リセット~主人公が親友のあいつだった件~
1 プロローグ~何度目かの死~
世の中には主人公となれる資質のある人間がいる。
それは俗に言う、主人公属性と呼ばれる性質を持ち合わせた奴だけだ。
ラブコメなら歩くだけで女の子に惚れられ、探偵物なら立ち寄った場所で殺人事件が起きて一時間足らずで解決。
現代アクションなら特別な能力に目覚め、ファンタジーなら最強の魔法使いとかに目覚めるんだろう。
だが俺達の様なありふれた人間は脇役の脇役、果てはその脇役だったりする。
だからこそ俺は自分の運の無さを呪うしかない。
脇役の脇役なら対して巻き込まれない。
主人公なら問題を即時解決ってなもんだが、残念ながら俺は脇役の配役らしい。
ラブコメならエッチな事に余念がない親友ポジション、探偵ものなら使いっぱしり。
現代アクションなら何度も殺されかけたり、ファンタジーなら登場回数の多いギルド職員ポジションが良いところだ。
だが物語に対して関わることも無く、大して力もあるわけでも無い脇役が大体迎えるのが命の危険だろう...今の俺の様に。
「何なんだよっ!!何なんだよっ!!くそっ!!何なんだこの世界は!!何なんだよ、あの化け物はっ!!」
汗を撒き散らしながら街を走り抜ける。
「うおおおおおっ!!死ぬうぅぅぅっ!!」
ほんの数10分前にはそれなりの人通りがあった商店街を全力疾走で通り抜けながら追いかけ回されている。
だがまだ16時だと言うのに誰もいやしない。
それどころか夜よりもくらい深淵に身を晒されている。
現実とは思えない状況だが商店街の店を幾つも破壊しながら闇に溶け込むような漆黒の躯体と赤黒く光るその眼に現実に引き戻される。
走りながら鏡越しに背後を見やるとその異形の生物が未だに追いかけてきていた。
だから俺は数日前にも通った吹き抜けになっている筈の路地裏に逃げ込むとそこにはあの化け物と同じようなぶよぶよした血の色をした肉壁がそびえ立っていた。
・・・
「はは...なるほどな...ここがラストかよ...オーケーオーケー...」
背後からカタカタカタと蜘蛛のような多足生物の足音が路地の入り口で止まったのを聞き振り替える。
「よー、糞野郎。今回はお前が相手か?」
乾いた笑いを放ちつつ化け物に目を向けると恐怖心が掻き立てられた。
また苦しい思いをどうせするんだろう。
...ならたまには抗ってみるのも一興かな...と。
「かかってこいや、蜘蛛野郎!!たまには俺が主人公になってやんよっ!!おらああっ!!」
拳を振り上げ果敢に化け物に駆け出し立ち向かう。
主人公ならここで助けやら覚醒するやらイベントが起きるもんだが生憎と俺は脇役だ...主人公を引き立てる...な。
「が....あ?...あ....あああああああ!!」
案の定俺の拳は届かず胴体は喰われ、残った両足はその場で固まり、胸から上だけになった上半身が地面に落下した。
落ちた瞬間ぐちゃりと生々しい音が響き、右目がおかしいのに気がついた。
恐らく頭から落下した際に右目から落ちたので潰れたのだろう。
なんとか左目が開けたので眼球だけ動かし可能な限り見渡すと目の前まで迫っていた化け物が顎を大きく開き涎を俺の顔に垂らす。
目を瞑り俺は心の中で...
『遅えんだよ。バーカ。』と呟き再度目を開き化け物の上空から颯爽と登場し剣を振りかぶりながら落ちてきている親友を眺める。
「一真ーーーー!!」
そして親友である一条悠人が俺の名前を叫びながら化け物の首を切り落とした。
流石だぜ....主人公は伊達じゃないってね。
「そ...んな...一真...一真!!何でこんなっ!!」
はい、主人公っぽいセリフ頂きましたー♪
あー、もう駄目だな。感覚が無くなってきた。
痛みも何も感じない。
悠人がよろよろとした足取りで近づいてきて目の前に到達すると膝から崩れ落ちた。
主人公補正マシマシのそれなりのイケメンな顔を涙で濡らしながら。
「ごめん!ごめん、一真!!僕がもう少し早く来れてたら!!」
良いんだよこれで。
だって右端に浮き出てる今回のワールドタスクに『主人公一条悠人を劇的な状況に持っていく事、その際、佐藤一真の生死は問わず』って出てるんだからよ。
今回の世界ではこれで良いんだっての。
また次の人生で...会おうぜ?
泣き顔を覗き込ませている悠人の後ろにいい加減見慣れたメッセージボードと、聞きなれたガイダンス音声が耳に入る。
「現世界の存在点の死亡まで60秒。これより複写世界の存在点に接続を開始....接続成功。死亡の瞬間意識を次点存在点に移行します。次回のタスクを起動しますか?」
俺は首を動かせないので目を少し縦に動かし肯定の合図を送る。
「次回のワールドタスクは『中忍一条悠人の到着まで生存せよ』です。」
また面倒な...ってかまた死ぬのかよ、俺。勘弁してくれ。
つーか次の世界って忍者かよ!ろくな死に方しないだろ、それ!!
「悠人様ご無事で...!?...ひ、酷い...佐藤様...」
「佐藤くん...悠人くん君は下がりなさい。瑞姫、彼を...」
「ごめんね、悠人。さよなら、佐藤くん...」
「うっ....一真...かず...ま....」
悠人の幼なじみの瑞姫に首筋を手刀で打たれ気を失う間際、俺の名前を呼ぶ悠人に見ていられなくなり最後の力を振り絞って口を開く。
「ゆ...うと...また会おうぜ...来世とかに...よ。」
ズタぼろの顔で不器用に笑いかけると気を失うその時まで悠人も微笑み続けた。
涙を流しながら...。
そして俺は視界が暗くなり意識を手放した。
死の感覚が残り少ない肉体を襲いそして絶命した。
俺の名前は佐藤一真。脇役の中の名脇役で主人公一条悠人を支える特別な脇役である。
『リセット開始...正常に起動。特異点佐藤一真
Reセット完了。』
それは俗に言う、主人公属性と呼ばれる性質を持ち合わせた奴だけだ。
ラブコメなら歩くだけで女の子に惚れられ、探偵物なら立ち寄った場所で殺人事件が起きて一時間足らずで解決。
現代アクションなら特別な能力に目覚め、ファンタジーなら最強の魔法使いとかに目覚めるんだろう。
だが俺達の様なありふれた人間は脇役の脇役、果てはその脇役だったりする。
だからこそ俺は自分の運の無さを呪うしかない。
脇役の脇役なら対して巻き込まれない。
主人公なら問題を即時解決ってなもんだが、残念ながら俺は脇役の配役らしい。
ラブコメならエッチな事に余念がない親友ポジション、探偵ものなら使いっぱしり。
現代アクションなら何度も殺されかけたり、ファンタジーなら登場回数の多いギルド職員ポジションが良いところだ。
だが物語に対して関わることも無く、大して力もあるわけでも無い脇役が大体迎えるのが命の危険だろう...今の俺の様に。
「何なんだよっ!!何なんだよっ!!くそっ!!何なんだこの世界は!!何なんだよ、あの化け物はっ!!」
汗を撒き散らしながら街を走り抜ける。
「うおおおおおっ!!死ぬうぅぅぅっ!!」
ほんの数10分前にはそれなりの人通りがあった商店街を全力疾走で通り抜けながら追いかけ回されている。
だがまだ16時だと言うのに誰もいやしない。
それどころか夜よりもくらい深淵に身を晒されている。
現実とは思えない状況だが商店街の店を幾つも破壊しながら闇に溶け込むような漆黒の躯体と赤黒く光るその眼に現実に引き戻される。
走りながら鏡越しに背後を見やるとその異形の生物が未だに追いかけてきていた。
だから俺は数日前にも通った吹き抜けになっている筈の路地裏に逃げ込むとそこにはあの化け物と同じようなぶよぶよした血の色をした肉壁がそびえ立っていた。
・・・
「はは...なるほどな...ここがラストかよ...オーケーオーケー...」
背後からカタカタカタと蜘蛛のような多足生物の足音が路地の入り口で止まったのを聞き振り替える。
「よー、糞野郎。今回はお前が相手か?」
乾いた笑いを放ちつつ化け物に目を向けると恐怖心が掻き立てられた。
また苦しい思いをどうせするんだろう。
...ならたまには抗ってみるのも一興かな...と。
「かかってこいや、蜘蛛野郎!!たまには俺が主人公になってやんよっ!!おらああっ!!」
拳を振り上げ果敢に化け物に駆け出し立ち向かう。
主人公ならここで助けやら覚醒するやらイベントが起きるもんだが生憎と俺は脇役だ...主人公を引き立てる...な。
「が....あ?...あ....あああああああ!!」
案の定俺の拳は届かず胴体は喰われ、残った両足はその場で固まり、胸から上だけになった上半身が地面に落下した。
落ちた瞬間ぐちゃりと生々しい音が響き、右目がおかしいのに気がついた。
恐らく頭から落下した際に右目から落ちたので潰れたのだろう。
なんとか左目が開けたので眼球だけ動かし可能な限り見渡すと目の前まで迫っていた化け物が顎を大きく開き涎を俺の顔に垂らす。
目を瞑り俺は心の中で...
『遅えんだよ。バーカ。』と呟き再度目を開き化け物の上空から颯爽と登場し剣を振りかぶりながら落ちてきている親友を眺める。
「一真ーーーー!!」
そして親友である一条悠人が俺の名前を叫びながら化け物の首を切り落とした。
流石だぜ....主人公は伊達じゃないってね。
「そ...んな...一真...一真!!何でこんなっ!!」
はい、主人公っぽいセリフ頂きましたー♪
あー、もう駄目だな。感覚が無くなってきた。
痛みも何も感じない。
悠人がよろよろとした足取りで近づいてきて目の前に到達すると膝から崩れ落ちた。
主人公補正マシマシのそれなりのイケメンな顔を涙で濡らしながら。
「ごめん!ごめん、一真!!僕がもう少し早く来れてたら!!」
良いんだよこれで。
だって右端に浮き出てる今回のワールドタスクに『主人公一条悠人を劇的な状況に持っていく事、その際、佐藤一真の生死は問わず』って出てるんだからよ。
今回の世界ではこれで良いんだっての。
また次の人生で...会おうぜ?
泣き顔を覗き込ませている悠人の後ろにいい加減見慣れたメッセージボードと、聞きなれたガイダンス音声が耳に入る。
「現世界の存在点の死亡まで60秒。これより複写世界の存在点に接続を開始....接続成功。死亡の瞬間意識を次点存在点に移行します。次回のタスクを起動しますか?」
俺は首を動かせないので目を少し縦に動かし肯定の合図を送る。
「次回のワールドタスクは『中忍一条悠人の到着まで生存せよ』です。」
また面倒な...ってかまた死ぬのかよ、俺。勘弁してくれ。
つーか次の世界って忍者かよ!ろくな死に方しないだろ、それ!!
「悠人様ご無事で...!?...ひ、酷い...佐藤様...」
「佐藤くん...悠人くん君は下がりなさい。瑞姫、彼を...」
「ごめんね、悠人。さよなら、佐藤くん...」
「うっ....一真...かず...ま....」
悠人の幼なじみの瑞姫に首筋を手刀で打たれ気を失う間際、俺の名前を呼ぶ悠人に見ていられなくなり最後の力を振り絞って口を開く。
「ゆ...うと...また会おうぜ...来世とかに...よ。」
ズタぼろの顔で不器用に笑いかけると気を失うその時まで悠人も微笑み続けた。
涙を流しながら...。
そして俺は視界が暗くなり意識を手放した。
死の感覚が残り少ない肉体を襲いそして絶命した。
俺の名前は佐藤一真。脇役の中の名脇役で主人公一条悠人を支える特別な脇役である。
『リセット開始...正常に起動。特異点佐藤一真
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