異世界転生で貰ったチートがTS魔法少女変身能力でしたがこの世界で頑張るしか無いようです 

ベレット

31 ラケルタとルルエナ

「え?別に気にしてないけど...」


「そ、そうなんですか...実は昨日母さん...フォルテ様から謝っておくようにと。」


ほーん、なるほど。彼女からしたら今私に機嫌を損ねられたら困るのだろう。
心配のしすぎだと思うが。


「私はそれよりもアリアをどうするのか聞きたいんだけど?私から言えるのはこれだけ。君がやらないなら私がやるから。」


彼からしたら最も聞きたくない言葉を淡々と告げる。
勿論私が率先して殺すつもりは無いがこうでも言わないとこの男は自分を奮い立てることは出来ないだろうと、挑発するとラケルタは表を上げ私を綺麗な瞳で睨み付けて。


「どうして...どうしてそんな簡単に言えるんですかっ!?彼女は今でこそ竜種になってしまいましたが、元は人なんですよ!?あなたは...あなたは友達でも好きな人でも殺せるんですか!?」


「やるよ。必要ならね。この世界は優しさだけで生き抜ける程優しくないから。」


「うっ........」


そう間髪いれず即答すると、ラケルタは唾を飲み込み一歩引き下がった。
私だって出来ればやりたくないとは思ってる。
だが短い間とはいえ色々見てきた...覚悟は当に決まっている。


私は彼に伝えていく。本当に必要な事を。優しさと甘さは違うことを教える為に。


「君のアリアに対するそれは優しさじゃない。ただの甘えだよ。」


「違いますっ!僕は...ただ彼女を殺すなんて可哀相な事...」


「違わないよ。もしこのまま彼女が生き長らえるとするとして...それでもしかしたら彼女が大量の人を食らってしまうかもしれない。それが彼女が望んでやると思う?魔獣になったらもう自分ではきっと止まれない...それが君の思う優しさ?...ふざけるなよ、お前。」


がらっと変わる私の雰囲気に飲まれラケルタの身体が硬直する。
彼もわかっている筈だ、このままではいけないのは...だけどきっと自分じゃどうしようも無いのだろう。
なら私が後押しするしかない...と過去の経験を交えながら目を伏せながら言葉を紡いでいく。


「世の中にはさ、長年連れ添ってきた家族みたいな仲間達を過去にあった一つの出来事から恨む人もいる...逆に自分の身に危険が迫ろうとも助けようとする奴や...痴情のもつれで危ない目に遭っている人を1レアにもならないのに助ける人もいて...助けられた人もその人の為に嫌々ながらも踊り子みたいなのをやったりしてる奴だっている。」


「.........」


「もし私の大切な人がそんな目に遭うなら全力で助ける。このままアリアを放っておけば私の友達が危険に晒されるかもしれないのになにもしないなんて考えられない。私は人を殺さないと誓ってはいるけど、必要な時はその誓いを破るつもりだよ。そしてその人達がもし今回みたいな魔獣になったらきっと同じことをすると思う。」


普段は絶対に口にしない心の内を聞き取ったラケルタは歯軋りが聞こえるほど噛みしめている。


私も伝えることは伝え終わったので立ち尽くしていると火葬の手伝いをしていたルルエナが近づいてきた。


「ごめん。話聞こえてたんだけど、ちょっといい?」


「え?う、うん。どうぞ!」


周りを見渡すと結構な数の人が聞き耳をたてていたようで、あの演説を聞かれてたのを今更ながら恥ずかしくなり、赤くした顔を隠すようにしゃがみこんだ。


「かっこ良かったよ、いおちゃん。きっとラケルタにも届いたと思う。」


「うん。だといいけどね。それよりも恥ずかしすぎて死にそう....」


「あはは...」


横に同じようにしゃがんだアーミンが親指を立てながら嬉しそうにはにかんでおり、私もそれに頷きルルエナの言葉に耳を澄ませる。


「イオンちゃんの言葉、少しはあんたに届いたんじゃない?私達のなんかよりもよっぽどさ...」


「...........」


未だに俯いているラケルタに後ろ手にしているルルエナが優しく語りかけている。


「こんな事言ったら弱いあんたには荷が重いかも知れないけどさ。あの娘の事、楽にしてあげれるのは多分ラケルタだけだと思うから。」


「え?」


ラケルタが顔を上げるとそこには昨日までの険しい表情のルルエナは居なくなっており、恐らく元々は優しかったのか包み込むような微笑みを浮かべていた。


「本当は私があんたを立ち上がらせたかったんだけどね...はは...私じゃ無理だったからさ。イオンちゃんに任せちゃったよ。...でもここからはあんたが頑張んなさい?私とアーミンは少なくとも応援してるから。」


「あ....」


ラケルタの二の腕を叩きながらそう告げ離れると、彼は今までとは違い男らしい顔付きに変わっていた。


「うん...でも少し時間貰えないかな...心の準備がしたいから...」


「分かった...ここはいいから村に行ってなさいよ。...頑張ってね。」


「ルルエナ、今までごめん。あの...イオンさん!ありがとうございます!こんな僕のために怒ってくれて!少しだけ待って貰えますか?...済ませておきたいことがおきたいことがあるんで、明日までに覚悟を決めますから!」


今までのいつも俯き加減の気弱な彼ではなく明るい表情でハツラツとした笑顔のラケルタに告げられた私は...


「うん。待ってるよ。」


「は、はい!」


そう返すなり彼は手を振りながら村に走っていった。
ルルエナに目線を移すと。


「本当にあいつは昔から手がかかるんだからっ!」


困ったような、嬉しいような笑みを浮かべていた。
そんな彼女の様子を眺めていたらアーミンが耳打ちをしてきた。
何だろうと耳を傾けると。


「ルーちゃんって小さい時からラケルタの事が好きでよくアリアと奪い合ってたんだよ。まあラケルタは鈍いから全く気付いてなかったけどね。」


「ほほ~ん。それは良いこと聞いた~。」


と、ルルエナに二人してにまにま顔をしていると、顔を真っ赤にしたルルエナが。


「あ、あんた達なによっ!?何なのよ、その顔はっ!私は別にラケルタの事なんて何とも思ってないんだからっ!」


中々よいツンデレ具合で自ら暴露したのを耳にした私は女子高生さながらに「別に~?何でもないけど~?」と恋ばなを楽しむようにアーミンと二人がかりでからかうことにした。



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