苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件
不仲の件
ある程度話を窺ったことで俺の中のミスティーへの疑念は晴れたものと思って差し支えないだろうと、川辺を跡にしようとしたのだが。
「おっさん、どーしたん?なんかおかしいけど。」
「あ?ああ、まあ...実はよ、さっきミスティーに似た女に襲撃されてよ。何で襲ったのか聞こうと思ったんたが」
トトはふーんと興味無さげに「ミスティーはずっとあーしと居たからそれはないっしょ」と笑っていたが、俺の漏らした理由を聞いた途端ミスティーの顔色が変わったのを見逃さなかった。
「ミスティー?なにかあるのか?」
「ごめん、トト。私、先に帰る...」
「へ?待つし!ミスミス!」
ミスミスとはまた難儀なあだ名を...
「送ってくぞ、トト。ミスティー行っちまったしな。ギルドだろ?」
「何でギルドだし?あいつ居るから行くわけないし。」
あいつとは誰だ?...と疑問に頭をもたげ聞こうとしたのだが先にトトが語り始めた。
しかしその内容は信じがたいものだった。
「ルーフェが居るからだし。あの裏切り者...絶対に許さないし...!」
ーートトに帰り道でお前らにあれから何があったのかと聞いたのだが言いたくないの一点張りで全く要領を得なかったのでひとまず忘れる事にし、俺は一旦帰路に着いた。
「お帰りなさい、ユウキくん。どうだった?」
「...いや、特には何も...」
本当は話す事はてんこ盛りなのだがあのハーピーの少女が聞き耳を立てているかもしれないと思い話すのを躊躇われた。
「そういえばあの娘の容態は?」
「え、えーとそれがその...怒らないで聞いてね?」
ばつの悪そうな顔をしているロゼに嫌な予感しかしない。
ーー「このバカが!何で出ていかせた!」
「だ、だって急だったんだもん!しょうがないでしょ!?」
どうやら気が付いたハーピーの少女はロゼが外に出て直ぐ近くの井戸に水を汲みに行っている隙を突いて裏口から飛び立ったらしい。
無茶をする。
翼もボロボロだったし、足だって折れていた。
まともに動ける筈もないのに...
「くそ!...ロゼ、俺は探しに行くからお前は残れ!もし帰ってきたら怪我人だろうと縛り付けとけ!」
「は、はいいいぃ...」
ロゼが半泣きになっており、少し言い過ぎたかと思ったが時間が惜しく、直ぐ様外に飛び出した。
ーー何処に居るのかはある程度予測がつく。
恐らくはハーピーの村だろう。
「って訳だから今すぐ教えろ、アル。ハーピーの村は何処だ」
「す、直ぐに地図をお持ちします!少々お待ちを!」
珍しく慌てふためいて緑色の瞳が動揺を表していた。
触手を使うことも忘れ、走るのが苦手なアルラウネの癖にダッシュで地図を持ってきてはカウンターに広げる。
「場所はここです。」
「そんな所に...」
アルが指し示したのはハーピーの村は森の中心部。
うっそうと繁る木々に覆われた一部にあるらしい。
「どうなっているのか分かりません。お気を付けて」
「分かった。何かあれば葉で連絡する」
そう言い残しギルドを去った。
ーーどれだけ進めども目的地に辿り着かない。
それと言うのも俺のような図体がでかい男には少々厳しい程木々が行く手を遮っている。
「ぐ...はあ...っとと。...ようやく出れたか。」
中心部に侵入して早一時間。
ようやく木の密集地帯を通り過ぎ、目の前に現れたのは予想通りの凄惨な村の跡だった。
「まあ生き残りは居ないわな...」
何処を見ても死体、死体、死体。
見たところ腐食はしていないが、匂いはなかなかどぎつい。
まるでパイを常温で一週間放置した上で暖めたような匂いだ。
ようは酸っぱい匂い。
「このままには出来んな...やるか...」
かなりキツいが一人づつ運び、広場らしき場所に穴を掘っていく。
掘ると言ってもわざわざスコップを使わずに霊技を使い一気に掘り起こす。
かせん
掘り起こしたい場所の中心に剣を突き刺し「禍潜
しん
震」を発動すると地震が剣の中心から巻きおこり、微振動を与えながら地面を粉状にしつつ上空へと噴出。
その細かい土が周りに円を描くように落下した。
「おいしょと...はあ...腰がいてえ...」
アルザス村に来てからどうも腰の負担が多い気がする。
ある程度ハーピー達を移動させ腰をさすっていると明かりがついた家を見つけた。
「......」
扉に軽く触れるとぎいっと音が鳴り、ゆっくりと開く。
その先にあのハーピーが座り込んでいた。
「...探したぞ...おい?...お前、聞いてんのか?」
「.....」
聞こえていないのか、聞こえていない振りをしているのか反応がない。
仕方ないな、と彼女の近くまで近付くとポツリポツリと独り言を呟いていた。
「なんで...私達が何をしたというの...ただ静かに暮らしていただけなのに...」
「.....」
「許せない...絶対に許さない...あの銀髪の女...絶対に見つけてやる...」
伸ばしている手を引っ込め目を伏せる。
「もういいか?ここは危ない...行くぞ」
「....はい...あなたがユウキね?」
「ロゼから聞いたのか?」
その問いかけにハーピーは頷きこちらに振り向く。
だがその目は憎悪に満ちていた。
その目には見覚えがある...それは俺のよく知る感情を持った瞳だった。
「どうして...どうして助けたの...見捨ててくれてたら死ねたのに...」
彼女のその瞳は俺を睨みながら俺ではない誰かに向けた憎悪の炎を灯していた。
「おっさん、どーしたん?なんかおかしいけど。」
「あ?ああ、まあ...実はよ、さっきミスティーに似た女に襲撃されてよ。何で襲ったのか聞こうと思ったんたが」
トトはふーんと興味無さげに「ミスティーはずっとあーしと居たからそれはないっしょ」と笑っていたが、俺の漏らした理由を聞いた途端ミスティーの顔色が変わったのを見逃さなかった。
「ミスティー?なにかあるのか?」
「ごめん、トト。私、先に帰る...」
「へ?待つし!ミスミス!」
ミスミスとはまた難儀なあだ名を...
「送ってくぞ、トト。ミスティー行っちまったしな。ギルドだろ?」
「何でギルドだし?あいつ居るから行くわけないし。」
あいつとは誰だ?...と疑問に頭をもたげ聞こうとしたのだが先にトトが語り始めた。
しかしその内容は信じがたいものだった。
「ルーフェが居るからだし。あの裏切り者...絶対に許さないし...!」
ーートトに帰り道でお前らにあれから何があったのかと聞いたのだが言いたくないの一点張りで全く要領を得なかったのでひとまず忘れる事にし、俺は一旦帰路に着いた。
「お帰りなさい、ユウキくん。どうだった?」
「...いや、特には何も...」
本当は話す事はてんこ盛りなのだがあのハーピーの少女が聞き耳を立てているかもしれないと思い話すのを躊躇われた。
「そういえばあの娘の容態は?」
「え、えーとそれがその...怒らないで聞いてね?」
ばつの悪そうな顔をしているロゼに嫌な予感しかしない。
ーー「このバカが!何で出ていかせた!」
「だ、だって急だったんだもん!しょうがないでしょ!?」
どうやら気が付いたハーピーの少女はロゼが外に出て直ぐ近くの井戸に水を汲みに行っている隙を突いて裏口から飛び立ったらしい。
無茶をする。
翼もボロボロだったし、足だって折れていた。
まともに動ける筈もないのに...
「くそ!...ロゼ、俺は探しに行くからお前は残れ!もし帰ってきたら怪我人だろうと縛り付けとけ!」
「は、はいいいぃ...」
ロゼが半泣きになっており、少し言い過ぎたかと思ったが時間が惜しく、直ぐ様外に飛び出した。
ーー何処に居るのかはある程度予測がつく。
恐らくはハーピーの村だろう。
「って訳だから今すぐ教えろ、アル。ハーピーの村は何処だ」
「す、直ぐに地図をお持ちします!少々お待ちを!」
珍しく慌てふためいて緑色の瞳が動揺を表していた。
触手を使うことも忘れ、走るのが苦手なアルラウネの癖にダッシュで地図を持ってきてはカウンターに広げる。
「場所はここです。」
「そんな所に...」
アルが指し示したのはハーピーの村は森の中心部。
うっそうと繁る木々に覆われた一部にあるらしい。
「どうなっているのか分かりません。お気を付けて」
「分かった。何かあれば葉で連絡する」
そう言い残しギルドを去った。
ーーどれだけ進めども目的地に辿り着かない。
それと言うのも俺のような図体がでかい男には少々厳しい程木々が行く手を遮っている。
「ぐ...はあ...っとと。...ようやく出れたか。」
中心部に侵入して早一時間。
ようやく木の密集地帯を通り過ぎ、目の前に現れたのは予想通りの凄惨な村の跡だった。
「まあ生き残りは居ないわな...」
何処を見ても死体、死体、死体。
見たところ腐食はしていないが、匂いはなかなかどぎつい。
まるでパイを常温で一週間放置した上で暖めたような匂いだ。
ようは酸っぱい匂い。
「このままには出来んな...やるか...」
かなりキツいが一人づつ運び、広場らしき場所に穴を掘っていく。
掘ると言ってもわざわざスコップを使わずに霊技を使い一気に掘り起こす。
かせん
掘り起こしたい場所の中心に剣を突き刺し「禍潜
しん
震」を発動すると地震が剣の中心から巻きおこり、微振動を与えながら地面を粉状にしつつ上空へと噴出。
その細かい土が周りに円を描くように落下した。
「おいしょと...はあ...腰がいてえ...」
アルザス村に来てからどうも腰の負担が多い気がする。
ある程度ハーピー達を移動させ腰をさすっていると明かりがついた家を見つけた。
「......」
扉に軽く触れるとぎいっと音が鳴り、ゆっくりと開く。
その先にあのハーピーが座り込んでいた。
「...探したぞ...おい?...お前、聞いてんのか?」
「.....」
聞こえていないのか、聞こえていない振りをしているのか反応がない。
仕方ないな、と彼女の近くまで近付くとポツリポツリと独り言を呟いていた。
「なんで...私達が何をしたというの...ただ静かに暮らしていただけなのに...」
「.....」
「許せない...絶対に許さない...あの銀髪の女...絶対に見つけてやる...」
伸ばしている手を引っ込め目を伏せる。
「もういいか?ここは危ない...行くぞ」
「....はい...あなたがユウキね?」
「ロゼから聞いたのか?」
その問いかけにハーピーは頷きこちらに振り向く。
だがその目は憎悪に満ちていた。
その目には見覚えがある...それは俺のよく知る感情を持った瞳だった。
「どうして...どうして助けたの...見捨ててくれてたら死ねたのに...」
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