異世界転生で貰ったチートがTS魔法少女変身能力でしたがこの世界で頑張るしか無いようです 

ベレット

33 襲来

「イオンさん。イオンさん、すいませんが起きて貰えませんか?」


「ん...んう?...ふああ...んー......うわあっ!びっくりしたあっ!何でラケルタくんが部屋に居るの?」


「あの...ここ森ですけど...」


起きると目の前にラケルタの美少年顔があり、驚いてローリングで逃げてしまった。


周囲を確認すると確かに森の中のようでどうやら宴会の後皆して寝てたらしい。


「ほんとだ...寝ちゃってたんだねー。起こしてくれてありがと。」


「い、いえ...あ、あのイオンさん...その、胸元が...」


どうやら雑魚寝していたせいで肩から服が片方ずり落ちていたようでそれを見たラケルタが顔を赤くして見ないように両目を手で覆っている。


その様子が何か可愛くてついからかってしまった。


「ごめんごめん。もう戻したから大丈夫だよ。」


「ほ、ほんとですか?...はあ...ぶふっ!着てないじゃないですか!それどころか前より悪くなってます!」


「ふへへー」


私はわざともう片方もずらし、下まで落ちないように胸を持ち上げるように抑え、谷間が出来るよう強調し、ラケルタに見せびらかしてやった。
すると慌てふためいた彼がちょっと怒りぎみに服を無理やり着せてきた。


「イオンさん!余りからかわないで下さい!」


そこでふと気付いた。月明かりに照らされた彼の顔や身体のあちこちに傷や痣が出来ておりそれを見るなり...


「ねえ、ラケルタくん...それ誰にやられた?」


「へ?あの...イオンさん?」


私はゆらりと立ち上がり、眼光は怪しく光らせた。
ラケルタは焦りながらも「何でもないですから落ち着いてください!」と何度も説得されるとようやく落ち着きを取り戻し座り直すと。


「イオンさん、色々僕の事考えてくれてありがとうございます...あの...どうして僕の事を気に掛けて貰えるんですか?」


「んー、何か弟居たらこんな感じかなって...え?何?」


素直に答えたのだがどうにもおきに召さないのか「弟...弟ですか...」としきりに呟いている。


私がどうしたんだろうと頭をはてなで一杯にしていると、鬼気迫る感情が篭った呻き声が奥の森から響き渡った。


「た、助けてくれっ....だ、誰か....」


その声に皆起き上がり声のした暗がりに目をやると一人の竜神族の女性が悲鳴を上げた。


「きゃあああああ!」


「ラケルタ付いてきて!」


「は、はい!」


その声が鳴り響いた瞬間私とラケルタはいち早く駆けつけるとその酷い状態に息を飲んだ。
そこには血だらけで右腕を食いちぎられた竜神族の男性だった。


「ひっ!い、イオンさんどうするんですか!?」


「おいおい、こりゃひでえな。」


「ど、どうしよう...えっと医者なんて此処にはいないし」


「ちょっと静かにして!」


私達の後に続いて近づいた他の数人の竜神族数名とラケルタが顔を青ざめて騒ぎだしたが、私が一喝すると、たちまち大人しくなった。


静かになると一呼吸置いて右手に集中して魔方陣を展開させ、それを死にかけている彼に向け。


「リキュペレート」


と、呟くと薄緑色の無数の粒子が魔方陣からふわふわと飛び出しそれが男性の身体に触れた部分の傷を塞ぎ、息を整えさせる事に成功したがやはり失った右腕までは治せないようで少し落胆していたのだが。


(やっぱり無理か...そりゃそうか。....ん?...何で急にサーチが発動して...まさか...)


不意に発動したパッシブスキル〈サーチ〉は敵対勢力を私が察知していない場合に限り半径3メートルに迫った場合に発動するスキルだ、...私は嫌な予感がして目を見開きながら地面に寝ている彼から目を離し顔を上げた。


「ちっ!全員今すぐ谷へっ!早く!」


「え?イオンさん?」


そこには小山ほどある熱源体がすぐ近くまで迫ってきており、私は一心不乱に右腕を水平に外側に振りながら逃げるように指示するが、現状を理解していないラケルタ含むこの場に居る全員が呆気にとられていると。


「いいから早く...くそ...もう遅いか...」


「....きゃあああ!」


「うわあああっ!」


森の奥から現れた巨体が「ガアアアア!」と大地を震わすほどの咆哮を私達に浴びせると阿鼻叫喚の地獄絵図と化し全員が恐怖に硬直してしまった。
だが唯一動けたラケルタがそれを見ながら震えた唇で...


「ア...リ...ア...?」


そう呟くと怪物はラケルタにゆっくりと首を動かし、食いつこうと牙を剥き出しにし、口を大きく開けて首を伸ばしたが。


「させるかっ!はっ!」


「グガア!」


飛び出した私の放った拳を横っ面にまともに受けると、ラケルタの目の前の空間に牙を振り払いながら真横にその巨体を浮かし数メートル吹っ飛び、ズズンと重い音を響かせ地面に叩きつけられた。


「やっぱり頑丈だな...ラケルタくん!ラケルタくん、さっさとその人連れて逃げろ!」


「.........」


「ラケルタくん!何してるの!!しっかりして!」


「.....!?は、はい!」


竜種...アリアの姿を再度見て硬直してしまっていたが私の叱責ではっと気を取り戻し、怪我をしている男性の残っている左腕を自分の肩に回し、引き摺りながら谷へ向かっていったが、その途中にこちらを心配そうに振り向いているので。


「私の心配はいらないから早くして!」


「は、はい!イオンさん、お気をつけて!」


そのまま踏ん張りながら怪我人を連れていっているラケルタを見届ける。


「君に心配される程弱くないよ...」


と、呟きながらアリアに向き直すと同時に「ガアアア!」と唸り声を上げながらのそのそと立ち上がっていた。


その圧倒的存在感に恐れ戦いた竜神族の面々が叫びながら散り散りに逃げようとするので...


「うわあああっ!逃げろぉっ!!」


「きゃああああ!」


「ああもう!これだから戦い慣れてない連中は!これならスフィアの方が根性据わってるぞ!」


文句を言いつつ両腕を目の前で拳にした状態で交差させ目を瞑り精神を集中させる。


そして一呼吸置いた後、目を見開き右足でダンッと地面を踏み、両腕を構えるように勢いよく腰まで持っていきスキルを発動させる。


「ったく!これで少しは落ち着きなよっ!〈覇気〉!!」


「ひっ!」


「うわあっ!」


覇気を周辺全域に発動させ、わざと立ち止まらせ。


「あーちゃん!シンオ!ガレト...は居ないのか。君達が誘導して皆を村に連れてって!」


「うっす!」


「がってん!」


私はお前らの親玉か何かかな?


「おばちゃん、おじさんこっちこっち!」


「おお済まねえな、取り乱しちまって...」


「ごめんなさいね、アーミンちゃん。」


「いいから早く来て!」


谷寄りの人達はアーミンが上手く誘導してくれたお陰で半数は避難出来たみたいだ。


「じいさん、もっと早く歩いてくれよっ!」


肝心なのはシンオの方だ...森に逃げ込もうとしていた人の所に行ったようだがどうやら年寄りや子供ばかりらしく余り進捗は良くない。


「これで精一杯じゃ!」


「うわ~~ん!シンオ兄ちゃん怖いよ~!」


「うおー!でっけー!シンオ兄ちゃんあれすっげえな!」


「あーー!もう何ともなんないって、姉御!!」


誰が姉御だ...しかし大分まずい状況だな。
アリアは私が目線を合わしているせいか下手に動こうとはしないが、どうやらこれまでの戦闘で私が天敵だと野生の勘で気付いているようで、一向に向かっては来ない。


それどころかしきりにシンオ達のいる左後方に視線を動かしたりしている...構えを崩さず進行方向に足を動かして逃がさないようにはしているが、彼方の足の遅さが予想外だ...あんなに遅いとは。


このままアリアを押さえ込めないかと考えているとアリアは思いもよらない行動に出た。


「なっ!?シンオ、逃げろ!ダッシュで!!」


「え?何だよ、姉御?こっちはこっちで忙しい....げっ....やば...」


「くそっ!」


まさかあの何トンもありそうな巨体でジャンプするとは思いもよらなかった。


跳躍したアリアの着地した地点はシンオ達の目の前で彼らは腹部の下辺りに収まっている。
このままだと確実に食物コースなので、多少地形が変わろうと仕方ないと自分に言い聞かせ全力で駆け抜ける。
背後からドガガガガという破壊音が聞こえてくるが今は気にしないでおく。


「グオオオオ!」


「シンオ兄ちゃ~~ん!」


「ここでワシも終わりかのう...」


「うわあああっ!もう駄目だっ!ごめん、ガレト!」


無駄と分かっていても腕でガードする素振りをしている彼らに、アリアの牙が数コンマの所まで近づき、涎が彼らにかかるのが見える。


「シンオ!男なら諦めるな!アリア、ラケルタ、殺しちゃったらごめん!」


ギリギリ間に合いシンオ達のすぐ目の前、アリアの腹部に到達すると、バキバキバキと大地を割りながら右足を一歩踏み出しながら両手で腹に掌底を当て。
        ヨルムンガンド
「魔法少女式体術『夜無眼弩』!」


触れた腹部から頭部、背部まで衝撃の波が這っていき、その先にある尻尾の末端部まで波打ち終わると体内に貯まった衝撃波がアリアの身体を襲い、真後ろに腹を上に向けて吹っ飛んでいった。


そこでまた予想外に出来事に直面した...未だ空中を漂っているアリアのその長上に魔方陣が出現し、そこから天使の様な羽を生やしたウサギっぽい生物が現れた。


「.....は?」


すると、そいつは右足の爪先を尖らせ羽をハエの様に見えない速度でバタつかせると。


「ここらで活躍しとかないと使い魔の名折れっすからねぇ!ではっ!ラビのご主人への愛ゆえに生まれた必殺技!『ご主人!このくらいの蹴りでお願いします!キーーック!!』」


「技名最悪なんですけど。」


急降下し、その爪先をアリアの腹部にめり込ませ勢い衰えることなく地面に叩きつけ、アリアは白目を剥いて泡を吹いて気絶してしまった。


あいつ...強くない?腐ってもユニークスキルって訳か。


意外にも戦果を上げてしまったラビに唖然としていたが、ハッとしぼーっとしてる場合かと後ろに振り向き。


「あー、シンオ...ほらっ!今のうちにっ!」


「う、うっす。姉御!後よろしくお願いしゃすっ!」


しっしっと手を振るとまるで舎弟かのように90度頭を下げて子供を抱えていってしまった。
その後におじいさんがのそのそと付いていっている。


あいつはなんなんだ、本当に...違う意味で慕われている気がする...


シンオ達が遠ざかるのを見届けているとふよふよとド畜生が「いやー、一働きしたっすねぇ。ご褒美とかあります?」と、ふざけた事をぬかすので。


「その前にあの技の名前何とかしろやぁっ!!」


「おぶうっ!ご褒美っすね!ありがとうございます!」


振り向き様に渾身の力で右ストレートを放った。





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