苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件

ベレット

久しぶりの殺劇舞踏の件

「久しぶりだよね!こういう大立ち回り!」


「ああ...だが手応えがないな...」


「それご主人様達がぁ、強くなってるんですよぉ」


「うわあ...すごー...」


俺とロゼの殺陣を引き気味に眺めているルーシェの頭に乗っているフェニアの言う通りかもしれない。


だがそれよりも俺達のコンビネーションによるところが大きいかもしれない。


「遅いですよ!」


「そこだ!ロゼ!」


「うん!ユウキくん!」


「「はあああああっ!」」


背中を預け向かい来る兵を斬り伏せ、これで決めようと協力霊技を放つ。


「「洸刺黒神楽!!」」


まずは俺がファブニールを振り回し精霊の力で漆黒の竜巻を作りだし、そこにロゼが光子を生成すると太陽の光を吸収した光子が熱線を放出し、それこそ駒型のレーザー兵器のような状態とも言えるそれがいとも簡単に敵を打ち倒す。
打ち倒すというか焼き殺すだが。


「つ、強すぎる...なんなんだ、こいつら...この2人だけ次元が違う!」


「に、逃げろ!勝てるわけねえ!」


だがそう簡単に俺達から逃げられると思ったら大間違いだ。
これだけの事をしてくれたんだから、礼をたっぷりさせて貰う。


「こんな辺境まで来たんだ。折角だからゆっくりしていけ!」


「残念でしたね。私達を相手にするには大分実力が足りていませんよ」


「「.......」」


もはやどちらが悪なのか分からない様相に2人共口を閉ざしてしまっている。


100人以上居た筈の兵隊がものの10分でほぼ壊滅状態になっているのだからそうなるのも分からないでもないが。


「こ、こいつら...いや、あの方はもしや...ローゼリッタ様か!?」


「な、ならあいつは...隻腕の傭兵ユウキか!?」


「しかも2人揃ってるって...勝てるわけねえよ!あのアテナ様さえ退けたんだぞ!」


俺とロゼがゆっくりと足音をパキッパキッとさせながら近づいていくと兵隊達の顔が涙で歪んでいく。


「ひっ!助けて...」


最大級の恐怖を刻み込んだのを見届けた俺達は剣をしまう。


「いいぜ?だが一つ条件がある」


「な、なんだ?何でもする!だから命だけは!」


それを聞き俺とロゼはニヤリと笑い、手を差し出す。


「....?」


「共和国に入国おめでとさん。今日からあんた達には村の再建を手伝って貰うぞ」


「え...」


「はーい、労働力ゲット~!」


「「うわあ」」


何を言われたのか理解できていないのでもう一押しすることにした。


「逃げたら殺すからな」 


「「「はい!誠心誠意働かせて貰います!」」」


涙を流し抱き合っている。
余程嬉しかったのだろう。


だがその瞬間、また頭痛に足元がふらつく。


「これは...またか...今度は誰だ...」


「ユウキくん!また!?」


周囲を見渡すが顔が見えない人物はいない。
なら何処に...


すると女性の悲鳴が村中に木霊し、頭の中に声が響く。


『ありえねえ...こんなのありえねえ...俺は勇者だぞ...俺は勇者なんだ!うああああ!』


「ユウキくん!?」


俺は気が付いたら走っていた。
その女性の悲鳴が聞こえた場所に向かって。




するとそこでは肉屋のおやっさんが背中を斬られて横たわっていた。


「お、お前らが悪いんだ...お前らが俺をバカにするから!うわああああ!」


「.....レオォォォォン!!」


おやっさんの血のついた聖剣を今度は奥方にまで振り下ろそうとしていたが俺は最高速度で駆け抜け、掬い上げるように剣を振り上げる。


「は...う...うああああ!俺の...俺の腕がああああ!」


そして俺は聖剣を支えていたレオンの左腕を斬り落とした。


ガシャンと聖剣が地面にぶつかり音を立て次第に光に還っていく。


「レオン...貴様...何も罪も無い人に手をあげやがったのか!!もう堪忍ならねえ...!」


俺の本気の怒りに縮み上がったレオンは漏らしながらもその場から逃げ出した。


「ひっ!う...うわああああ!」


「逃がすか!」


「ぐ....う...う...」


「あんたぁ!」


追おうと足を動かそうとしたがまだ生きていたらしい肉屋を放っておくわけにもいかず足を止め背部を調べる。
重症だがまだ助かるなら何とかしなくてはとレオンの逃げた先を睨み付けながら声を張り上げる。


「くそ...ロゼ!止血剤と包帯!それと糸と針を持ってこい!治療するぞ!」


「は、はい!」


俺は歯を噛みしめ、もう一度奴の去っていった方角を睨み拳を地面にぶつけた。

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