異世界転生で貰ったチートがTS魔法少女変身能力でしたがこの世界で頑張るしか無いようです 

ベレット

60 最終話 抗い続ける

どれくらい時間が経っただろうか。
既に朝日が顔を出す時間になっていた。


俺は朝日を呆然と見ながら首をかっ切られ血の海に身体を浸らせている母親と衣音に視線を下ろす。
その光景にもう怒りも悲しさも涌いては来ない。
あるのは喪失感だけだ。


だがここで立ち止まるわけにはいかない。
奴を殺さなくては...殺さなくちゃ俺は進めない。


だから俺は台所から包丁を抜き取り鞄にしまう。
そして家から一歩踏み出した。
一度だけ死体となった家族に振り反って。


ーー学校のグラウンドが何やら騒がしい。
一体何事かと思い駆け寄ると更なる喪失感が襲う。


「か...え...で...なん...で...」


そこに横たわっていたのは身体中があり得ない方向に折れ曲がり頭が半分程潰れた楓の姿だった。


「ははは!上手くいった!上手くいったわ!!殺してやった!あははははっ!」


「...お前が...やったのか...永遠...」


「ええ、そうよ?ほらこれで貴方を縛る人は居なくなった。もう存分に私を愛して良いのよ?」


不気味な笑みにその場の全員が恐れ戦く中俺は鞄から包丁を取り出し。


「ふざけんな...」


それだけポツリと溢し包丁を永遠の心臓に深く突き立てた。


「がっ!?...ふ...ふふふ。...そう...」


その光景に学校中が阿鼻叫喚と化した。


「ああ...これはこれで良いわね。あなたの手で殺して貰えるなんて幸せね。」


その言葉を最後に彼女は息を引き取った。
だが俺の凶行は止まらず幾度と無く永遠に刃を突き立てる。


「うああああっ!!...はあはあ...うぅ...」


最早誰一人俺の凶行を止めようとせず立ち尽くしているとパトカーのサイレンが鳴り響いた。


「退きなさい!!」


バタバタと数人の警察官が近寄ってくるが俺はその場にへたり込んだ。


「こ、これはっ!!...君がやったのか...?」


刃物の刺し傷だらけになっている永遠を力無く眺めながらこくりと頷く。


「そうか...君を逮捕する。それを置くんだ。」


手から滑り落ちた包丁がからんと音を発てる。
そして警察官の一人が手錠を掛けた。


「午前7時15分確保。」


警官が腕時計を見ながらそう仲間に告げると俺の頭に布を被せる。
そして学内の生徒や教師の視線を浴びながらパトカーで連行された。


ーー結果として俺は自己防衛という理由で釈放された。
だがもう誰とも関わりたくもなく、また親戚一同も人殺しを置きたくないらしく行き場の無い俺は学校も中退し、母さんの生命保険を頼りに細々と引きこもり生活に沈んでいく。


それから半年過ぎた頃。
ふとテレビをつけると20年程前に不可解な事故で亡くなった「篝壮真」と「吹雪サクラ」のニュースをドキュメンタリーで再現している様だった。


特に興味もなかったのでテレビを消してコンビニに出掛けようした時だ。
たまたますれ違ったおじいさんが会釈してきたので会釈し返した瞬間、頭に衝撃が走る。


「ぐあっ...なん...だ...」


余りの痛みに地面に横たわる。
会釈しあったじいさんや近隣住民がかけよる中俺は意識を手放した。


そして今に至る。
あの訳の分からん神様にこの世界に跳ばされ、アイドルなんかやって、ギルドで仕事して。
大切な友人や家族と呼べる人も出来て、心から好きだと想える人とも会えた。
だから俺は、私は目の前に居るクソ女のクローンを自分の立てた誓いを反故にしてでも。


「殺してやる...皆に手出しはさせない...!」


「...やるつもり?止めたほうが良いんじゃないかしら。まっ、やるってんなら止めないけど。」


仲間を守るため私はもう一度相澤永遠を殺す。
この下らない運命の円環を断ち切る為に。





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