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苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件

ベレット

帝国入国の件

「あんた達、絶対許さないぞ!覚えとけ!」


そう怒りを露にするのは船を木っ端微塵にされた船長だ。
怒って当たり前だろう。
何しろ破壊したのは海賊ではなく俺達...というかロゼなのだから。


「ごめんなさい、ごめんなさい!ユウキくん!」


ロゼは本当に反省しているらしく何度も頭を下げる。


「まあ...誰も死ななくて良かったな...俺もな...」


「ごめんなさい~!」


「そう言ってやるな、兄弟!お前の為にやってくれたんだろ?」


「あなたは黙っていてください。いえ、今すぐ死んでください」


海賊の男...グリードの事を相当嫌っているのかいつもの、のほほんとした口調とは打って変わって冷たい口調で言い放ったがグリードは「がーはっはっはっ!」と豪快に笑い飛ばした。


「ちゃんと小舟やったんだからちょっとは感謝してほしいもんだぜ」


「手漕ぎのな。ここから帝国までどんだけ距離があると思ってる」


そう、船長達には船員含む全員が乗れる小舟を何隻か渡し、しかも例の積み荷と積めるだけの正規品を拾ってやったのだ。


悪いことをしたとは思うがこれも因果応報というものかもしれない。
悪いことをしたらバチが当たるものだ。
神様が居なくてもな。


「おい、グリード。ちゃんと送ってくれるんだろうな?」


「あたぼうよ!何処にでも連れてくぜ、兄弟!」


俺を兄弟というこの男。
海賊とは名ばかりの義賊だったらしい。
あの船を襲ったのはなんでも非正規品を密輸していた情報を得、各国の民に行き渡らないようにしたかったから、らしい。


「お前の狙いは分かったが何故最初にロゼを狙った?」


「何故ってそりゃあ手配書に載ってたからな。ほれ」


「手配書だと....これは...」


手配書にはこう書かれている。
『ウィスト公国の元第三皇女ローゼリッタを国家転覆を企んだ大罪人として指名手配するものとする』


これはロゼには見せられんなとグリードに突っ返そうとしたところ、運悪くロゼに見つかり引ったくった。


「おい、ロゼ!」


「ふむふむ...実に御姉様らしい手法ですね。恐らくはラスタ御姉様でしょう。相変わらず姑息な方です」


だがその表情は曇っておらず、それどころか予想していたように見える。


「大丈夫なのか?ロゼ」


「うん、いずれはこうなると分かってたからね。」


「そうか...ラスタってのは?」


「もう一人の御姉様で氷の大精霊、セプテムを擁する共和国最強にして戦略にも長ける最強の戦姫。ラスタ・ウィスト・エンデュミオンだよ」


つまりはアテナよりも格上という事なのだろう。
出来れば合間見えたくない相手だ。


「そうか...あまり逢いたくない相手みたいだな」


「うん。闘ったらまともな戦闘にはならないと思う」


困ったもんだな、共和国のお姫様は。


「おう、お前らそろそろ帝国海域だ。帆を畳むから手伝いな」


「ああ、わかった...いや、何で俺らが手伝うんだ」


「はっはっは!まあ良いじゃねえか、兄弟!ほらこれ引っ張ってくれ!」


「良くねえわ...ったく、貸せ」


ーー無事イスト帝国に入国した俺達は船を船着き場に留め18時間ぶりの大地に背筋を伸ばす。


「う~ん!着きましたね~!」


「ふう...さすがに船にずっと乗るのはキツいな....」


「そういえばぁ、グリードさんはぁ、どこでしょぉ?」


「あそこだ」


俺が指を指す先にグリードはおり何者かと交渉をしている。


「何をなさっているんでしょう?」


「ああ、あれはボラード。船の入国審査をする管理官だ。ああやって海賊とも商売をしているんだろう」


グリードが渋々といった感じで金を渡すとホクホク顔でグリードに手形を渡している。


「それも...正しさだけではまかり通らない...事柄...って事なんだよね...」


「ああ...世界は汚れた部分の方が圧倒的に多い。眼を逸らさず自分なりの落とし所を見つけなきゃいけない」


「分かってる...分かってるけどやっぱり私は...」


「奥様...」


柔らかな両手を拳にし震えさせる。
ロゼは清廉な女だ。
不正が許せないのだろう。


ガーフェナがいずれ必要になる御方と言ったのはこういう部分を言っていたのかもしれない。


怒りを抑え込もうとしているロゼの肩に手を置きどう言おうか迷っているとグリードがこちらに戻ってきた。


「お前ら、俺らはそろそろ酒場に行くけどよ、そっちはどうする?」


「ああ、俺達は帝都に住むドワーフに会いたくてな」


「帝都のドワーフ?ああ、グルカンのおやっさんか。ならそこの馬車に乗っていきな。半日で着くだろうよ。そこのグルカン工務店に行ってみな。そこに居るだろうよ」


と、意外にも親切なグリードが帝国の地図を渡しおおよその場所をメモしてくれた。


「助かった、行ってみるわ」


「おう、それと悪かったな、嬢ちゃん。旦那と仲良くしろよ?」


「あなたに言われずとも仲は最高に良いですから余計なお世話です。さっさと行ってください、しっしっ」


ロゼが手で追い払うとグリードはまた豪快に笑い飛ばし船着き場の酒場へと仲間と一緒に消えていった。


「なら行くか、帝都に」


「うん!」


「はいぃ。行きますですぅ」


俺達は馬車に乗り帝都へと舵を切った。





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