苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件
正体不明の何者かの件
崩落した屋敷に駆けつけると場が騒然としていた。
「ひい!誰かぁ!鬼が出たぞ!」
「助けてくれぇ!」
裕福そうな衣服に貴金属、そしてターバンをかぶった小太りの男が正体の分からない人物に首を締め上げられ浮かされている。
しかも片手でだ。
なんて握力をしているんだ、こいつは。
「おい!その手を放せ!」
「.....」
殺す気はさらさら無かったのか男を持つ手を離すと男は尻餅をついた。
「ひいいいい!」
腰が抜けているのか、情けなく這いずって逃げていく男を見ながらその場を立ち去ろうとしていたそいつに剣の切っ先を向ける。
「何者だ、お前。何でこんなことをした」
問いかけるとそいつは顔を覆うフードを半分だけこちらに向かせ。
「君は真実を知っているか?知ろうとするか?」
「なに?」
「闇に囚われないことを祈る。剣士よ、その剣の向ける場所を違わんことを願う。」
「お前はなにを...待て!」
意味の分からない言葉を並べたフードの何者かは一足で数百メートルはある距離を飛び上がり、屋根を伝い姿を消した。
「何者だ、あいつは...」
「ん?なんだろ、これ...お兄さん!これ、なにかな?」
「.........今行く....」
奴の去っていった屋根を眺めながらルーシェの居る屋敷の倒壊した残骸に足を踏み入れる。
「これなんだけど...もしかしてこれって...」
じゃらりと何かを拾い上げたそれを受け取り角度を変え観察するとそれが何か理解できた。
理解は出来たが何故こんな物がある?
しかもこんな屋敷に...
「......ああ...これは手枷だな...しかも子供用の」
「子供用...この屋敷...一体なんだったの?」
これが奴の言う真実か?
だがこの手枷が何を指していると言うんだ。
この屋敷の人間が子供を捕らえていたとでも言いたいのか?
「これは....切れ端か?」
「みたいだね...布かな?」
ふと足元に目線を落とすとそこらじゅうに布の破片が落ちておりそれを拾い上げ裏を見る。
「お兄さん!これ!」
「ああ...これは...血だ」
そこには乾いた血が点々と付着していた。
「ルーシェ!隠れろ!」
「きゃ!」
ルーシュの襟首を掴み裏路地に引っ張り身を隠す。
この国の警察機関の青龍か?とも思ったが違うみたいだ。
「あの人、昼間の...」
「ああ、あの男だ」
蜥蜴に乗り詰問した男が布で顔を隠し、全身黒の衣服を身に纏った姿で現れ仲間に指示を出している。
「ちょっ!なにし....むぐっ!...ぷはっ、な、なにするの!お兄さん!」
「あほか!見つかったらどうする!」
ルーシェの口を手で塞ぎ耳を澄ますとパチパチという音と焦げ臭いにおいが立ち込める。
あいつら、なにしやがる...まさか放火するなんて...
「ん?今声が聞こえた気が...」
「そうか?」
「おい、お前、見てこい。もし見られたら分かっているな」
ざっざっと足音が近づくのを聞き取り、万事休すかとルーシェの口からゆっくりと手をどかしていき、ファブニールを生成しようとした時だった。
「おい、行くぞ!朱雀の奴ら、もう来やがった!」
「お、おう!」
法螺貝のけたたましい音が鳴り響くと男たちはその場から暗がりへと姿を消した。
「消火活動を開始なさい!」
すると次に現れた赤色を基調とした甲冑を装備している集団が現れ、隊長とおぼしき女性が号令を掛けると近くの井戸で桶レースを始めた。
まるで戦国時代にでもタイムスリップしたような光景に目を奪われながら見たことのある甲冑に目を向ける。
「あれは四部族の一柱、朱雀か」
四部族の一つ、朱雀。
この集団は主に消火活動をしている。
消火活動を眺めていたらルーシェが腕をツンツンとつつき、上目遣いで囁く。
「ねえねえ、逃げた方がいいんじゃ...」
「おい、そこのお前!何をしておる!」
「ちっ!しまった!」
俺達が隠れていた場所の反対側から駆けつけてきた集団に見つかってしまったらしく、刀を抜いた青色で竜の絵柄が描かれた着物を着た集団に、火災現場まで追いやられた。
「......!何者!」
「お前、一体どこのどいつだ」
甲冑の女も腰に差していた脇差しを手に取ると俺とルーシェに切っ先を向ける。
「青龍の!こやつらは!?」
「そこの裏路地に隠れておったわ、曲者かもしれん。」
2人に前後からじりじりと詰め寄られ火事の炎が俺の顔を照らす。
「む....貴様は...」
朱雀の女隊長が俺の顔を見るなり顔色を変えた。
「トモエ、知っておるのか?」
「ああ、私がかつて兄と慕った男で、メリザリンの人間と恋に落ちたハイエルフから生まれた異端児だ」
「え...えええええ!?お兄さん、メリザリン出身だったの!?」
「違う、メリザリンから離れた山だ。そこで住んでいて...いや、そんなことよりお前...トモエ...なのか...?」
女が兜を取り顔を晒した。
昔の面影などない黒髪のポニーテール姿だったが、一つだけトモエだと一目で分かるものが残っていた。
「私の顔を忘れたとは言わさんぞ!この傷を貴様がつけたのだからな!ハイエルフ王家の呪われ子、ユウキ・ユグドラシル...!」
その傷には見覚えがある。
彼女を追い払うために俺が作ってしまった傷跡なんだから。
「ひい!誰かぁ!鬼が出たぞ!」
「助けてくれぇ!」
裕福そうな衣服に貴金属、そしてターバンをかぶった小太りの男が正体の分からない人物に首を締め上げられ浮かされている。
しかも片手でだ。
なんて握力をしているんだ、こいつは。
「おい!その手を放せ!」
「.....」
殺す気はさらさら無かったのか男を持つ手を離すと男は尻餅をついた。
「ひいいいい!」
腰が抜けているのか、情けなく這いずって逃げていく男を見ながらその場を立ち去ろうとしていたそいつに剣の切っ先を向ける。
「何者だ、お前。何でこんなことをした」
問いかけるとそいつは顔を覆うフードを半分だけこちらに向かせ。
「君は真実を知っているか?知ろうとするか?」
「なに?」
「闇に囚われないことを祈る。剣士よ、その剣の向ける場所を違わんことを願う。」
「お前はなにを...待て!」
意味の分からない言葉を並べたフードの何者かは一足で数百メートルはある距離を飛び上がり、屋根を伝い姿を消した。
「何者だ、あいつは...」
「ん?なんだろ、これ...お兄さん!これ、なにかな?」
「.........今行く....」
奴の去っていった屋根を眺めながらルーシェの居る屋敷の倒壊した残骸に足を踏み入れる。
「これなんだけど...もしかしてこれって...」
じゃらりと何かを拾い上げたそれを受け取り角度を変え観察するとそれが何か理解できた。
理解は出来たが何故こんな物がある?
しかもこんな屋敷に...
「......ああ...これは手枷だな...しかも子供用の」
「子供用...この屋敷...一体なんだったの?」
これが奴の言う真実か?
だがこの手枷が何を指していると言うんだ。
この屋敷の人間が子供を捕らえていたとでも言いたいのか?
「これは....切れ端か?」
「みたいだね...布かな?」
ふと足元に目線を落とすとそこらじゅうに布の破片が落ちておりそれを拾い上げ裏を見る。
「お兄さん!これ!」
「ああ...これは...血だ」
そこには乾いた血が点々と付着していた。
「ルーシェ!隠れろ!」
「きゃ!」
ルーシュの襟首を掴み裏路地に引っ張り身を隠す。
この国の警察機関の青龍か?とも思ったが違うみたいだ。
「あの人、昼間の...」
「ああ、あの男だ」
蜥蜴に乗り詰問した男が布で顔を隠し、全身黒の衣服を身に纏った姿で現れ仲間に指示を出している。
「ちょっ!なにし....むぐっ!...ぷはっ、な、なにするの!お兄さん!」
「あほか!見つかったらどうする!」
ルーシェの口を手で塞ぎ耳を澄ますとパチパチという音と焦げ臭いにおいが立ち込める。
あいつら、なにしやがる...まさか放火するなんて...
「ん?今声が聞こえた気が...」
「そうか?」
「おい、お前、見てこい。もし見られたら分かっているな」
ざっざっと足音が近づくのを聞き取り、万事休すかとルーシェの口からゆっくりと手をどかしていき、ファブニールを生成しようとした時だった。
「おい、行くぞ!朱雀の奴ら、もう来やがった!」
「お、おう!」
法螺貝のけたたましい音が鳴り響くと男たちはその場から暗がりへと姿を消した。
「消火活動を開始なさい!」
すると次に現れた赤色を基調とした甲冑を装備している集団が現れ、隊長とおぼしき女性が号令を掛けると近くの井戸で桶レースを始めた。
まるで戦国時代にでもタイムスリップしたような光景に目を奪われながら見たことのある甲冑に目を向ける。
「あれは四部族の一柱、朱雀か」
四部族の一つ、朱雀。
この集団は主に消火活動をしている。
消火活動を眺めていたらルーシェが腕をツンツンとつつき、上目遣いで囁く。
「ねえねえ、逃げた方がいいんじゃ...」
「おい、そこのお前!何をしておる!」
「ちっ!しまった!」
俺達が隠れていた場所の反対側から駆けつけてきた集団に見つかってしまったらしく、刀を抜いた青色で竜の絵柄が描かれた着物を着た集団に、火災現場まで追いやられた。
「......!何者!」
「お前、一体どこのどいつだ」
甲冑の女も腰に差していた脇差しを手に取ると俺とルーシェに切っ先を向ける。
「青龍の!こやつらは!?」
「そこの裏路地に隠れておったわ、曲者かもしれん。」
2人に前後からじりじりと詰め寄られ火事の炎が俺の顔を照らす。
「む....貴様は...」
朱雀の女隊長が俺の顔を見るなり顔色を変えた。
「トモエ、知っておるのか?」
「ああ、私がかつて兄と慕った男で、メリザリンの人間と恋に落ちたハイエルフから生まれた異端児だ」
「え...えええええ!?お兄さん、メリザリン出身だったの!?」
「違う、メリザリンから離れた山だ。そこで住んでいて...いや、そんなことよりお前...トモエ...なのか...?」
女が兜を取り顔を晒した。
昔の面影などない黒髪のポニーテール姿だったが、一つだけトモエだと一目で分かるものが残っていた。
「私の顔を忘れたとは言わさんぞ!この傷を貴様がつけたのだからな!ハイエルフ王家の呪われ子、ユウキ・ユグドラシル...!」
その傷には見覚えがある。
彼女を追い払うために俺が作ってしまった傷跡なんだから。
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