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苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件

ベレット

すれ違う件

朝日に瞼が焼かれる感覚を感じ目を開けると。


「....ん?よお、おはよう」


「う、うん...お、おはよう...」


「?」


俺の顔を覗き込んでいたあの女の子が目が合うなり逃げてしまった。


「おはよう、お兄さん。」


「おはようさん....」


「あら、おはようユウキ」


「おはよう」


リリアーシュの方を見ると例の男の子たちの手足に添え木を取り付けていた。
そのあと脈をはかり、用紙に記入すると、薬草を煎じそれをシスターに渡す。


恐らくは薬だろう。


「これを毎日飲ませて。治りが早くなるわ。それと風邪薬に湿布、包帯にあとこれを」


諸々の医療品を作り、それを手渡すと、懐から銅貨袋を取り出し机に置いた。


「いつもありがとう。またね。この子達をよろしく」


「はい。なにがなんでも守ります。リリさん、お元気で」


「ええ...ユウキ、行くわよ?」


「今起きる...」


「おっさん朝弱いの?」


かしましくもけたたましい女の子特有のかん高い声に頭が痛くなる。


「まあな...じゃあ行くか...」


「もう行っちゃうの?」


またしても昨日と同じくあの女の子が服の裾を引っ張り上目遣いをしている。


「ああ、もう行かないとな。いつまでもここに居たら色々とまずいんだ」


「そっかぁ....じゃあ私がおまじないあげる!」


しゃがんでと身振り手振りを交え伝えてくるのでしゃがむと頬にキスをされた。


「えへへ...ばいばい」


「お、おう」


突然の出来事に言葉を失くしていると、ルーシェが咳払いをした。


「なんだよ?」


「べっつにぃ~」


「あらあら」


そのルーシェの様子にトトが変な顔をしている。


「おっさん...ルーシェの事なんだけど.....うーん...やっぱりいいや」


そこで切るなよ。気になるだろうが。


「はあ?そこまで言ったんなら...」


「ほらそろそろ行くわよ、二人とも」


「はーい」


「....仕方ない...行くか」


外に出るとシスターとあの女の子。
昨日は深夜で寝ていた孤児たちが軒並み揃って見送ってくれた。
その数ざっと20人は居たと思う。


「「「それじゃあまたねー!」」」


「じゃあまたね、ユリちゃん。皆も」


「お兄ちゃん、えっと、またね...えへへ」


「おう、またな」


ユリという名前らしい、あの少女が手を振り、他の皆も同じく手を振り別れを告げ、その場を去った。


ーーサリス首長国から北に向かうと見えてくる港。
メリクール港に辿り着いた俺達はある女と対峙した。


「何処へ行く...ユウキ・ユグドラシル」


船の汽笛が鳴り、出発を知らせる。


「トモエ...そこを退いてくれ。怪我をさせたくない」


「そんなもの、お前にはお手のものだろう!大人しくお縄を頂戴しろ!」


トモエの立ち塞がる先にある船着き場から船が出ようとしている。
だが脇差しではなく刀を抜いたトモエが斬りかかってきた。


「くっ!止めろ、トモエ!」


「うるさい!貴様はここで殺す!邪彗水楼、切り裂け!」


トモエの名刀、邪彗水楼と俺のファフニールの刃が重なり火花が散る。


「お前ら、走れ!」


「お兄さんはどうするの!?」


「そうだし!」


「俺は俺でなんとかする!早く行け!リリ、連れていけ!」


「分かったわ!」


「ちょ!お兄さん!」


リリが二人を抱き抱えると、地面を蹴りひとっとびで船に着地した。


「させるか!」


「それはこっちのセリフだ!行かせると思うか!」


「くっ!」


剣を振り、蹴りを交えつつ攻撃していく。
だがお互いに決め手に欠けているとトモエは居合斬りの構えを取る。


「一閃虚崩!」


雷を纏った刀を引き抜き、一瞬にして俺の背後を取り、すれ違い様に斬りつけていた。


「なに!?この速度をかわすだと!?」


だがすんでの所を紙一重によけ出港しかけている船に駆け出す。


「悪いが付き合ってる暇はないんでな!」


「待て!この犯罪者が!」


「お兄さーん!」


ルーシェが船から身をのりだし手を差し出している。


既に海へと差し掛かる船へとジャンプした刹那。


「逃がすか!雷刃轟飛!」


トモエが刀で空を斬ると雷撃の飛刃が俺めがけて飛んできたが。


「リュストンケイル!防げ!」


蛇型の闇精霊を召喚し、そいつが漆黒のシールドを展開。


トモエの斬撃を見事防いだ。


「くっ....おのれ...!...おのれ!ユウキ・ユグドラシルー!!」


「悪いな、トモエ...だが俺は斬られる訳にはいかないんだ。帰りを待ってる女がいるんでな」


「.........」


トモエは俺への恨みを叫んだ。
ふとルーシェの顔を見ると悪寒が身体を巡る。


彼女の手を掴みながらそう呟いた俺を見つめるルーシェの目はどこか生気を失っている気がしてならなかった。









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