異世界転生で貰ったチートがTS魔法少女変身能力でしたがこの世界で頑張るしか無いようです 

ベレット

23 邂逅

「こんな遠くまでよくお越しになられましたな...感謝の言葉もありません...」


「いえ、そんな...あの...頭を上げてくれませんか?」


村長である老婆が正座のしたまま頭を垂れる。
それに焦った私は控え目にそう告げるとゆっくりと頭を上げながら手元にある金貨袋を控えていた侍女に渡すとその女性が近づいてきた。


「これをお受け取りください。先ずは報酬金の半分をお渡しします。残りは怪物討伐後に...」


「じゃあギルドの仕事として承りますね。ですがそれは帰るときに貰います。...それよりもあれは一体何なんですか?流石に驚きました。」


差し出された金貨袋をそのまま突っ返しながら先程追い払った怪物の事を問いかける。


この村が目的地の竜神の村らしく、あの岩壁を越えると藁で出来た家が数戸建てあり、その内の一番奥にある唯一の木材で出来た家に案内された。


その道中にラケルタが何処に居るのだろうか、と辺りを見渡すが見当たらず、ガレトとシンオと呼ばれた先程まで一緒に居たナンパ男二人と家の中に入ると。


「此方で村長がお待ちです。靴を脱いでからお願いします。」


侍女数人に案内され連れて来られたのが、ここ迄の顛末だ。
それにしても驚いた...竜神族というくらいだからリザードマンみたいな蜥蜴人を予想していたのだが、実際には私達人間と寸分変わらない容姿で、唯一違うのは蛇のような鱗が顔や腕などにあるくらいだろう。


そんな彼女達を興味深げに観察していると。


「それは知らなくても討伐は出来るのでは?」


「それは...そうですけど。」


不躾な物言いにむっとしたもののそれ以上聞ける雰囲気では無さそうなので諦めるしか無さそうだ。
どうやら村長も同じ意見なのか難しい表情をしており、ガレト、シンオの二人も広間入り口で聞こえてない振りをしている。


(.....何なんだ?明らかに様子がおかしい。あの恐竜に何かあるのか?)


怪しんでいると村長が目を細目ながら。


「あれが何処に居るのか分からんでの...民家の一つが空き家になっておるから其処で暫く休むとよい。所在が分かり次第誰か寄越そうと思うのじゃが、どうかの?」


「....分かりました。お世話になります。」


私は頭を下げ、提案を受け入れる事にし。


「それではこれで。何かあれば呼んで下さいね。」


「ほほ...ではまたの...ガレト...案内して差し上げなさい...」
立ち上がりながらそう告げると老婆は頷き、ガレトとシンオに案内するように指示すると侍女と共に奥の部屋に消えていった。


見届け終わるなりガレト達の居る広間入り口の柱二つの間を抜ける。


「イオンちゃん、じゃあ直ぐに行くかい?」


「なんなら村を案内するけど。」


親切からか下心からか分からないが両脇で顔色を窺いながら聞いてくる二人を鬱陶しそうに溜め息を吐きながら外に続く木製扉に手を付きグッと押す。


するとギギっと音を発てながら扉が開くと、開ききっていないその扉の隙間から青い髪に髪飾りを着けた見覚えのある少年の影が展望台の様な切り立った崖に続く道を走っていくのを目にした。


未だにどうでも良いことを次から次へと気を引くように話している二人に...


「ごめーんっ!イオンちゃんちょっと用事思い出しちゃった!!お家分かるように目印なんか残しといてねっ!ばいばーいっ!」


ウインクをしながら胸の前で手を合わせながら思ってもいない謝罪の言葉を言いながら二人を撒いてからラケルタを追うために村の入り口に向かって走り出した。


「あっ!イオンちゃん!待ってくれー!」


「そんな~...イオンちゃん~...」


(はあ...鬱陶しかった...えーとラケルタくんは何処だ?)


村を破壊しないように気を付けて一気に駆け抜ける私を追いかける二人を引き離しながらラケルタの向かった崖に向かう為、キノコ型の岩肌を抜け、今度はその崖を助走をつけ駆け登る。


その途中から岩肌がツルツルになってきたので右足を出っ張り部分に引っかけ一気に飛び上がる。


「よっと。」


するとあっという間に崖の上に降り立つことに成功し、展望台を目指すためきょろきょろと眺めていると不意に声をかけられた。


「へえ...此処まで登ってくるなんて流石ね。」


「え?」


声の出所を探すと直ぐ近くの崖の端っこに足を投げ出して座っているローブ姿の女性を発見した。
その女性がフードを深々とかぶったまま崖から見える丘陵地帯を見ながら問いかけてきた。


「君はこの世界をどう思う?人間も魔者も亜種族皆仲良しこよしのこの世界をどう感じているかしら?」


「はあ?いきなりなんなの?世界とか言われても分かんないんだけど。」


「つまらない回答ね。私は...下らないと思うわ。彼処にある王都も帝国も戦争を止めて平和を謳歌してるなんて、つまらないもの。もっと憎しみと血がある方が生きてる気がするじゃない?ほら、見てみなさいよ。彼処の人達は生きようと必死そうにしてるでしょう?」


何一つ理解できない、したくないその言葉を聞きながら指を指した竜神の村を見下ろす。


「素晴らしいでしょう?命の危機に必死になってる姿って美しいと思わない?これから踏みにじられるのを想像するとぞくぞくするわ。」


「...あんた何を言ってるんだ?....一体何をするつもり...」


振り向きながら睨み付けるとその女はフードの奥で紫色の唇を不気味に歪ませた。
その様子に怖気を感じていると立ち上がり、片足を空中に投げ出すと。


「あっ!おいっ!危ないぞ、なにやって...」


「正義の味方気取りの魔法少女さん?私の玩具、今度は壊せるかしら?前と違って難しいんじゃないと思うわよ?強さだけじゃ誰も救えないもの。ふふ...まあ頑張りなさい?別の世界から来たヒーローさん。」


「なっ!?あんたどうしてそれを知ってる!!...待てっ!!...ああっ、くそっ!!」


その言葉を最後に彼女は崖からもう片方の足を動かし背中から飛び降りた。
聞き出そうと右手を伸ばし掴もうとしたが、届かず空を切ってしまい、焦って這いつくばる様に谷底を覗き込むが其処には死体も何もなく文字通り消えてしまったようだ。




私は悔しそうな表情と驚きを隠せない内心に。


「何で私が別の世界から来たって知ってるんだよ。」


谷底を眺めながら呟くことしか出来なかった。





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