苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件

ベレット

ハーピーが傷だらけの件

「ロゼちゃんどうしたんだい?随分機嫌が良いじゃない。何か良いことでもあったのかい?」


「分かりますかー?実はようやく旦那に身体を求められたんですよー!」


どうしてこう女同士の下の話は品がないのか、理解に苦しむ。


「やったじゃないか、ロゼちゃん。ちゃんと旦那、性欲あったんだねぇ。」


「そりゃどうも。ロゼ、俺は向こうで休んでるぞ」


「あ、うん。いいよ。」


あれからというものロゼが俺に対して随分フレンドリーに接するようになった。
喋り方1つとってもそうだが何よりも腰が柔らかくなった気がする。
変な意味じゃなく。


「はあ....」


先程まで買い物していた商店街を抜け広場に出るとベンチを見つけそこに腰を下ろすが。


「!?」


ガタンとベンチが揺れる程勢いよく立ち上がる。
周りを確認するが特に異変はないようだ。


「確かに視線を感じた気がするが...」


不気味に感じながらもう一度座ろうとした時だった。
突如、村の入り口から慌ただしい声が響く。


「誰か来てくれ!誰か!」


少ない村民の一人が叫び出すと村中が集まりだし、俺も何事かと向かうことにした。


「ロゼ。俺も見に行くがお前も行くか?」


「あ、うん!はい、250セル!」


「まいど。後で何があったか教えとくれよー!」


ーー村の入り口


間違いなく役に立たないだろうほぼ全壊の門辺りまでやってくると人だかりが出来ていた。
数は5人程度だが商売人以外の連中は全員来ているらしい。


「おう、ユウキの旦那。こっち来てくれ」


恰幅の良い建築士の男に促され野次馬の中央に誘導されると俺とロゼは目を疑った。
そこには血だらけのハーピーが横たわっていた。


ーーこの村には医者がいない。
が、そもそも魔族を見れる医者なんて限られているだろう。
魔界に踏みいるか何処かの王都になら偏屈な医者が見つかるだろうがこんな場所まで来てくれるとは思えず、一旦我が家で預かることとなった。


「どうかな、ユウキくん...」


「...取り敢えずは大丈夫だと思うが...縫合もしたし、薬も塗った。後は彼女の治癒力に任せるしかない」


「そっか...それにしてもユウキくんは医療にも精通してるの?凄いね...」


「そんなんじゃない...ただ戦場での暮らしが長かったからな。応急手当に慣れているだけだ」


ロゼの悲しそうな顔に心が締め付けられ、自然と抱き寄せていた。
それにしても酷い怪我だ。
足は折れ、翼は血だらけでろくに飛べないだろう。
身体の傷を見るにこれは...
そんな折だった。家の扉を誰かが叩く音がし、声が届く。


「ユウキさん、いらっしゃいますか?アルです。」


「アルさん?どうかなさいましたか?」


ロゼが扉を開けるとアルラウネ特有の頭に咲いた花が心なしか萎れている。
アルラウネの花はその人物の心理状態を表している。
確実ではないが恐らく同じ魔族として心配なのだろう。


「ハーピーさんは大丈夫ですか?」


「...ああ、取り敢えずはな。....どうした?」


「.....」


アルの様子がおかしい...
確かにこんな様子を目の当たりにしたら誰だって気分は悪くなるかもしれないがそれにしては挙動不審だ。


「アル...?」


「あ...すみません...実はユウキさんにお願いがございまして...」


「お願い?」


「ええ...実は...」


ロゼと顔を見合わせアルを椅子に座らせた。


「アル...養分液でいいか?庭用だが」


「お構い無く。直ぐに出ていきますから」


「そうはいきませんよ。アルさんにはいつもお世話になってますから」


「...ありがとうございます...」


裏庭の倉庫から持ってきた植物用成長剤(液タイプ)をコップに注ぎ、アルの前に置くとそれを一気に飲み干した。


よほど水分が飛んでいたのかもしれない。
僅かだが花に元気が戻った気がする。


「実は折り入って相談が...」


そこで聞いた話は勇者パーティーに居た身としては信じがたい事だった。


「え...それじゃあその...ハーピーの羽で一攫千金を狙ってるハンターがいるという事ですか?」


「はい...実は数日前に森に行った時なのですがそこのハーピーの集落に住む数人のハーピーからその様な話を聞きまして...」


「ハンター...そうか...あの傷。弓矢か...」


そこである人物が脳裏に過る。


「弓っ娘か?」


俺がそう呟くとロゼはハッとしたが、アルは首を横に振り否定した。


「それはあり得ません。彼女は...その...魔族を傷付けることは絶対にありませんから...」


「....?」


何か弓っ娘の方にも魔族絡みの事情があるのだろうか?
絶対と言い切るなんて余程だぞ。


ハーピーの方を見ながらある質問をすることにした。


「今、弓っ娘は何処に?」


「ハーピーの件を調べるため森に行っています...」


森に?...犯人を探しているのか?なら...


「ロゼ、出掛けてくるぞ。森に行く。」


「銀髪さんの手助けをするんだね?なら私も!」


「いや、誰かがハーピーの女の子を看ていないといけないからな。頼んで良いか?」


ロゼは少し考えると「わかった」と頷き、干し肉と水の入った水筒を鞄にしまい手渡してきた。


「じゃあ行ってくる。アル、花びらを貰えないか?ロゼ、何かあったらアルに伝えてくれ。この花びらが教えてくれる」


「うん。わかった」


「どうぞ」


アルから花びらを受け取ると急いで靴を履き、扉に触れる


「後を頼んだ。ロゼ。」


そう告げ外に出るなり森のある方角へと足を向けた。

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