話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件

ベレット

鎧の件

渡された球体を見てみると溶岩のように赤黒くそしてゴツゴツしていた。
それを観察しているとハッと思い付くものが頭を過る。


「これ、もしかして燃石か!?」


「うん、まあね。」


「これどうした?こんな村には無いものだぞ」


燃石とは炎石とは違い壊れることはない。
火の中にくべれば未来永劫尽きることなく燃え続ける。
当然、燃石は鉱石の中でもより希少度の高い代物だ。
本来、始めたての鍛冶屋が持っていい物ではない。


「お父さんの火事場からパクってきた」


「はっ、この親不孝者め...」


お互いに笑い合いながら燃石を炎の中に放り投げるとごうごうと火力を上げながら燃え盛る。


それを見届けたルーシェが鍛冶台の裏に隠してあった蓋のしていない木箱を引きずってきた。


その中身を幾つか拾い上げ鉄製のテーブルに乗せるとガチャンと重い金属音が響く。


「まずはこれを溶かすよ」


「それはいいんだがこれ、どうした?」


目に入ったのは所々破損している鎧や盾、剣に斧といった馴染みある様々な武具だった。


「ほら、この村ってさ数十年前に魔王軍と戦争した時の駐屯地でしょ?村の人達も処分に困ってたから再利用しようかと思ってね」


俺が生まれるずっと前、この世界に突如として現れた魔王。
その魔王と戦うため魔界との境界線であるこのアルザス村を軍事施設にしていた時期があると年配の村人に聞いたことがある。


村が廃れた理由はそこにあり、勝てないと踏んだ共和国騎士団が撤退した時に若者達も皆一緒に王都に移動していったらしい。


「それはいい案だな。皆喜んだだろ」


「うん、まあね。でも無償で貰うのもあれだから、余った鉱石とかで家具とか村の門とか柵とか造るつもり~」


ルーシェは本当に良い娘なんだなと、この言葉だけで分かる。
ただ、空気を読めないところはどうにかしてほしい物だが。


ーー1時間ほど炉の中で熱した鎧数点をスコップの様な平たい道具で引きずり、炉の入り口にある金属製の平台に落としていく。


それが固まらない内に、前々から用意していたらしい男性用軽鎧の型に流し込む。


型の蓋を閉め水の中に沈め、オールカウントが微量の冷気を流し込む。


数分経った頃にそれを取り出し蓋を開けると綺麗な銀色の軽鎧が姿を現した。


「ここからどうすんだ?」


「まずはこの金台で形を整えるよ。ちょっと失礼...」


「あ?なんだよ?」


ルーシェが突然俺の背後に回ると数字の書いてある紐で俺の腰回りや胸回り。
胴の長さを測り始めた。


「男の人用だから見本が欲しかったんだよね」


もしかしてその為に連れてきたのか?
ならもう少し遅くでも良かったろうに...


測り終えたのかルーシェは金台の脇に差してあったハンマーを取り上げるとそれを振りかぶり鎧に振り下ろした。


カンカンカンと金属が叩かれる音がする。


「大したもんだ...なあ、ルーシェ...」


「.......」


相当集中しているのだろう。
俺の声は聞こえていないようなので、近くの椅子に腰掛け待つことにした。


30分ほど経った頃、ルーシェが額の汗を胸元の服を引っ張り拭くとこちらに振り向いた。


「出来た!う~ん、良いでき~!」


「ほう、悪くないな」


「へっへ~ん!」


鼻を擦るルーシェが鼻下に煤をつけながら鎧を差し出してきたので、それを受けとる。


キラリと光る銀で造られた頑丈そうな胸鎧に取り付けられた、これまた頑丈そうな金属製の金具。


随所に掘られた女性らしい繊細さを表した細工に眼を奪われる。


先程は悪くないとは言ったが俺としては最高評価のつもりだ。


俺もプロだ。一流品を使い、仕事をこなす。
だからこそ分かる...これは一流品か、それ以上の代物だ。
この年齢でこれだけの物を造るとは恐れ入る。


「じゃあそれ、あげるね。」


「なに?それは流石に...いや、貰っておこう」


「うん、そうして」


きっと最初から俺に渡すつもりだったのだろう。
心底嬉しそうに微笑んでいる。


「お兄さんにはいつも迷惑かけてるからね。あっ、でもそれでチャラとは思ってないよ」


「迷惑ついでに教えろ。何でギルドを辞めた?理由があるんだろ?」


「うん...まあね」


ルーシェは眼を伏せ、元気無さげに頷く。


「実は私、ある鍛冶屋を越えたくて地元から離れたくてさ。トトとミスティーに誘われた時チャンスだと思って...ね。つい...皆と冒険者としてのしあがりたいって...嘘ついちゃったんだよね」


「それは...」


道理でトトがあれだけ怒るわけだ。
自分の夢のために利用されたのだと分かれば我を忘れて喚くのも分からなくはない。
確かに裏切りだろう。
だがそこでふと疑問に頭をもたげる。


「ミスティーはともかく、トトはどうしてそこまでギルドに拘る?」


「....実は私も知らなくて...聞いても教えてくれないし...」


「そうか...」


ルーシェの悲しげな雰囲気に居たたまれなくなり、部屋中に忙しなく目線を移しているとごそごそと自分の懐をまさぐり始めた。


そこから取り出した銅貨袋に手を突っ込みながら「今回はいくらかな?」と雇用代金を支払おうとじゃらじゃら銅貨の音を鳴らす。


「いや、今回はいらん。これ貰ったからな」


「いいの?そんなんで?」


「バカ言うな。こっちが払わないといけないぐらいだ。」


「そっか」


納得したのか銅貨袋をしまおうとしていたルーシェだったが袋から1500セル取り出し手渡してきた。


「おい、要らないって...」


「それはまた別の仕事頼もうと思ってさ」


「仕事?...なんの?」


そう聞き返したのだがその内容は驚くべきものだった。


「妖精を探してほしい」


彼女は苦笑いしながらも依頼をお願いしてきた。









「苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く