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前の野原でつぐみが鳴いた

小海音かなた

Chapter.37

 ツアーの合間にテレビやラジオの収録をこなす。雑誌の取材や撮影、生放送の番組にも出演した。
 忙しさに比例してプライベートが削られていく。
 年末から年越しにかけて、本拠地である東京とツアー先の福岡、大阪を行き来していたため、新年を迎えた実感があまりない。仕事で年越しライブに参加してカウントダウンもしたのだが、体内時計が実際の時間の流れに着いていけていないようだ。
 北海道に続き、ライブのために訪れた福岡、大阪、名古屋の観光地も四人で巡った。人がいない時間を狙うためかなり早朝からの撮影だが、メンバーと回る旅行気分の仕事は楽しかった。
 しかし、紫輝は物足りなさを感じてしまう。理由は明白だ。
 隣にいてほしいと願う人がいないから。
 開催地に行くたびに繰り返されるそれらの仕事を完遂させて、ようやっと二か月に渡るドームツアーも最終公演を迎えた。

 五大都市ツアーは東京で締めくくる。

 ずっと憧れ、目指していたステージに、自分たちのために作られた舞台装置が建てられていく。その光景を紫輝は二階席から感慨深げに眺めていた。
 デビュー前に先輩たちのバックダンサーとして立ったステージに、今度は自分たちがメインとして出演する。想定したより少し早く訪れたこの機会。
 チケットは完売しているが、この先もこの会場で定期公演が開催できる保証はない。
(がんばらないと……)
 決意も新たに席を立つ。ウォーミングアップも兼ね、軽く走って楽屋へ向かった。

* * *

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