異世界転生で貰ったチートがTS魔法少女変身能力でしたがこの世界で頑張るしか無いようです
53 データリジェクト
「うわあああああっ!!」
僕は今空を飛んでいます。
というよりかは空中に飛び上がっては地面に急降下し、また上昇している...イオンさんに抱えられながら。
僕の足では遅いからとの事です。
「見えた!!あれがパスカル!?...くっ...もうボロボロじゃん!!」
天まで届きそうな外壁の内側から黒い靄がいくつも昇っている。
生き残ってる人は居るのだろうか?イオンさんの友達はまだ生きているのだろうか?
イオンさんの顔を見ると今まで見たことの無い程の焦りを表していた。
「あれは...リンス!!降りるよ、ラケルタくん!!」
「え...ああああぁぁぁ~~....」
上方を殴り付けたと思ったら超高速で急降下した。
かなりの速度で吐きそうになる。
ぐったりした僕を地面に横たわらせたイオンさんは門の前で足を組んでいる耳の長い女性に近寄っていき、何か話しているようだ。
「うぅ...」
呻き声を上げながらふらふらとして足取りで近づく。
「何してんのおおおおっ!!閉じ込めたってマジ!?」
「はい。あれを外に出すわけにもいきませんから。それにもうそろそろ帰ってくるだろうと踏んでましたし。」
「だからって!!」
「イオンさん?どうしました?」
「....実はさ...」
ーー。
要約するとスフィアさん、シャンテさんという名前の二人がライカンの魔獣から囮になりながら逃げている間に閉じ込めたそうだ。
そして数十分前に聞いた話し通りイオンさんと似た服装の女の子が王城に向かったらしい...との事だ。
もしあの話が本当ならイオンさんが王城に行くべきだろう。
「イオンさんは城に行ってください。お友達は僕に任せてください。」
「!!...ちょっと待ってよ!どんな奴かも分からないんだから二人で行った方が!!」
「それじゃ多分駄目だと思います。城の方が手遅れになりかねませんから。」
「でもっ!!....分かった....」
僕の冷静な言い分にイオンさんは悔しそうにしながらも理解を示してくれたようだ。
「リンス、もし危なそうなら皆逃げてね。それじゃあ行ってくる。」
「分かってます。それでは。...そこの人、協力お願いね。」
「分かってますよ。貴方が置き去りにした人は必ず助けますから安心してください。」
「ええ、そうして。」
僕とエルフさんのやり取りに苦笑いをしつつ、壁門の上までジャンプし、そのまま壁伝いに城に走っていった。
「それじゃあやりましょうかね。」
ーー。
「それで貴方はイオンさんとどういう関係なんですか?」
「関係...ですか?」
無魔の革で出来た取っ手を引っ張り門を開いているとエルフの人が問い掛けてきたが何とも答えにくい。
そもそもこの人は何者なんだ?
「そう言われても...まあ僕が一方的に片思いしてるとしか...。あなたこそイオンさんとの関係はどんな何ですか?」
「私はマネージャーです、彼女の。貴方みたいな男から守るのも仕事の内ですよ。」
リンスさんはそう告げてくると僕から取っ手を奪いぎいっと余り音を立てないように開け放った。
「彼女はアイドルですから恋愛はご法度です。よく覚えておいて下さい。まあイオンさんの為に働くのは許可します。どうぞ?」
「...どうも...」
アイドルや魔法少女の事、リンスさん含む知り合いについては聞いていたが、このリンスさんという人...苦手だ。
ただ僕はファンじゃない。
「言っておきますけど僕はイオンさんのファンじゃないですよ。僕は本気で好きなので邪魔しないで下さいね?リンスさん。」
「それは約束しませんが。彼女の為役目を果たさせて貰いますので悪しからず。」
この人は本当にイオンさんの仲間なのだろうか。
嫌みな人だ。
「やっと開いた~!!助けてーーっ!!」
「あっ!!リンス、あんたよくもっ!!...誰よそいつ。」
開けると同時に飛び込んできた女の子二人を避けるため開いてない側の扉に足を運ぶ。
「大丈夫ですか?」
 「「大丈夫じゃない!!来てるからっ!!いやあああっ!!」」
イオンさんより少し暗めな赤い髪に踊り子の衣裳、それとブロンドのショートヘアーの少女の視線の先を見ると人狼型の魔獣がこちらに駆けてきていた。
いつかのイオンさんに習い二人の前に盾になるように立ち塞がる。
「皆さんは下がってください!!僕が戦いますっ!」
左手を竜化させ右手は剣に手を掛ける。
「すご...何あれ?」
「ドラゴンの腕っぽいですねー。イオンさんみたいな特殊能力持ちっぽいですね。」
やはりイオンさんの知り合いらしく余り驚いていないようだ。
まあイオンさんの方が滅茶苦茶だからなぁ。
「お二人も逃げた方が良いと思いますが?」
かなり後方から声が聞こえてきたので、三人揃って振り向くと米粒ぐらいの大きさに見えるほどいつの間にか距離を取ったエルフが辛うじて見えた。
「「「ええ....」」」
「...あの人本当に皆さんの仲間なんですか?」
「....一応...仲間の筈なんですけど...」
貴族らしきブロンドヘアーの女の子が呆れ顔をしている。
やはりあの人は好きになれそうに無い。
どういう感性なら仲間を放って一人で逃げれるのか理解に苦しむ。
この人達苦労してそうだな...
「リンスはいつもああなのよ.......危ない!!後ろ!!」
「ちっ!!はあっ!!」
踊り子さんの一声でライカンが飛び掛かって来ていたのに気付き腰の左側に差してある鞘から長剣を引き抜き、切り裂こうとしたのだが。
「くっ!!こいつっ!!」
「ガアアッ!!」
振り抜こうとした剣を掴み此方に押し込みにじり寄ってきた。
その際に口臭が顔全体を覆い余りの獣臭から顔をしかめる。
その隙を突かれライカンが右腕を剣から離し、顔めがけて振り下ろすが。
「う...おおおおっ!!」
右腕の手首を竜手で掴み一回転し壁に打ち付ける。
ライカンは声にならない声を上げながら地面に落ちようとする所で剣を首もとに切り突けた。
「これでっ!!.....え.....えええええ!!!」
ウッソでしょ!?折れた!?折れたんですけどっ!!母さんから貰った剣があああああ!!!
斬った感覚も無ければ血が吹き出していないライカンを目にしおかしく思い剣を確認してみると根元からポッキリと折れていた。
母さんから受け継いだ100年物の業物が見るも無惨な姿になっている。
「なんか...あの方イオンさんの系譜をかんじますね。」
「ああ...確かにそうかもね。あいつも最後の最後でいつも何かミスっていうか邪魔が入るし。」
若干ちょっと嬉しいけど少し腹立つんですけど。
あなた達の為に闘ってるんですけどね!?
「はっ!!...あ、危なかった....」
茫然自失としているとライカンの悪臭が近づいてきたのを鼻が感じとり、後ろに飛ぶとどうやらライカンが噛みつこうとしていたらしい。
ライカンはまだ闘うつもり満々だが僕からしたら困る。
武器が無いとリーチが無いため安全圏から闘うことが出来ない。
アリアみたいな規格外の相手や逆に小さい相手なら竜手の方がやり易いだろうが同程度のサイズならリーチのある無しは大きい。
組み付かれたら一瞬で首をくいちぎられてしまうだろう。
「どなたか武器持ってませんか!?貸して貰いたいのですが!!」
「私、武器は持たない主義ですので。」
「ごめんなさーい!!お父様から冒険はしても武器は持つなと言われてましてー!!」
「踊り子が持ってるわけないでしょうが。常識で分かりなさいよ。」
見た感じ持っていないのは分かってはいたけどそんな言い方しなくても良いんじゃないかな?
だが落ち込んでいる場合ではない。
こうなってくると竜手でやるしかないかとライカンとにらみ合いながら考えていると。
『武器が欲しいのかよ、ラケルタ?』
脳内に声が響き渡った。
この感じ...僕の中にいる人か。
『おう!そうだぜ!!俺はサードっつーんだ、よろしくな!』
返事をした。どうやら頭に浮かんだ言葉がそのまま通じるみたいだ。
下手な事考えられないな。
所で武器貰えるんですか?
『おうともよっ!!今からイメージを送る。それを右手に頭に浮かばせながら俺が言う言葉を復唱しろ!』
何が何なのか分からないがやってみることにしようと僕は右手を前に突きだす。
すると頭に見たことも無い奇妙な剣が思い浮かんだ。
『やるぞ!ラケルタ!』
「はい!」
『「データリジェクト!!インストールエッジ!!」』
サードさんと共に理解できない言葉を紡ぐと右手に無数の透明な板が現れた。
そこから赤の光の線が何本も延び、高速で描くように動き出すと脳内のイメージ通りの剣の形に光の線で形成されていく。
「これは!?」
『それがお前の新しい力、インストールエッジだ!!その剣に斬れねえものはねえ!やっちまえ!!』
柄の部分から立体的になっていく未知の剣を手に取る。
何て軽い剣なんだ。まるで羽のようだ。
見た目も見たことが無い...なんて形容すべきか分からないが柄から刀剣に伸びる部分には先程とは違う薄い青色の透明の板が柄全体を覆っている。
そしてその刀剣は材質の分からない蒼の刀身に刃先に至る部分は一筋の熱を持つような赤色の一本線が切っ先から柄まで延びていた。
「お兄さん!!来てますよ!!」
貴族の女の子の言葉にはっとし武器でガードしようとすると。
「なっ!?なんだこれ!!」
『それはシールドだ!!柄の横にゲージがあるだろ?それが尽きるまではどんな攻撃も防げるぜ!?』
シールドって何ですか...まあいいか。
取り敢えずこの横に付いてるのが光ってる間は防げると言うことだろう...ならあの技で決める!!
ライカンは攻撃を弾かれやけになり、何度も爪で切り裂くがシールドとかいう透明な壁で防いでいく。
すると次第に疲れてきたのか苛立っているのか、大降りの攻撃を繰り出すのを目にしその爪を剣で弾く。
「ここだっ!!....ふう....竜の双撃!!双破竜臥穿!!」
その隙を狙い剣をクロスさせるように振るい、竜手を振り上げるように切り裂き、剣を身体の左側に水平にし、斬り抜ける。
だが技はまだ終わりではない。
背後を取った僕は何度もインストールエッジと竜手を何度も斬り付ける。
そして頭に浮かぶ技を使う!!
「インストールスキル!!アバランシュ!!」
技名を叫ぶと一本線が真紅に光輝きだした。
「これで終わりです!!」
と、両手で構えたインストールエッジを振り下ろすと両断し、ライカンの断面は熱で焼かれ血を出さず時間差で片方ずつグシャっと崩れ落ちた。
「はあはあ...何とか...なった...はあああ...死ぬかと思った...」
『お前がこんな所で死ぬかよ。じゃあそれ上手く使えよ。じゃあな。』
「待って!まだ聞きたいことが...!!」
何とか引き留めようとするが声がしない所を鑑みるに引っ込んでしまったようだ。
行っちゃう前に教えて欲しいんですけど、これどうやってしまうの?
と、考えているとブオンと音がしたと思ったら手元からインストールエッジが消滅していた。
これが僕の中にいる人の力の一部なんだろうかと考えているとパタパタと背後に足音を感じ振り返ると三人が此方に歩み寄ってきていた。
とは言ってもエルフさん、踊り子さんはゆっくりとした足取りだけども。
貴族の女の子は元気一杯、天真爛漫な感じだ。
「凄いですね、その武器!!どうやって出したんですか!?」
「なるほど...イオンさんが同行を許すだけはあります。まあ護衛ぐらいは出来そうですね。」
「やるじゃない、あんた。そういえば自己紹介してなかったわね。」
「あっ、はい!僕はラケルタと言います。今後ともよろしくお願いします。」
僕は名前を告げると、皆さんも名前を教えてくれた。
その間にも僕は門の先を見据える。
その先のイオンさんが向かった城を見るためだ。
ふと名前を呼ばれ、向き直ると。
「ラケルタさん。これから私達はギルドの要請で人命救助に当たります。協力、護衛お願いします。」
「イオンさんは放っておくんですか?援護しに行った方が...」
「あなたも彼女、彼の事を知っているなら判るでしょう?必要ありません。...それに恐らくは...この状況に怒っていますから近づかないのが吉ですよ。暴れるでしょうから。」
この人は素直じゃないだけで実は仲間の事を信頼しているのだと言葉の端から感じ取れた。
だから二人を閉じ込めて囮にしたのか...逃げきれると判っていたから。
リンスさんへの評価を改める必要がありそうだ。
スフィアさん、シャンテさんも城の方角を気にせずに作業をしている。
このイオンさん含む四人はこういう関係なのだと納得する。
「分かりました。こう見えて力はありますから。」
「その顔と腕の鱗を見る限り竜神族でしょうからそうでしょうね。では此方に...」
どうやら駆けつける前に一仕事する必要がありそうだ。
僕は今空を飛んでいます。
というよりかは空中に飛び上がっては地面に急降下し、また上昇している...イオンさんに抱えられながら。
僕の足では遅いからとの事です。
「見えた!!あれがパスカル!?...くっ...もうボロボロじゃん!!」
天まで届きそうな外壁の内側から黒い靄がいくつも昇っている。
生き残ってる人は居るのだろうか?イオンさんの友達はまだ生きているのだろうか?
イオンさんの顔を見ると今まで見たことの無い程の焦りを表していた。
「あれは...リンス!!降りるよ、ラケルタくん!!」
「え...ああああぁぁぁ~~....」
上方を殴り付けたと思ったら超高速で急降下した。
かなりの速度で吐きそうになる。
ぐったりした僕を地面に横たわらせたイオンさんは門の前で足を組んでいる耳の長い女性に近寄っていき、何か話しているようだ。
「うぅ...」
呻き声を上げながらふらふらとして足取りで近づく。
「何してんのおおおおっ!!閉じ込めたってマジ!?」
「はい。あれを外に出すわけにもいきませんから。それにもうそろそろ帰ってくるだろうと踏んでましたし。」
「だからって!!」
「イオンさん?どうしました?」
「....実はさ...」
ーー。
要約するとスフィアさん、シャンテさんという名前の二人がライカンの魔獣から囮になりながら逃げている間に閉じ込めたそうだ。
そして数十分前に聞いた話し通りイオンさんと似た服装の女の子が王城に向かったらしい...との事だ。
もしあの話が本当ならイオンさんが王城に行くべきだろう。
「イオンさんは城に行ってください。お友達は僕に任せてください。」
「!!...ちょっと待ってよ!どんな奴かも分からないんだから二人で行った方が!!」
「それじゃ多分駄目だと思います。城の方が手遅れになりかねませんから。」
「でもっ!!....分かった....」
僕の冷静な言い分にイオンさんは悔しそうにしながらも理解を示してくれたようだ。
「リンス、もし危なそうなら皆逃げてね。それじゃあ行ってくる。」
「分かってます。それでは。...そこの人、協力お願いね。」
「分かってますよ。貴方が置き去りにした人は必ず助けますから安心してください。」
「ええ、そうして。」
僕とエルフさんのやり取りに苦笑いをしつつ、壁門の上までジャンプし、そのまま壁伝いに城に走っていった。
「それじゃあやりましょうかね。」
ーー。
「それで貴方はイオンさんとどういう関係なんですか?」
「関係...ですか?」
無魔の革で出来た取っ手を引っ張り門を開いているとエルフの人が問い掛けてきたが何とも答えにくい。
そもそもこの人は何者なんだ?
「そう言われても...まあ僕が一方的に片思いしてるとしか...。あなたこそイオンさんとの関係はどんな何ですか?」
「私はマネージャーです、彼女の。貴方みたいな男から守るのも仕事の内ですよ。」
リンスさんはそう告げてくると僕から取っ手を奪いぎいっと余り音を立てないように開け放った。
「彼女はアイドルですから恋愛はご法度です。よく覚えておいて下さい。まあイオンさんの為に働くのは許可します。どうぞ?」
「...どうも...」
アイドルや魔法少女の事、リンスさん含む知り合いについては聞いていたが、このリンスさんという人...苦手だ。
ただ僕はファンじゃない。
「言っておきますけど僕はイオンさんのファンじゃないですよ。僕は本気で好きなので邪魔しないで下さいね?リンスさん。」
「それは約束しませんが。彼女の為役目を果たさせて貰いますので悪しからず。」
この人は本当にイオンさんの仲間なのだろうか。
嫌みな人だ。
「やっと開いた~!!助けてーーっ!!」
「あっ!!リンス、あんたよくもっ!!...誰よそいつ。」
開けると同時に飛び込んできた女の子二人を避けるため開いてない側の扉に足を運ぶ。
「大丈夫ですか?」
 「「大丈夫じゃない!!来てるからっ!!いやあああっ!!」」
イオンさんより少し暗めな赤い髪に踊り子の衣裳、それとブロンドのショートヘアーの少女の視線の先を見ると人狼型の魔獣がこちらに駆けてきていた。
いつかのイオンさんに習い二人の前に盾になるように立ち塞がる。
「皆さんは下がってください!!僕が戦いますっ!」
左手を竜化させ右手は剣に手を掛ける。
「すご...何あれ?」
「ドラゴンの腕っぽいですねー。イオンさんみたいな特殊能力持ちっぽいですね。」
やはりイオンさんの知り合いらしく余り驚いていないようだ。
まあイオンさんの方が滅茶苦茶だからなぁ。
「お二人も逃げた方が良いと思いますが?」
かなり後方から声が聞こえてきたので、三人揃って振り向くと米粒ぐらいの大きさに見えるほどいつの間にか距離を取ったエルフが辛うじて見えた。
「「「ええ....」」」
「...あの人本当に皆さんの仲間なんですか?」
「....一応...仲間の筈なんですけど...」
貴族らしきブロンドヘアーの女の子が呆れ顔をしている。
やはりあの人は好きになれそうに無い。
どういう感性なら仲間を放って一人で逃げれるのか理解に苦しむ。
この人達苦労してそうだな...
「リンスはいつもああなのよ.......危ない!!後ろ!!」
「ちっ!!はあっ!!」
踊り子さんの一声でライカンが飛び掛かって来ていたのに気付き腰の左側に差してある鞘から長剣を引き抜き、切り裂こうとしたのだが。
「くっ!!こいつっ!!」
「ガアアッ!!」
振り抜こうとした剣を掴み此方に押し込みにじり寄ってきた。
その際に口臭が顔全体を覆い余りの獣臭から顔をしかめる。
その隙を突かれライカンが右腕を剣から離し、顔めがけて振り下ろすが。
「う...おおおおっ!!」
右腕の手首を竜手で掴み一回転し壁に打ち付ける。
ライカンは声にならない声を上げながら地面に落ちようとする所で剣を首もとに切り突けた。
「これでっ!!.....え.....えええええ!!!」
ウッソでしょ!?折れた!?折れたんですけどっ!!母さんから貰った剣があああああ!!!
斬った感覚も無ければ血が吹き出していないライカンを目にしおかしく思い剣を確認してみると根元からポッキリと折れていた。
母さんから受け継いだ100年物の業物が見るも無惨な姿になっている。
「なんか...あの方イオンさんの系譜をかんじますね。」
「ああ...確かにそうかもね。あいつも最後の最後でいつも何かミスっていうか邪魔が入るし。」
若干ちょっと嬉しいけど少し腹立つんですけど。
あなた達の為に闘ってるんですけどね!?
「はっ!!...あ、危なかった....」
茫然自失としているとライカンの悪臭が近づいてきたのを鼻が感じとり、後ろに飛ぶとどうやらライカンが噛みつこうとしていたらしい。
ライカンはまだ闘うつもり満々だが僕からしたら困る。
武器が無いとリーチが無いため安全圏から闘うことが出来ない。
アリアみたいな規格外の相手や逆に小さい相手なら竜手の方がやり易いだろうが同程度のサイズならリーチのある無しは大きい。
組み付かれたら一瞬で首をくいちぎられてしまうだろう。
「どなたか武器持ってませんか!?貸して貰いたいのですが!!」
「私、武器は持たない主義ですので。」
「ごめんなさーい!!お父様から冒険はしても武器は持つなと言われてましてー!!」
「踊り子が持ってるわけないでしょうが。常識で分かりなさいよ。」
見た感じ持っていないのは分かってはいたけどそんな言い方しなくても良いんじゃないかな?
だが落ち込んでいる場合ではない。
こうなってくると竜手でやるしかないかとライカンとにらみ合いながら考えていると。
『武器が欲しいのかよ、ラケルタ?』
脳内に声が響き渡った。
この感じ...僕の中にいる人か。
『おう!そうだぜ!!俺はサードっつーんだ、よろしくな!』
返事をした。どうやら頭に浮かんだ言葉がそのまま通じるみたいだ。
下手な事考えられないな。
所で武器貰えるんですか?
『おうともよっ!!今からイメージを送る。それを右手に頭に浮かばせながら俺が言う言葉を復唱しろ!』
何が何なのか分からないがやってみることにしようと僕は右手を前に突きだす。
すると頭に見たことも無い奇妙な剣が思い浮かんだ。
『やるぞ!ラケルタ!』
「はい!」
『「データリジェクト!!インストールエッジ!!」』
サードさんと共に理解できない言葉を紡ぐと右手に無数の透明な板が現れた。
そこから赤の光の線が何本も延び、高速で描くように動き出すと脳内のイメージ通りの剣の形に光の線で形成されていく。
「これは!?」
『それがお前の新しい力、インストールエッジだ!!その剣に斬れねえものはねえ!やっちまえ!!』
柄の部分から立体的になっていく未知の剣を手に取る。
何て軽い剣なんだ。まるで羽のようだ。
見た目も見たことが無い...なんて形容すべきか分からないが柄から刀剣に伸びる部分には先程とは違う薄い青色の透明の板が柄全体を覆っている。
そしてその刀剣は材質の分からない蒼の刀身に刃先に至る部分は一筋の熱を持つような赤色の一本線が切っ先から柄まで延びていた。
「お兄さん!!来てますよ!!」
貴族の女の子の言葉にはっとし武器でガードしようとすると。
「なっ!?なんだこれ!!」
『それはシールドだ!!柄の横にゲージがあるだろ?それが尽きるまではどんな攻撃も防げるぜ!?』
シールドって何ですか...まあいいか。
取り敢えずこの横に付いてるのが光ってる間は防げると言うことだろう...ならあの技で決める!!
ライカンは攻撃を弾かれやけになり、何度も爪で切り裂くがシールドとかいう透明な壁で防いでいく。
すると次第に疲れてきたのか苛立っているのか、大降りの攻撃を繰り出すのを目にしその爪を剣で弾く。
「ここだっ!!....ふう....竜の双撃!!双破竜臥穿!!」
その隙を狙い剣をクロスさせるように振るい、竜手を振り上げるように切り裂き、剣を身体の左側に水平にし、斬り抜ける。
だが技はまだ終わりではない。
背後を取った僕は何度もインストールエッジと竜手を何度も斬り付ける。
そして頭に浮かぶ技を使う!!
「インストールスキル!!アバランシュ!!」
技名を叫ぶと一本線が真紅に光輝きだした。
「これで終わりです!!」
と、両手で構えたインストールエッジを振り下ろすと両断し、ライカンの断面は熱で焼かれ血を出さず時間差で片方ずつグシャっと崩れ落ちた。
「はあはあ...何とか...なった...はあああ...死ぬかと思った...」
『お前がこんな所で死ぬかよ。じゃあそれ上手く使えよ。じゃあな。』
「待って!まだ聞きたいことが...!!」
何とか引き留めようとするが声がしない所を鑑みるに引っ込んでしまったようだ。
行っちゃう前に教えて欲しいんですけど、これどうやってしまうの?
と、考えているとブオンと音がしたと思ったら手元からインストールエッジが消滅していた。
これが僕の中にいる人の力の一部なんだろうかと考えているとパタパタと背後に足音を感じ振り返ると三人が此方に歩み寄ってきていた。
とは言ってもエルフさん、踊り子さんはゆっくりとした足取りだけども。
貴族の女の子は元気一杯、天真爛漫な感じだ。
「凄いですね、その武器!!どうやって出したんですか!?」
「なるほど...イオンさんが同行を許すだけはあります。まあ護衛ぐらいは出来そうですね。」
「やるじゃない、あんた。そういえば自己紹介してなかったわね。」
「あっ、はい!僕はラケルタと言います。今後ともよろしくお願いします。」
僕は名前を告げると、皆さんも名前を教えてくれた。
その間にも僕は門の先を見据える。
その先のイオンさんが向かった城を見るためだ。
ふと名前を呼ばれ、向き直ると。
「ラケルタさん。これから私達はギルドの要請で人命救助に当たります。協力、護衛お願いします。」
「イオンさんは放っておくんですか?援護しに行った方が...」
「あなたも彼女、彼の事を知っているなら判るでしょう?必要ありません。...それに恐らくは...この状況に怒っていますから近づかないのが吉ですよ。暴れるでしょうから。」
この人は素直じゃないだけで実は仲間の事を信頼しているのだと言葉の端から感じ取れた。
だから二人を閉じ込めて囮にしたのか...逃げきれると判っていたから。
リンスさんへの評価を改める必要がありそうだ。
スフィアさん、シャンテさんも城の方角を気にせずに作業をしている。
このイオンさん含む四人はこういう関係なのだと納得する。
「分かりました。こう見えて力はありますから。」
「その顔と腕の鱗を見る限り竜神族でしょうからそうでしょうね。では此方に...」
どうやら駆けつける前に一仕事する必要がありそうだ。
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