苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件

ベレット

救出からの脱獄の件

「...........」


「あんた、もうちょいしゃんとしなさいよ。仲間、助けるんでしょ?」


「ご主人さまぁ、まずはトトさん達を救出することから頑張りましょう~?」


「....ああ、そうだな。....すまん、もう大丈夫だ。確かこの先の階段だったな」


トトとリリはどうやら俺が捕まった時放り込まれたあの牢屋に居るらしく、脱出する前に助けに行く段取りとなった。


ーーウィスト城牢屋ーー


「姉さん、大丈夫?」


「う...うぁ....な、なんとか...」


リリが呻き声をあげ、横たわる。


「.....なんとか脱出して逃げ出さないと....」


容態が思わしくない姉を心配そうにトトアーシュが髪を撫でていると。


「な、なんだお前らはっ!...がっ!?」


「死にたくなければ剣をしまいなさい!」


「邪魔だ!」


先程まで静かだった階段上からけたたましく剣同士がぶつかる音や、肉が潰される音に怖気を感じ、肩をびくっと震わせた。


「な、なに?なんなんし~!」


恐る恐る牢の柵に近づいていると足音が近づいてきたのを聞き取り、ザザザザザと後退り、壁まで後退した。


こつこつこつと足音が牢獄内に響き、牢屋の前で前屈みになっている影に怯え、トトアーシュは涙目で身体を震わせる。


「....おい?トト?居るか?」


「ぎゃああああ!....ってあれ?この声...おっさん!?」


しかしそこに現れたのは不審人物でもなく、危険人物でもない。
トトアーシュは恐る恐る目をこらすとそこに居たのはいつも自分を怒る、目の上のたんこぶで、恋敵で、いつも助けてくれるヒーローのような存在であるユウキその人だった。


ーー「ぎゃああああ!....ってあれ?この声...おっさん!?」


「うるさいわ!静かにしろ!」


「いや、あんたもうるさいから!」


「皆さんお静かに~」


コントしてる場合か。


「今出してやる。ちょっと待ってろ」


先程ぶちのめした看守から奪った鍵束の鍵を一つ選び錠に差し込む。


「あ?....鍵が違うのか...つーかなんでこんなにじゃらじゃらついてんだよ.....」


「....ねえ、おっさん。...ルーシェは?」


「....実はその...さっきまで性的に襲われててな。このお姉さん...ふっ。が気絶させた」


「あんたなんで今鼻で笑った?答えなさいよ」


「........」


「ちょっとおおお!」


掴み掛かってくるガーフェナを押さえつけつつトトアーシュを見ると目を点にさせていた。


「え、ええぇぇぇ!?ルーシェっておっさんが好きだったの!?つーか公国についたのっておっさんを手にいれるため!?....あ...」


自分からばらしたのにワンテンポ遅れて気付き手で口を押さえるがもう遅い。


「....知ってるっつーか、さっきしったってか...まあとにかく知ってるから隠さなくても良いぞ」


「そ、そうなんだ...でもあーしはてっきり家の再興の為だと思ってたんだけど?」


知ってたのか...教えてたってことはルーシェも本当はこんなことしてまで再興するつもりが無かったのかもしれない。
だとすると俺のせいか。また。


「それもあるみたいだかな。どちらにしろあいつは...」


「もう敵よ。あんた達がどんな関係か知らないけど、アテナ様側なんだから。」


俺とトトアーシュに沈黙が訪れる。
黙々と鍵を順番に差し込んでいると。


「.....お....開いた...」


ガチャリと音が鳴り、扉を開くと擦れる音と共に重苦しく開いた。


「ありがと、おっさん」


「ああ、別にいいんだが...それよりもリリは?」


「あっ!そうだ!大変なんよ、おっさん!こっちきて!」


どうしたんだと顔をしかめながら牢屋の影に行くとリリアーシュが苦しそうに脂汗を額に浮かび上がらせていた。


「リリ!?リリ!何があった!おい、トト、これはどういう事だ!」


「じ、実はさ...船を公国が襲ったときに、最初は姉さんが暴れまわってたんだけど、人質を取られて....」


人質だと....そこまで腐ったってのか...


「何か嗅がされたら、姉さん倒れちゃって...大丈夫かな?姉さん大丈夫だよね!?」


「トト....」


どうやら先程までの気丈な態度ははったりだったのか、今は俺の左腕にしがみつきながら泣いてしまっている。


「俺は医者じゃないからなんとも...」


「そんな...」


ポロポロとトトアーシュが涙を流していると、不意に裾が引っ張られ目線を下げると息を荒くしながらリリアーシュが腕を伸ばしていた。


「ユウキ....う...く....はあはあ...この...症状...心当たりが....あるわ.....ここじゃ無理だけど...外に出れたらなんとか...なるわ...」


「そうなのか?....たてるか?」


「.....う...はあはあ...うあっ!」


「姉さん!」


リリアーシュは身体が言うことを聞かないのか立ち上がろうとしたが崩れ落ち、それを見たトトアーシュが駆け寄る。


「トト、そっち持て、俺はこっちを。ガーフェナ、敵は頼むぞ」


「ええ、任せて」


「この症状~、許容量越えですか~?ほんの少しの量ですけど、同位体の方には毒になりますねぇ」


許容量越え?それって...


「フェニア、それは精霊力でも同じ症状が起きるのか?」


「はいぃ。魔力でも精霊力でも同位体の方には薬にはなりませんからぁ」


そういうことか。
つまり公国は同位体対策に精霊力補給用の精霊石を砕いた粉末を嗅がせたのだろう。
俺達、精霊使いにとっては害は無くても同位体には毒にしかならない。
公国め....下劣な手段を...


「......っ....堕ちるとこまで堕ちやがって...昔はそんなんじゃ無かっただろうが....!」


「ご主人さま...」


「....まあ理由が分かりさえすればこっちのもんだ。」


リリアーシュを支えながら、彼女の左腕を掴む手に魔力を巡らせ。


「スピリットゲイン」


ハイエルフ王家の墓所で戦ったリッチーに使用した下位版の魔法を指先に発動し彼女を蝕む精霊力を吸い上げていく。


「う...ユウキ...くん...?」


「大丈夫か?少しは良くなったか?」


「え、ええ...ありがとう。君にはお世話になりっぱなしね」


「気にすんなよ。あんたみたいな美人を助けられて本望だ」


「....そ、そう...」


どうして俯くんだ...
何故耳まで真っ赤にしてるんだ...


「なんだ、お前ら」


「「「別に」」」


「もう...」


「「「別に」」」


「もうそれ止めろよ!つーか知り合ったばっかでよく息合うよな!?....ガーフェナ!もう行けそうなのかよ!?」


「.....はあ....こっちよ、ついてきて。...ほんと、相変わらずなんだから...」


溜め息吐きたいのはこっちなんだが?


「....ユウキって本当に良い男よね....」


「姉さん、男に免疫無いからねー。」


聞かなかったことにしたい。
....あっ、無理だわ...凄いうっとりした目でこっち見てる...

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