんな魔物を従魔にしていることから考えて、限へちょっかいを出すことを躊躇ったのだろうとレラは考えたのだった。
限からするとペットに近いため深く考えたことはなかったが、よくよく考えてみれば確かに白狼は危険な魔物の部類だ。
問題が起きなかったのもアルバのお陰であると言うことが分かった限は、礼も込めてアルバの頭を撫でた。
「少しお聞きしたいのですが?」
「はい。何でしょう?」
登録が終了したので一応用はないのだが、限はとりあえず聞いておきたい事がある。
そのため、先程登録の時に担当してくれた女性に声をかけた。
「最近この周辺国で研究員がこぞって入国してきたと言う情報はありませんか?」
「研究員ですか?」
一族の連中は敷島へ向かえばいいので問題はないのだが、研究員たちはどこへ行ったのか分かっていない。
どちらかというと、研究員たちの方が敷島の連中よりも殺り易い。
色々な国に支部を置くギルドなら情報が入っているかと思って尋ねてみた。
「そのような情報は……入っておりませんね」
「……そうですか。ありがとうございました」
研究所の人間全てがいなくなったというのだから他国へ渡った場合そういった情報が入っているかと思ったのだが、どうやらそんな情報は入っていないようだ。
資料のような物に目を通して答えてくれた受付の女性に礼を告げ、限たちは素材の受取所の方へと向かった。
「さて、宿屋を探しに向かうとするか……」
「そうですね!」
山越えをする時に襲ってきた魔物の魔石を幾つか拾って来ておいて良かった。
受取所で換金してもらうとまあまあの値段になったため、数日分の宿代は手に入れられた。
しばらく山で野宿が続いたので、そろそろ宿のベッドで眠りにつきたい。
レラも同じように思っているのだろう。
限と共に宿を探しに向かうことが嬉しそうだ。
「おっ、あった!」
「いらっしゃい!」
宿屋を探して通りを歩いていると、1つの宿屋が目に入った。
そのまま中に入ると、おばちゃんが招き入れてくれた。
「部屋は空いていますか?」
「大丈夫だよ!」
中を見てみると1階は食堂になっていて、2階が宿泊施設になっているようだ。
部屋が空いているかと尋ねると、おばちゃんは元気に返事をした。
「じゃあ……」
「一部屋で!!」
限とアルバ、レラとゼータで2部屋取ろうと思っていた限だったが、レラがそれを阻止するように会話に入って来た。
「あいよ!」
「…………えっ?」
何を考えているのか分からないレラの答えに、おばちゃんもすぐに了承し、全員で一部屋に泊まることになってしまった。
山を下りてアルバの鼻を頼りに南へ向かうと、町の入り口らしき防壁が建っているのが見えてきた。
いくら白狼であるアルバの鼻が利くと言っても、さすがに遠く離れた場所の匂いを感じ取れると思っていなかったのか、小人族のゼータは感心したような声をあげた。
「よくやったぞ!」
「ワフッ!」
従魔のアルバによって、楽に町に着くことが叶った。
主人である限は、感謝の意味も込めてアルバを優しく撫でまわしてあげた。
褒められたアルバの方も嬉しそうに撫でられる。
「ゼータは念のためレラの服の中に隠れていてくれ」
「了解!」
町に入るための門には数人の列ができている。
そこに近付く限たちだが、このままゼータをアルバに乗ったままでいる訳にはいかない。
希少な小人族であるゼータを見られたら、不埒な輩に狙われかねない。
そのため、ゼータにはレラのポケットの中でおとなしくしてもらう。
面倒なことに巻き込まれたくないのはゼータも同じなため、限の言うことに素直に従う。
「身分証は?」
「ないです。中に入ったら冒険者登録に行くつもりです」
列に並んで少し待っていると限たちの番になった。
どこの国でも町に入るのには身分を証明するものを必要とする。
危険人物などを入れないための処置でもある。
その証明書を求められるが、当然限たちは誰もその証明書を持っていない。
田舎に住んでいる者などは同じように持っていない事がある。
そう言った場合は、冒険者や商業のギルドに入って証明書を発行するものだ。
この2つのギルドは名前こそ違うが、はっきり言って内容が被っていることが多い。
そのため、どちらかに入っていれば十分に事足りる。
限たちも身分証明書を手に入れるために冒険者の方に登録するつもりだ。
「……分かった。では仮の許可証を発行する」
「ありがとうございます」
身分証がないのなら田舎から出て来たという可能性が高いが、限たちが比較的軽装のため門番は少し訝し気な表情をする。
しかし、限の腰に剣が下がっている所を見てとりあえず良しとしたのか、仮許可証の発行をする手続きを始めた。
「冒険者になるのですか?」
「商業の方でも良いが、どちらかというと冒険者の方が良いと思ってな……」
2人分の仮許可証を受け取り、限たちは町の中へと入る。
先程は町に入ることの邪魔にならないようにと黙っていたが、中に入ったのなら良いだろうと、レラは限に問いかけた。
2種類のギルドの内どちらでも証明書を発行してもらえるだろうが、どうして冒険者の方を選んだのかが気になったのだ。
その質問に対し、限は冒険者の方にした理由を説明し始めた。
「荒事の情報を得るには冒険者ギルドだろ?」
「あぁ、なるほど」
限たちの目的は、ひとまずゼータを国に返すこと。
そして次に地獄の苦しみを味わわされた研究員たちと、自分を研究所へ送り込んだ一族への復讐だ。
さらに、レラの教会に対する復讐もあるため、それらの情報を得ることが重要になって来る。
そうなると、商業よりも冒険者のギルドの方が情報を得られるのではないかと単純に思ったのだ。
限のその説明にレラも納得するして頷いた。
「証明書のためでもあるが、仕事をして多少の資金は必要だろ?」
町に入れてもお金が無ければ宿に泊まることも出来ない。
宿代だけでなく、山越えをした時のように身を守るための衣類や、野営する時の調理道具などもある程度必要になるだろう。
それらを手に入れるためにも、資金を少しは手に入れておきたい。
「それに、お前たちの防具なんかも手に入れておいた方が良いだろう?」
「そうですね!」
度重なる人体実験によって、限はある程度物理攻撃への耐性ができている。
しかし、レラやアルバは同じではないため、防具などが必要になる。
ここまでは強敵遭うようなことがなかったので平気だったが、ここからのことを考えるともう少し防備のことを考えた方が良い。
そのことを告げると、レラは笑みを浮かべて頷いた。
限が、自分たちのことを気遣ってくれていることが何だか嬉しかったからだ。
「じゃあ、行こう!」
「はいっ!」
何だか上機嫌なレラを不思議に思いつつも宿の手配などのことを考えると、さっさと登録に向かった方が良い。
門番に聞いていた道順に沿って、限たちは冒険者ギルドの建物の方へと向かって行った。
「……問題なく終われたな?」
冒険者ギルドに入ると、限たちのことを値踏みするような視線が集中した。
魔物を相手にすることが多い冒険者の中には、力自慢が多くいる。
そう言った者の中には、増長して揉め事を起こす人間が多い。
特に冒険者の新人をからかったりすることが多いというのは誰もが知っていることなのだが、受付で登録をしている限たちに絡んでくるような者はいなかった。
「アルバ様のお陰ではないでしょうか?」
「どういうことだ?」
絡まれることもある程度予想していた限だったが、何も起こらず登録し終えたことに拍子抜けした思いだった。
そのことを呟くと、レラはその理由を説明してきた。
「狼を従魔にする人間は珍しくないですが、白狼はかなり危険な魔物ですから」
「そうか……」
冒険者の中には、従魔を使った戦闘を得意とする者もいる。
そうでなくても従魔を所持している人間はいるが、大体が危険度の低い魔物だ。
狼の魔物は主人の命令をよく聞くので使役する人間が多いが、その中でも白狼は危険な部類の魔物に入っている。
そんな魔物を従魔にしていることから考えて、限へちょっかいを出すことを躊躇ったのだろうとレラは考えたのだった。
限からするとペットに近いため深く考えたことはなかったが、よくよく考えてみれば確かに白狼は危険な魔物の部類だ。
問題が起きなかったのもアルバのお陰であると言うことが分かった限は、礼も込めてアルバの頭を撫でた。
「少しお聞きしたいのですが?」
「はい。何でしょう?」
登録が終了したので一応用はないのだが、限はとりあえず聞いておきたい事がある。
そのため、先程登録の時に担当してくれた女性に声をかけた。
「最近この周辺国で研究員がこぞって入国してきたと言う情報はありませんか?」
「研究員ですか?」
一族の連中は敷島へ向かえばいいので問題はないのだが、研究員たちはどこへ行ったのか分かっていない。
どちらかというと、研究員たちの方が敷島の連中よりも殺り易い。
色々な国に支部を置くギルドなら情報が入っているかと思って尋ねてみた。
「そのような情報は……入っておりませんね」
「……そうですか。ありがとうございました」
研究所の人間全てがいなくなったというのだから他国へ渡った場合そういった情報が入っているかと思ったのだが、どうやらそんな情報は入っていないようだ。
資料のような物に目を通して答えてくれた受付の女性に礼を告げ、限たちは素材の受取所の方へと向かった。
「さて、宿屋を探しに向かうとするか……」
「そうですね!」
山越えをする時に襲ってきた魔物の魔石を幾つか拾って来ておいて良かった。
受取所で換金してもらうとまあまあの値段になったため、数日分の宿代は手に入れられた。
しばらく山で野宿が続いたので、そろそろ宿のベッドで眠りにつきたい。
レラも同じように思っているのだろう。
限と共に宿を探しに向かうことが嬉しそうだ。
「おっ、あった!」
「いらっしゃい!」
宿屋を探して通りを歩いていると、1つの宿屋が目に入った。
そのまま中に入ると、おばちゃんが招き入れてくれた。
「部屋は空いていますか?」
「大丈夫だよ!」
中を見てみると1階は食堂になっていて、2階が宿泊施設になっているようだ。
部屋が空いているかと尋ねると、おばちゃんは元気に返事をした。
「じゃあ……」
「一部屋で!!」
限とアルバ、レラとゼータで2部屋取ろうと思っていた限だったが、レラがそれを阻止するように会話に入って来た。
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