異世界転生で貰ったチートがTS魔法少女変身能力でしたがこの世界で頑張るしか無いようです 

ベレット

39 転生の継承者

~修行2日目~


「遅いよ、ラケルタくん!私の次の手を予測して動いて!」


「ぐっ...げほげほ...は、はい!もう一度お願いします!」


戦闘技術を磨かせながら私は昨日の夜ガレトに聞いた話を思い出していた。


ラケルタくんの過去、犯した罪、やらなければならない事...彼が今も苦しむ要因であり、その性格を形容させた過去に心が抉られそうだった。


だが、その話の中で一番気になったのはローブの女だ...フードを深くかぶれるローブに紫色の唇をした不気味な存在感。




私がこの間会ったあのローブを着た女なのだろうか?...少なくともこの村と関係があるのは明白だろう。
そして恐らくだがその女が昨今の魔獣化騒ぎに一役買っているのも...


警戒しておくべきかもしれない。
街に戻ったらギルドに報告しないと...と、考えていると修行が疎かになってしまい。


「はあっ!」


彼の放った拳が頬を掠めた。


「おっとっと。やるね。」


「あ、ありがとうございます!」


「でも一回入れたからって安心しすぎ!敵は待ってくれないよ!」


身体から一瞬力を抜いて気が抜けたラケルタに蹴りを一発腹部におみまいする。


「ぐうっ!...はあはあ、すいません!」


「へえ...今のを耐えきるか。」


「え?何ですか?」


それなりに威力のある蹴りをくらわした筈なのだが吹っ飛ぶ事も転倒することもなく、ザザーっと地面を擦り少しだけ後退しただけだった。


やはりこの子はガレトの言うように本当に才能ある剣士なのだろう。


「何でもないよっ!じゃあ次は...剣を抜いてみて....」


「剣...ですか...でも僕は...」


「強くなるんでしょ?アリアの為に。」


「.........!?」


私の叱責にハッとしたラケルタは目を閉じながら腰に携えた長剣に手を添える。
そして引き抜こうと腕を動かすが...


「やっぱり無理か...」


やはりまだ恐怖心が上なのかカタカタ音を鳴らし震わせるばかりで一向に抜けそうにない。


「ふうふう....す、すいませんイオンさん。やっぱりまだ無理そうで...」


「いいよ。ちょっと休憩しようか...」


「はい...」


今日は邪魔の入らないように村から出て廃村の方に来ている。
そこの倒壊した家屋から使えそうな椅子を2つ拾い、適当な場所に置いて同時に座り。


「僕が剣を抜けないの知ってたんですか?」


ラケルタの問いに私は頷いた。


「うん、まあね。ガレトに4年前の事...アリアが魔獣化した時の事も聞いた。...もしガレトに勝てたらアリアと戦わないといけなくなるけど大丈夫なの?」


「は、はい...」


「本当に?木刀とかは持てるっぽいけど刀剣は無理なんじゃない?流石に気持ちにキリがついてもアリアを殺す手段がないなら連れてけないけど。」


ラケルタは俯きながら太ももに置いた両手でズボンを握って力を込めている。


そして下を向いたまま。


「本番までに何とかします...」


「そっか。...じゃあそろそろ続きを...」


「あっ...待ってください。昔の事を知っているなら聞きたいことがあるのですが...」


立ち上がった私がぐぐっと伸びをしていると、座ったままのラケルタが私の目を見据えてそう告げてきた。


なので「なに?」と返しもう一度座り直すと、あのローブの女の事を聞いてきた。


「私もよくは知らないよ。ただこの間初めて話した時に思ったのは君の記憶通りまともな奴では無さそうだったかな。...実はさ...それがあったのが数日前のこの谷なんだよね。あの時は分からなかったけどアリアと村の様子を観察していたのかも。」


「あいつが此処に居たんですか!?今は何処に!?」


それを聞いたラケルタがひきつった顔に闘志を目に宿しながら立ち上がった。


「知らないよ。知ってても教えないけどね。...全盛期の君でも敵わないんだから行かせる訳無いでしょ。いいから座って。」


「ぐっ...それは!....はい...」


悔しそうに顔を歪ませていたが私の正論を受け止め座り直す。


「私も一つ...二つ聞きたいんだけど、いいかな?」


「はあ...何ですか?」


私はどうしても確認したかった事を問いかけることにした。


「転生...転生の継承者って何?それと魔獣化したのに戻れたってほんと?」


転生...このワードはどうしても聞きたいところだ。しおんは転移だがラケルタは私と同じ転生者なのだろうか...そして継承者ってのは聞いたことがない。


「転生の継承者ってのはよく分からないです。あれから声も聞こえませんから...」


「声?ガレトはそんな事言ってなかったけど...」


「やっぱり僕にしか聞こえなかったんですね。意識が途切れそうになった時に...変に聞こえるかもしれませんが、頭の中で誰かが呟いたそんな気がするんです。」


頭の中の声か...創作物的に考えるなら...意識がラケルタの中にも他に居るのだろうか?
継承者というのも恐らくは転生を繰り返しながら知識や技術を継承しているのかもしれない。
記憶は無さそうだから技術のみかも...
だとしたら13歳で世界最強といわれる種族で一番強いかもしれないのも納得できる。


「イオンさん?イオンさん、どうしました?」


「...え?」


つい考え込んで周りが見えなくなる悪い癖が出てしまい、ラケルタの名前を呼ぶ声で気がついた。


顔を見ると心配そうに私の顔を覗き込んでいる。


「ごめんごめん。つい考え込んでたよ。...それでさ、魔獣化したのってほんとなの?あれになったら戻れない的な事を聞いたんだけど。」


「みたいですね...僕もよく分かりません...」


何だか気恥ずかしくなり顔を背けながら聞いてみるとやはり咄嗟の行動だったのか本人の制御では無いらしい。


もしかしたら彼の中にいる誰かが力を貸したのかもしれない。


だが今のところそれ以上の事は分からないので私はゆっくりと立ち上がりながら。


「それじゃあ、話は終わりにして続きやろうか。」


「はい!」


彼に手を差し伸べた。

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