苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件
各々の決着の件
「ならその人がハーピーを!?やはり私も加勢を!」
「止めろ、ロゼ。」
「どうして止めるの!?ユウキくん!」
「彼女は妹だ。これは彼女自身がやるべき事だ。それに...俺達が何もしなくてももう、勝敗は決している」
この場に居ても何も出来ない事実に苛立ちを感じ唇を噛むロゼの口から血が滴り落ちる。
彼女は俺達とは違う世界に今まで住んでいた。
だから分かる筈も無いのだろう。
俺やミスティーの中にある戦士としての心根。
それは戦士としての矜持。
他者に自分が殺すべき相手を殺させるなど出来はしない。
「例え共に旅した仲間だろうと、血を分けた兄弟姉妹だろうと、成すべき事を為す。それが俺達だ。理解しろとは言わない...だが覚えておけ。それが俺達の様な奴らの根幹だ」
「姉妹だろうと...成すべき事を...為す...」
ロゼは何度もその言葉を口にする。
彼女なりに思うことがあるのだろう。
「おじさん、ありがとう。」
「ああ、俺にも分かるからな。」
ミスティーは何かを察したのかふっと笑みを浮かべるとシャスティと呼ばれた女に向かい近寄り、痛みに踞るシャスティに弓をつがえた。
「はっ!あんたに殺せるものか!ターゲットを逃して逃げ出したあんたなんかに!」
「私は一族とは違う。殺すべき相手しか私は殺さないだけ」
ミスティーは冷たく言い放ち弓を引き絞っていた右手を離すとドスッと鈍い音が森に響き、ドサッと重い音が地面を鳴らした。
「ミスティーさん...」
「......うん?...雨か....」
タイミングがいいことだ。
なかなか粋な計らいをするものだな、この世界も。
雨が俺達を覆いつくし、ミスティーの流す一筋の涙さえ、分からなくさせていった。
まるで世界が彼女の涙を拭う様に...
ーー「ありがとう、おじさん。」
「俺は何もしてねえ、見てただけだ。」
「私を見届けてくれたから...それに調べてくれた。あと...シャスティを運んでくれてる」
「バカ言ってんじゃねえ。調べたのはギルドの仕事だからで、こいつは村の連中を安心させる為だ。勘違いすんな、へっ!」
左肩に担いだシャスティの遺体がずり下がりそうになるので、一度位置を調整する。
「そう...」
それだけ呟くとお互いに黙り、黙々と歩く。
「あのー、私も居るんですけど。良い雰囲気にならないで下さいます?ねえ、ユウキくん?」
「お、おう...」
相変わらずの冷たい怒気を放つ笑顔のロゼの視線に居たたまれなくなりながら歩いていると「....わない...」と、ミスティーが何かを口にしたが聞き取れなかった。
やっとの思いで村まで到着し、一旦シャスティを肩から降ろす。
「ロゼ、そっち持て」
「はい...おいしょ」
いくら亡くなっていようとも丁重に扱う。
矜持の一つ、死人にも礼節を重んじろ、だ。
近場から毛布を持ってこようとその場を離れている時。
「ハニーさん!だめ!ミスティーさん!」
「!!」
俺とした事が失念していた。
これで事件が解決したのだと思っていたがまだ終わってはいないと頭を過る。
犯人のシャスティと双子の妹のミスティーは瓜二つだ。
見分けがつく筈がない。
そしてミスティーは何かしらの理由で無害な魔族を傷つけはしない。
嫌な予感に寒気がし、雑貨屋から買った毛布を放り投げ駆け出した。
「止めろ!ハニー!」
皆が居る場所に辿り着くと今まさに飛翔してきたハニーが足の爪でミスティーを切り裂こうとしていた。
ミスティーはそれが魔族だと分かると何故か弓を下ろし、覚悟を決めたかのように眼を瞑るが、そんなもん知るかとハニーに飛びかかる。
すると運良く間に合い、「ぐう...」と嗚咽を漏らすハニーと共に地面に落下した。
「ユウキ!邪魔をしないで!....ユウキ!」
「このバカ野郎!良く見ろ!」
「え?」
もう一度飛びかかろうとするハニーの首もとに左腕を回しながら、ハニーの眼をシャスティとミスティー両方交互に向かせる。
「そ、そんな...まさか...」
「ああ、そのまさかだ。こいつらは双子なんだよ。そしてお前の家族達を殺したのはこの女だ。」
俺も目線をシャスティに移すとハニーは力無く俺の腕の中でしゃがみ込んだ。
「そんな...じゃあ私...仇も取れずに...?なによ、それ...」
「あ、おい!止めろ、ロゼ!」
「駄目!ハニーさん!」
ハニーは俺の腕から無理矢理脱出するとシャスティの腰に差してあったナイフを手に取り自分の喉元にナイフを突き立てようとした。
だがロゼの活躍により何とか寸での所で阻止することが出来た。
「なんで邪魔するの!私なんて死んでも構わないわ!仇も討てなくて生きる資格なんて!...!?」
「ユ、ユウキくん!?何を!」
「.....!」
俺はどうにも我慢出来ずハニーの頬をひっぱたいた。
「え?」
「ふざけてんのか?死んでも構わない?二度と言うんじゃねえ!」
珍しく怒りを露にしたからか皆、固まってしまう。
「生きるのに理由がいるのか!?生きていく資格がいるのか!?そんなもんねえだろうが!」
「で、でも私は...」
「そんなに生きていく目的が必要か!?なら与えてやる!」
そう啖呵を切りハニーの顎を掴み上げる。
「お前に生きててほしいと母親は望んでいるのがわかんねえのか!?犠牲になった仲間達の為に生きるのが理由にはなんねえのか!?こんだけ酷い目にあって、仇が討てないぐらいでお前が生きていく資格は無くなんのか!?んな訳ねえだろうが!本当に悔やんでるんならな!...岩にかじりついてでも...泥を啜ってでも生きてみせろや!!」
「あ...ああ...あああああっ!」
「ユウキくん...」
「うあああああぁぁぁっ!」
俺の...そして死んでいった者達の想いに気が付いたハニーは大粒の涙を流し続けた。
そしてその泣き声は村中に響き渡り、皆ハーピー達の安らかな眠りを誰一人欠かさず天に祈った。
これでひとまずは事件解決だろう。
だが1つ気になる点がある。
アルから聞いたハンター...あれは本当にシャス
・・
ティだけだったのか?
羽を持ち去った何者かが居る筈だが今はこれ以上知りようがないだろう。
「止めろ、ロゼ。」
「どうして止めるの!?ユウキくん!」
「彼女は妹だ。これは彼女自身がやるべき事だ。それに...俺達が何もしなくてももう、勝敗は決している」
この場に居ても何も出来ない事実に苛立ちを感じ唇を噛むロゼの口から血が滴り落ちる。
彼女は俺達とは違う世界に今まで住んでいた。
だから分かる筈も無いのだろう。
俺やミスティーの中にある戦士としての心根。
それは戦士としての矜持。
他者に自分が殺すべき相手を殺させるなど出来はしない。
「例え共に旅した仲間だろうと、血を分けた兄弟姉妹だろうと、成すべき事を為す。それが俺達だ。理解しろとは言わない...だが覚えておけ。それが俺達の様な奴らの根幹だ」
「姉妹だろうと...成すべき事を...為す...」
ロゼは何度もその言葉を口にする。
彼女なりに思うことがあるのだろう。
「おじさん、ありがとう。」
「ああ、俺にも分かるからな。」
ミスティーは何かを察したのかふっと笑みを浮かべるとシャスティと呼ばれた女に向かい近寄り、痛みに踞るシャスティに弓をつがえた。
「はっ!あんたに殺せるものか!ターゲットを逃して逃げ出したあんたなんかに!」
「私は一族とは違う。殺すべき相手しか私は殺さないだけ」
ミスティーは冷たく言い放ち弓を引き絞っていた右手を離すとドスッと鈍い音が森に響き、ドサッと重い音が地面を鳴らした。
「ミスティーさん...」
「......うん?...雨か....」
タイミングがいいことだ。
なかなか粋な計らいをするものだな、この世界も。
雨が俺達を覆いつくし、ミスティーの流す一筋の涙さえ、分からなくさせていった。
まるで世界が彼女の涙を拭う様に...
ーー「ありがとう、おじさん。」
「俺は何もしてねえ、見てただけだ。」
「私を見届けてくれたから...それに調べてくれた。あと...シャスティを運んでくれてる」
「バカ言ってんじゃねえ。調べたのはギルドの仕事だからで、こいつは村の連中を安心させる為だ。勘違いすんな、へっ!」
左肩に担いだシャスティの遺体がずり下がりそうになるので、一度位置を調整する。
「そう...」
それだけ呟くとお互いに黙り、黙々と歩く。
「あのー、私も居るんですけど。良い雰囲気にならないで下さいます?ねえ、ユウキくん?」
「お、おう...」
相変わらずの冷たい怒気を放つ笑顔のロゼの視線に居たたまれなくなりながら歩いていると「....わない...」と、ミスティーが何かを口にしたが聞き取れなかった。
やっとの思いで村まで到着し、一旦シャスティを肩から降ろす。
「ロゼ、そっち持て」
「はい...おいしょ」
いくら亡くなっていようとも丁重に扱う。
矜持の一つ、死人にも礼節を重んじろ、だ。
近場から毛布を持ってこようとその場を離れている時。
「ハニーさん!だめ!ミスティーさん!」
「!!」
俺とした事が失念していた。
これで事件が解決したのだと思っていたがまだ終わってはいないと頭を過る。
犯人のシャスティと双子の妹のミスティーは瓜二つだ。
見分けがつく筈がない。
そしてミスティーは何かしらの理由で無害な魔族を傷つけはしない。
嫌な予感に寒気がし、雑貨屋から買った毛布を放り投げ駆け出した。
「止めろ!ハニー!」
皆が居る場所に辿り着くと今まさに飛翔してきたハニーが足の爪でミスティーを切り裂こうとしていた。
ミスティーはそれが魔族だと分かると何故か弓を下ろし、覚悟を決めたかのように眼を瞑るが、そんなもん知るかとハニーに飛びかかる。
すると運良く間に合い、「ぐう...」と嗚咽を漏らすハニーと共に地面に落下した。
「ユウキ!邪魔をしないで!....ユウキ!」
「このバカ野郎!良く見ろ!」
「え?」
もう一度飛びかかろうとするハニーの首もとに左腕を回しながら、ハニーの眼をシャスティとミスティー両方交互に向かせる。
「そ、そんな...まさか...」
「ああ、そのまさかだ。こいつらは双子なんだよ。そしてお前の家族達を殺したのはこの女だ。」
俺も目線をシャスティに移すとハニーは力無く俺の腕の中でしゃがみ込んだ。
「そんな...じゃあ私...仇も取れずに...?なによ、それ...」
「あ、おい!止めろ、ロゼ!」
「駄目!ハニーさん!」
ハニーは俺の腕から無理矢理脱出するとシャスティの腰に差してあったナイフを手に取り自分の喉元にナイフを突き立てようとした。
だがロゼの活躍により何とか寸での所で阻止することが出来た。
「なんで邪魔するの!私なんて死んでも構わないわ!仇も討てなくて生きる資格なんて!...!?」
「ユ、ユウキくん!?何を!」
「.....!」
俺はどうにも我慢出来ずハニーの頬をひっぱたいた。
「え?」
「ふざけてんのか?死んでも構わない?二度と言うんじゃねえ!」
珍しく怒りを露にしたからか皆、固まってしまう。
「生きるのに理由がいるのか!?生きていく資格がいるのか!?そんなもんねえだろうが!」
「で、でも私は...」
「そんなに生きていく目的が必要か!?なら与えてやる!」
そう啖呵を切りハニーの顎を掴み上げる。
「お前に生きててほしいと母親は望んでいるのがわかんねえのか!?犠牲になった仲間達の為に生きるのが理由にはなんねえのか!?こんだけ酷い目にあって、仇が討てないぐらいでお前が生きていく資格は無くなんのか!?んな訳ねえだろうが!本当に悔やんでるんならな!...岩にかじりついてでも...泥を啜ってでも生きてみせろや!!」
「あ...ああ...あああああっ!」
「ユウキくん...」
「うあああああぁぁぁっ!」
俺の...そして死んでいった者達の想いに気が付いたハニーは大粒の涙を流し続けた。
そしてその泣き声は村中に響き渡り、皆ハーピー達の安らかな眠りを誰一人欠かさず天に祈った。
これでひとまずは事件解決だろう。
だが1つ気になる点がある。
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