苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件
新生活の件
あれから俺達は辛くもウィスト公国を脱出し、昔のつてを便りに隣国、ノルス共和国に辿り着いた。
場所は魔王が治めていた地域と今やほとんど崩壊した人間国の丁度境目にある村落に流れ着いた。
元々人が少なく、かつ若者が少ないこのアルザス村で俺達二人は大いに歓迎された。
勿論村の存続という名目もあるが、それ以上に若者と話がしたい人達ばかりで、とても人が良く俺とロゼはこの村に腰を落ち着けることにした。
「よう、ユウキの旦那、ロゼの奥さん。良いの入ってるよ。見ていきな。」
「やだー!もう!奥さんなんて!口がうまーい!これとこれを下さーい!あっ!ユウキくん、お酒はダメですよ。今月家の修理にお金使っちゃったんですから。」
あれから一月半、俺達は現在アルザス村で疑似夫婦として身を寄せている。
「なあちょっとくらい良いだろ?最近飲んでねえし。」
「ダメです!どうしてもと言うなら今日はご飯無しですから!」
「ぐっ!...ちっ...わあったよ。」
「随分尻に敷かれちまって...旦那、もうちょいしっかりしねえと。」
良いお世話だと言いたいが下手に勘繰られるのも困るのでスルーしておく。
「そういえば旦那。ギルドの姉ちゃんが探してるみたいだぞ。」
「なんで?また何か問題かよ?」
「さあな、知らん。行ってみろ。」
この村唯一のギルドには色々な仕事が寄せられる。
とはいえ特に危険性が無いものばかりだ。
草むしりや猫探し、掃除に炊き出しなど老人には難しい仕事がそれなりの報酬で受けられる。
普段ならな。
「私は家にこれ、置いてきますね。人手が必用なら一緒にやりましょう。」
「はあ...しゃあねえ...やるか。」
...ギルドの扉を開けるとカランカランと鈴の音が歓迎する。
中に踏みいるとこの村で俺達以外の若者の姿が見えてきた。
相変わらず目に優しくない光を緑色の髪から放つアルラウネのお嬢さんだ。(木の精霊)
「お疲れ様です、ユウキさん。やはりこの村は噂が流れるのが速いですね。」
「あんたわざと流しただろ。で、用件は?」
「これを」
彼女の背中から伸びる触手が依頼書と水入りコップをカウンター式の受け付けに静かに下ろす。
この村のギルドはどういう訳かまるでバーのようになっており、カウンターで仕事の受け付け以外に酒も飲めるようになっている。
元々は地域活性化のつもりで建て直したらしいが運悪く共和国が魔王に支配されたせいで徒労に終わったらしい。
「どれどれ...」
ひとまずカウンターの丸椅子に腰掛け水で喉を潤す。
「アル。一つ聞きたいんだが...何で首長国家のお嬢さん方が、わざわざこの村に?」
書類を見る限りどうやらサウラ首長国家のギルドメンバーがこの村に来るらしい。
「なんでも新人冒険者パーティーがあそこのダンジョンに挑戦したいそうで。」
「いや、だけどな。あれは確か今、ゴブリンが根城に...そういうことか。」
「はい。明日到着予定ですので直接聞いてください。」
「仕方ない。それなら他の仕事はあるか?今日中に終わる奴でな。」
そう告げるとアルは一般掲示板から1枚引き剥がすと此方に手渡してきた。
それによると、どうやら本日の仕事は田植えらしい。
...腰がいてえ...ずっと田畑に種を蒔き、雑草を抜くこと数時間。
日が落ちてきたのを見届けようやく解放された。
ギルドの仕事は完了後、即支払いが厳守。
今回も依頼人の婆さんから500セルと野菜を貰い、帰りに遅くなった謝罪を込めてロゼの好きなアルコール度数高めのウイスキーを購入し、帰路に着いた。
「...何を俺は怖じ気づいてるんだ...これでも傭兵だろう...」
いつの間にか本当に尻に敷かれ始めている自分に活を入れ扉を開ける。
恐る恐る中を覗くと
「お帰りなさい...遅かったですね」
予想通りロゼは大変ご立腹な様子で膨れっ面をしながら机に肘をついていた。
「その...悪かったな、遅くなって...あー、ほらこれ婆さん達からお裾分け...」
取り付く島が無いとはこの事か。
どれだけ話しかけようともうんともすんとも返事をしない。
それどころか目も合わせようとしない。
「その...なんだ...これ飲むか?」
「...それ...私の好きな...それで許して貰えると?」
「要らないなら良いんだが...」
仕方ないなと棚にしまおうとするといつぞやの如く俺の手からウイスキーを引ったくる。
そして二人分のグラスに注ぎ一つを俺に渡す。
「一緒に飲んでくれたら許して上げます。」
そう天使のような悪魔な笑顔て微笑んだ彼女に乾杯した。
「「乾杯」」
もう何度目になるか分からない二人の晩酌に夜は更に更けていった。
ーー翌日。
「どうもー!こんにちはー!あなたが今日ダンジョン探索を手伝ってくれるお兄さんですかー?」
「お兄さんじゃない...おじさん...」
「思ったより渋いおじさんじゃーん!顔だけの男よりかっこよさげだし全然ありってかんじー!よろー、おじさーん」
何てこった...まさか全員女の子だったとは。
可能性としては考えなかった訳ではない。
昨今女性の冒険者も増えてきているのは知っていたし、男が不必要に入ると拗れることがあるのも良く理解している。
普段なら鼻の下を伸ばしてしまう所だが今回はそうはいかない。
何故なら...
「ユウキくん?私、聞いてないのですが?女性だけのパーティーだって聞いていないのですが?」
「...俺もなんだが...」
ロゼの冷たい視線と口調が俺の心に突き刺さりっぱなしだからだ。
場所は魔王が治めていた地域と今やほとんど崩壊した人間国の丁度境目にある村落に流れ着いた。
元々人が少なく、かつ若者が少ないこのアルザス村で俺達二人は大いに歓迎された。
勿論村の存続という名目もあるが、それ以上に若者と話がしたい人達ばかりで、とても人が良く俺とロゼはこの村に腰を落ち着けることにした。
「よう、ユウキの旦那、ロゼの奥さん。良いの入ってるよ。見ていきな。」
「やだー!もう!奥さんなんて!口がうまーい!これとこれを下さーい!あっ!ユウキくん、お酒はダメですよ。今月家の修理にお金使っちゃったんですから。」
あれから一月半、俺達は現在アルザス村で疑似夫婦として身を寄せている。
「なあちょっとくらい良いだろ?最近飲んでねえし。」
「ダメです!どうしてもと言うなら今日はご飯無しですから!」
「ぐっ!...ちっ...わあったよ。」
「随分尻に敷かれちまって...旦那、もうちょいしっかりしねえと。」
良いお世話だと言いたいが下手に勘繰られるのも困るのでスルーしておく。
「そういえば旦那。ギルドの姉ちゃんが探してるみたいだぞ。」
「なんで?また何か問題かよ?」
「さあな、知らん。行ってみろ。」
この村唯一のギルドには色々な仕事が寄せられる。
とはいえ特に危険性が無いものばかりだ。
草むしりや猫探し、掃除に炊き出しなど老人には難しい仕事がそれなりの報酬で受けられる。
普段ならな。
「私は家にこれ、置いてきますね。人手が必用なら一緒にやりましょう。」
「はあ...しゃあねえ...やるか。」
...ギルドの扉を開けるとカランカランと鈴の音が歓迎する。
中に踏みいるとこの村で俺達以外の若者の姿が見えてきた。
相変わらず目に優しくない光を緑色の髪から放つアルラウネのお嬢さんだ。(木の精霊)
「お疲れ様です、ユウキさん。やはりこの村は噂が流れるのが速いですね。」
「あんたわざと流しただろ。で、用件は?」
「これを」
彼女の背中から伸びる触手が依頼書と水入りコップをカウンター式の受け付けに静かに下ろす。
この村のギルドはどういう訳かまるでバーのようになっており、カウンターで仕事の受け付け以外に酒も飲めるようになっている。
元々は地域活性化のつもりで建て直したらしいが運悪く共和国が魔王に支配されたせいで徒労に終わったらしい。
「どれどれ...」
ひとまずカウンターの丸椅子に腰掛け水で喉を潤す。
「アル。一つ聞きたいんだが...何で首長国家のお嬢さん方が、わざわざこの村に?」
書類を見る限りどうやらサウラ首長国家のギルドメンバーがこの村に来るらしい。
「なんでも新人冒険者パーティーがあそこのダンジョンに挑戦したいそうで。」
「いや、だけどな。あれは確か今、ゴブリンが根城に...そういうことか。」
「はい。明日到着予定ですので直接聞いてください。」
「仕方ない。それなら他の仕事はあるか?今日中に終わる奴でな。」
そう告げるとアルは一般掲示板から1枚引き剥がすと此方に手渡してきた。
それによると、どうやら本日の仕事は田植えらしい。
...腰がいてえ...ずっと田畑に種を蒔き、雑草を抜くこと数時間。
日が落ちてきたのを見届けようやく解放された。
ギルドの仕事は完了後、即支払いが厳守。
今回も依頼人の婆さんから500セルと野菜を貰い、帰りに遅くなった謝罪を込めてロゼの好きなアルコール度数高めのウイスキーを購入し、帰路に着いた。
「...何を俺は怖じ気づいてるんだ...これでも傭兵だろう...」
いつの間にか本当に尻に敷かれ始めている自分に活を入れ扉を開ける。
恐る恐る中を覗くと
「お帰りなさい...遅かったですね」
予想通りロゼは大変ご立腹な様子で膨れっ面をしながら机に肘をついていた。
「その...悪かったな、遅くなって...あー、ほらこれ婆さん達からお裾分け...」
取り付く島が無いとはこの事か。
どれだけ話しかけようともうんともすんとも返事をしない。
それどころか目も合わせようとしない。
「その...なんだ...これ飲むか?」
「...それ...私の好きな...それで許して貰えると?」
「要らないなら良いんだが...」
仕方ないなと棚にしまおうとするといつぞやの如く俺の手からウイスキーを引ったくる。
そして二人分のグラスに注ぎ一つを俺に渡す。
「一緒に飲んでくれたら許して上げます。」
そう天使のような悪魔な笑顔て微笑んだ彼女に乾杯した。
「「乾杯」」
もう何度目になるか分からない二人の晩酌に夜は更に更けていった。
ーー翌日。
「どうもー!こんにちはー!あなたが今日ダンジョン探索を手伝ってくれるお兄さんですかー?」
「お兄さんじゃない...おじさん...」
「思ったより渋いおじさんじゃーん!顔だけの男よりかっこよさげだし全然ありってかんじー!よろー、おじさーん」
何てこった...まさか全員女の子だったとは。
可能性としては考えなかった訳ではない。
昨今女性の冒険者も増えてきているのは知っていたし、男が不必要に入ると拗れることがあるのも良く理解している。
普段なら鼻の下を伸ばしてしまう所だが今回はそうはいかない。
何故なら...
「ユウキくん?私、聞いてないのですが?女性だけのパーティーだって聞いていないのですが?」
「...俺もなんだが...」
ロゼの冷たい視線と口調が俺の心に突き刺さりっぱなしだからだ。
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