異世界転生で貰ったチートがTS魔法少女変身能力でしたがこの世界で頑張るしか無いようです 

ベレット

50 旅立ち

「長い間お世話になりました。」


「ほっほっほっ。こちらこそじゃよ。面倒かけましたの...また良かったら来てくだされ。今度は竜神族の善き隣人として迎えさせてもらいますぞ。」


「はは...ありがとうございます。」


村長に別れの挨拶を貰いながら周りを見渡すと。


「姉御~!!ほんとうに行っちまうのかよ~!」


「いおちゃ~ん!また!また来てね!絶対だよ!?」


「うん。また来るよ。」


アーミンが私の手をとり二人して涙をだばだば流している。


「ラケルタ、あんたイオンっちに迷惑かけるんじゃないわよ?」


「分かってるよ。絶対役に立って見せるさ。」


もうわだかまりは無さそうにルルエナがラケルタの二の腕をパンパン叩いていた。


その光景に少しムッとしてしまった。


「最後に一揉みよろしいですかな?お嬢さんがた...ぶおっ!」


「「良いわけあるか!!」」


定位置なのかラケルタの頭に乗っていたラビをラケルタが降ろしアーミンとルルエナに渡すと二人が両端からフックをお見舞いした。
あいつは本当に最低だな。


「ラケ。向こうでも元気でな。しっかりやれよ?またな。」


「うん。ありがとう、ガレト。また...」


そしてその喧騒を忘れるように目を伏せ、から笑いをした後ガレトとラケルタは男同士の熱い抱擁をしていると。


「お世話になりました~。」


「いえ、こちらこそ。聖女様には大変ご助力頂いたお陰で村も蹂躙されずにすみました。ラケルタ。イオンさんをしっかり支えなさい。でもくれぐれも結婚するまで妊娠はさせないこと。分かったわね?」


「母さん!?何を言ってるの!?」


「おばさん!?」


この人はいきなり何を言い出すのか...


まだ私とラケルタはそんな間柄でも無いのに。


「おばさんは止めなさい...お義母さんでいいわ。」


と、照れ臭そうに告げてきた。


気が早すぎるというか当初と態度が違いすぎないだろうか。


「いえ...それはちょっと...そ、それじゃあそろそろ行きますね!ほら、ラケルタくん!しおん!行くよ!」


「は~い!お邪魔しました~。」


「はい!皆!行ってきます!」


このままだと外堀を埋められそうだなと思い二人の手をとり走り出した。


すると後ろから声が聞こえてきた。


「ラケ!また帰ってこいよ!」


「いおちゃん!またね!」


それを聞き取った私達は立ち止まり手を降りながら。


「また来ます!」


「は~い!」


と満面の笑みで返事をし、ラケルタは涙を一筋流しながら...


「また...絶対帰ってくるよ...それまでさよなら。ガレト、シンオ、アーミン、ルルエナ...」


感慨深そうにポツリと呟いたラケルタを見て私としおんは顔を見合わせはにかんだ。


ーーー2時間後ーー。


「な、なるほど...つまりイオンさん...いおりさんは男でもあり女でもあると...」


「まあ、そうだな。悪い...騙してた訳じゃないんだけど。幻滅したか?」


ラケルタもこれから街で仲間として暮らすのだから話しておいた方が良いと思い、打ち明ける事にした。


当然ながら驚いてはいたが...


「いえ、そんな事はありませんよ。僕は...イオンさんは異性として好意を寄せてますしいおりさんは同姓として尊敬できる方ですから....なので好きでいても良いでしょうか?」


「き、君が良いんならいいよ...私...俺が決めることじゃないし...」


「いおりさん...」


気持ちは変わらないらしく、相変わらず恥ずかしげもなく恥ずかしい言葉を告げてきていると、それを眺めていたしおんが。


「BLも善きものです...尊い...」


鼻血を流して嬉々とした表情をしていた。


薄々感ずいてはいたがこの聖女様...オタクはオタクでも婦女子らしい...婦女子は直ぐにそういうのに当て嵌めようとするから嫌だ...


「あのなあ、しおん。そういうのは....ん?二人とも止まってくれ」


「どうしましたか~?変身して~?」


「誰か近くに居ますね...一人のようですが...」


ラケルタの言う通り聞き取りスキルで感知できたのは足音一つだが、体格がいいのか土が沈み込む音も混じって聞こえてきた。


そしてがさがさと草木を掻き分けて此方に姿を見せると...


「...この山もうちょい整備しろよな...ったく王都の連中め....ん...?...ああっ!あんたはっ!」


「あっ!君はオークの!!」


その正体は竜神族の村に行く前に出会ったガタイのいいオークのお兄さんだった。





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