異世界転生で貰ったチートがTS魔法少女変身能力でしたがこの世界で頑張るしか無いようです
40 最弱少年は少女の叫びを受けて最強に舞い戻る
「ラケルタ、負ける覚悟は出来たかよ?」
「負けるつもりでイオンさんと修行した訳じゃないよ。僕だって勝つつもりだ。」
「はっ!そうかよっ!」
ラケルタとガレトが対立しながら睨み合いするなか私達女子グループは会場となる広場の一角にあるテラスっぽいテーブルと椅子のある場所に腰かけている。
「旨くない?これ。」
「ですね。何というフルーツ何ですか?」
「それはねー、ナッシーっていうんだよー。森に生えてるよ。」
見た目はラグビーボールぐらいの大きさのココナッツで、実はなく中身はリンゴジュースみたいな果汁がなみなみと入っている。
その硬い殻をナイフでくりぬき、木の枝の中身を取り除いたストローで吸い上げて飲むらしい。
「ほい、いおちゃん次これねー。」
「はいよー。」
左腕で抱えながら飲み、右手の人差し指で次々と運ばれてくるナッシーを一刺しして穴を開けていく。
「白いの。次これ持っていきなさいよ。シンオ!次あるんだから早く!」
「分かったっての!!」
「了解っす~!いやー、女性にこきつかわれるのもまた格別ですなっ!」
それをシンオとラビが汗水垂らしながら広場に集まった、皆暇なの?と言いたくなるくらいの人混みにお金と引き換えに渡していく。
スポーツ会場かな?
宴会の時も思ったけど竜神族はどうやら真面目そうな雰囲気とは違って、イベント事には目がないらしく、折角のラケルタとガレトの一騎討ちがお祭りムードに飲み込まれてしまった。
心なしか二人の表情も曇っている気がする...本当に「だ~い~な~し~」と言いたい気分だ。
そんな喧騒を掻き消すように村長とラケルタの母フォルテがガレトとラケルタの間に立つと声高々に宣言を始めた。
「ほっほっほっ。みな元気で何よりじゃ。ほいじゃあ早速じゃが始めようとするかのう...フォルテや...」
「はい。...ではこれよりアリア討伐権を賭けて一騎討ちをしてもらいます。出場者はラケルタとガレトになります。それでは勝負方法ですが急所への一撃...頭部、心臓周辺、首筋への攻撃のみ有効打とします。双方問題ありませんね?」
そこでフォルテが一旦区切り、二人が頷いて同意をすると。
「構わねえよ。」
「はい。」
「では、始め!」
フォルテの合図と共に歓声が沸き起こる。
「ガレトー!手加減してやれよー!」
「ラケルター!危なかったら危険するのよー!」
と、やじや応援が飛び交い始めた。
私達は全員座り大人しく観戦しようとしていると
ルルエナが口を開く。
「勝てんの、あいつ?ガレト案外強いわよ?」
「だよね...怪我しないか心配だなあ。」
二人の心配を余所に私としおんは顔を見合わせにっと笑い。
「大丈夫ですよ。何て言ったってイオンさんが訓練相手ですからね~。」
「問題ないよ...」
そう告げるとアーミンとルルエナも安堵した表情になり、テーブルにもたれ掛かる。
彼女達の顔色を見ながらあることが頭を過る...実力的には私にあれだけ抵抗したから問題はない筈...ただああは言ったものの一つ問題がある。
それは彼の心の問題だ...果たしてどこまで恐怖心を振りきれるか...
それを心配しつつ広場中央に目をやると既に双方構えていた。
「来ねえのかよ?ラケルタ。」
「....くっ!」
「なんだ?またビビってんのか!?なら俺から行くぞっ!おらあっ!」
「うあっ!」
先に仕掛けたのはガレトだった。
その豪腕から放たれる剣戟を何とか交わし、剣の腹でいなしていく。
だが、連撃に次ぐ連撃を受けて剣以外の攻撃を予測できず...
「防戦一方かよ、ラケルタ!おせえんだよっ!」
「ぐうっ!」
ガレトの回し蹴りが横っ腹にヒットしたがそれを反動に横っ飛びし、距離を稼いだが。
「反応が遅すぎるんだよっ!」
「があっ!」
下から潜るように切り上げた剣戟をガードしようとしたがそのまま腕ごと弾かれ、そのままガレトが頭に一撃をいれようと振り下ろす。
「これで終わりだなっ!ラケルタ!」
「まだっ!....くそっ...」
何とか頭を横に反らせ避けられたが、剣が右肩に直撃し、怯んでしまいその隙を突かれ前蹴りを腹部にもろに入った。
「ぐっ!はあはあ...」
何とか耐え倒れずにはすんだが片膝をついてしまったのを見て私は立ち上がり、叫んだ。
「ラケルタくん!今の君なら避けられた筈だよ!修行を思い出して!」
「....ダメなんです...やっぱり怖いんです、戦うのが...。」
やはり心の問題は一朝一夕にはいかないようでまたしても情けない事を言い出してしまった。
だがそれを見ても私の心は折れずまだ伝えれていない想いをガレトや周囲の罵りを遮り、彼に伝える。
「はっ!やっぱりてめえはその程度かよ!情けねえ!アリアだってお前の事なんか...」
「だよな。やっぱりラケルタじゃなあ。」
「そうよねぇ。無理よねぇ?」
「うるさい!黙れ!ラケルタの事何も知らないくせに!」
私が口調を荒げると普段の私と違うイオンに場が静まり返る。
私はその中を堂々と突っ切りながら彼に語り掛ける。
「イオンさん....?」
「皆はラケルタくんは弱いと思ってると思う。情けないと臆病者と罵るばかりで何も見ようとしない!臆病者?違う!彼は優しいんだ、誰よりも!情けない?情けなくなんかない!苦しみもがきながらも今も立ち上がろうとしているじゃない!」
「イオンさん...!」
彼が涙ぐみ腕に力を込めているのが目に入った。
その彼の心を後押ししようと言葉を紡ぐ...私の想いを。
「怖いに決まってる!誰だってそうでしょ!?でも彼はその気持ちを押し込んで今そこに立っているでしょうが!ずっと好きなアリアを自分で殺そうと!」
私の言葉を聞いてラケルタがゆっくりと立ち上がる。
「ラケルタくん!君は...自分を信じれないかもしれない!だけど君は戦える!怖いかもしれない。また誰かを傷つけてしまうかもしれないと思ってると思う...一人で立てないなら...立ち向かえないなら私も一緒に背負うからっ!君の苦しみも罪も閉じた感情も全てっ!だから...だから自分の殻を切り裂け!ラケルタ!」
その言葉を聞きラケルタは涙をぬぐい、微笑んで見せている。
「バカだよね、僕はホントに...こんなに近くに理解してくれる人がいるのに...見ない振りして、聞かない振りして...聞いた?一緒に背負ってくれるんだって...」
ラケルタの目に宿る魂が輝いているのを感じる。
それは今までの戦いに怯える少年の瞳ではなく、大切なものを今度こそ守ろうと誓う男の目だ。
「ラケルタ...てめえ...くく...はははははっ!久しぶりじゃねえか、お前のその目...その雰囲気!」
「ああそうだよ。もう立ち止まっちゃいけないんだ!僕はっ!誰よりも信じてくれる人がっ!そこまで言ってくれる人がいるんだ。僕はアリアの為だけじゃない!イオンさんの為にもっ!もう迷わない!」
ラケルタが走り出し、切りつけるも軌道の見え見えな剣戟はかわされてしまった。
「ラケルタくん!思い出して!私と戦った時の事をっ!」
「いくらあの頃に戻っても俺はそれ以上に経験してきたんだよっ!いい加減眠っちまえっ!」
背中を見せていたラケルタにガレトが木剣を振り下ろしたが誰もが...いや私以外が予想だにしない展開に息を飲んだ。
「先の...」
「あっ?...なに!?」
「先の先っ!そこだあっ!」
右足を軸に振り向きガレトのすぐ横を駆け抜け木剣を振り抜いた。
それは見事にガレトの腹に当たり、今度は予想外のダメージにガレトが膝をついた。
「嘘だろ?あのラケルタが?」
「何だよ、今の動き...」
私でも追い付けないほどの反射速度とスピードに
きっとあれが彼の本当の強さなのだろうと思うと背筋がぞくぞくして、身震いする。
「なん...だと...一体なにが起きて...くそが...まだ俺はお前に届かねえのかよっ!」
ガレトが震える足で立ち上がり様に攻撃を加えようと上段に構えるが見たことも無い歩法で一気に距離を詰める。
「むっ!あれは竜歩かっ!ほほほ、あれを体得しとるとはの...」
たたんとステップをしたと思ったら十メートル程移動したあれは竜歩というらしい。
そして詰め寄ったラケルタの攻撃にガレトは防戦になっている。
「くそっ!はええっ!追いきれねえっ!」
「遅いよ、ガレト!剣技『燦先竜訝』!」
見たところ四発の突きを一発ずつ、両肩と腹部に当てられガレトがえずいた。
「ぐあっ...」
「燦先竜訝!?あの子、六撃の突技をマスターしていたの!?」
「六!?私の目でも追いきれないなんて...」
いくらなんでも早すぎる...これがラケルタの...いや、最強の剣士ラケルタの実力なのか。
「うそでしょ...ラケルタがあんなに強いだなんて...」
「私夢でも見てるのかな?」
アーミンとルルエナがそう言うのも無理はない。此処までとは予想外だ。これならアリアとも一人で戦えるかもしれない。
そう感心しているとラケルタが心臓部に一突きしようと試ていたが...
「これ以上良いようにさせるかよっ!」
ガレトが剣で振り払いラケルタの剣を弾いた....だがそれは囮だったらしい。
そして瞬時にガレトの胸元に手を置くと。
ヨルムンガンド
「我流...『夜無眼弩』!」
右足で地面を鳴らし片手でガレトを吹き飛ばした。
「がはっ!な、なんだ...何が...」
「うっそだろ!?ラケルタの奴!姉御の技使いやがった!」
避難しながら見ていたのか分からないが、一目見たそれをコピーするだなんて、素養だけなら私のなんてゆうに越えている。
正直末恐ろしいとさえ感じる。
だが、そこで終わりではなく、竜歩を交えながら剣を何度も振り抜く。
「これで終わりだっ!ガレト!奥義『連覇狼鋭斬』!」
「その技!くくっ...流石だぜ...完敗だよ...よく帰ってきたな“ラケ”」
「はっ!」
四方八方から襲いかかる八連撃を捌くことすら敵わず全て受けきったガレトは...
「勝者!ラケルタ!」
フォルテの合図と共に崩れ落ちた。
そしてラケルタが近寄っていくと。
「ガレト!ごめん!やりすぎた!大丈夫?」
「バーカ...ラケ...相変わらずくそつえーな。お前は...よ...ったく...アリアの事頼んだぜ?」
二人は抱き締めあい、その男同士の友情の熱い抱擁に皆涙しているみたいだ。
私が多分一番泣いているだろうけど。
「よがっだねえ...ほんどうによがっだ~!」
「いやいや、イオンっち泣きすぎだから。」
「いおちゃん滅茶苦茶涙もろいね。」
私が泣き出したのを皮切りに周囲もラケルタを称賛し始めた。
「やるじゃねえか!ラケルタ!」
「そんなん出来るんなら最初からやれよなっ!」
その様子にラケルタが一粒涙を流しながら見渡している。
「はは...皆に迷惑かけちゃったな...。ガレト...もう僕は大丈夫だ...アリアの願い...叶えて見せるから。」
「ああ...お前ならやれるって知ってるよ...アリアを頼む...親友...」
「...!...ああっ!」
そのやり取りに余計けたたましく騒ぎ始めたので村長がドンッと杖で地面を叩くと一斉に静かになった。
「ほほっ!それではこれで終わりかの。ラケルタ...ようやく戻ってきてくれたのぉ...ワシが知るなかで最強の剣士...帰還を歓迎するぞい。」
「ラケルタ...お帰りなさい...」
「村長、母さん...只今戻りました。」
涙ぐむフォルテが晴れやかな笑顔を見せ微笑み、ラケルタは恥ずかしそうにしながらも満面の笑みを見せていた。
「うおおおーん。よがっだねぇ!」
「姉御!俺も!俺も泪がどまんねえっず!」
「うわあっ...」
「ふふっ。私はこういうの案外好きですよ?」
私とシンオが男泣きしアーミンとルルエナが引いていると。
「は、はは...イオンさん.......ん?うわっ!何だっ!?」
「むっ!これは...中々大きいのう...」
いきなり地震が起こり、場が騒然となったが段々と収まると人々も落ち着きを取り戻していたが、ラケルタだけが、私の名前を叫んでいた。
「イオンさん!イオンさん!避けてっ!」
「え?」
「何でしょう?」
私としおんが暗くなったのに気づいて上を向くと谷の一部が崩れ落ち私達の頭上に迫っており...
「う....」
「あー、こりゃヤバイっすね...結界壊れるかもっす。」
私の意識がそこで途切れてしまった。
「負けるつもりでイオンさんと修行した訳じゃないよ。僕だって勝つつもりだ。」
「はっ!そうかよっ!」
ラケルタとガレトが対立しながら睨み合いするなか私達女子グループは会場となる広場の一角にあるテラスっぽいテーブルと椅子のある場所に腰かけている。
「旨くない?これ。」
「ですね。何というフルーツ何ですか?」
「それはねー、ナッシーっていうんだよー。森に生えてるよ。」
見た目はラグビーボールぐらいの大きさのココナッツで、実はなく中身はリンゴジュースみたいな果汁がなみなみと入っている。
その硬い殻をナイフでくりぬき、木の枝の中身を取り除いたストローで吸い上げて飲むらしい。
「ほい、いおちゃん次これねー。」
「はいよー。」
左腕で抱えながら飲み、右手の人差し指で次々と運ばれてくるナッシーを一刺しして穴を開けていく。
「白いの。次これ持っていきなさいよ。シンオ!次あるんだから早く!」
「分かったっての!!」
「了解っす~!いやー、女性にこきつかわれるのもまた格別ですなっ!」
それをシンオとラビが汗水垂らしながら広場に集まった、皆暇なの?と言いたくなるくらいの人混みにお金と引き換えに渡していく。
スポーツ会場かな?
宴会の時も思ったけど竜神族はどうやら真面目そうな雰囲気とは違って、イベント事には目がないらしく、折角のラケルタとガレトの一騎討ちがお祭りムードに飲み込まれてしまった。
心なしか二人の表情も曇っている気がする...本当に「だ~い~な~し~」と言いたい気分だ。
そんな喧騒を掻き消すように村長とラケルタの母フォルテがガレトとラケルタの間に立つと声高々に宣言を始めた。
「ほっほっほっ。みな元気で何よりじゃ。ほいじゃあ早速じゃが始めようとするかのう...フォルテや...」
「はい。...ではこれよりアリア討伐権を賭けて一騎討ちをしてもらいます。出場者はラケルタとガレトになります。それでは勝負方法ですが急所への一撃...頭部、心臓周辺、首筋への攻撃のみ有効打とします。双方問題ありませんね?」
そこでフォルテが一旦区切り、二人が頷いて同意をすると。
「構わねえよ。」
「はい。」
「では、始め!」
フォルテの合図と共に歓声が沸き起こる。
「ガレトー!手加減してやれよー!」
「ラケルター!危なかったら危険するのよー!」
と、やじや応援が飛び交い始めた。
私達は全員座り大人しく観戦しようとしていると
ルルエナが口を開く。
「勝てんの、あいつ?ガレト案外強いわよ?」
「だよね...怪我しないか心配だなあ。」
二人の心配を余所に私としおんは顔を見合わせにっと笑い。
「大丈夫ですよ。何て言ったってイオンさんが訓練相手ですからね~。」
「問題ないよ...」
そう告げるとアーミンとルルエナも安堵した表情になり、テーブルにもたれ掛かる。
彼女達の顔色を見ながらあることが頭を過る...実力的には私にあれだけ抵抗したから問題はない筈...ただああは言ったものの一つ問題がある。
それは彼の心の問題だ...果たしてどこまで恐怖心を振りきれるか...
それを心配しつつ広場中央に目をやると既に双方構えていた。
「来ねえのかよ?ラケルタ。」
「....くっ!」
「なんだ?またビビってんのか!?なら俺から行くぞっ!おらあっ!」
「うあっ!」
先に仕掛けたのはガレトだった。
その豪腕から放たれる剣戟を何とか交わし、剣の腹でいなしていく。
だが、連撃に次ぐ連撃を受けて剣以外の攻撃を予測できず...
「防戦一方かよ、ラケルタ!おせえんだよっ!」
「ぐうっ!」
ガレトの回し蹴りが横っ腹にヒットしたがそれを反動に横っ飛びし、距離を稼いだが。
「反応が遅すぎるんだよっ!」
「があっ!」
下から潜るように切り上げた剣戟をガードしようとしたがそのまま腕ごと弾かれ、そのままガレトが頭に一撃をいれようと振り下ろす。
「これで終わりだなっ!ラケルタ!」
「まだっ!....くそっ...」
何とか頭を横に反らせ避けられたが、剣が右肩に直撃し、怯んでしまいその隙を突かれ前蹴りを腹部にもろに入った。
「ぐっ!はあはあ...」
何とか耐え倒れずにはすんだが片膝をついてしまったのを見て私は立ち上がり、叫んだ。
「ラケルタくん!今の君なら避けられた筈だよ!修行を思い出して!」
「....ダメなんです...やっぱり怖いんです、戦うのが...。」
やはり心の問題は一朝一夕にはいかないようでまたしても情けない事を言い出してしまった。
だがそれを見ても私の心は折れずまだ伝えれていない想いをガレトや周囲の罵りを遮り、彼に伝える。
「はっ!やっぱりてめえはその程度かよ!情けねえ!アリアだってお前の事なんか...」
「だよな。やっぱりラケルタじゃなあ。」
「そうよねぇ。無理よねぇ?」
「うるさい!黙れ!ラケルタの事何も知らないくせに!」
私が口調を荒げると普段の私と違うイオンに場が静まり返る。
私はその中を堂々と突っ切りながら彼に語り掛ける。
「イオンさん....?」
「皆はラケルタくんは弱いと思ってると思う。情けないと臆病者と罵るばかりで何も見ようとしない!臆病者?違う!彼は優しいんだ、誰よりも!情けない?情けなくなんかない!苦しみもがきながらも今も立ち上がろうとしているじゃない!」
「イオンさん...!」
彼が涙ぐみ腕に力を込めているのが目に入った。
その彼の心を後押ししようと言葉を紡ぐ...私の想いを。
「怖いに決まってる!誰だってそうでしょ!?でも彼はその気持ちを押し込んで今そこに立っているでしょうが!ずっと好きなアリアを自分で殺そうと!」
私の言葉を聞いてラケルタがゆっくりと立ち上がる。
「ラケルタくん!君は...自分を信じれないかもしれない!だけど君は戦える!怖いかもしれない。また誰かを傷つけてしまうかもしれないと思ってると思う...一人で立てないなら...立ち向かえないなら私も一緒に背負うからっ!君の苦しみも罪も閉じた感情も全てっ!だから...だから自分の殻を切り裂け!ラケルタ!」
その言葉を聞きラケルタは涙をぬぐい、微笑んで見せている。
「バカだよね、僕はホントに...こんなに近くに理解してくれる人がいるのに...見ない振りして、聞かない振りして...聞いた?一緒に背負ってくれるんだって...」
ラケルタの目に宿る魂が輝いているのを感じる。
それは今までの戦いに怯える少年の瞳ではなく、大切なものを今度こそ守ろうと誓う男の目だ。
「ラケルタ...てめえ...くく...はははははっ!久しぶりじゃねえか、お前のその目...その雰囲気!」
「ああそうだよ。もう立ち止まっちゃいけないんだ!僕はっ!誰よりも信じてくれる人がっ!そこまで言ってくれる人がいるんだ。僕はアリアの為だけじゃない!イオンさんの為にもっ!もう迷わない!」
ラケルタが走り出し、切りつけるも軌道の見え見えな剣戟はかわされてしまった。
「ラケルタくん!思い出して!私と戦った時の事をっ!」
「いくらあの頃に戻っても俺はそれ以上に経験してきたんだよっ!いい加減眠っちまえっ!」
背中を見せていたラケルタにガレトが木剣を振り下ろしたが誰もが...いや私以外が予想だにしない展開に息を飲んだ。
「先の...」
「あっ?...なに!?」
「先の先っ!そこだあっ!」
右足を軸に振り向きガレトのすぐ横を駆け抜け木剣を振り抜いた。
それは見事にガレトの腹に当たり、今度は予想外のダメージにガレトが膝をついた。
「嘘だろ?あのラケルタが?」
「何だよ、今の動き...」
私でも追い付けないほどの反射速度とスピードに
きっとあれが彼の本当の強さなのだろうと思うと背筋がぞくぞくして、身震いする。
「なん...だと...一体なにが起きて...くそが...まだ俺はお前に届かねえのかよっ!」
ガレトが震える足で立ち上がり様に攻撃を加えようと上段に構えるが見たことも無い歩法で一気に距離を詰める。
「むっ!あれは竜歩かっ!ほほほ、あれを体得しとるとはの...」
たたんとステップをしたと思ったら十メートル程移動したあれは竜歩というらしい。
そして詰め寄ったラケルタの攻撃にガレトは防戦になっている。
「くそっ!はええっ!追いきれねえっ!」
「遅いよ、ガレト!剣技『燦先竜訝』!」
見たところ四発の突きを一発ずつ、両肩と腹部に当てられガレトがえずいた。
「ぐあっ...」
「燦先竜訝!?あの子、六撃の突技をマスターしていたの!?」
「六!?私の目でも追いきれないなんて...」
いくらなんでも早すぎる...これがラケルタの...いや、最強の剣士ラケルタの実力なのか。
「うそでしょ...ラケルタがあんなに強いだなんて...」
「私夢でも見てるのかな?」
アーミンとルルエナがそう言うのも無理はない。此処までとは予想外だ。これならアリアとも一人で戦えるかもしれない。
そう感心しているとラケルタが心臓部に一突きしようと試ていたが...
「これ以上良いようにさせるかよっ!」
ガレトが剣で振り払いラケルタの剣を弾いた....だがそれは囮だったらしい。
そして瞬時にガレトの胸元に手を置くと。
ヨルムンガンド
「我流...『夜無眼弩』!」
右足で地面を鳴らし片手でガレトを吹き飛ばした。
「がはっ!な、なんだ...何が...」
「うっそだろ!?ラケルタの奴!姉御の技使いやがった!」
避難しながら見ていたのか分からないが、一目見たそれをコピーするだなんて、素養だけなら私のなんてゆうに越えている。
正直末恐ろしいとさえ感じる。
だが、そこで終わりではなく、竜歩を交えながら剣を何度も振り抜く。
「これで終わりだっ!ガレト!奥義『連覇狼鋭斬』!」
「その技!くくっ...流石だぜ...完敗だよ...よく帰ってきたな“ラケ”」
「はっ!」
四方八方から襲いかかる八連撃を捌くことすら敵わず全て受けきったガレトは...
「勝者!ラケルタ!」
フォルテの合図と共に崩れ落ちた。
そしてラケルタが近寄っていくと。
「ガレト!ごめん!やりすぎた!大丈夫?」
「バーカ...ラケ...相変わらずくそつえーな。お前は...よ...ったく...アリアの事頼んだぜ?」
二人は抱き締めあい、その男同士の友情の熱い抱擁に皆涙しているみたいだ。
私が多分一番泣いているだろうけど。
「よがっだねえ...ほんどうによがっだ~!」
「いやいや、イオンっち泣きすぎだから。」
「いおちゃん滅茶苦茶涙もろいね。」
私が泣き出したのを皮切りに周囲もラケルタを称賛し始めた。
「やるじゃねえか!ラケルタ!」
「そんなん出来るんなら最初からやれよなっ!」
その様子にラケルタが一粒涙を流しながら見渡している。
「はは...皆に迷惑かけちゃったな...。ガレト...もう僕は大丈夫だ...アリアの願い...叶えて見せるから。」
「ああ...お前ならやれるって知ってるよ...アリアを頼む...親友...」
「...!...ああっ!」
そのやり取りに余計けたたましく騒ぎ始めたので村長がドンッと杖で地面を叩くと一斉に静かになった。
「ほほっ!それではこれで終わりかの。ラケルタ...ようやく戻ってきてくれたのぉ...ワシが知るなかで最強の剣士...帰還を歓迎するぞい。」
「ラケルタ...お帰りなさい...」
「村長、母さん...只今戻りました。」
涙ぐむフォルテが晴れやかな笑顔を見せ微笑み、ラケルタは恥ずかしそうにしながらも満面の笑みを見せていた。
「うおおおーん。よがっだねぇ!」
「姉御!俺も!俺も泪がどまんねえっず!」
「うわあっ...」
「ふふっ。私はこういうの案外好きですよ?」
私とシンオが男泣きしアーミンとルルエナが引いていると。
「は、はは...イオンさん.......ん?うわっ!何だっ!?」
「むっ!これは...中々大きいのう...」
いきなり地震が起こり、場が騒然となったが段々と収まると人々も落ち着きを取り戻していたが、ラケルタだけが、私の名前を叫んでいた。
「イオンさん!イオンさん!避けてっ!」
「え?」
「何でしょう?」
私としおんが暗くなったのに気づいて上を向くと谷の一部が崩れ落ち私達の頭上に迫っており...
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