異世界転生で貰ったチートがTS魔法少女変身能力でしたがこの世界で頑張るしか無いようです 

ベレット

6 野生のお嬢様が仲間になりたそうにこちらを見ている。仲間に迎えますか?

「それではこれより決闘方法の説明を致します。」


ルーミア家に仕えている一人のメイドが花に囲まれた庭園の一角で語りだした。
俺は始めてみる生メイドをまじまじと眺めながら...


「おお...本物のメイドさんだ...」
と、呟き見とれているとスフィアがこちらを見ながら冷気を放っている。
だが仕方ないだろうと思う、東京にはコスプレメイドかなんちゃってメイドしか居ないんだから。


「こほん。もうっ!イオンさん、集中してくださいっ!」


「は、はい...」


何やらぷりぷり怒っているスフィアに叱責され、気を取り戻しあの褐色の執事に向き直ると「ははっ」と笑いながらその端正な顔を笑顔にし、微笑みをイオンに送っており、イオンはしかめっ面を表情に表していると。


「それでは説明致します。ご静聴お願いします。」
そして静寂が訪れるなり、メイドがその空気を掻き消すように淡々と話し始める。


「今回の決闘は宣誓方式とさせていただきます。
      ・・
即ち、降参を宣誓した側を敗者、宣誓された側を勝者と致します。ここまで宜しいですか?」


「構いません。」


「分かりました。」


そう理解を示すと、徐に地面に置いてあった白色の旗を手に取り目を閉じたと思ったら「では...始めっ!」と目を見開き大きな声で宣言すると、旗を勢い良く振り上げた。


どうやらそれが決闘開始の合図らしく、直ぐ様ボクシングの様にファイティングポーズを取ったのだが、執事が未だに穏やかに微笑んでいるのを見て毒気を抜かれてしまい
「なに?」
と問いかけると、静かに目を閉じると胸に左手を添えてお辞儀をしていた。
腐女子が歓喜しそうな光景に目を奪われていると懇切丁寧に自己紹介を初めている。


「無理を申し上げてしまい誠に申し訳ありません。自分はクリスと申します。以後お見知りおき下さい。お嬢様の執事兼教育係をしております。」


なるほど...だから内面はともかく、外面はまともなお嬢様に仕上がった訳か...納得。
だがそれはそれとして、ようやくまともな人間に巡り会えたのだから今後のためにもやっておくべきだろう。


「俺はいおりって言うんだ、宜しくな。で、この姿の時はイオンって呼んで....て、うおおおおっ!」


「ちっ、避けやがったか。クリス次で決めろ!」


「はい。承りました、主様。」


ルーカスさんが放った中々にパンチの聞いた腹黒さに、相槌を打っているクリスは先程とは打って変わって剣士らしい凛々しい顔つきに豹変させていた。
その変わり果てたひりついた空気を感じ、イオンも空手の型に切り替える。
「.......」


「イオンさん....ではお手会わせお願いします。」


クリスが覚悟を決め、木刀を腰に携えて腰を落とす...そして一気に駆け出し間合いに入るなり居合い斬りをイオンに放つ。


「よし!これで決まっただろっ!」


「ほほっ。そうでも無さそうですなあ。」


「流石です、イオンさん!」


振り抜かれた木刀を鼻先一寸で華麗に避けきり、次の手を誘うため無理に攻撃はしないでいた。


「なら、これはどうですか!」


「....よっ!はっ!ってい!」


クリスから放たれている切り裂いた空間に振動が起きるかの様な高速の連撃を紙一重で全て避け続け体力の消耗を押さえながら立ち回る。


「な、何故あいつはああも動けるのだっ!」


(確かに速いけど、今までのにくらべたらっ!)


それもその筈である。いおりはこの1ヶ月の間一人で戦い抜いてきたのだから。
一対一は勿論の事、数十対一という無謀な戦いですら勝利を納めてきている。
その理由はただ単に一人で行動するしかなく、ギルドに所属していようとも最高ランクのSランク冒険者を軽く凌駕する戦闘能力を恐れ、爪弾きにし、その特異体質のせいでパーティーにも入れて貰えない不運からか、ある能力を身に付けていた。


『後の先、対の先、先の先』と言われる武術の基本スタンスを取り入れ更には極意と言われる制空権を用い、接近するものなら意図も容易く打ち払えるまでに成長しており、これは魔法少女のスキルに依存しないパーソナリティスキルと言われるものである。


そんな超人じみた才能を遺憾なく発揮したいおりには到底常人が及ぶべくも無く...


「くっ!此処迄いなされるなんて!...ならこれはどうですかっ!」


「突きかっ!ならっ!」


と、クリスの放った木刀の突きを左手で掌底を木刀の腹に打ち込むと、クリスはそのしなやかな女の腕からはあり得ないほどの威力に木刀を放してしまい宙を舞いながら無数の木片に姿を変えていった。


「あ....しまっ!」


「もう遅いよ。」


クリスを含むイオン以外の全員がその光景に唖然とする最中、アッパーカットを決めようとしていたイオンはクリスの顎に寸での所で制止させると、その拳から放たれた風圧にクリスの銀髪がはためいた。


「私の勝ちで良いかな?執事君?」


「......う....も、勿論...異論はありません...私の敗けです。」


先程までの余裕ある表情は成りを潜め、代わりにあったのは青ざめさせたクリスは一歩引きながら、敗北の宣誓を挙げた。


「ふう...疲れたー。....ん?メイドのお姉さん!旗!旗!」


「え?...あっ、はい!しょ、勝者イオンさん!」


決闘の結果よりも内容に呆気に取られ放心していたメイドは慌てながら旗を下げ、イオンの勝利をこの場の全員に聞こえるように声高々にせんげんし。


「買ったぞー。スフィアー。」


と、ピースをしながらスフィアに振り向くと、満面の笑みを浮かべ胸元で小さくガッツポーズをとっていた。
その横では悔しそうにルーカスが怒りを露にしつつもイオンを認めたのかそれ以上言おうとはしなかった。


そしてその後ギルドにスフィアがいおりパーティーに正式に加入する旨を伝えに行こうと外に出たのだが...


「貴様の事は認めてやらんでもない。そしてスフィアの冒険者稼業も認めてやろう。だが!」


玄関先で変身を解いたいおりの肩を掴んだルーカスは血涙を流しながら、悔しそうに憤慨し。


「もしも娘を傷物にしたら貴様は絶対に打ち首にしてやるからなっ!覚悟しとけよっ!絶対だからなーーっ!」


「ひっ!わ、分かりました!大事にします!」
執事やメイド達に引き摺られながら負け惜しみを口にしていた。
だがいおりのその言葉にスフィアは勘違いしているのをいおり本人は全く気づきもしていなかった。


「えぇっ!だ、大事にってその...いおりさん...いおりさんそれってどういう意味ですかっ!」


「なにっ!?急にどうしたっ!」


スフィアが茹でダコの様に赤面させいおりに問い詰めながら、話し半分に聞きながらギルドに歩を進めた。



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