苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件

ベレット

ゴブリンにも事情がある件

「終わったか...?」


「「「は、はい...ごめんなさい...」」」


「盛るのは年頃だししょうがないにしろ、場所を考えろよ?後俺にも気をつかえ。」


「「「はい...」」」


彼女達が申し訳無さそうにこちらに戻ってくると溜め息を吐き立ち上がる。


「行くぞ。」


「「「はーい」」」


ーー襲い来るゴブリン達を切り伏せつつ奥へと侵入を試みていた俺達の目にようやく終点が見えつつあった。


「もうそろそろ終わりかなぁ?」


「ああ。このダンジョンはそう深くはない。もう着く筈だが...とまれ、お前達。」


「どしたの?おじさん?」


何か聞こえた気がし、耳を澄ませる。
三人も俺の警戒し出した雰囲気に唾を飲む。
すると数人のゴブリンの声が耳に届く。


「ちっ!ついてねえ。折角メスを見つけたってのにガキを産めねえなんてな。」


「げひひ、殺す?殺す?」


下品な喋り方のゴブリンどもの会話を盗み聞きしていると双剣使いの少女が耳打ちをしてきた。


「誰か捕まってたりする?」


「いや、分からん。可能性はあるが...」


顔を見合せどうするか悩んでいると、聞きなれない清らかで聞き取りやすい女性の声が聞こえてきた。


「ごめんなさい...ごめんなさい...お願い...殺さないで...」


やはり誰か捕まっているのかと慎重に壁から覗き込むとそこにはゴブリンに囲まれた女性が横たわっていた。


「人...?...!?違う!あれ、ゴブリン!?」


「マジ?人にしか見えないじゃん。...肌緑だけど...」


「あれは...!」


俺自身見たことが初めてなので確証はないが噂に聞いたことがある。
1000人に一人産まれるかどうかという希少種。


「メスゴブリン...だと?」


「「「メス!?」」」


ゴブリン種というのは有名だがその有名足らしめるのはやはり性欲によるところだろう。
だが実際はメスの出生率が著しく低く、かつその低さゆえ他の種族や人間を苗床にしなければ数十年で滅ぶとさえ言われる末期的種族とも言える。
その中でも人間の女は襲いやすいため常に狙われてしまうというなんとも悲しい話だ。
彼らもそういう意味では可哀想な者達かもしれない。


...まあ出来れば合意のもとでお願いしたいが。


それにしても始めて見たが肌の色以外はまるっきり人間と寸分違わない。
身長はおよそ160程、肉付きは良くなく細身。
意外にも端整な顔つきで少なくともゴブリンとは別の種族に思えて仕方がない。


そんな夢にまで見た彼女がまさか子供が産めないとは思えなかったのだろう。
彼らの怒りが収まらず彼女へ暴行が止まらなくなっていた。


蹴られ殴られ嗚咽を漏らす。
魔族といえども見過ごすわけにはいかない。
と、俺は剣を出現させ構える。


「すまん、お前ら...行かせてくれ。」


「あっ!お兄さん!!」


双剣少女の制止を聞かず俺は暗闇から飛び出した。


「止めろ!ゴブリンども!」


「グゲ!?人間!?」


「邪魔するな、人間!これは、ゴブリンの、問題!」


「悪いが弱いもの苛めするのは目に余るんでな!」


勇猛果敢に剣を構えるがそこであることに気づいた。
リーダー格らしきゴブリンが見当たらないのだ。
俺はバカか...たった六体なら...と完璧に油断していた。


ゴブリンともいえどこれだけの数が集まる巣窟だ。
纏め役が居るのを失念していた。


「人間。よく一人で乗り込んできたものだ...貴様、バカなのか?」


「...かもしれん...」


ガーフェナが居たら今頃叱られている事だろうな。
集団でいるゴブリンに特殊なゴブリンがいない筈がないと。


確かにその通りだろう。
じゃらじゃらと貴金属が擦れる音が聞こえその直後、大柄のゴブリンが現れた。


「ゴブリン...ソーサー...」


ゴブリンソーサーとはゴブリンの中でも頭が良く、更に魔法が使える厄介な魔族だ。
かなり分が悪くどうするかと考えを巡らしていると突如背後から数人の足音が近づいてきた。


「おじさん!先走りすぎっしょ!」


「援護する...」


「お兄さん、私達も居るんだから!」


三人が武器を構え俺の横に並ぶ。


「すまん。わりいけどな、力貸して貰うぞ。」


そう告げると三人は満足げに頷いた。
だが、ゴブリンの親玉は反対に怒り心頭だ。


「この人間どもが!無粋にも程があるわ!苗床になどせん!貴様ら殺してしまえ!」


ゴブリンソーサーの命令を含んだ怒号をゴブリン達が聞き取ると下品な雄叫びと共に武器を取り出しこちらに敵意むき出しにし襲いかかってきた。


「やるぞ、てめーら!」


「「「「はい!」」」」















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