異世界転生で貰ったチートがTS魔法少女変身能力でしたがこの世界で頑張るしか無いようです 

ベレット

48 私達はこの地で彼女の冥福を祈る

「イオンさん!無事でよかったです!」


「ちょっ!?ら、ラケルタくん!?ひゃあああ!」


羽根を操作し地上に降り立ち羽根を消滅させるなり、ラケルタが私を抱き締めてきた。


私の心臓が煩いほど激しく鼓動しラケルタに聞かれないか心配になる。


「ほらほら、ラケルタさん。いい加減離してあげてくださいよー。」


「あっ...ごめんなさい!」


「はは...いいよ。大丈夫だから。それよりもアリアどうするの?このままにしておくのはちょっと...」


アリアに目を向けるとラケルタが悲しそうな表情をさせながらとぼとぼと歩み寄っていく。


当然と言えば当然だが一筋の涙を流しているラケルタに心が締め付けられる。


「ありゃ?もう終わってたんすか?」


「てめえ...今までどこにいやがった...」


「いやあ、ちょっと野暮用で...」


今更ながら魔方陣から現れたラビをむんずと掴みギリギリと力の限り雑巾の様に搾っていると。


「おーい!イオンさーん!ラケー!どうなったー?」


ガレトや竜神族数名が戦闘が終わったのを確認するなりこちらに駆けてきていた。


どうやらローブの女に関しては気付いてなさそうだ。
下手に言う必要も無いだろう...と二人にも目配せする。


「何とかなったよ。ガレト、村に彼女を運ぶから手伝ってくれる?すいませんが...」


「手伝うよ。ちょっと待って...チェンジ。」


スタイルチェンジをし深紅一色の服装に戻しひょいっと胴体を持ち上げる。


「よっと。」


「リボンの色が変わりましたけど何か意味があるんですか~?」


「うん。スタイルチェンジって言ってさ、パワーフォームかマジックフォームに変更出来るんだよね。」


そう告げるなりしおんの目がキラッキラに輝き始めた。


「くう~~!!魔法少女なのでパワーアップイベントあるかとは思ってましたが目の前で見れるなんて...燃えますねっ!!」


「だよねっ!流石しおん、よく分かってるじゃん!」


「ラケ!そっちをもってくれ!そこの二人も頭部を持つのを手伝ってくれ!」


竜神族の人達がアリアの頭を四人がかりで持ち上げそれぞれが話しに花を咲かせながら落とさないようにゆっくりと歩を進めた。


ーーー元竜神族の村ーーーーーーーー


「アリアよ安らかに眠りたまえ...彼の者に安息があらんことを...」


「安息があらんことを。」


家々の解体が終わった廃村の真ん中に埋められたアリアに向かって皆、左こぶしを胸に当て黙祷をする。


数十の竜神族が出席しており恐らくはこれで村人全員なのだろう。


「それじゃあの...お前さん達一人一人声を掛けてあげんしゃい。」


「じゃあ俺から。」


幼なじみ達がそれぞれが冥福をお祈りするらしく五人が前に出ていた。


「あーこんな時に言うのは何だけどな。俺はお前の事が好きだった。...っても気にしなくていいからな?俺はラケとアリアはお似合いだと思ってたからよ。...こんな事しか言えねえけど俺はずっとアリアの事覚えてるからな....それじゃあ。」


ただただ告白しただけにしか聞こえないが、アーミンは複雑な感情を表情に表していた。


まあ好きな人が別の女に告白するだなんて聞きなく無いだろう...私だって...って何を考えているんだ私は...


「じゃあ次は私ね...けどあんまり話すこと無いんだよねー。」


次はルルエナの番らしくばつが悪そうに後頭部を掻きながら。


「あたしらさ、失恋したじゃん?」


と、私をちらっと見てきた。


その行動に少し居心地の悪さを感じた...別に私が悪い訳じゃないんだが何となく。


まあ非がないことも無いけど...


「だからって訳じゃないけどさ、今度の人生ではお互いまた友達になって...そんでまた男取り合ったり、喧嘩したりまたやろうよ。....あー...駄目だ私こういうの弱いわ...シンオ後よろしく!」


「はあっ!?お前泣いてんのか?そんなキャラじゃ...いてえっ!」


ルルエナがお別れの涙を流しているとからかったシンオが顔をおもいっきり殴られた。
あれは致し方ないと思う。


....ルルエナと目があった...気まずい...


「俺の方が言うことねえんだけど。付き合いも一番浅いし...んー、じゃあよー...あの世で可愛い子いたらキープしといてくんね?....ぐわあっ!」


「あんた何言ってんの!?信じらんないんだけど!」


毎度の如く強烈なツッコミを放つアーミンとふざけるシンオのコンビに場が和み笑い声が上がる。


シンオのあれはもしかしたらわざとなのかもしれない...都会に行けばモテるんじゃないだろうか?あいつは。


「ったく!どきなよっ!...ごめんねアリア、騒がしくて。シンオはいつもあんなの知ってるでしょ?....私も特に伝えることも無いんだけど一つだけ...元気でね...また...」


そう言葉にするとアーミンはアリアの墓標に微笑んでいた。


ーーーーーーーーーー。


「次はラケルタの番ね。...ほら、君が一番話さないと!」


アーミンがラケルタの背中をバシバシ叩き墓の前に誘導し。


「ありがとう。アーミン...」


ラケルタは深呼吸をして歩みだした。


そして墓標の前に立つと。


「おいっ、ラケ!お前それ....」


「いいんだ、ガレト。僕はこれを此処に置いておく。アリア...君との思い出と自分の弱さと共にね...」


「ラケ....わかった。」


ラケルタは髪飾りを取り、それを墓標に掛け、私を見つめている。


「僕は君に謝らないといけないことが3つあるんだ...」


私から視線を外し、墓を見据えながら一言一言気持ちを乗せて語り始めた。


「君を殺してあげれなかったこと...それと仇を討てなかった事...本当にごめん。でも仇だけはいつか....」


「ラケルタさん...」


しおんが聖女らしい佇まいで祈りを捧げている。
彼女は地球ではキリスト教とかにでも入ってたのだろうかと思う程様になっている。


そんなしおんをまじまじと眺めながら耳を研ぎ清ませているとラケルタがとんでもない事を口にした。


「それともう一つは...ごめん。僕は君を裏切った...君の事を愛してると言ったのに僕は...。...君と同じくらい...いやそれ以上に好きな人が出来たんだ。その人はイオンさんって言ってとっても...」


「ちょーっ!まてまてまてっ!」


わざわざそれも報告するのかと恥ずかしさからずんずんとラケルタに近寄り。


「ラケルタくんっ!?何もこんな時に言わなくても!皆見てるしっ!」


「失恋したのは分かってるけど辛い...はは...」


いきなり私に対しての告白を聞き白くなっているルルエナを傍目に詰め寄ると。


「ちょっ!!何してんの!?もうっ!」


「この人が僕の好きな人だ。」


彼は私の腰に手を回し引き寄せ顔を見つめ再度告白をしてきた。
私は自分の顔が火照るのを感じていたが、ラケルタは構わず恥ずかしい言葉を連ねていく。


「君に許してもらおうとは思ってない...だけど見守っていてほしい...この人は誰よりも強くて、誰よりも優しくて...それで誰よりも厳しい人だ...僕にとってイオンさんは運命の人だと思う。死んだ直後に言うべきじゃないとは思うけど...君には黙っていたくなかったから...」


「ラケルタくん...ごめん。話してくれないかな?私もアリアさんと話したいから...」


「あっすいません、つい...」


ついじゃないわ...正直結構ドキドキした。


ちょっと力ずくでどうこうされるのも悪くないかもしれない...ラケルタ以外には嫌だが...って私はまた何を考えているんだ。


乱れた服を手直ししながら墓標を見つめ。


「あはは...何かごめんね。私泥棒猫みたいだよね...まっ、でも一番悪いのはラケルタくんだから。浮気性な彼氏で可愛そうだよ、ほんと...そんな人に好かれた私も大概かもだけど。ねっ、ラケルタくん!」


「うっ...あはは...」


久しぶりのアイドルスマイルで彼に笑いかけると顔を背け愛想笑いを始めた。
その後ろから刺すような視線がラケルタに突き刺さっている。


ちょっと可哀想かもと思わないでもないがこのくらいは甘んじて受けるべきだろう。


「でもさ、私はラケルタくんの気持ちを拒否はしないよ。それは謝らないし、許してもらおうだなんて思ってない。...私個人の問題のせいで踏ん切りはつかないけど...彼がそれを受け入れてくれるんなら私も...時間はかかるけど受け入れようと思うから...」


「イオンさん?」


彼の顔を眺めながらそう告げた言葉にラケルタはよく分かっていなさそうだった。


私はアリアの墓に向き直り。


「アリア...さん...私の事も見守っていて欲しいです。わがまま言ってごめんなさい。」


頭を下げた。


.....私のその言葉と行動に場は静寂に包まれていたがそこは竜神族...いつかのように。


「湿っぽいのは終わりにして宴会するぞーーっ!」


「うおーーーっ!酒だー!」


「きゃああ!飲むわよーーっ!」


騒ぎ始めた。


だが今はそれに身を任せていたい気持ちに駆られ。


「よーーっし!騒ぐよっ!ラケルタくん!」


「はいっ!イオンさん!」


「ところで二人は付き合うんすか?」


「.........」


突然現れたラビが空気を読まずに現れたのでとりあえずいつもの流れで、殴っておいた。


「そういうのはデリケートな問題だからあっ!」


「ぶふぅっ!ありがとうございます!!」


ーーーーーー宴会中盤ーーーーーーー


「えーー!?じゃあ明日には帰るの!?」


「姉御ーー!ずっと居てくれよーーっ!」


「そういう訳にはいかないよ。ギルドに達成報告しなきゃいけないし。」


それだけではないが...ローブの女に、それと魔獣化が頻繁している理由も話さないといけないし、それにルーミアの街を出て半月ほど経つ。


久しぶりにリンス、スフィア、シャンテ達に会いたいし、スターライトの初御披露目ステージや握手会等も催さないといけないので忙しいのだ。


「悪いけど...明日帰るね。」


「「「えーーーっ!?」」」


「お前達止めろ。イオンさんにも仲間や友人もいるし、生活があるんだ。諦めろ。」


三人と違って大人なガレトが説得していると、隣で酒を飲んでいるしおんが話しかけてきた。


「ラケルタさんはどうするんですか~?彼はついてきたいんじゃ~?」


「それは...」


私は彼の座っているアリアの墓前に目線を移す。
そこには果物を絞ったジュースを飲みながらアリアの墓標を眺めているラケルタの姿があり。


「ごめん。ちょっと席外すね。」


「はい。....イオンさん。」


「....?」


「私は彼を連れていくべきだと考えていますよー。」


返事をせずに頷き席を立ち彼の居る場所にコップ片手に近寄っていき。


「ラケルタくん。」


「イオンさん、どうしました?」


「...隣良いかな?」


「はい。もちろん。」


彼の座る石段の隣に腰を下ろした。


風が私のサイドポニーテールを靡かせ、心地い風に目を瞑り身を任せていると。


「僕も明日連れていってください。」


彼は私の目を真っ直ぐに見つめそう告げた。



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