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苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件

ベレット

船旅と過ごし方の件

「はあはあ....トモエの奴...ふう...」


ルーシェのお陰でなんとか乗船し肩で息をする。
もう遥か後方の船着き場を見るとトモエがいまだに立ち尽くしていた。


「お兄さんやっぱり凄いよね!なんだか冒険物の主人公みたいだったよ~!」


「お陰で助かった。礼を言うぜ、ルーシェ」


「はは...いいよー。だって私の為だし」


「どういう意味だ?」


「へへ、何でもないよー。お腹すいたなー。ちょっとご飯食べてくるねー」


一人で行ってしまった。
俺も腹減ったな。


「何か腹に入れるか...」


甲板を横切り、船内への扉に触れる。


「ちょっと良いかしら?」


「リリか。どうかしたのか?」


「いえ、ちょっと知識のすりあわせをね」


「すりあわせ?一体全体なにを?」


一旦扉から離れリリと共に甲板の手すりにもたれ掛かる。


「アルザス村だったかしら?重症の患者がいるとか?どんな様態なの?」


「ああ、実はある人物に斬られてな。一応縫合はしたんだが、いかんせん素人なんでな。どうにも...」


「あなたが縫合を...?」


「そうだが...やっぱり素人がやったらダメだったか?」


「いえ、あなたがやらなかったら死んでたのよね?なら誇るべきだわ。誰にでも出来ることじゃないわ。行動が大きい程責任が伴うもの」


そんな凄いもんじゃ無いんだけどな。
必死だっただけだからな。


「でもどうしてそんな事に?なにがあったの?」


「それが...」


公国襲撃の件を話すとリリアーシュは顔をしかめ吐露した。


「どこの国も権力がある者はみな同じ...ね。...その話だとまた来るのよね?」


「まず間違いないだろう。何とか退けなきゃ今度こそ...」


「....なら私も闘うわ」


「良いのか?」


「ええ、悪事を見過ごすことはできないわ。首長国でなくてもね。同化体としてやるべきことをやるわ」


同化体は総じて誇り高い。
その理由は過去同化体は戦争の立役者だったことが起因しているだろう。
同化体は精霊を使えないがその分身体能力が通常の人間では歯が立たない。


グリードとの闘いもロゼがいなかったら敗けていたはずだ。


「助かる。ありがとな」


「その代わりと言ってはなんだけど、首長国の件は手伝って頂戴ね」


「はっ、任せとけ!放っておけないしな」


「やっぱりあなたは思った通りの人だわ。....それじゃあ私は向こうで海でも見てるわ、じゃあね」


さて、そろそろ飯にするかな。


ーー船内・食堂ーー


「はいよ、海鮮定食お待ち」


「どうも...さてどこに座るかな...」


「おーい、おっさーん!こっちこっちー!」


声のする方に首を動かすと端の木材テーブルで腰かけているトトアーシュを発見し向かう。


「よお、トト。お前も飯か?」


「まあねー、もう昼だし。...ねえおっさん、ルーシェって何でいんの?はい、フォーク」


「何でって...ありがとさん。そりゃあ最初は道案内のつもりだったんだがな。...まあ嘘だったんだが」


「だろうねー。あいつなに考えてるんだか...嘘ばっかり。」


そういえばルーシェ居ないな...
確かにこっちに来たと思ったのに。


「嘘...ね。....なあルーシェ見たか?食堂に行ってるもんだと」


「えー?見てないけど...」


だとしたらすれ違ったか?二人して?
それともトトが嘘をついているのか?
....旨っ...フォークが止まらん。


「ご馳走さまー。美味しかったー。」


トトはもう食い終わったらしく立ち上がり、皿などをカウンターに持っていこうとしていたが、途中で振り返った。


「ねえおっさん...何がって訳じゃないんだけどさ...気を付けてね」


なにに対してだ?
お前にか?ルーシェにか?公国にか?


これ見よがしな事を伝えたトトはなに食わぬ顔で仮眠室へと行ってしまった。


ふと胸元の箱が揺れ、フェニアが肩に移動してくると。


「それ美味しいですか?」


そう聞くので。


「旨いぞ」


と返すと一口噛ったがどうも人間の食い物は合わないのかいつも通り、俺の魔力を右手から吸い上げ始めた。


「ご馳走さま」


食い終わり、どうしようかと迷っていると水が飲みたくなってしまい、水呑場まで行くとルーシェが船体の窓枠から海を見て黄昏ていた。


「お兄さん...飲みにきたの?」


「まあな。飯食ったら喉乾いちまってな」


「じゃあこれあげる。なんか飲む気無くなっちゃって。あ...口つけて無いからそのまま飲んで大丈夫だよ。」


いちいちこの年で気にしないがなとイッキ飲みする。
やはり潮風の影響か、喉が異様に乾いていたようだ。


「ありがとよ。」


コップを返すと洗い場にそれを置きに行くルーシェが。


「お兄さんはさ...ロゼさん一筋?」


「はあ?当たり前だろうが」


と返すと真剣な表情で隣に腰を下ろした。


「もし好きだって言ったら...恋人にしてくれる?」


「それは無理だな。ロゼに悪い」


「そっか...身体の関係だけでも?」


「より駄目だろ、それは」


そんな事を言われ、つい衣服の隙間から覗く谷間を目に焼き付けてしまった。
断りつつも見てしまい、男なんだから仕方ないと誰に言うでもなく心のなかで言い訳をする。


するとロゼが立ち上がり俺の後ろに回り込み、耳元で囁いた。


「ねえ、お兄さん。欲しいものがある時はどうするのが一番かな?」


「なに?それはどういう.......なんだ...?」


「正解は、奪うこと、与えられること」


視界がぐらつき、急な眠気が俺を襲う。


「そしてね?手にいれたあとは私から離れられないようにすることが大事なんだよ...」


なにを...言っている...
ダメだ...考えが纏まらない。
頭がまともに動かない...


ふと甲板から叫び声とリリ、トトがなにか怒号を放っているのが聞こえてきたが直ぐに何も聞こえなくなった。


「私はもう十分耐えたからさ...もういいよね、ロゼさん...貰っちゃっても。これでようやく全て手に入る...安心して暮らせる家も、望んだ家柄も...それと男も...」


意識が朦朧とする。


「これで揃ったよ、お兄さん。私達が幸せになれる条件が...あとは一度だけアテナさんに貸すだけで...全て上手くいく...だからもう少し頑張ろうね、お兄さん。大好きだよ...世界の誰よりも...」


虚ろになりつつある瞳にはルーシェの光の灯っていない眼が映る。
恐ろしく感じながらもこの強烈な睡魔に勝てず意識を手放した。

















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